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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】
37# 瀧川廉として生を受けて【現代日本でのレオンハルト】
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魂の半身、月の聖女ディアーナを追い掛け続け幾星霜。
今回は彼女の兄として、地球という星の日本という国に辿り着いた。
瀧川 廉
十歳の少年となった俺は、瀧川家の長男となった。
まるで生まれた時からその場に居たかのように、家族の一員として愛される。
ディアーナの生まれ変わりである五歳年の離れた妹の香月は活発で、
兄の俺と特撮ヒーローが大好きなお転婆な少女だった。
愛する彼女の傍で、彼女の成長を見守りながら過ごす日々は幸せだったような気がする。
現実に目を向けなければ。
彼女の兄として、この世界に存在する以上、彼女を聖女にする事は不可能だ。
ディアーナを聖女にするには彼女が俺を創造主の御子で自分の半身だという記憶を甦らせ、俺と身体を重ねる行為が必要となる。
そして、それが叶う事の無い人生だと彼女の中の魂の核が認識すると、彼女の魂はその人生に早々に見切りをつけ、新しい肉体を持つために死を迎える。
「くそ親父…創造主なんて大層な神のクセに使えない転移ばかりさせやがって…兄妹って何だ…。」
短い天寿を、全うしたディアーナが様々な異世界に転生する度に、追い掛けて転移を繰り返させられる不死の自分。
前回は男同士の友人同士として、前々回は年老いて死ぬ間際の彼女の前に赤ん坊として出会った、その前の人生では……。
転移させられている自分は、彼女の前に現れる姿も時間も選べない。
━━━━いっそ、また死ぬ運命なのだから、俺のこの滾りを彼女の身体に刻みつけてしまおうか……
組み敷いて身体中を抉るようにして深い場所に何度も俺を刻み込んで………彼女を壊してしまってでも━━━━
融けた鉛のような重くて熱いドロリとした感情。
幼い妹だった彼女が、ディアーナと同じ背格好に成長してしまった時、情欲と呼ばれる感情に支配されそうになった。
このまま、その感情の赴くままに動けたら……
神の娘である彼女を壊し、神の怒りに触れれば……
俺ももう、死なせて貰えるのだろうか……
「プッ…!お兄ちゃん、スゴい悪い顔してる!」
妹の香月が笑う。初恋もまだだと、なぜか偉そうに語る高校生の妹は身体を動かすのが好きで、オシャレにも興味が無い、
かわいいと言うよりは勇ましい少女だ。
小さな頃から何ちゃらライダーの影響で強くなりたいと言い続けていた。
今は護身術を身につけたいと言っている。
「香月…お前はノックもせずに部屋に入って来るんじゃない」
「彼女を連れ込んでたら困るとか?」
居る筈の無い恋人の存在に嫉妬してくれているのだろうか?
だとしたら嬉しすぎる。
「どうせ居ないんだから、いーじゃん!
ちなみに、お兄ちゃんがノック無しで部屋に入って来たら、ラリアットだから!」
ニカッと歯を見せて笑う香月に心臓が早鐘を打つ。
彼女の声が、言葉が、仕草が、何もかもが香月であり、ディアーナだ。
似てないのに、これ以上無いって位に同じ人物でしかあり得ない。
美し過ぎて 愛し過ぎて 泣いてしまいそうな程せつない。
愛してる……君が欲しい……君を壊したい位に愛してる……
でも、何もかもから守りたい……俺自身からも……
愛してる…愛してる…言えないけど、愛してる……。
「ミァちゃんからゲーム借りたんだけど、部屋にコントローラー無くてさ。」
無防備に俺に背を向けた香月が、不安定な椅子の上に立って高い棚の上を探り始める。
「ミァちゃん?…そんな友達いたっけ?
…俺はゲームなんかしないから、コントローラーなんて持ってるワケ無いだろ?」
「あ、みっけ!うわ!わぁ!」
在る筈の無いコントローラーを手にした香月がバランスを崩し、椅子の上から上体を此方がわに捻って倒れて来る。
「香月!」
落ちて来る香月を正面から抱き止め、そのままキツく抱き締める。
香月の肩に顎を乗せ、香月の首筋に唇が触れると涙が零れた。
「あいたたた!ゴメーン!お兄ちゃん!じゃあね!」
コントローラーを手に部屋を出て行く香月の後ろ姿を見送って、小さく呟く。
「ああ、さようなら…香月。」
頬を伝う涙の意味は、もう幾度となく繰り返された死別の涙だと……分かっていた。
深夜、香月の部屋を訪れる。
ベッドの上では、愛しい妹が眠るように息を引き取っていた。
「……っくっ…うっ…うくっ…うぁあ…!」
香月の亡き骸を抱いて、獣の咆哮のように激しく嗚咽を漏らす。
数え切れない程の愛しい人の死を見てきた。
だが、慣れる訳がない。
いつだって引き裂かれるような苦しみに魂が悲鳴をあげる。
「ごめん…!ごめん香月…!ごめん、ディアーナ!
何度君を苦しめたら俺は……!」
いっそ、俺が君と結ばれるのを諦めてしまえば、神はディアーナを輪廻から解放してくれるのだろうか?
無理だ……無理だ……!諦められない!
香月を抱き締めたままの廉の身体に亀裂が入る。
ガラスを叩いてヒビを入らせたように、廉の身体中を無数の亀裂が埋めてゆく。
身体が砕ける寸前、だらりと下がった香月の手の先にあるゲームに目が行く。
━━━まさか……そこが次の世界か……?まさか、そんな…━━━
ピシピシッ…パリン!
