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ウマかウシで遠乗りデートがしたい。
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「陛下…今宵はわたくしを愛してくだ……サル!!」
昨夜の鮫の女とは違う女が部屋に入って来た。
薄っぺらい、素肌が透けて見えそうな服を身に付け現れた女は、私の放つ衝撃波により「猿」と叫んで部屋の外に飛んで行った。
「……何なんだ…鬱陶しい。」
先日、あの雑草女と庭を見て回って以降
夜になると女が部屋を訪れるようになった。
日中は日中で、女と限らず男も寄って来る。
女を紹介しようとする者、甘言を吐いて何かを欲して訴えて来る者。
それらの言葉を私は全く聞いていない。
あからさまに不愉快だと表情だけで語り、相手の方から距離を取らせる。
「陛下…あの…。」
私室の外に居た私に話し掛けて来たのは、料理人だった。
顔を見たのは初めてだったが、仕事着を脱いでいても料理の香りがフワリと漂う。
「私のような者が陛下に直接、お声を掛けるのは不敬に当たるとも思ったのですが…
どうしてもお伝えしておきたい事が…。」
料理人がわざわざ私に何かを伝えに来る。
もう、あの雑草の話でしかあるまい。
「…何だ、私の料理に毒でも入れる練習でもしているのか?」
そうであっても不思議ではない。
あの女も、所詮はこの城に居る他の女と何らかわり無い。
目的とやらの為に排除する事も厭わないと言うのならば…
その排除が私の事を、指すのであれば。
「いえ、あの少女はとても熱心に料理を勉強なさってます。
なさってますが…
あの少女は…自身は何も口にしておりません。」
「…味見をしないと?」
「味見どころか……。
私はこの城に居られる方の全てに、何らかの形で食べる物を提供しております。
雑用をさせる使用人らには、私が調理した物を出したりはしませんが、余り物のくず野菜等とパン等を渡し、彼らはこれを自分らで調理して食べていたりします。
私はそうやって、廃棄食材についても管理をしているのです。」
「…それが何だ…?」
「あの少女は、この城に来てから一切の食物を口にしておりません。
私の出した料理はすべて手をつけずに返されます。」
雑草女は野菜を知らないと言った。
スープという物さえ知らないようだった。
茶色い汁だから泥を混ぜてみた等と…。
「あの女が城に来て、どのくらいになる?
お前が料理を出すようになったのは、いつ頃だ」
「今日でふた月経ちました。」
「二ヶ月?…そんな前からあの女は城に居たのか…」
雑草女が私に声を掛けて来たのは十日程前。
そのひと月以上も前から城に居たと…。
そして何も口にしていないと……
何か、自身の食べる物を城に持ち込んでいるのだろうか?
「……お前、菓子は作れるのか?
こう…女が好きそうな…華やかな見た目の…」
「作れますが……?陛下は甘い物がお好きではないと……。」
「作ってみてくれ。」
料理人は、直接私に仕事を依頼された事に感極まって、涙ぐみながら胸をギュッと掴んだ。
「は、はい!では夕食の時間にでも…!」
「ダーリン!みっけ!!」
料理人が私の元から去った後、一人で城の中を歩いていた私と雑草女がバッタリ会ってしまった。
「ダーリンと呼ぶのはやめろ。フグリ。」
「ちょっ…!貴方こそ、わたしをフグリと呼ぶのはやめなさいよ!
それ、わたしの名前をキ◯タマにしたって事でしょ!
フグリと呼ばれる位なら、雑草の方がましだわ!」
こんな、けたたましい女が、1ヶ月以上も大人しく目立たないようにして城に居たと…。
この女には他の女と同じく何らかの目的があると言った…
一つは排除と言ったか。
この城に居る何人かの女と同じように、私を暗殺するのが目的なのか…。
もうひとつ、この女は改善と言ったが…。
改善?何を。
だが、その目的の手段のひとつとして、女である事を武器にして私を色香で籠絡するつもりでは……。
「……な、なによ。」
女の頭の先から爪先までを見る。
美しい顔付きではあるが、色香があると言うには…城に居る他の女と比べると少しばかり…
いや、かなり色々足りない気がする。
そんな見た目でお前は目的の為に私を誘惑し………
「……私に抱かれたいとか……思うのか?」
「ンなっ!!!」
雑草女は顔をボッと火が着いたように赤く染め、私の背中を叩いた。
「やっだー!ダーリン!気が早すぎるわ!
