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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】
16#私のレオンハルト
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アジトの中に居る兵士の鎧にラジェアベリア国の紋章が刻まれている。
この都市の自警団等ではなく王都の兵士達であるようだ。
「小隊とは言え、わざわざ王都から軍を遠征させてまで…?」
ディアーナは自分の口から出た呟きにザワッと背筋が寒くなる。
私達の動向を知り、この国に到着するのに合わせ小隊を潜り込ませたのか…。
足を止めたディアーナは、前を行くスティーヴンの外套を引っ張った。
「殿下、わたくしを餌にしてレオンハルト様にここを潰させようとしましたわね?
もしかしたら会場とやらも?
殿下は貴族は捕らえて罪を暴かなくてはと申しておりましたけど、わたくしを拐わせた人物はレオンハルト様にすべて消させるつもりだったのでしょう?
罪も罪人もすべて、天罰という名の元に。」
「ディアーナ嬢…それは…。」
語尾を濁し言い澱むスティーヴンは、肯定していると同じだ。
「国王陛下とは言え、多くの貴族を一斉に粛清なんて出来ませんものね。
でも神の怒りに触れたのだから、天罰だから仕方無いと言う事にしてしまえば…国とって不利益でしかない貴族を一度に簡単に消してしまえますものね……。」
スゥと大きく息を吸い込み、ディアーナが腹の底から声をあげる。
「ふざけないで!!レオンハルト様の力は、この世界を守るためだけにあるのに!
こんな、くだらない破壊をさせるために力を使わせるなんて…!」
レオンハルトの力が何の代償も無しに無尽蔵にあるとでも思っているのだろうか。
どこから湧くのか分からない怒りに身が焦げそうになる。
「私のレオンハルトを苦しめないで!!」
スティーヴンがディアーナに対して驚きの表情をした。
今までのディアーナと、何かが違う…。
▼
▼
▼
「行くよー!」
鈴のような、可憐でよく通る少女の声が建物全体にこだまする。
ディアーナ達がアジトから外に出て声の方を見ると、自分が捕らわれていた場所が山の中腹にある石造りの砦だと知った。
そして、その砦の上に剣を高く掲げたオフィーリアの姿があった。
「兵士の皆さんは除外するよう気をつけるけどー、今から建物ん中を焦がすから!
誰一人許したりしないから、お前ら狂い躍りながら消え失せてしまえ!」
オフィーリアは高く掲げた剣の先に雷を纏わせる。
美しい少女であるがゆえに、その姿は宗教画のように美しく、畏怖を感じさせ尚、恐ろしく見える。
「やめなさいレオン!」
砦の正面入り口の前に立ち、頭上に居るオフィーリアにディアーナが呼び掛ける。
「…ディアーナ…?」
ディアーナの呼び掛けに驚きを通り越して狼狽えるオフィーリアが砦の上から顔を覗かせる。
オフィーリアの顔を見たディアーナは、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「やめなさい、レオン…私は無事でしょう?
これ以上あなたの傷を増やさないで……ね?」
言い終えた途端、カクンと力が抜けたディアーナが足元から崩れ落ちる。
傍らに居たスティーヴンに地面に倒れ掛けた身体を支えられたまま、ディアーナは意識を手放した。
━━…誰なの?…元日本人の私でも、ディングレイ侯爵令嬢でもない私が居た━━
この都市の自警団等ではなく王都の兵士達であるようだ。
「小隊とは言え、わざわざ王都から軍を遠征させてまで…?」
ディアーナは自分の口から出た呟きにザワッと背筋が寒くなる。
私達の動向を知り、この国に到着するのに合わせ小隊を潜り込ませたのか…。
足を止めたディアーナは、前を行くスティーヴンの外套を引っ張った。
「殿下、わたくしを餌にしてレオンハルト様にここを潰させようとしましたわね?
もしかしたら会場とやらも?
殿下は貴族は捕らえて罪を暴かなくてはと申しておりましたけど、わたくしを拐わせた人物はレオンハルト様にすべて消させるつもりだったのでしょう?
罪も罪人もすべて、天罰という名の元に。」
「ディアーナ嬢…それは…。」
語尾を濁し言い澱むスティーヴンは、肯定していると同じだ。
「国王陛下とは言え、多くの貴族を一斉に粛清なんて出来ませんものね。
でも神の怒りに触れたのだから、天罰だから仕方無いと言う事にしてしまえば…国とって不利益でしかない貴族を一度に簡単に消してしまえますものね……。」
スゥと大きく息を吸い込み、ディアーナが腹の底から声をあげる。
「ふざけないで!!レオンハルト様の力は、この世界を守るためだけにあるのに!
こんな、くだらない破壊をさせるために力を使わせるなんて…!」
レオンハルトの力が何の代償も無しに無尽蔵にあるとでも思っているのだろうか。
どこから湧くのか分からない怒りに身が焦げそうになる。
「私のレオンハルトを苦しめないで!!」
スティーヴンがディアーナに対して驚きの表情をした。
今までのディアーナと、何かが違う…。
▼
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「行くよー!」
鈴のような、可憐でよく通る少女の声が建物全体にこだまする。
ディアーナ達がアジトから外に出て声の方を見ると、自分が捕らわれていた場所が山の中腹にある石造りの砦だと知った。
そして、その砦の上に剣を高く掲げたオフィーリアの姿があった。
「兵士の皆さんは除外するよう気をつけるけどー、今から建物ん中を焦がすから!
誰一人許したりしないから、お前ら狂い躍りながら消え失せてしまえ!」
オフィーリアは高く掲げた剣の先に雷を纏わせる。
美しい少女であるがゆえに、その姿は宗教画のように美しく、畏怖を感じさせ尚、恐ろしく見える。
「やめなさいレオン!」
砦の正面入り口の前に立ち、頭上に居るオフィーリアにディアーナが呼び掛ける。
「…ディアーナ…?」
ディアーナの呼び掛けに驚きを通り越して狼狽えるオフィーリアが砦の上から顔を覗かせる。
オフィーリアの顔を見たディアーナは、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「やめなさい、レオン…私は無事でしょう?
これ以上あなたの傷を増やさないで……ね?」
言い終えた途端、カクンと力が抜けたディアーナが足元から崩れ落ちる。
傍らに居たスティーヴンに地面に倒れ掛けた身体を支えられたまま、ディアーナは意識を手放した。
━━…誰なの?…元日本人の私でも、ディングレイ侯爵令嬢でもない私が居た━━
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