【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。

DAKUNちょめ

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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】

10#影の存在。魔獣現わる。

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森の入り口らしき場所で乗り合い馬車を降り、荷物を肩に掛ける。

レオンハルトとスティーヴンは腰に剣を携え、少し大きめの荷物を背負う。

私は小さめの肩掛けカバンを持って歩き始める。


「この先、簡易テントとか大荷物が増えるかも知れないし、馬も調達したいな。」


レオンハルトの呟きに頷く。


「そうですわね、わたくしも馬に乗る練習がしたいですわ。」

「ディアーナは俺が横抱きで一緒に……」

「わ、た、く、しが!乗る練習がしたいのですわ!一人で!」


言わせるものですか!
レオンハルトの提案をかぶり気味に却下し、語意を強くする。


「……ソウデスネ……。」

勝った!

明らかに落ち込んだレオンハルトを尻目に、さりげなくガッツポーズを取った。





森の中をレオンハルトを先頭に、私、スティーヴンの順で進んで行く。

そして、気配は無いがもう一人同行者が居るようだ。


王都の門にぞろぞろと来た王宮の護衛兵はぶちギレしたレオンハルトが全て帰らせたのだが、王宮との伝達役である「影」と呼ばれる者が居る事だけは黙認したようだ。


「王子サマは影が居る事を俺にバレてないと思ってるみたいだから、ディアーナも気付かない振りしてあげててな。」

旅に出てすぐにレオンハルトに耳打ちされた。


━━━だったら私にも言わなければイイじゃない!

言われたら気になるでしょうよ!━━━


レオンハルトいわく、その影さんもレオンハルトがその存在に気付いている事を知っているらしい。


「オフィーリアになっていた事といい、殿下は…貴方に遊ばれてますのね…。
今更ですけど、殿下が気の毒で仕方ありませんわ…。」


王都を出る前にそんなやり取りをした。


馬車を降り、徒歩で森の中を進みながら見付けられる筈のない影の姿を無意識に探してしまう。


チラリと後方に目を向けるとスティーヴンと目が合った。


「な、何だ?」

急に目が合ったのを驚いたのか、スティーヴンがしゃくるようにヒュっと息を吸った。


「いえ、何でも御座いませんわ。」

ニコリと令嬢の笑みを浮かべ誤魔化し、すぐにレオンハルトの背を追って前を向いた。


一瞬、スティーヴンの顔が赤くなったのを見た気がしたが気のせいであろう。





「今から行く村はな、家畜の羊が魔物化したらしい……巨大化して人を襲おうとしたようだ。」


真剣な面持ちで話すレオンハルトにディアーナとスティーヴンは固唾を飲む。


「魔獣の存在は知っているが、私は見た事は無い…。
巨大化って…どの位…。」


不安げにスティーヴンが尋ねる。


「頭の高さが5メートル程の高さにあるらしい…。
瘴気を浴びて巨大な魔獣と成り果てたようだ…。
村の中で暴れて人に襲い掛かった。」


神妙な顔で答えるレオンハルトは、ディアーナの方に視線を移すと、不安げなディアーナに悪戯めいた笑みを浮かべる。


「で、角も超巨大化したもんだから、一歩駆け出した途端その重みで地面に頭がめり込んで埋まったらしいぞ。」


「「はぁ?!」」

ディアーナとスティーヴンの声が被る。


「メェーって鳴きながらブッ倒れたんで、そのまま倒して食ったらしい……まぁちょっとした羊焼き肉祭りになったそうだ。」


いや、それ何の報告だよ!被害報告じゃなかったの!?


「だからもう魔獣は居ないし戦う事も無いんだけど、瘴気の発生源だけは浄化しとかないとだし、それは俺しか出来ないからな。」


「からかうのも、いい加減にして下さいまし!!」


悪戯が成功したかのように声を殺して笑うレオンハルトに、真剣に聞いて損した!と、怒りに任せて近くにあった松ぼっくりのような乾いた木の実を投げつける。


「はははっ!悪かったって!」


レオンハルトは投げ付けた木の実を左手でキャッチすると、クスクス笑いながらその木の実を擬人化した人形のように扱い、ふざけた声音を出す。

「ゴメンよーだからオイラを投げないでクレヨー!」


━━━え…?こんな会話…前もしなかった?…ゲームの中で見たのかしら…?…
レオンハルトはゲームに出なかったわよね…じゃあ、誰と?
何だか…もっと幼い日の……━━━



「まったく、ふざけた話だ!これが神の御子のやる事か!」


憤慨するスティーヴンの声に思考が途切れた。

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