【R18】熊の様な45歳の近衛隊長は、22歳の美貌の皇帝に欲しがられています。

DAKUNちょめ

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女神の様な皇帝は、女性の立場だと思われがち。

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ここベルゼルト皇国は、先代皇帝が崩御した後に遺された二人の皇子が皇帝の座を巡り争いが始まり、それは国を二分した大きな戦争を起こした。


先代皇帝と第一王妃との間に生まれた第一皇子キリアンと


先代皇帝と第二王妃との間に生まれた第二皇子ケンヴィー



それぞれを時期皇帝にと推す者達によって、他国をも巻き込んでの戦争となったが、それは第一皇子キリアンを推す者達の勝利となった。


第二皇子は捕らえられる前に国から脱出し、行方が知れない。

第二皇子の側についていた主だった者は捕らえられたが、処刑は第一皇子の命を直接狙った者のみにとどめ、他の者はキリアンの温情により、命をとられる事は無かった。



そして、戴冠式━━━


新しい皇帝キリアンの頭に宝冠が載せられる。


「……キリアン殿下……いや、キリアン皇帝陛下……お父上に似て、ご立派なお姿で!!」


キリアンの姿に感極まって目元を潤ませたのは、王宮近衛兵、隊長を務めるガイン。

ガインは2メートルに届くかに見える程の大きな体躯と、ガッシリとした鎧の様な筋肉を身に纏い、浅黒い肌に黒いゴワゴワした髪を持つ、熊だ、野獣だと揶揄される男だ。


年は45歳、伯爵家出身であるガインはキリアンの父である先代皇帝とは幼い頃から仲が良く、22歳のキリアンの事も我が子の様に可愛がって来た。

キリアンの剣術を含む武芸の師匠でもあり、キリアンの側近として警護にもあたっていた。


「師匠!」


宝冠を頭に載せたまま、キリアンがガインに駆け寄ろうとする。


「殿下っ…いや、陛下!!まだ式は終わってません!!こっち来んな!いや、来てはなりません!!」


戴冠式に参列している者の中には、ガイン同様に古くから城に務めていた者も多く、ウサギの様に小さな皇子様が、大きな熊の後を懸命について行こうとする姿を長年見て来た者もいる。


