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それは魚拓ではなく、尻拓。

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王城の広大な敷地の中、大浴場のある施設は城を出て少し離れた場所にある。



この浴場は普段、上位貴族以上の者にしか利用が許されておらず、下位貴族以下の者が利用出来るのは何らかの功績をあげた際の労いのひとつとして振る舞われる場合のみだ。



そして一日置きに浴場を清掃して新しく湯を張るのだが、新しい湯を張った浴場を利用出来るのは皇帝陛下のみである。



清掃日の夜から翌日の朝までキリアン以外の誰も大浴場施設に近付く事は出来ない。



キリアンは入浴の際、身体を洗わせる者を必要としない為に浴場には一人で向かう。

大浴場の付近を警らする兵達にもあまり近付くなと距離を置かせている。



警護の事を考えれば不安ではあるが、キリアンは堅固な我が城の敷地内に賊が入る隙などある筈も無いと考えていた。



それはキリアンが、セドリック率いるヴィーヴル国の暗部の者たちの活躍も、ガイン率いる王城の優秀な兵士達の警備をも信頼しているからこそだった。



だが暗殺者を城の敷地内に招き入れた裏切者は、キリアンが信頼を寄せる者たちを欺き、彼らを愚弄した。



━━そのような事を許せるものか。



「と、思っているのは確かなんだけど…。
ガインをここに連れ込めたのは、暗殺者のお陰でもあるんだよな。」


キリアン皇帝陛下が入浴する際には人払いをしなくてはならない。

これはキリアンが幼い少年であった皇太子の頃からの取り決め事で、城に身を置く全ての者に周知された決まり事であり、ガインもそれを守り続けてきた。


そんな真面目で堅物のガインは、皇帝本人が自ら一緒に風呂に入ろうと言っても、規則を破る事を拒む男である。


暗殺者の存在を口実にガインを大浴場の建物内に連れ込む事には成功したキリアンだったが、一緒に入浴したいとの要望はやはりガインに却下された。


護衛騎士の鑑であるガインは、剣を携え脱衣所で仁王立ちになったまま、辺りを警戒して頑なに浴室には入ろうとしない。

キリアンはガインに、せっかくなんだから一緒に風呂に入ろうと何度か言ったのだが



「はぁ!?また入浴中に暗殺者が来た時に備えて俺に警護して欲しいって言ったんだろ!?

俺まで全裸になって剣も持たず風呂に入ったら、警護する意味が無いじゃねぇか!!緊張感が足りん!

何、気の抜けた事を言ってやがるんだ!」


と、ガインに一蹴されてしまった。


仕方なく、一人寂しく大浴場の大きな浴槽に身を沈めたキリアンだったが、ガインとの愉しい入浴を諦める事が出来ない。



「さて…どうしたもんか……。
師匠と一緒に風呂なんて、子どもの時以来だし……

いや、野外で修行した際の湯溜まりや川での水浴びなんか入浴の内に入らないか。」



━━だったら、これが初めての経験って事になるんだ?俺のまだ知らない湯上がりしっとりホカホカなガインを見るチャンスじゃないか。

このイベントは絶対に逃せない。━━



キリアンが思うに、外部から城内に侵入して、の暗殺者は恐らくもう現れない。

キリアンはそう確信している。


今回の皇帝暗殺未遂事件を誰よりも重く受け止めていたのは、実はセドリック率いるヴィーヴル国の者達だった。


それはガインを始め、この国の者達が敬愛する皇帝陛下の身に命の危機があった事に対する衝撃や、敵に対する憎しみや怒りなどの感情とは全く別物だ。



ヴィーヴル国の者は、城の内外に手引きした者が居たからとはいえ暗殺者に城内への侵入を許し警護対象であるキリアンへの暗殺未遂までも見逃してしまった事で、依頼を受け隠密の世界に身を置く者としての矜持をひどく傷付けられた様だ。

