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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】
19#ラリアット炸裂。
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商業都市シャンクを離れ、次は海を目指すらしい。
王都は海から離れている為、スティーヴンは海を見た事が無いそうだ。
ディアーナも海を見た事が無いのだが、前世の記憶だけが微妙に残っている。
私は海が好きだ!特に潮干狩りがな!と。
シャンクでは、ディアーナが欲しがっていた武器の調達はもちろん、馬の調達も叶わなかったので、数日かけて野宿もしつつ徒歩で向かう事になった。
途中途中で小さな村や集落があれば寄り、魔獣を退治したり必要な物資を調達してゆく予定だ。
「ディアーナは、俺がおんぶして行く」
真面目な顔で言う変態レオンハルトに、汚物を見るような視線を向けるディアーナ。
「馬鹿ですの?馬鹿ですのね。と言うか、お前はアホか!」
最近、日本人の庶民だった前世の私の言動が目立つが、レオンハルトは気にしてもおらず、スティーヴンに至っては呆れを通り越して初めて見るディアーナの言動に興味津々といった感じだ。
空が赤く染まる頃、岩がせりだして屋根のようになった場所に出た。
今夜はここで休もう、とレオンハルトが提案したので賛成し、薪を組んで火を起こしつつ夜営の準備をする。
「わたくしにも一人になりたい時間というものがございます。ですから、少しの間一人にして下さいませ。」
「ディアーナ嬢、それは危険ではないのか?先日の誘拐の事もあるし…。」
スティーヴンは心配して声を掛けてくれているのだが、あんたは、おかんか!と脳内ツッコミしてしまう。
「レオンハルト様の事ですもの、先日の事を踏まえて何らかの対策はなさってるんでしょう?
わたくしの居場所が分かるだとか…危険が及ぶと感知出来るとか。」
「…盗撮と盗聴的な魔法なら……してる…。」
「今すぐヤメロ!」
ディアーナは憤慨しながら岩場から離れ、林の中に消えて行った。
ディアーナからラリアットとかいう技を受けた変態レオンハルトは、喉をさすりながら馬鹿みたいに笑っており、スティーヴンは毎度の事だと無の表情になっている。
ディアーナがその場から離れ、焚き火の前に男二人が残される。無言の時間が流れる。
無言の時間が流れる。かなり流れる。
やがて、沈黙に耐えられなくなったスティーヴンが口を開いた。
「時にレオンハルト殿…聞きたい事があるのだが…。」
「何だよ。」
ラリアットのダメージを受け、痛むであろう喉を愛しそうに撫でながら、ぶっきらぼうに答えるレオンハルト。
━━ディアーナ嬢に与えられたものなら苦痛さえ愛しいとか?
……いかん、ディアーナ嬢が変態呼ばわりするから、レオンハルト殿の行動が本当に変態にしか見えない……
かつて私が恋していたオフィーリアの元がコレか?━━━
邪念を払拭するように首を振って、スティーヴンがレオンハルトに尋ねる。
「前々から聞きたいと思っていたのだが、私との逢瀬の時の、あのオフィーリアの言葉は…レオンハルト殿が芝居をしていたのか?」
「え…それ、聞く?」
レオンハルトの顔が曇る。が、本人が知りたいならいいか、位の軽い口調で話し出した。
「俺は、まわりには俺の姿がオフィーリアに見えるように魔法使っていたし、人が居る場所で王子サマと会ってる時は、なるべく女っぽい台詞言ったりしていたけどな…………………」
言いよどむレオンハルトは、長い沈黙を生む。
だが、答えを待っているスティーヴンの姿が、お預けを食らっている犬のようで……
根負けしたレオンハルトは頭をガシガシと掻きながら、話を続ける。
「王子サマと二人きりの時は、王子サマに魔法かけていたからな…なので、その時に王子サマが聞いたオフィーリアの言葉は、すべて王子サマの理想であり妄想でした!」
「わ、私の妄想?」
「そ、自分に都合の良い幻覚が見える的な…?俺は無言で突っ立っていただけ。」
「…………………」
「『これ以上、私を君に溺れさせる気なのか』とか暑苦しい顔で言われた時は、俺、妄想の中で何を言わされたんだと思ったし、さすがに罪悪感あったけど。」
「…………………」
スティーヴンは微動だにしない。石化状態である。
「え~と…………ドンマイ!」
「どこの国の言葉ですかソレ!馬鹿にされた気しかしないんですが!」
いい笑顔のレオンハルトに涙目で噛み付く勢いのスティーヴン。
━━━そもそも、なぜ女の振りをしてまで私に近付いた!?
