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第三章【オフィーリア追憶】37#後
50#【完結】オフィーリアの求婚。始まる旅路。
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卒業式の日がやってきた。
18歳のスティーヴンは本日、学園を卒業する。
夜には卒業パーティーが開かれ、国王や貴族も集まる。
16歳のディアーナやオフィーリアはまだ学園に残るのだが、そのパーティーにはエスコートしたり、されたりすれば在校生も参加出来る。
夜になり、パーティーが始まる時間。
ディアーナはエスコートするハズのスティーヴンが居ないのだが、この時点では正式な王太子の婚約者。
一人でパーティーに参加した。
父親にエスコートされると思っていたレオンハルトは、少し罪悪感を感じる。
彼女に恥をかかせた事に。
だが、今から彼女にはもっと恥ずかしい、辛い思いをさせる事になる。
「殿下!なぜ、わたくしではなく、そのような女を!」
怒りをあらわにしたディアーナが、スティーヴンとオフィーリアの元に駆け寄る。
そして、スティーヴンの腕にすがろうとのばした手を、スティーヴンは強く払った。
「触れるな!」
振り払われた弾みで、足を滑らせたように、ディアーナがその場にしゃがみこむ。
「殿下!」
スティーヴンの後ろに居るオフィーリアを睨み付ける瞳。
キツイ目付きの彼女は、レオンハルトが知る彼女とは違い過ぎる。
だが、その姿は紛れもなくディアーナそのもので、怒りを悲しみを孕んだ彼女の顔を見ているだけで辛い。
目線をはずすように、オフィーリアは窓の外に目を向けた。
真っ暗な夜空に、一際大きな流れ星が通ったのを目にした。
「……香月……?」
流れ星を見て香月を連想するなんて…そう思いつつ、目の前のディアーナに目線を戻す。
明らかに顔付きが変わっていた。
キョロキョロと辺りを見て、自分の所在を確認している。
まだゲームのシーンは続いているようだが、ゲーム仕様のディアーナは終わったようだ。
「何か申し開きがあるならば、言ってみるがいい。」
つらつらと、続いてゆくゲームの断罪シーン。
レオンハルトはディアーナの様子を静かに窺う。
先ほどまでの、痛い位に怒りを悲しみをあらわにしたディアーナとは全く違う、キョトンとしたディアーナ。
悪役令嬢の彼女が終わり、まっさらな普段の彼女に戻り…そして、
本来のディアーナの魂が芽吹きつつあるのが分かる。
そんな彼女と目が合う。思わず口元に笑みが浮かんだ。
「……よく分かりませんけど……分かりましたわ……殿下のお言葉に従います……」
ディアーナは、カーテシーをして扉に向かう。
もう、もう!無理だ!
待てない!
「オフィーリア、私の妻になってくれないか?君に婚約を申し込みたい」
オフィーリアはスティーヴンに取られた手を振り払い、ディアーナの元に駆け付ける。
ずっと、ずっと君が欲しかった!
触れたかった、兄としてじゃなく、君に想いを寄せる一人の男として!
ずっと。ずっと言いたかった!
家族として、兄としてじゃなく、俺の半身である君の事を
心の底から愛している!