要人警護や情報収集、果ては暗殺なども含め裏の世界での活動をビジネスとして承っている彼らにとって失敗は、信用を著しく落とす事となる。



そんな彼らを率いるセドリックが、そんな失態を再び許す筈がない。

ゆえに、セドリックは裏切者が誰かをすぐに導き出し、キリアンにだけ伝えて来た。



「この際、宰相補佐のマンダンなんかどーでもいーんだよ。泳がせとけば。
あんな小物、いつでも首を刎ねる事が出来るし。

それよりガインと風呂………。」



ガインは、昨夜キリアンが部屋に訪れなかった事ですこぶる機嫌が悪い。

本人も気付いてはないが拗ねているらしく、キリアンが何か言葉を掛ければ、トゲを付けて返して来る。

大人げ無い子どもの様な態度を取るガインが、余りにも純でキリアンには尊くて堪らない。



━━ああ…ガインがあんなにも俺を待ち侘びていてくれていたなんて……

本当は昨夜ガインの部屋に行って、朝まで寝る暇も無いほどガインの女のコの孔を貫いて掻き回して…。

互いの出した体液塗れになったガインがメス落ちするまで愛してあげたかったんだよって……身をもって伝えたい。━━



「……………ヤバい。想像した。かなり熱い………。」



熱い湯に身を浸けたまま、自身の頭の中に描いたガインの姿に興奮したためか、キリアンはのぼせかけてフラフラと湯から身体を出した。

クラリと少し目が回るような感じがあり、まともに立ち上がれない。

浴槽の縁に座り、ぼんやりと時間を費やして熱を持った身体を休めているキリアンの耳に、脱衣所の方からガチャガチャと金属音を鳴らしながら走って来る足音が聞こえた。



「急に静かになって……!!どうした!何があった!!!」



のぼせかけたキリアンは、全裸のままで大浴槽の縁に座り、膝から下だけがまだ湯舟に浸かった状態で気だるそうにガインを見た。



「おい、どうした!キリアン!
大丈夫か!?のぼせちまったのか?」



「あつっ…!ガインの胸当て熱い…!」



心配そうにキリアンに駆け寄ったガインが、キリアンの身体を湯から引き上げようとキリアンの身体を背後から抱き上げようとした。

だがキリアンは、ガインの身に着けた鉄製の胸当てが熱いからとガインを拒絶するように身体を押して離す。



「はぁっ…はぁ…クラクラする…気持ち悪い…」



「のぼせたんだって!だから湯から一回出ないと…」



ガインは焦った様にベルトを緩め、胸当てや手甲等、鉄製の防具を外していった。

防具の内側に着込んだシャツやベスト姿になったガインが再びキリアンに触れようとするが、キリアンはフルフルと首を横に振りガインが触れるのを拒否した。




「駄目、触らないで…。
ジメッと湿ってムワッとして…
ガインの濡れた服の肌触りが気持ち悪い……」



「だったら服なんざ、脱ぎゃぁいいだろ!
涼しい場所に連れてくから、少し堪えてくれ!」




体調不良を訴えるキリアンに焦ったガインは、一刻も早く安静に出来る場所に急がねばと、バリィッと破る様にして上半身を纏う衣服を脱ぎ捨てた。

上半身裸になったガインは、ダラリと脱力したキリアンの身体を湯から救出する様に引き上げ、勢い良く抱き上げた。



「もう少しの辛抱だ!脱衣場の長椅子に寝かせるから……!」



姫君を救いに来たナイトの様なガインの胸に抱き上げられたキリアンは、救われた姫君がナイトを慕うように、ガインの首に両腕を回して抱き着いた。



「師匠……ねぇ、ガイン……ありがとう、もう大丈夫。

かなり楽になったから……。」



誘導され、まんまと肌を晒したガインの首に抱き着いたままキリアンが、ガインの耳元で甘ったるい声音を出して囁き始める。

首に回した両手の指先でガインのうなじや首筋を擽り、ガインの耳に甘い声を流し込みながら、肉厚の耳たぶを柔らかな唇で食んだ。



「ッッぷヌん!!ひゃ…が!」



「もう大丈夫だよ……気持ち悪いの治ったから。

ガイン、もう下ろして……。」



変な声を上げたガインは一瞬ガクッと膝から脱力し、抱き上げたキリアンを腕から落としそうになったが何とか持ち堪えて、キリアンを抱き上げままの態勢で腰から力が抜けたように、ヘナヘナと浴場の床にへたり込んだ。


床にへたり込んだガインの膝に座った状態の全裸のキリアンは、放心状態で脱力中のガインの顔を覗き込む。



「心配してくれたんだよね……ありがとう……。」



「……心配してくれて、ありがとうだ?はぁあ?
…陛下の身を心配しないワケ無いだろうが。」



脱力状態で項垂れていた顔をゆっくり上げて、ガインは苦虫を噛み潰したような顔でキリアンを睨んだ。



「うん…そうだね…皇帝陛下を心配するのは当然だよね……。
皇帝としてではなく、俺の事は……

昨日、師匠との約束を破ったから…もう、嫌われたのかなと思って…。」




苦虫を噛み潰したようなガインの表情が、シャックリをした直後の様にヒクッと強張った。



「な、何で俺がキリアンを嫌いになるんだよ!
き、嫌いになるとしたらキリアンが俺を…だろうが!

俺に!…ぁ…ぁ…ァぁきた…とかな?」



「飽きた!?俺がガインに!?
有り得ない、絶対に無い!そんな事!」



「じゃあ何で昨夜は部屋に来なかったんだよ!!
来るって自分で言っていたクセによ!

俺が、ミーシャの事ばっか大事そうに言ってたから…
そんな俺に呆れたんじゃねぇのかよ!!」




━━か……かわい……可愛い!!師匠可愛い!

