【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】

13#拐われましたわ。

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私は今、見知らぬ地下に囚われております。


腕には手枷が付けられており、鼻腔の奥に頭を揺らす香りが僅かに残っているようです。


ディアーナは、まだ微睡む頭で今の状況を整理してみる。


あの時

レオンハルトをノックアウトした後、ダウンしたレオンハルトを道端に放置したままディアーナが武器屋を探して歩き出した。


慌てたスティーヴンがレオンハルトを気にかけながらもディアーナを追って走って来た。


レオンハルト殿の所に戻ろう、あんな変態はゴメンです!そんなやり取りをしている時に


「やめて!誰か助けて!」


ハスキー気味な女性の声がした。

スティーヴンとディアーナは声のした裏通りの方へ駆け付けた。

少女がゴロツキに囲まれていたのでスティーヴンが助けに入った。

ディアーナは後ろに下がり、その後の記憶が途切れている。


「…なるほど、理解したわ…女性が囮で最初からわたくしが狙いだったのね。」


目の前には太腿あらわにスカートをたくしあげ足を組む、ゴロツキに囲まれていた少女が居た。


「へっ!強がってられんのも今の内だぜ!お前の連れも、今頃血まなこになって、お前を探してるだろうけどよ。」


思った以上に野太い声を出す、目の前の少女を凝視する。

あらわになった太腿からすねにかけ、毛が見える。

よくよく見ると薄化粧の下、鼻の下が薄ら青い気がしなくもない。


「……男…?……意外とオッサン?」

「オッサン言うな!まだ若いわ!」


少女もとい、女装したオッサンが声を荒げる。

「お前、自分の立場分かってんのか?今から売られるって!」

「はぁ…そうね…何と言うか…今は、私の事より一緒に居た彼の方が気の毒で…。」

「はぁ?」


━━━オフィーリアといい、目の前のオッサンといい、女装した男に騙され続けた殿下のメンタルのが心配だわ━━━


コンコン


石造りの部屋に扉をノックする音が鈍く響く。


「マージさん、声が大きいですよ…それと、かしらが呼んでます。」

部屋に入って来たのは二十歳位の青年で、この世界では見た事の無い、黒髪に黒い目をした、どこか懐かしさを感じる風貌をしていた。


「あぁ?じゃあ新入り、お前がこの女見張ってろ。」


女装したオッサン、もといマージとやらが部屋を出て行き、部屋には新入りと呼ばれた青年とディアーナの二人きりになった。


「まさか、こんな田舎町で王都の姫さんが手に入るとは思わなかったよ、上玉中の上玉だもんな。」

黒髪の男はディアーナの方に背もたれを向けて木の椅子を置き、背もたれ部分に両腕をのせ顎を乗せた。

その顔はなぜか眉間にシワが寄り、苦悶に近い。

「あら、金蔓が見つかったような言い方の割には嬉しくなさそうね?王都に居らした事があるの?
貴方はわたくしを知ってらっしゃるのね?」

コテンと首を傾け、男の顔を覗き込むようにすると、黒髪の青年はジィィっとディアーナを見て大きい大きい溜め息をついた。


「俺の知っていた姫さんと違う…何てゆーか…理想と現実の違いが…。」

「何をおっしゃるの?王都で見たわたくしと何が違うと?」

「王都であんたを見掛けたのはたまたまで…護衛や侍女をはべらせて馬車から降りる所だったかな…
何て言うか…住む世界が違い過ぎて…腹が立って、滅茶苦茶汚してやりたいと思う程キレイだった。」

「憧れと憎しみは紙一重的な事かしら?今からわたくしを滅茶苦茶傷付けたいと思ってらっしゃるの?」

特に怯える風でも無く、先程とは反対側にコテンと首を傾けるディアーナに、青年が引きつった。

「…だから…だからな!その、あざとさが!て言うか今さら令嬢っぽさを演じるな!!
普通、令嬢ってのは、男をぶん殴ってのしたり、人をオッサン呼ばわりしねーから!
お前この状況怖がりもしないで何なの!?頭おかしいの!?」


随分とひどい言われようだ。


「見てらしたの。
金髪の変態を兄直伝のアッパーでマットに沈める所を。」

「あ、あっぱー?まっと…?って何だ?兄直伝?つかディングレイ家に嫡男なんか居たか?」


「うん、私ももう意味が分からなくなりましたわ。」


なんだろうアッパーって…しかも兄直伝て…??


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