廉の身体は僅かに笑んだまま砕け散り、その破片は輝きながら光の粒子になり、やがて消えた。
そこには生まれてからずっと一人っ子だった瀧川香月の亡骸だけが横たわっていた。
今回は彼女の兄として、地球という星の日本という国に辿り着いた。
瀧川 廉
十歳の少年となった俺は、瀧川家の長男となった。
まるで生まれた時からその場に居たかのように、家族の一員として愛される。
ディアーナの生まれ変わりである五歳年の離れた妹の香月は活発で、
兄の俺と特撮ヒーローが大好きなお転婆な少女だった。
愛する彼女の傍で、彼女の成長を見守りながら過ごす日々は幸せだったような気がする。
現実に目を向けなければ。
彼女の兄として、この世界に存在する以上、彼女を聖女にする事は不可能だ。
ディアーナを聖女にするには彼女が俺を創造主の御子で自分の半身だという記憶を甦らせ、俺と身体を重ねる行為が必要となる。
そして、それが叶う事の無い人生だと彼女の中の魂の核が認識すると、彼女の魂はその人生に早々に見切りをつけ、新しい肉体を持つために死を迎える。
「くそ親父…創造主なんて大層な神のクセに使えない転移ばかりさせやがって…兄妹って何だ…。」
短い天寿を、全うしたディアーナが様々な異世界に転生する度に、追い掛けて転移を繰り返させられる不死の自分。
前回は男同士の友人同士として、前々回は年老いて死ぬ間際の彼女の前に赤ん坊として出会った、その前の人生では……。
転移させられている自分は、彼女の前に現れる姿も時間も選べない。
━━━━いっそ、また死ぬ運命なのだから、俺のこの滾りを彼女の身体に刻みつけてしまおうか……
組み敷いて身体中を抉るようにして深い場所に何度も俺を刻み込んで………彼女を壊してしまってでも━━━━
融けた鉛のような重くて熱いドロリとした感情。
幼い妹だった彼女が、ディアーナと同じ背格好に成長してしまった時、情欲と呼ばれる感情に支配されそうになった。
このまま、その感情の赴くままに動けたら……
神の娘である彼女を壊し、神の怒りに触れれば……
俺ももう、死なせて貰えるのだろうか……
「プッ…!お兄ちゃん、スゴい悪い顔してる!」
妹の香月が笑う。初恋もまだだと、なぜか偉そうに語る高校生の妹は身体を動かすのが好きで、オシャレにも興味が無い、
かわいいと言うよりは勇ましい少女だ。
小さな頃から何ちゃらライダーの影響で強くなりたいと言い続けていた。
今は護身術を身につけたいと言っている。
「香月…お前はノックもせずに部屋に入って来るんじゃない」
「彼女を連れ込んでたら困るとか?」
居る筈の無い恋人の存在に嫉妬してくれているのだろうか?
だとしたら嬉しすぎる。
「どうせ居ないんだから、いーじゃん!
ちなみに、お兄ちゃんがノック無しで部屋に入って来たら、ラリアットだから!」
ニカッと歯を見せて笑う香月に心臓が早鐘を打つ。
彼女の声が、言葉が、仕草が、何もかもが香月であり、ディアーナだ。
似てないのに、これ以上無いって位に同じ人物でしかあり得ない。
美し過ぎて 愛し過ぎて 泣いてしまいそうな程せつない。
愛してる……君が欲しい……君を壊したい位に愛してる……
でも、何もかもから守りたい……俺自身からも……
愛してる…愛してる…言えないけど、愛してる……。
「ミァちゃんからゲーム借りたんだけど、部屋にコントローラー無くてさ。」
無防備に俺に背を向けた香月が、不安定な椅子の上に立って高い棚の上を探り始める。
「ミァちゃん?…そんな友達いたっけ?
…俺はゲームなんかしないから、コントローラーなんて持ってるワケ無いだろ?」
「あ、みっけ!うわ!わぁ!」
在る筈の無いコントローラーを手にした香月がバランスを崩し、椅子の上から上体を此方がわに捻って倒れて来る。
「香月!」
落ちて来る香月を正面から抱き止め、そのままキツく抱き締める。
香月の肩に顎を乗せ、香月の首筋に唇が触れると涙が零れた。
「あいたたた!ゴメーン!お兄ちゃん!じゃあね!」
コントローラーを手に部屋を出て行く香月の後ろ姿を見送って、小さく呟く。
「ああ、さようなら…香月。」
頬を伝う涙の意味は、もう幾度となく繰り返された死別の涙だと……分かっていた。
深夜、香月の部屋を訪れる。
ベッドの上では、愛しい妹が眠るように息を引き取っていた。
「……っくっ…うっ…うくっ…うぁあ…!」
香月の亡き骸を抱いて、獣の咆哮のように激しく嗚咽を漏らす。
数え切れない程の愛しい人の死を見てきた。
だが、慣れる訳がない。
いつだって引き裂かれるような苦しみに魂が悲鳴をあげる。
「ごめん…!ごめん香月…!ごめん、ディアーナ!
何度君を苦しめたら俺は……!」
いっそ、俺が君と結ばれるのを諦めてしまえば、神はディアーナを輪廻から解放してくれるのだろうか?
無理だ……無理だ……!諦められない!
香月を抱き締めたままの廉の身体に亀裂が入る。
ガラスを叩いてヒビを入らせたように、廉の身体中を無数の亀裂が埋めてゆく。
身体が砕ける寸前、だらりと下がった香月の手の先にあるゲームに目が行く。
━━━まさか……そこが次の世界か……?まさか、そんな…━━━
ピシピシッ…パリン!
廉の身体は僅かに笑んだまま砕け散り、その破片は輝きながら光の粒子になり、やがて消えた。
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