そんな者達からは押し殺した笑い声が漏れる。


「後から!後から話を聞きますから、今は式に集中して下さいよ!!」


金色の髪に、紺碧の瞳。

神に愛されて、この姿を与えられたかの様に美しい青年は、花が舞い散る様な笑顔を見せて式に戻った。

式に参列している者達の溜息が聞こえる。

それほどまでに、キリアンは美しい。




戴冠式が終わり、宮殿敷地内の謁見の間のある建物に移動したキリアンはバルコニーに姿を現し民衆に挨拶をする。


戦争が終わり、新しい国王となった美しい青年に歓声が上がる。


中には


「あんな女みたいな男が皇帝なんて、やっていけるのか?」

「あんな綺麗な顔してたんじゃ、嫁いで来る姫さんが居ないんじゃないか?」

「いや、皇帝がこっちなんじゃないのか?女役。」


そんな声も聞こえる。

戴冠式の後に城から出たガインは、バルコニーに出るキリアンを群衆に紛れて狙う輩が居ないかと自らも群衆に紛れて警戒していた。


そんな中で聞こえる、キリアンに対する冷ややかな声。


だが、それらを不敬罪だと捕らえる事は出来ない。

何より、キリアン自身がそれを認めなかった。



「本人の居ない所で愚痴を言うのは仕方ないだろ?母上だって、父上の居ない所ではよく父上の悪口を言っていたもんだよ。あの、バカ旦那!とかね。」



そんな器の大きな所も、ガインにとっては生涯の忠誠を誓うに相応しい君主であるとキリアンを認める要因の一つだ。


ガインがバルコニーを見上げると、キリアンが部屋に帰る所だった。

何事も無く民衆への謁見も済み、部屋に帰るキリアンがチラリと群衆の方を見た。


バルコニーを見上げたガインと目が合う。

キリアンがフッと口元に笑みを浮かべる。


「……ん?…まさか、俺を見つけたのか?この大勢の中から……」


まぁ、確かに……俺はデカイし、目立つわな……とは言え、スゲーよなぁ。


変に感心したガインが頷いて城に戻る頃には日もかげり、広場には人もまばらになり夕陽が城を朱く染めていた。

夜には城にて祝宴が催されたが、キリアンは席を立った。


「すまない、先に休ませて貰うが皆はそのまま楽しんでいてくれ。明日から忙しくなるからな、今宵は存分に新しい皇帝の私の誕生を祝っていて欲しい。」


席を立ち私室に向かう皇帝に、側近であり警護を任されているガインは付き従う。


「師匠、私の部屋で飲み直しましょう。師匠とサシで飲むのが私の夢の一つだったんです。」


「師匠はお止め下さい、陛下……。陛下の夢が、私とサシで飲む事だとは知りませんでしたが。」


「夢の一つです。私の夢は、他にまだまだありますので。」


そう言って笑うキリアンの横顔は、女神の様に美しかった。

決して女顔で女々しいというワケではないが、姿形だけをなぞらえて絵画や彫刻にしたならば、女性と見紛うかも知れない。


思いたくはないが、ふ、とキリアンが女性の立場で男性を蓐しとねに誘う…

という架空の光景が容易に想像出来てしまう。


「………はは、馬鹿な…。」


ガインは小さく呟いて、皇帝の私室のドアを開けた。




かつて、この皇帝の私室は先代皇帝であるグレアムの私室であった。

寝室も兼ねた広い室内には大きなベッドも置かれており、食事も部屋で取れるようテーブルと椅子も揃っている。


ガインは、幼なじみであったグレアムに招かれ、この部屋でグレアムと酒を酌み交わしながら、せがまれて小さいキリアンを膝に乗せてツマミの干したフルーツ等をキリアンの口に運んだりしていた。


「懐かしいな…この部屋。そうか、今日からはキリアンの……いや、キリアン陛下の部屋になったのですね。」


「師匠の膝に乗せて貰って、干した果物を食べさせて貰うのが大好きでした。あの時に私が師匠に一緒にお酒を飲んでと言ったの覚えてます?」


キリアンはテーブルにグラスや酒瓶を並べ始めた。


「陛下!そのような事は俺…私が致します!陛下は座ってらして下さい!」


「自分のしたい事は自ら動く、人任せにしない!師匠の教えでしょう?それより、覚えてます?私が一緒にお酒を飲んでと言った時の事を。」


ガインの手を遮ってキリアンはテーブルに干したフルーツや木の実、チーズ等をてきぱきと並べていく。

ガインは、この優秀な弟子が言い出したらきかない意地っ張りである事も思い出した。


「すまんが、覚えて無いな……。師匠はよして下さい、陛下。」


「15年前の話ですからね。あの時、師匠は私に…一緒にお酒を飲むのは、キリアンが皇帝になった時だな、と言ったんですよ。」


皇帝陛下に敬語を使われる事にばつの悪さを感じると共に、長く親子の様に、師弟の様に接して来た二人は、今の話し方に慣れない。


「二人きりの時位、いつもと同じで良くないすかね?師匠。」


「キリア…陛下、お前は見た目に反して口だけは汚いんだから、今の内に直しておかねーと…あー…。はは…」


口の悪さはずっと一緒に居た自分のせいか、とガインは諦めにも似た渇いた笑い声を出して頭を掻いた。


「仕方ないな、お互いすぐには変われんみたいだ。」






ガインとキリアンはテーブルを挟んで向かい合わせに座り、互いのグラスに酒を注ぎ合う。


「師匠が居てくれて、本当に助かったんですよね!今回の戦争!」


「戦争なんて、起こさないに越した事は無いんだ。王太子を決める前にグレアムが急逝なんかしちまうから…。仕方無くだ、仕方無く!」


そして、第二皇子を押した派閥はこの戦争に勝っていたらキリアンの側についた国を隷属国として扱うつもりでいた。


ガインは第二皇子のケンヴィーにも剣の稽古をつけた事があった為、かつての教え子と対立するのは避けたかった。

戦に参戦したくなかったが、一軍人が私的感情を押し通す事は難しく、ケンヴィー側が参戦国を隷属国とすると聞いてガインはキリアンについた。


「優しいですもんね、師匠は。」


「何が優しいもんか。」



新皇帝を祝う酒の筈が、愚痴を溢す酒の席となってしまった。

愚痴と共に酒が進み、やがてガインに睡魔が襲って来る。


「師匠、お酒強いんじゃなかったでしたっけ?」


キリアンがガインの肩に手を置いて顔を覗き込んで来る。

キレイな金糸の髪の向こうに吸い込まれそうな紺碧の瞳。


女神の様だ……………


ガインはそのまま眠りに落ちた。







部屋の中に明かりが射し込む。


「………ッ眩し……朝か…………」


ベッドの中で瞼に当たる陽の光を避ける様に、窓側に向いていた身体を反対側に向ける。

大きなベッドで寝返りを打ったガインの前に、同じベッドで寝るキリアンの顔があった。


キリアンが幼い頃は、せがまれて共に寝た事もあったが、あの頃とは違い、大人になったキリアンの寝顔は男と分かっていてもドキッとする程に美しい。


「いや、いやいや!さすがに皇帝陛下のベッドに俺が一緒に寝ているのはマズイだろう!!」


ガインは身体を起こしてベッドから降りようとした。

身体を起こした瞬間、自身が全裸である事に気付いた。


「まっっ…!真っ裸だと!?何でだ!!」


全裸?皇帝陛下と同じベッドで?……そんな……まさか……


そんな思いで、恐る恐るガインは隣に寝るキリアンに掛かるシーツを少し捲ってみた。


キリアンの肌をスルリと滑ったシーツが落ち、キリアンの上半身が晒される。


そこには裸のキリアンが横たわっていた。

下半身は?なんて確かめる勇気も無い。


「俺は…俺は…何て事を………ッ!」


行為をしたか、どうかなんて関係ない。

前々から、キリアンの事を美しい青年だとは思っていた。

だが、性的な目で見たつもりなど無かった…無いと思っていた。


だが、ガインは自分自身に失望した。


━━━俺は陛下を…この美しい青年を…犯そうとした!