まだまだ駄目よ!ダメダメ!
そーゆーのは結婚してからよ!!」
「ゲホッ…」
何という勘違いを…!
私がお前を抱きたいと言っていると思ったのか!?
力任せに叩きやがって!お前は馬鹿力なんだぞ!
背骨折れるかと思ったわ!
「そう!ダーリン、今日はね!
城から出てダーリンとちょっと遠乗りしてみたいと!
ウマ!ウマに乗りたい!ウシでもいい!」
遠乗りしたいのは分かった…馬に乗りたいのも分かった。
なぜ、牛が出る。
牛に乗って遠乗り……聞いた事が無い。
牛に乗って移動する私自身の姿を想像してしまった。
何と阿呆みたいで、みっともない姿なんだ……。
「田舎の者ならいざ知らず、城に居るような者達は普通は牛には…乗らない。」
「そうなの?見た目も大きさも似てるらしいんだけど…」
らしいんだけど?……実物を見た事は無いのか?
「私は、転移魔法を使える。
行きたい場所の情報があれば瞬時にその場に行ける。
移動手段に馬を使う事は無い。」
「それは便利ね!
でも目的地に行く事が目的なんじゃないのよ!
移動中に流れて行く景色を見たいの!ワカル?
それに、ウマ!乗ってみたい!」
「だったら、厩舎に居る馬に乗って好きな所へ行って来い。一人で。」
フイと踵を返して雑草女に背を向ける。
歩き出そうとした私の肩を女が掴んだ。
「ダーリンと、ウマで、遠乗りしたいと言ってんのよ。
ワカル?ねぇ。これはデートのお誘いなのよ。」
脅迫ではないのか?こんなものは、デートのお誘いでは無い…。
力任せに叩かれた背中だけではなく、掴まれている肩も痛い…。
強い、強い、貴様は馬鹿力なんだ、痛いだろうが。
「……なら、お前は乗馬が出来るのだな?」
「ジョウバ?ジョウバって?」
「馬に乗る事を言う…雑草、お前の知識の偏り方…おかしくないか?」
誰も知らないような雑草の名前を知っていたかと思えば、誰もが知っている野菜や馬を存在だけは知っているが見た事が無いと言う。
「うーん、色々あんのよ、わたしにもね。
その内、教えるかもしんないし、教えないかもしんない。」
答えになっていない答えを言う。
「世界の色んな知識を持ってる賢者の貴方にはツラいでしょ?うふふ」
賢者?初めて呼ばれたな…賢者などとは。
普段は王や陛下、帝王や皇帝、好き勝手に呼ばれる。
そして陰で私は、多くの者に魔王と呼ばれている。
賢者とは…。
驚いた。
「お前の国では、私の事を賢者と呼ぶのか?
魔王とは…呼ばないのか?」
「呼ばないわね、魔王ってのは架空の世界の架空の存在だもの。」
「その存在を信じている国は多いし、私は魔界からこの世に落とされた者だと思う者も少なくない。
…人…ではないと。」
雑草女は、青い目を丸くして私を見る。
私は、雑草女の瞳に映り込んだ我が身の姿から目をそむけた。
「……白い髪に、赤い瞳……これも、災いの色だと……。」
「シラコでしょ?珍しいけど、いない訳じゃないし。
そんなんで災いとか言ってたらキリ無いわ。
まさか、そんな事を気にしてたの?」
シラコ…?初めて聞いたが……雑草女の偏った知識の中では、珍しくはあるが、異質で迫害の対象になる程ではないようだ。
「ダーリン、フグリちっちゃ!」
な、何と言う言い草だ!
「見た事も無いくせに何を言う!!」
「男のクセにグジグジ言ってんな!って言うのよ!」
「こんな事に、男も女も関係あるか!!」
「確かに無いわね!
姿かたちが少し違う位、気にすんなって言ってんの!