なんて可愛いんだろう…ムクレた顔までして…!━━




ガインの苛立ちが、キリアンの気持ちが自分から離れたかも知れないとの不安を払拭するための強がりであると知れば、ガインの心の中に自分への想いがいかに深く根付いたかを知る事が出来る。

皇帝としてではなく、愛する伴侶として失いたくないと思ってくれているのだと知る。

その喜びは計り知れないほど大きい。



キリアンはガインの頬を両手で挟むように持ち、ムスッと真一文字に結ばれた唇を食む様に自分の口を重ねた。




「はあ!?こんなトコで何しやが…ン…くふ…ちょ、待て…ん!」




文句を言う為に開かれた唇を、すぐに自分の唇で塞ぐ。

言葉を紡ごうとして立ち上がる舌先を搦め捕り、自分の味を思い出させる様に、キリアンは舌先を絡ませながら自身の香りと味をガインの口腔に送り込んだ。




「ぷぁ!ば、バカか!…こんなトコで何を…
誰か来たら、どうすんだよ!」




ガインは、膝の上に横向きで座るキリアンの身体を押し離そうとキリアンの肌に触れようとするが、水滴を滴らせた全裸のキリアンの肌は、手を触れてはならない繊細な彫刻の様で、人離れした美しさを持つキリアンに触れる事を、ガインが躊躇ってしまった。


触れられない為にキリアンを振り払う事が出来ないガインは結果、ここぞとばかりに好き勝手な行為をするキリアンを許す事になった。


ガインの唇の感触を愉しむように角度を変えて深く、浅く、唇を重ねては呼気を交換する。

耳たぶやうなじを指先でくすぐり、爪でカリッと優しく掻いた。



「俺の入浴時間には誰も来ないって知ってるだろ?
施設の近くにも誰も居ないしガインと俺の二人きりだ。

まぁ、人が来るとしたら暗殺者くらい?」



━━ガインと二人きりの蜜時を邪魔する様な賊なんざ現れたら、ガインより先に俺が瞬殺するけど。━━



「ふぁっ…!!そ、その、暗殺者が来たらどうすんだよッ…

お前を助けたい一心で、防具と一緒に思わず武器も手放しちまったが……」




ガインとキリアンの視線が同時に、ガインの脱ぎ捨てた防具と共に置かれた剣に注がれた。

再び剣を手にしようとするガインの意識を自分に向けようと、キリアンはガインの膝上に座ったまま啄む様なバードキスを続ける。




「いや、大丈夫。もう暗殺者は来ないよ。
何しろ叔父のセドリックの指示を受けた優秀な部下が城の外周を固めているから。」



「そうか…って、暗殺者は来ない?

いや、お前…賊が来たらヤバいってんで、俺に入浴中の警護を任せたんじゃないのか?

心配させるだけさせといて、どういう事だ!

セドリックの部下とやらが優秀ならば、俺がここに来る意味なんか無かったろうが!

叔父のセドリックだと…!?……あ、セディの事か。」



ガインの脳内で始まった思考リレーは、キリアンに騙された、との腹立たしさからスタートし、セドリックって誰だ!の思い出せない苛立ちのせいで怒りのピークを迎えたが、ポロッと思い出せばセディの事だったと、スッキリとしたせいか苛立ちもストンと急に収まった。



逆に、ガインの口からセディの名を聞いたキリアンの中に沸々と嫉妬心が芽生える。 


ガインがセディと呼ぶ男は、セドリックの芝居だったとは言え、ガインに抱かせろと迫った間男だ。




「ガインはさぁ…互いに肌を晒して身を寄せ合ってんのに、なんで俺じゃない男の名前を口に出すの?」




「……あ?……お前が自分から先にセドリックって名前を出したんだろうが。
馴染みのある名前の方を口にしただけじゃねぇか。」



「それでもイヤだ。
ガインの口から、その名を聞きたくない。

昨夜から、ずっとずっと我慢していたガインとの逢瀬を、今やっと出来ているのに。
何で俺以外の男の名前を呼ぶの。」



不機嫌そうに眉をしかめて濡れた前髪を掻き上げるキリアンは、無愛想な表情をしていても様になるほど整っており美しい。

キリアンはガインの膝から下りると、浴場の床に尻をついたままのガインの首に腕を掛け、グイグイと力任せにガインの身体を後方に倒しに掛かった。

先ほどまでの、救われた姫君が首に腕を回して、しなだれ掛かるよう抱き着くのとは全く違う力わざだ。



「お、お、おい!こら!おまっ…!つよっ!!

昨夜から我慢していたって何だ!?こらっ…

あーーー!!!」



浴場の床にガインが背をつけて倒れ、ゴロンと転がった拍子に両足が上がり、トラウザーズを履いたまま床についていた尻が上がった。

トラウザーズは浴場の床についていた尻の部分だけお漏らしをしたかの様に濡れて猿の尻みたいになっており、大きな楕円を2つ合わせたようなガインの尻拓が現れた。



「あまり無理させたくないから、昨夜は休んで貰おうと我慢したんだけど…。

何だかもう、俺の方が色々と無理。

もう俺以外の名前なんて口から出なくなるほど、ここ、ほじくるから。」



「は!?え!?ちょっ!どこ押してんだ!」



ガインのトラウザーズに現れた尻拓の中央に、キリアンがグッと親指を押し付けた。

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