【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】

27#お兄ちゃんお父さん師匠。

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「何で、お父さん?せめて、お兄さんにしてくれないかな?」


気管が詰まったらしく、ジャンセンがゼーハーゼーハー激しく呼吸を繰り返している。


「こないだまで、師匠の事、お兄ちゃんみたいとか思ってたんだけど…何か違うのよね。」


そもそもディアーナには兄なんて居ないのだが。


「ところで師匠、いや、お父さん、いや、ジャンセン!」

「しつこい!すね毛だとか、変態だとか、ちゃんと人の名前を呼べ!」


ジャンセンの意見は無視するディアーナ。


「ネリチャギって知ってます?」

「はぁ?」


何の会話をしているのだろう。私達は。


「こないだから、頭の中に声が響きますの…。
兄直伝のネリチャギがマスター出来れば、向かう所敵は無し!みたいな声が…」


「…料理の名前か何か?」

ジャンセンの意見に、ピンとこないとディアーナは腕を組んで首を捻る。


バン!!


乱暴にドアが開いた。

心配そうにオロオロするスティーヴンを後ろに連れて

笑える位に見た目がズタボロになったレオンハルトが立っていた。

「てめぇ…!ジャンセン!言いたい事だけ言って、さっさと帰りやがって!」


「崖から転げ落ちたそうなんですよ、レオンハルト殿」

コソッとスティーヴンが言う。



肩で大きく息をしながら、いきり立つレオンハルトにディアーナが声を掛かる。


「ネリチャギ!!」

「あぁ!?テコンドーの技がどうしたぁ!!」

「それな!!」

ちょっと盛り上がってしまった。

そんな変なテンション上げてる場合じゃないでしょう!私!



ディアーナはスゥと深呼吸をし、姿勢を正すとボロボロのレオンハルトに向き合う。

「お帰りなさいませ、レオンハルト様」

「…た、ただいま…?…何か…怒ってる?」


レオンハルトの前に立ち、ニッコリ微笑みかけるディアーナの目は笑っていない。


「先ほどの口付けですが、あれは無かった事に致します。」


「は…い?」

ズタボロのレオンハルトは目を白黒させ、ディアーナの真意を探ろうとする。


「あれは、事故ですわ。唇という皮膚が一瞬触れてしまっただけですわ。手の甲同士がたまたまぶつかるのと、何ら変わりありません。」


笑顔のディアーナは、背後にゴゴゴゴと効果音が付きそうな程の威圧を発する。


「わたくしのファーストキスは!もっとロマンチックで素晴らしいものな筈ですから!
町の通りで、一瞬の!あんなもの無しです!ノーカウントです!!」


えええー…?女心って、分からない…なんの宣言なんだろう…と、レオンハルト、ジャンセン、スティーヴンが灰になってしまった。



「…そんなことより…ちょっとマズイ事になったみたいで…」

ディアーナの宣言など、深く考えた所で仕方ないと判断したジャンセンが、クルリとディアーナに背を向けつつ話題を無理矢理切り替え、鍾乳洞で起こった事のあらましをスティーヴンに告げた。


━━━そんな事より?ひでぇ!私、師匠に無視された!━━━






「…では…私が狙われる可能性が高いと…?」


ふざけてる場合じゃなかったと今更ながら思うディアーナに、どうせディアーナだから注意したって仕方ないと今更ながら思うジャンセンが話を続ける。


「可能性がある、ではないですね。確実にです。
…特に蛇型の魔物は執着心が強い…それに、レオンハルト様も…かなり疲弊なさってるご様子ですし…」


ジャンセンは壁際に腕を組んで立っているズタボロのレオンハルトに小さな小瓶を出して投げ渡した。


「この世にたった一つしかない、あなた専用の回復薬です。完全回復には至りませんが、それでも、もう少し動けるようになると思いますよ。」


小瓶を受け取りながらも、ジャンセンを睨むレオンハルトは、今にも小瓶を握り潰してしまいそうである。


「…どうぞ、ご自由に?僅かな回復でも、それが無かったせいで後悔するような結末を迎えない事を祈りますよ。」


ジャンセンは手のひらをヒラヒラ振りながら部屋を出て行った。

「くそっ…!!」

レオンハルトは小瓶を握り締めたまま、自身の腿を強く叩く。


━━━ディアーナがあの蛇女に狙われている以上、少しでも戦えるよう備えておかなくてはならない。


こんなところで、ディアーナを死なせる訳にはいかない。

例え、ディアーナが自分のものにならない未来しか無かったとしても。━━━

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