ほら!ウマん所へ行くわよ!」
私は引き摺られるようにして雑草女に外に引っ張り出される。
私の放つ衝撃波や攻撃魔法が一切通じない雑草女にとって私は、何の抵抗も出来ない弱者だ。
「やめろ!離せ!」
昨夜の鮫の女とは違う女が部屋に入って来た。
薄っぺらい、素肌が透けて見えそうな服を身に付け現れた女は、私の放つ衝撃波により「猿」と叫んで部屋の外に飛んで行った。
「……何なんだ…鬱陶しい。」
先日、あの雑草女と庭を見て回って以降
夜になると女が部屋を訪れるようになった。
日中は日中で、女と限らず男も寄って来る。
女を紹介しようとする者、甘言を吐いて何かを欲して訴えて来る者。
それらの言葉を私は全く聞いていない。
あからさまに不愉快だと表情だけで語り、相手の方から距離を取らせる。
「陛下…あの…。」
私室の外に居た私に話し掛けて来たのは、料理人だった。
顔を見たのは初めてだったが、仕事着を脱いでいても料理の香りがフワリと漂う。
「私のような者が陛下に直接、お声を掛けるのは不敬に当たるとも思ったのですが…
どうしてもお伝えしておきたい事が…。」
料理人がわざわざ私に何かを伝えに来る。
もう、あの雑草の話でしかあるまい。
「…何だ、私の料理に毒でも入れる練習でもしているのか?」
そうであっても不思議ではない。
あの女も、所詮はこの城に居る他の女と何らかわり無い。
目的とやらの為に排除する事も厭わないと言うのならば…
その排除が私の事を、指すのであれば。
「いえ、あの少女はとても熱心に料理を勉強なさってます。
なさってますが…
あの少女は…自身は何も口にしておりません。」
「…味見をしないと?」
「味見どころか……。
私はこの城に居られる方の全てに、何らかの形で食べる物を提供しております。
雑用をさせる使用人らには、私が調理した物を出したりはしませんが、余り物のくず野菜等とパン等を渡し、彼らはこれを自分らで調理して食べていたりします。
私はそうやって、廃棄食材についても管理をしているのです。」
「…それが何だ…?」
「あの少女は、この城に来てから一切の食物を口にしておりません。
私の出した料理はすべて手をつけずに返されます。」
雑草女は野菜を知らないと言った。
スープという物さえ知らないようだった。
茶色い汁だから泥を混ぜてみた等と…。
「あの女が城に来て、どのくらいになる?
お前が料理を出すようになったのは、いつ頃だ」
「今日でふた月経ちました。」
「二ヶ月?…そんな前からあの女は城に居たのか…」
雑草女が私に声を掛けて来たのは十日程前。
そのひと月以上も前から城に居たと…。
そして何も口にしていないと……
何か、自身の食べる物を城に持ち込んでいるのだろうか?
「……お前、菓子は作れるのか?
こう…女が好きそうな…華やかな見た目の…」
「作れますが……?陛下は甘い物がお好きではないと……。」
「作ってみてくれ。」
料理人は、直接私に仕事を依頼された事に感極まって、涙ぐみながら胸をギュッと掴んだ。
「は、はい!では夕食の時間にでも…!」
「ダーリン!みっけ!!」
料理人が私の元から去った後、一人で城の中を歩いていた私と雑草女がバッタリ会ってしまった。
「ダーリンと呼ぶのはやめろ。フグリ。」
「ちょっ…!貴方こそ、わたしをフグリと呼ぶのはやめなさいよ!
それ、わたしの名前をキ◯タマにしたって事でしょ!
フグリと呼ばれる位なら、雑草の方がましだわ!」
こんな、けたたましい女が、1ヶ月以上も大人しく目立たないようにして城に居たと…。
この女には他の女と同じく何らかの目的があると言った…
一つは排除と言ったか。
この城に居る何人かの女と同じように、私を暗殺するのが目的なのか…。
もうひとつ、この女は改善と言ったが…。
改善?何を。
だが、その目的の手段のひとつとして、女である事を武器にして私を色香で籠絡するつもりでは……。
「……な、なによ。」
女の頭の先から爪先までを見る。
美しい顔付きではあるが、色香があると言うには…城に居る他の女と比べると少しばかり…
いや、かなり色々足りない気がする。
そんな見た目でお前は目的の為に私を誘惑し………
「……私に抱かれたいとか……思うのか?」
「ンなっ!!!」
雑草女は顔をボッと火が着いたように赤く染め、私の背中を叩いた。
「やっだー!ダーリン!気が早すぎるわ!
