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第一章【悪役令嬢ディアーナに転生】
2# 悪役令嬢ならぬ、黒猫令嬢。
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「絶対ハマるから、やってみて!」
親友のミァちゃんから渡された乙女ゲーム
『聖女の祈り―月の輝く夜の帳に―』
は初心者でもやり易い、王道乙女ゲーム。
プレイヤーが操作する主人公のオフィーリアは子爵令嬢であり、この世界では稀有な癒しの魔力を持つ少女である。
緩くウェーブのかかった金色の長い髪に翡翠色の瞳を持つ美しい少女であるオフィーリアは、この世界を救う聖女であるらしい。
前半のプレイでは学園に通いながら運命を共にするパートナーを選び、後半のプレイでは選んだ攻略対象者と世界を救うために旅をする中で聖女として目覚めつつ、攻略対象とのロマンスを育むという…
ある意味、定番と言えば定番の内容となっているそうだ。
親友のミァちゃんが奨めてくれたのだから、とやってはみたものの、実はそんなに興味が無かった。
そもそもキラキラ耽美系のキャラクターが苦手だ。
悪役令嬢は侯爵令嬢ディアーナ。
夜空のような深い藍色の長い髪に金色の目をした美少女。
その見た目からゲームファンの間では黒猫令嬢とも呼ばれているディアーナ。
一部のファンには人気があるらしい。
せっかく貸してくれたのだから、1人位は攻略しとこうかと選んだ第一攻略対象の王子スティーヴン。
神秘的な銀色の髪に紫水晶の瞳を持つスティーヴンは、ゲームの舞台であるラジェアベリア国の第一王子である。
ゲームが始まると他の攻略対象より早く出会い、悪役令嬢絡みも含めイベントも出し易い。
実直で真面目で素直で…思い込み激しいというか惚れ易い…
ゆえに親密度を上げ易く、サクサク進んだ私は卒業ダンスパーティーでの断罪イベントまで見た。
「やっと前半終わるか~…」
ミァちゃんの説明によると、断罪イベントの後に超萌えるスチル(月明かりの下、バルコニーでスティーヴンが主人公を抱きしめるらしい)が入り、ゲーム後半はスティーヴンと二人で世界を救う旅に出てイチャイチャして親密度をMAXにすれば、帰国後に結婚式を迎え王太子妃となるらしい。
正直な所、少女漫画的なキャラクターに愛着はわかず、攻略しやすいスティーヴンとエンディングを迎えたならばゲームを返そうと思っていた。
断罪イベントの後に超萌えるらしいスチル………は無かった。
真っ黒な画面に白抜きの文字で淡々と紡がれる文字……
『こうして婚約破棄を言い渡された侯爵令嬢ディアーナは、国を出た』
『国外追放とはならなかったが※※※ディアーナと共に旅に出た※※※はディアーナの※※※として、ディアーナの※※※であった※※※※と※※※※※※※※』
黒い画面いっぱいに埋められた白抜きの※に思わず声が出る。
「は?バグ?なにこれ!しかもオフィーリア無視してディアーナの説明?
…ディアーナって、ゲーム後半出ないんじゃなかったっけ?」
焦ってミァちゃんに連絡をしようとスマホを手にするものの、めんどくさくなりスマホを持ったままベッドに横たわる。
「明日、学校で直接聞こう……眠いし…」
六畳間のベッドの上で私は眠りについた。
眠りから目が覚めた私は、わたくしの中にあった。
わたくしとして生きてきた侯爵令嬢としての16年の記憶と共に、この世界がゲームだと知っている私の断片的な記憶がある。
オフィーリアとしてプレイしていたゲームでは、ディアーナから陰湿ないじめを受けていたのだが、ディアーナとして生きてきたわたくし自身の人生において
わたくしが、誰かを傷付けた事など無いと断言出来る!
だけど……
私は今、侯爵令嬢ディアーナとしてではなく、悪役令嬢ディアーナとしてオフィーリアとスティーヴンの前に居る。
どんなに潔白を訴えた所で、この状況は断罪、婚約破棄というゲームの強制イベントとして揺るがないのだろう。
「……よく分かりませんけど……分かりましたわ……殿下のお言葉に従います。」
婚約破棄を受け入れた私は、目の前の二人にカーテシーをするとダンスホールのドアに向かった。
ゲームの中のディアーナは泣き叫びスティーヴンに縋りつこうとし、回りに取り押さえられるのだが。
━━さっさと屋敷に帰って国を出る準備をしよう。
婚約破棄された上に国外追放まで言い渡された娘など、お父様も必要ないだろうし…
まぁゲームの中でも、そんなに家族仲は良くなかったしな━━
回りからヒソヒソと聞こえる揶揄の声。
━━うん、いじめを責められて、いたたまれくなったから逃げる訳ではないわよ?
今からあの二人、バルコニーに出てイチャイチャするのよ!
スチルならともかく、リアルに見たくないでしょそんなの━━
「オフィーリア、私の妻にになってくれないか?