弟子でもあり、親友の忘れ形見、そして仕える主君を!━━━


どうすれば…どうすればいい?

陛下が死ねと仰有るならば、喜んで果てよう。

だが、今、陛下のお声無くして身勝手に自刃する事は出来ん。


この命も、この身体も、全てが皇帝陛下の物である。

勝手に死ぬ事も不忠にあたる。



「……ガイン…師匠…もう、起きたのか……。」


「へ、陛下……」


ガインは全裸のまま片膝を床につき、目を閉じると胸に手を当て頭を下げ臣下の礼を取った。


ガインの足元にキリアンの足が降りる。

ガインの頭にキリアンの手が置かれ、髪を撫でる様に指が滑る。


「顔を上げて下さい、師匠…いや、ガイン……。」


「し、しかし!!私は!!私は…!」


「上げろ。命令だ、ガイン。」


命令には逆らえない。ガインは薄く目を開け、顔を上げていった。


目の前に立つキリアン皇帝は全裸だった。

美しい顔に白い肌。その美しさに、女性の様な…とよく言われるキリアンだが、その肉体は女性らしく丸みを帯び、かつ華奢な…

と言うには余りにも逞しく、見事な男の身体をしていた。


「ガイン、俺達が裸だから何かあったと思ったのだろう。」


「お、畏れながら陛下…!私は…!私ごときが陛下の肌に触れるなど…!!その様な事を!致しましたのならば…!」


キリアンは暫く考えてから、ああ!と思い付いた様な顔をし、ククッと声を殺して笑った。


「大丈夫だ、ガインが俺を抱いたりなんてしていない。心配しなくとも、俺達は何も無かったのだから。」


「しかし陛下…!俺…私は…。」


「案ずるなガイン。俺達は、まだ何もしていない。」


ベッドから降りたキリアンは、昨夜脱いだ服に再び袖を通した。

ガインもそろそろと立ち上がり服を身に着けると、皇帝の私室を出る事にした。


「陛下、失礼させて頂きます。」


「ガイン。俺の臣下を辞めるとか、俺の元から居なくなるのは許さんぞ。俺の命令に背く事は許さん。」


キリアンが部屋を出ようとしたガインに声を掛けた。


「はっ!陛下の命令とあらば…!」


ガインはそれだけ言って部屋を出た。

ガインは私室を出た途端にブハッと大きく息を吐いた。

ガインの中には、行為に及ばなかったとは言え、自身が敬愛すべき皇帝陛下を美しい女性に見立てて、性的な欲望を果たそうとしたのだという自責の念にかられていた。


「俺は…何て事をしようと……。」


それゆえに気付いてなかった。

キリアンの自分に対する態度が、かなり変わっていた事に。





「ヤバい……目茶苦茶可愛い……もう、あのまま抱いてしまいたかった……!ガイン…」


一人私室に残ったキリアンは、昨夜のガインを思い出す。

それだけで身体の芯が疼く。





昨夜キリアンは、酔い潰れたガインの大きな身体をベッドに運び、衣服を脱がせた。

半目を開いて寝てるんだか起きてるんだか分からない状態のガインの唇に、キリアンは唇を重ねた。


唇の表面だけに、何度も啄む様なバードキスを落とす。


「ガイン…俺が子供の頃に一緒に酒を飲んでと言ったら、皇帝になった時にな、と約束したって話しただろ?あの後に続きがあったのも忘れてるんだよな?」


ガインの頬から盛り上がった首の筋肉に指先を滑らせ、そのまま鎖骨をなぞり、乳首をクンと指先で押し潰す。


反応するかの様に僅かに上がるガインの顎先を見て、キリアンの下半身が熱を帯び始めた。


「あの時、俺が皇帝になったらガインは俺のモノになると約束してくれた。……ッんん!目茶苦茶色ッポイ!!」


キリアンは大きな体躯のガインの足を開かせ、その間に自分の身体を挟ませた。

重なった肌の合間で、ガインの体毛がザリザリと擦れる。

その感触がまた、キリアンには堪らなかった。


そのまま貫いて、一つになりたいと思った。


「……駄目だ、こんなのでは……俺は、師匠の身体だけが欲しいんじゃない…。」


恋い焦がれた人を手に入れる事が出来る。

その約束の時が来たのだから。


ならば身体だけではなく、全てが欲しい。

意識の無い状態のガインではなく、感じて欲しい。声を聞かせて欲しい、見詰めて欲しい。

貴方を抱く俺を。


「師匠は、何か…勘違いしてる様だけど。師匠が俺を抱こうとしたと思ってるみたいだしな。」


真面目なガインの事だから、何か縛る物が無いと自分は臣下として相応しくないと、職を辞するだの、隠居するだの、下手したら死んでお詫びとか言い出しかねない。


「ガインには可哀相だが、もう少し強く縛る何かを用意しないと…な。」


美しい皇帝は、父子程に歳の離れた熊の様な師匠を自身のモノにするべく、考えを巡らせ始めた。



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