まだまだ駄目よ!ダメダメ!
そーゆーのは結婚してからよ!!」
「ゲホッ…」
何という勘違いを…!
私がお前を抱きたいと言っていると思ったのか!?
力任せに叩きやがって!お前は馬鹿力なんだぞ!
背骨折れるかと思ったわ!
「そう!ダーリン、今日はね!
城から出てダーリンとちょっと遠乗りしてみたいと!
ウマ!ウマに乗りたい!ウシでもいい!」
遠乗りしたいのは分かった…馬に乗りたいのも分かった。
なぜ、牛が出る。
牛に乗って遠乗り……聞いた事が無い。
牛に乗って移動する私自身の姿を想像してしまった。
何と阿呆みたいで、みっともない姿なんだ……。
「田舎の者ならいざ知らず、城に居るような者達は普通は牛には…乗らない。」
「そうなの?見た目も大きさも似てるらしいんだけど…」
らしいんだけど?……実物を見た事は無いのか?
「私は、転移魔法を使える。
行きたい場所の情報があれば瞬時にその場に行ける。
移動手段に馬を使う事は無い。」
「それは便利ね!
でも目的地に行く事が目的なんじゃないのよ!
移動中に流れて行く景色を見たいの!ワカル?
それに、ウマ!乗ってみたい!」
「だったら、厩舎に居る馬に乗って好きな所へ行って来い。一人で。」
フイと踵を返して雑草女に背を向ける。
歩き出そうとした私の肩を女が掴んだ。
「ダーリンと、ウマで、遠乗りしたいと言ってんのよ。
ワカル?ねぇ。これはデートのお誘いなのよ。」
脅迫ではないのか?こんなものは、デートのお誘いでは無い…。
力任せに叩かれた背中だけではなく、掴まれている肩も痛い…。
強い、強い、貴様は馬鹿力なんだ、痛いだろうが。
「……なら、お前は乗馬が出来るのだな?」
「ジョウバ?ジョウバって?」
「馬に乗る事を言う…雑草、お前の知識の偏り方…おかしくないか?」
誰も知らないような雑草の名前を知っていたかと思えば、誰もが知っている野菜や馬を存在だけは知っているが見た事が無いと言う。
「うーん、色々あんのよ、わたしにもね。
その内、教えるかもしんないし、教えないかもしんない。」
答えになっていない答えを言う。
「世界の色んな知識を持ってる賢者の貴方にはツラいでしょ?うふふ」
賢者?初めて呼ばれたな…賢者などとは。
普段は王や陛下、帝王や皇帝、好き勝手に呼ばれる。
そして陰で私は、多くの者に魔王と呼ばれている。
賢者とは…。
驚いた。
「お前の国では、私の事を賢者と呼ぶのか?
魔王とは…呼ばないのか?」
「呼ばないわね、魔王ってのは架空の世界の架空の存在だもの。」
「その存在を信じている国は多いし、私は魔界からこの世に落とされた者だと思う者も少なくない。
…人…ではないと。」
雑草女は、青い目を丸くして私を見る。
私は、雑草女の瞳に映り込んだ我が身の姿から目をそむけた。
「……白い髪に、赤い瞳……これも、災いの色だと……。」
「シラコでしょ?珍しいけど、いない訳じゃないし。
そんなんで災いとか言ってたらキリ無いわ。
まさか、そんな事を気にしてたの?」
シラコ…?初めて聞いたが……雑草女の偏った知識の中では、珍しくはあるが、異質で迫害の対象になる程ではないようだ。
「ダーリン、フグリちっちゃ!」
な、何と言う言い草だ!
「見た事も無いくせに何を言う!!」
「男のクセにグジグジ言ってんな!って言うのよ!」
「こんな事に、男も女も関係あるか!!」
「確かに無いわね!
姿かたちが少し違う位、気にすんなって言ってんの!
ほら!ウマん所へ行くわよ!」
私は引き摺られるようにして雑草女に外に引っ張り出される。
私の放つ衝撃波や攻撃魔法が一切通じない雑草女にとって私は、何の抵抗も出来ない弱者だ。
「やめろ!離せ!」
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