【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第四章【神の御子と月の聖女ディアーナの旅】

60#自称レオンハルト。

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「朝早くから、申し訳ございません…お姉様に聞いて戴きたいお話しが…。」


入室を許され、ドアを開けたイライザが目にしたのは、ベッドの上でレオンハルトの胸ぐらを掴むディアーナの姿であった。


「はぁあん!ステキ!!私もお姉様に胸ぐら掴まれたい!」


「…いや、朝っぱらから、そんな話ししに来たんじゃないよね?イライザ。」



興奮のあまり足元がふらつき、ドアに寄り掛かるように倒れ掛けるイライザに、ディアーナが冷めた口調で尋ねる。



「す、すみません…つい………コホン……先ずは昨夜の食堂での非礼をお詫び致しますわ。…いきなり席を立ち驚かれたでしょう。
申し訳ございませんでした…。」


レオンハルトの胸ぐらを解放し、ガウンを羽織って椅子に腰掛けたディアーナは、もうひとつの椅子にイライザを座るよう促した。


レオンハルトは無言で部屋に結界を張る。

他の侵入や会話を聞かれるのを警戒した。


「あの…お姉様は、サイモンお兄様がお姉様の事を…想ってたのを知ってらっしゃいます?」


気を取り直したイライザに、いきなり驚きの報告をされ、ディアーナは焦る。


「はいぃ!?知るワケ無いわよ!
好かれる要素なんか無いもの!
わたくし、お兄様には冷たくした記憶しかないのに!」


ゲーム設定上でのディアーナは、イライザ同様にサイモンに冷たく辛く当たっていた。
養子だとか、不義の子だとか蔑んでいた記憶設定が頭にある。

実際のディアーナには、無視をしていた位の記憶しか無いのだが。


サイモンのディアーナに対する恋慕の視線に気付いていたレオンハルトは、あからさまに不機嫌な顔になりディアーナの顔を窺う。


「お兄様は…お姉様の事を幼い頃から好いておりました。
わたくしとしては、よくまぁ、こんな根性悪な女に惚れたわねと思っておりましてよ。」


なんじゃそりゃ!人の事を言えるのか!?と思いつつも、そりゃそうだ!とも思うディアーナは益々深く悩み出す。


「…いや、わたくし本当に…サイモンお兄様を馬鹿にしたり…決してかわいい女ではなかったハズ。
なんで、そんな女に惚れる?
イライザの罵詈雑言を受け止めている位だから、メンタル強いのかもだけど…むしろ冷たくしたのはご褒美だったのか?」


やはり、血は繋がってなくともイライザと兄妹だからM気質なんだろうか?貶められ興奮するタイプ?


乙女ゲームの攻略対象者二人目がマゾの変態とか、全年齢適応ゲームとして、いかがなものか。


「お兄様は勘のいい方で…幼い頃にお姉様に初めてお会いした時から、何かを感じていたようですわ。
……極端に言ってしまえば、今のお姉様の姿を予見していたような。」


「今の私?」


「スティーヴン殿下に婚約破棄され、旅に出た今のお姉様です。
お姉様、人が変わりましたわよね?
性格が丸くなったのではなく、人格まるごと別人のようになられましたわ。」


「いや!私からしたら、あんたの方が!」


意外に鋭いイライザの指摘にディアーナが焦った。
確かに、悪役令嬢設定のディアーナと、今現在のディアーナは同じ記憶を有していても別人に近い。
魂の根源である今現在のディアーナの自分は、確実に以前の令嬢ディアーナとは違う。


「わたくしは、本当の自分に気付いてなかっただけですわ。
わたくし自身は何も変わってませんもの。
お姉様は昔の自分を、あれもわたくしです!と言いきれますか?」


ディアーナは困惑し、助けを求めるようにレオンハルトに視線を送るが、レオンハルトもまた困惑しているようで、眉間にシワを寄せて何かを考えている。


「お兄様は…ディアーナお姉様がスティーヴン殿下をお慕いしている姿を…いつも怒りと悲しみを込めた瞳で見ておりましたわ…。一度…無意識の内に呟いたのでしょう…。
『俺が望んで、願って、苦しんで、手に入れられなかったものを、いとも簡単に手に入れている貴様は…!興味無さげにディアーナを遠ざけようとする!』と…呟くのを聞いてしまいましたの。」


「ブフォッ!!」


レオンハルトがベッドの上で思い切り噴き出した。
そのあと、四つん這いになってゲホゲホと思い切り咳込んでいる。

どうした、レオン。我が夫。
私もパニクってるが、なぜ夫もパニクっている。


「お兄様は…時々……自らを
『俺はサイモンではない…俺の本当の名はレオンハルトなんだ…』と、よくおっしゃってました。」


ブフォっ!!


椅子に座ったディアーナと、ベッドで四つん這いのレオンハルトが二人同時に噴き出した。



えーと…パパ?パパ?創造神様?

今すぐ応答願いまーす。

てゆーか師匠!おめぇ、キリキリ説明しろや!!

どーゆー事じゃこれは!

なんでサイモンがレオンハルトだと名乗る!


「お兄様は時々、自身を見失いそうになります。
…それに…スティーヴン殿下を今も憎んでるかも知れない…。
わたくしは…そんなお兄様を…家族とは認めようとしない、卑しい身分の兄を嫌いな妹であり続けなければならないのです。
この家を…守る為に…。」


もし、サイモンがスティーヴンに何かをしようとした時に、最初からヒールナー家の者と認めては無かったと、切り捨てるつもりだと…
イライザは、サイモンがスティーヴン暗殺に関わっているかも知れない事を知らないハズ。
なのに、そんな危険な可能性を感じていると…?


「それ…逆にサイモンが悪い人でなければ、この家に縛りつけないで解放してあげたいって意味もあり?
引き止めたくないから、嫌われていようとか…。」


イライザは、スッと姿勢を伸ばし、美しく頬笑む。


「ええ…わたくし、お兄様の事を好きですもの…だから半分は、そうです。
もっとワガママに、もっと自由になって欲しい………。
あと、半分は……いつか、わたくしを憎み…溜まった鬱憤を晴らしてくれる日が来るのではないかと、実は期待して…はぁん…」


そこも譲れないポイントか。このドMが!


「もぉ~バカァ!あんた、中身は割りとイイ女ね!」

パチーン

ディアーナは笑顔でイライザの頬をはたいてやった。


「ああぁん!ありがとうございますぅ!」



はたき、はたかれ、キラキラ笑顔な二人を尻目に、フォークを入れられた半熟目玉焼きの黄身のようにデロリと溶けかけたレオンハルトがベッドの上に居た。
口からヨダレと魂が出かかっている。



「おお、まるで…ぐでた………」


あえて名前は出さないでおこう。


先程の案件について、おトン師匠からの連絡はない。



忙しいのだろうか?



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