からかう為だけか?アホか!━━━━
王都は海から離れている為、スティーヴンは海を見た事が無いそうだ。
ディアーナも海を見た事が無いのだが、前世の記憶だけが微妙に残っている。
私は海が好きだ!特に潮干狩りがな!と。
シャンクでは、ディアーナが欲しがっていた武器の調達はもちろん、馬の調達も叶わなかったので、数日かけて野宿もしつつ徒歩で向かう事になった。
途中途中で小さな村や集落があれば寄り、魔獣を退治したり必要な物資を調達してゆく予定だ。
「ディアーナは、俺がおんぶして行く」
真面目な顔で言う変態レオンハルトに、汚物を見るような視線を向けるディアーナ。
「馬鹿ですの?馬鹿ですのね。と言うか、お前はアホか!」
最近、日本人の庶民だった前世の私の言動が目立つが、レオンハルトは気にしてもおらず、スティーヴンに至っては呆れを通り越して初めて見るディアーナの言動に興味津々といった感じだ。
空が赤く染まる頃、岩がせりだして屋根のようになった場所に出た。
今夜はここで休もう、とレオンハルトが提案したので賛成し、薪を組んで火を起こしつつ夜営の準備をする。
「わたくしにも一人になりたい時間というものがございます。ですから、少しの間一人にして下さいませ。」
「ディアーナ嬢、それは危険ではないのか?先日の誘拐の事もあるし…。」
スティーヴンは心配して声を掛けてくれているのだが、あんたは、おかんか!と脳内ツッコミしてしまう。
「レオンハルト様の事ですもの、先日の事を踏まえて何らかの対策はなさってるんでしょう?
わたくしの居場所が分かるだとか…危険が及ぶと感知出来るとか。」
「…盗撮と盗聴的な魔法なら……してる…。」
「今すぐヤメロ!」
ディアーナは憤慨しながら岩場から離れ、林の中に消えて行った。
ディアーナからラリアットとかいう技を受けた変態レオンハルトは、喉をさすりながら馬鹿みたいに笑っており、スティーヴンは毎度の事だと無の表情になっている。
ディアーナがその場から離れ、焚き火の前に男二人が残される。無言の時間が流れる。
無言の時間が流れる。かなり流れる。
やがて、沈黙に耐えられなくなったスティーヴンが口を開いた。
「時にレオンハルト殿…聞きたい事があるのだが…。」
「何だよ。」
ラリアットのダメージを受け、痛むであろう喉を愛しそうに撫でながら、ぶっきらぼうに答えるレオンハルト。
━━ディアーナ嬢に与えられたものなら苦痛さえ愛しいとか?
……いかん、ディアーナ嬢が変態呼ばわりするから、レオンハルト殿の行動が本当に変態にしか見えない……
かつて私が恋していたオフィーリアの元がコレか?━━━
邪念を払拭するように首を振って、スティーヴンがレオンハルトに尋ねる。
「前々から聞きたいと思っていたのだが、私との逢瀬の時の、あのオフィーリアの言葉は…レオンハルト殿が芝居をしていたのか?」
「え…それ、聞く?」
レオンハルトの顔が曇る。が、本人が知りたいならいいか、位の軽い口調で話し出した。
「俺は、まわりには俺の姿がオフィーリアに見えるように魔法使っていたし、人が居る場所で王子サマと会ってる時は、なるべく女っぽい台詞言ったりしていたけどな…………………」
言いよどむレオンハルトは、長い沈黙を生む。
だが、答えを待っているスティーヴンの姿が、お預けを食らっている犬のようで……
根負けしたレオンハルトは頭をガシガシと掻きながら、話を続ける。
「王子サマと二人きりの時は、王子サマに魔法かけていたからな…なので、その時に王子サマが聞いたオフィーリアの言葉は、すべて王子サマの理想であり妄想でした!」
「わ、私の妄想?」
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「…………………」
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