君に婚約を申し込みたい。」
背後から聞こえるスティーヴンの声に、早いな!と脳内でツッコんでみたりする。
そこはもう、はいって答えてラブラブモードに入ればいいんじゃない?もう、好きにしてくれればいいよ。
ダンスホールの大きな扉が開かれ、廊下からの冷たい空気が足下から這い上がりヒヤリと頬を撫でる。
扉をくぐろうとした私の背後からオフィーリア嬢が声を掛けてきた。
「ディアーナ様!!お待ちになって下さい!婚約破棄なされたのですよね!?」
嫌な確認をするわね……わたくしの中で、私が苛つく。
親友のミァちゃんから渡された乙女ゲーム
『聖女の祈り―月の輝く夜の帳に―』
は初心者でもやり易い、王道乙女ゲーム。
プレイヤーが操作する主人公のオフィーリアは子爵令嬢であり、この世界では稀有な癒しの魔力を持つ少女である。
緩くウェーブのかかった金色の長い髪に翡翠色の瞳を持つ美しい少女であるオフィーリアは、この世界を救う聖女であるらしい。
前半のプレイでは学園に通いながら運命を共にするパートナーを選び、後半のプレイでは選んだ攻略対象者と世界を救うために旅をする中で聖女として目覚めつつ、攻略対象とのロマンスを育むという…
ある意味、定番と言えば定番の内容となっているそうだ。
親友のミァちゃんが奨めてくれたのだから、とやってはみたものの、実はそんなに興味が無かった。
そもそもキラキラ耽美系のキャラクターが苦手だ。
悪役令嬢は侯爵令嬢ディアーナ。
夜空のような深い藍色の長い髪に金色の目をした美少女。
その見た目からゲームファンの間では黒猫令嬢とも呼ばれているディアーナ。
一部のファンには人気があるらしい。
せっかく貸してくれたのだから、1人位は攻略しとこうかと選んだ第一攻略対象の王子スティーヴン。
神秘的な銀色の髪に紫水晶の瞳を持つスティーヴンは、ゲームの舞台であるラジェアベリア国の第一王子である。
ゲームが始まると他の攻略対象より早く出会い、悪役令嬢絡みも含めイベントも出し易い。
実直で真面目で素直で…思い込み激しいというか惚れ易い…
ゆえに親密度を上げ易く、サクサク進んだ私は卒業ダンスパーティーでの断罪イベントまで見た。
「やっと前半終わるか~…」
ミァちゃんの説明によると、断罪イベントの後に超萌えるスチル(月明かりの下、バルコニーでスティーヴンが主人公を抱きしめるらしい)が入り、ゲーム後半はスティーヴンと二人で世界を救う旅に出てイチャイチャして親密度をMAXにすれば、帰国後に結婚式を迎え王太子妃となるらしい。
正直な所、少女漫画的なキャラクターに愛着はわかず、攻略しやすいスティーヴンとエンディングを迎えたならばゲームを返そうと思っていた。
断罪イベントの後に超萌えるらしいスチル………は無かった。
真っ黒な画面に白抜きの文字で淡々と紡がれる文字……
『こうして婚約破棄を言い渡された侯爵令嬢ディアーナは、国を出た』
『国外追放とはならなかったが※※※ディアーナと共に旅に出た※※※はディアーナの※※※として、ディアーナの※※※であった※※※※と※※※※※※※※』
黒い画面いっぱいに埋められた白抜きの※に思わず声が出る。
「は?バグ?なにこれ!しかもオフィーリア無視してディアーナの説明?
…ディアーナって、ゲーム後半出ないんじゃなかったっけ?」
焦ってミァちゃんに連絡をしようとスマホを手にするものの、めんどくさくなりスマホを持ったままベッドに横たわる。
「明日、学校で直接聞こう……眠いし…」
六畳間のベッドの上で私は眠りについた。
眠りから目が覚めた私は、わたくしの中にあった。
わたくしとして生きてきた侯爵令嬢としての16年の記憶と共に、この世界がゲームだと知っている私の断片的な記憶がある。
オフィーリアとしてプレイしていたゲームでは、ディアーナから陰湿ないじめを受けていたのだが、ディアーナとして生きてきたわたくし自身の人生において
わたくしが、誰かを傷付けた事など無いと断言出来る!
だけど……
私は今、侯爵令嬢ディアーナとしてではなく、悪役令嬢ディアーナとしてオフィーリアとスティーヴンの前に居る。
どんなに潔白を訴えた所で、この状況は断罪、婚約破棄というゲームの強制イベントとして揺るがないのだろう。
「……よく分かりませんけど……分かりましたわ……殿下のお言葉に従います。」
婚約破棄を受け入れた私は、目の前の二人にカーテシーをするとダンスホールのドアに向かった。
ゲームの中のディアーナは泣き叫びスティーヴンに縋りつこうとし、回りに取り押さえられるのだが。
━━さっさと屋敷に帰って国を出る準備をしよう。
婚約破棄された上に国外追放まで言い渡された娘など、お父様も必要ないだろうし…
まぁゲームの中でも、そんなに家族仲は良くなかったしな━━
回りからヒソヒソと聞こえる揶揄の声。
━━うん、いじめを責められて、いたたまれくなったから逃げる訳ではないわよ?
今からあの二人、バルコニーに出てイチャイチャするのよ!
スチルならともかく、リアルに見たくないでしょそんなの━━
「オフィーリア、私の妻にになってくれないか?
君に婚約を申し込みたい。」
背後から聞こえるスティーヴンの声に、早いな!と脳内でツッコんでみたりする。
そこはもう、はいって答えてラブラブモードに入ればいいんじゃない?もう、好きにしてくれればいいよ。
ダンスホールの大きな扉が開かれ、廊下からの冷たい空気が足下から這い上がりヒヤリと頬を撫でる。
扉をくぐろうとした私の背後からオフィーリア嬢が声を掛けてきた。
「ディアーナ様!!お待ちになって下さい!婚約破棄なされたのですよね!?」
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