【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】

25#氷室に赴くレオンハルト

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ディアーナとスティーヴンを町に残し、一人入江に来たレオンハルトは感覚を鋭利に研ぎ澄まし、空気の澱みを探る。


足場の悪い海岸線の岩場では、足を滑らさないようにと一歩一歩と慎重に歩を進める。


「思っていた以上に重症だな…歩けるだけマシなのか?」


思うように動かない足を撫で足元に目をやった時、視界の端に下方に降りる階段を見つけた。


小さく狭い階段から冷たい空気が流れ出てくる。

どうやら、ここが氷室らしい。


「はぁ…ディアーナ怒ってるだろうな…いきなりチューしちゃったもんな、チュー。」


腰に携えた剣を抜き、刃に雷を纏わせていく。


「でも、お陰で剣を握る事が出来る。」


パチパチと静電気のような光を弾かせた剣を持つレオンハルトの手の平から、小さな光の欠片が落ちて行く。


動けなくなる前に、勝負を決めないと!!




階段を降りると鍾乳洞のような広い空間に出た。

ボロボロになった祭壇が中央にあり、そこに一際大きな氷塊がある。
その氷塊を抱き締めるようにとぐろを巻く蛇のような肢体。
濡れて黒光りする身体は海蛇のよう。

長い蛇の身体、その先には美しい女の上半身が付いていた。


「まいったね、ウィリアそっくりだ!娘が泣くぜ、お母さん!」

助走をつけ飛び上がり大きく剣を振りかぶると、女の頭に向け叩き込むように振り下ろす。

女は頭上に振り下ろされたレオンハルトの剣を、氷を纏わせた左手で受けた。


「うふふ、貴方、娘を知っているの?
私にそっくりって事は、さぞ美しく成長したのでしょうねぇ…会いたいわぁ」


女の手から、剣を伝うようにパキパキと冷気がレオンハルトの腕に上がってくる。


「ああ、少なくとも娘の方が母さんよりは、ずっと美人だな!」

女の手から剣を離し、強く振って腕に張り付いた氷を払い落とす。

払い落とした氷がキラリと光り地面を照らすと、レオンハルトの足下には無数の人骨が散乱していた。


「男はメシか、そんな偏食の母さんに会うのなんか娘はゴメンだと思うぞ。」

再び剣を構え、次は剣に炎を纏わせる。

「大丈夫よぉ、私になれば、そんな悩み無くなるわぁ…
若い身体が…肉体が…欲しいのよ!!」


女は口を大きく開く。

唇の両端から耳に向けてプチプチと頬の肉が裂け、二又に別れた赤い舌先が延びて来る。


「連れて来て!私の娘!ううん、あなたを食べてから迎えに行くわ!」


長い舌先と、長い身体を鞭のように使い、前後からレオンハルトを捕らえようと激しく打ち据えて来る。
壁や地面が抉れ、石がつぶての様に飛んできた。


「っと!あぶねーなぁ!ババァ!」


紙一重で何とかかわしながら、目を凝らし女の身体を探っていく。

弱点でもある瘴気の濃い部分、黒ずむ魂が見える場所を探すが、石つぶてや蛇の尻尾、舌から身をかわすのに意識を取られ、中々見つけ出す事が出来ない。


━━━まずい、俺の身体が万全じゃない…!
この程度の魔物に手こずるなんて……━━━━



「あら…」

女の動きが止まった。

「あらぁあ!素敵な器が側に居るのねぇ!」


裂けた頬は元に戻り、ウィリア似の美しい女に戻った魔物はレオンハルトの顔をジイイっと眺めた。


「藍色の髪に、金の瞳…神秘的で美しいわぁ…欲しいわぁ…。」


レオンハルトの心臓がギュウッと鷲掴まれる。


━━━記憶を読まれた?何の抵抗も出来ずに俺が!?
ディアーナの事を知られた!?━━━━


冷や汗が頬を伝う。記憶を読まれ動揺し、その隙をつかれ身体が硬直させられる。

「しまっ……!」


ストンっ…


レオンハルトの足元に、切り落とされた女の片腕が 転がった。



「さすがは、元海の巫女、予言者といった所でしょうか?
弱っている者の記憶を僅かに覗けるようですね。
油断しましたね、レオンハルト様。」


暗闇から滲むように現れたジャンセンは細身の剣━━刀を持って立っていた。


「その藍色の髪に金の瞳は、私にとっても大切なのでね。
貴女のような醜悪な………レオンハルト様風に言うならババァ?…に渡す訳にはいかないんですよ。」


ジャンセンは刀を構え、一歩踏み出した足に重心をかける。


腕を斬り落とされた女はフルフル震えると、自身の身体を抱き締め頬を紅潮させた。


「ステキ!ステキ!こんないい男達に大事にされてるなんて!絶対なるわ!私、絶対に彼女になる!」


シュルルルと地面を大きく這いずる音が鍾乳洞に響く。


「うふふ、彼女になったら二人とも食べてあげる…
嬉しいでしょう?ねぇ?」


女の身体が大きくしなり、地面を激しく叩くいた。


突如、鍾乳洞の中央にあった大きな氷塊が破裂し、鋭い氷の刃となり四方に飛散する。


「レオンハルト様!」


氷塊の破裂に伴って鍾乳洞が崩落してゆく。

ジャンセンは、動けなくなったレオンハルトの腕を無理矢理引っ張り階段を目指した。


「うふふ、私はエイリシア、忘れないでね…
あなた達を美味しく食べてあげるから…また遊びましょう?」


女は高笑いと共に消えていた。


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