「婚約を破棄なさったのですよね?」
急ぎ過ぎて、業を解くのも忘れ、オフィーリア姿のままディアーナの手を取り床に片膝をつく。
「ならば、私と結婚して戴けませんか?…ディアーナ嬢…私の聖女」
目の前のディアーナをはじめ、回りから驚きの声があがる。
そんなどよめきの中でオフィーリアはレオンハルトに姿を戻した。
ああ…分かっているんだ…。
まだスタートラインに立ったばかりで、俺達は何も始まってはいない。
それでも、ディアーナ…。
君の瞳の中に、初めて俺の姿を映した。
鏡のように煌めく金色の瞳に俺の姿が映っている。
それだけでも俺は…千年以上待った辛さを忘れる位に幸せなんだ…。
初めて君にたくさん伝えられる。たくさん言おう。
「ディアーナ、君を愛している。」
━━━終━━━
18歳のスティーヴンは本日、学園を卒業する。
夜には卒業パーティーが開かれ、国王や貴族も集まる。
16歳のディアーナやオフィーリアはまだ学園に残るのだが、そのパーティーにはエスコートしたり、されたりすれば在校生も参加出来る。
夜になり、パーティーが始まる時間。
ディアーナはエスコートするハズのスティーヴンが居ないのだが、この時点では正式な王太子の婚約者。
一人でパーティーに参加した。
父親にエスコートされると思っていたレオンハルトは、少し罪悪感を感じる。
彼女に恥をかかせた事に。
だが、今から彼女にはもっと恥ずかしい、辛い思いをさせる事になる。
「殿下!なぜ、わたくしではなく、そのような女を!」
怒りをあらわにしたディアーナが、スティーヴンとオフィーリアの元に駆け寄る。
そして、スティーヴンの腕にすがろうとのばした手を、スティーヴンは強く払った。
「触れるな!」
振り払われた弾みで、足を滑らせたように、ディアーナがその場にしゃがみこむ。
「殿下!」
スティーヴンの後ろに居るオフィーリアを睨み付ける瞳。
キツイ目付きの彼女は、レオンハルトが知る彼女とは違い過ぎる。
だが、その姿は紛れもなくディアーナそのもので、怒りを悲しみを孕んだ彼女の顔を見ているだけで辛い。
目線をはずすように、オフィーリアは窓の外に目を向けた。
真っ暗な夜空に、一際大きな流れ星が通ったのを目にした。
「……香月……?」
流れ星を見て香月を連想するなんて…そう思いつつ、目の前のディアーナに目線を戻す。
明らかに顔付きが変わっていた。
キョロキョロと辺りを見て、自分の所在を確認している。
まだゲームのシーンは続いているようだが、ゲーム仕様のディアーナは終わったようだ。
「何か申し開きがあるならば、言ってみるがいい。」
つらつらと、続いてゆくゲームの断罪シーン。
レオンハルトはディアーナの様子を静かに窺う。
先ほどまでの、痛い位に怒りを悲しみをあらわにしたディアーナとは全く違う、キョトンとしたディアーナ。
悪役令嬢の彼女が終わり、まっさらな普段の彼女に戻り…そして、
本来のディアーナの魂が芽吹きつつあるのが分かる。
そんな彼女と目が合う。思わず口元に笑みが浮かんだ。
「……よく分かりませんけど……分かりましたわ……殿下のお言葉に従います……」
ディアーナは、カーテシーをして扉に向かう。
もう、もう!無理だ!
待てない!
「オフィーリア、私の妻になってくれないか?君に婚約を申し込みたい」
オフィーリアはスティーヴンに取られた手を振り払い、ディアーナの元に駆け付ける。
ずっと、ずっと君が欲しかった!
触れたかった、兄としてじゃなく、君に想いを寄せる一人の男として!
ずっと。ずっと言いたかった!
家族として、兄としてじゃなく、俺の半身である君の事を
心の底から愛している!
「婚約を破棄なさったのですよね?」
急ぎ過ぎて、業を解くのも忘れ、オフィーリア姿のままディアーナの手を取り床に片膝をつく。
「ならば、私と結婚して戴けませんか?…ディアーナ嬢…私の聖女」
目の前のディアーナをはじめ、回りから驚きの声があがる。
そんなどよめきの中でオフィーリアはレオンハルトに姿を戻した。
ああ…分かっているんだ…。
まだスタートラインに立ったばかりで、俺達は何も始まってはいない。
それでも、ディアーナ…。
君の瞳の中に、初めて俺の姿を映した。
鏡のように煌めく金色の瞳に俺の姿が映っている。
それだけでも俺は…千年以上待った辛さを忘れる位に幸せなんだ…。
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「ディアーナ、君を愛している。」
━━━終━━━
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