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初恋同士は深読みして行き違い、こじれてややこしく。

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殿下に言われるがままに、トラウザーズを脱いだ状態で騎士服の前を捲り上げた俺はベッドの中央に膝を立てた格好で座らされた。



ベッドの足元の方、俺の向かい側には殿下がペタンと尻を付けて座り、両手をベッドの上について今からお話を聞く子どもの様に食い気味に身を前に乗り出している。



……そんな殿下の見ている前で……自分で出せって?



なんつー無茶な事を言われたんだかな。俺は。

とは言え……情けなくも俺の身体は、そんな仕打ちに興奮状態なワケで。



「オズ、紐を解くよ?いい?」



駄目ですって言っても解くんだろうな。

だから、頷くしか選択肢は無いのだろうが………



俺は首を横に振りたい衝動に駆られた。

それが、羞恥心ゆえに本当にやめてほしいと思ったからなのか…

そういう態度を見せて殿下の嗜虐心を煽りたいのか分からなくなっている。

殿下にトロトロに甘やかされたい俺の頭の片隅に、殿下にドロドロに蹂躙されたい俺も居るのかも知れない。


そんな俺は頷く事も首を振る事も出来ずに、ただ赤くなった顔を横に逸らした。



紐を解かれたら……はち切れんばかりに屹立した俺のモノは堰を切った河が暴れる様に、白い液体を出してしまうだろう。

そんな、はしたない姿を殿下に見られると考えただけで何だか興奮……って、



見られるどうこう以前に、コレ殿下にぶっかけてしまわないか?



純真無垢な少年である殿下の、天使の様に清らかなる美しい御尊顔に中年男の一晩溜め込んだ精液ぶっかけるとか。


それ、どんだけえげつない不敬行為なんだよ!



「で、殿下!!おやめください!!

今、紐を解いてはいけません!

殿下に浴びせるのだけはご勘弁下さい!

これ以外の詫びなら、何でもしますから!!」




殿下を止めようと焦った俺は、ぶっかけるのだけは嫌だから紐は解かないよう思いとどまる為の条件を咄嗟に口にした。

だが時既に遅し。

俺の制止より先に、殿下は俺の性器の根元にとまる蝶々を解いた。



「何でも?それ本当に?」




俺は、自身の先から飛び出した白濁を殿下に浴びせてしまったかと、その光景を見るのが恐ろしくて目を閉じていたのだが……。

怖々と目を開き、俺の前で俺の顔を見上げる様に覗き込みながら問うてきた殿下の顔を見た。

殿下は、俺のモノの根元を指で作った輪っかで締め付けながら親指の腹で頭を押さえて吐精を遮りつつ、嬉しそうに目を細めた。



「ほっ…本当です…!」



「じゃあ、オズの本当の気持ちを聞かせて。

オズと僕は恋人同士なんだよね?」




改めて聞かれると何とも言えない程に照れくさい。

したくもない否定など出来るはずも無く、俺はコクコクと何度も無言で頷くと、隠す様に殿下から顔を背けた。



「オズ。もしかして……

僕が主だから逆らえなくて、ただ仕方なく肯定の姿勢を見せてる?

……そんなのって、恋人じゃないよね。

恋人ごっこにすらならないよ。」




無言で頷く俺の態度を見た殿下が不機嫌な声音を出し、苛ついた様に冷めた表情を見せた。

今までも不機嫌な殿下を見た事はあったが、不貞腐れて拗ねた子どもの様な顔しか見た事が無かった。


本気で不快感をあらわにした表情を、初めて見た━━




「も…申し訳ござ………いや、すまん………。」



俺は苛立ちをあらわにした殿下に、慌てた様に謝罪の言葉を口にした。

殿下に不快な思いをさせてしまった事を詫びるというよりは…

自分の本気の言葉や態度を殿下に見せる覚悟が足りなかったばかりに、惚れた相手を不安にさせた上に、こんな顔をさせてしまった事に対して申し訳無さ過ぎて……

俺は泣きそうになった。



「やっぱり、僕みたいな子どもとは恋人なんて嫌?」



殿下は、スっと感情を隠す様に表情を無くした。

表情を無くし、同時に口調も感情を抑えてただ淡々と問い掛けて来た。

その姿があまりにも痛々しく、俺の方が泣きそうな程に表情を歪めて、強く声を上げてしまった。



「ち、違いま……違う!違うんだ!
殿下!俺は、殿下が好きです!本当に好きです!

殿下が主だから逆らえないってのも、立場が立場ですから正直そりゃありますけど!

俺は…!殿下が俺を選んでくれて嬉しい!

俺、殿下を愛してます!!」



俺自身の気持ちが昂ぶって心が熱くなった分、逆に身体は落ち着いてしまい吐精衝動は抑えられてしまった。

だが、本音を吐露したせいで体温は上昇。

顔が火を吹きそうな程に熱い。



俺の告白に、殿下がキョトンとしている。
その表情を見ると、尚更に恥ずかしさが募る。



「う、嬉しいのと恥ずかしいのとで、軽くサラッと言えない事もあるんですよ……。

殿下に恋人同士だなんて言われて…嬉しくて舞い上がってしまって……

もう、息も止まりそうだし声も詰まって…ただ頷くしかなくて…。」




あああ!どこのお嬢ちゃんの初恋の話をしてるんだろうなコレ!

俺か!現在進行中の成就したオッサンの初恋だったわ!



「僕の……勘違い?オズは僕を……」



「もう、好きだって気持ちを誤魔化したりはしませんって…。
それに………

俺は…昨夜、殿下が言った通りなんですよ…。」



もう、恋心をこじらせ過ぎて自分がキモいオッサンだと分かってはいるが、少女だろうがオッサンだろうが

初恋は初恋だ。

初めて人を好きになり、その相手にも好きになって貰えた。

嬉しい気持ちは大きいが、その分見せた事の無い自分の姿を見せる事に躊躇してしまう。

嫌われたりしないだろうかと不安にもなる。

逃げ出したくなる気持ちと、そんな自分をも受け止めてほしい気持ちがせめぎ合い━━



「可愛いかはともかく…俺はやらしい男なんです…。
殿下の事ばっか考えてて…やらしい妄想してて…。
もう…昨夜の殿下…甘えさせてくれるとか…大人っぽくて…いつもの天使のような殿下もいいけど、大人びて少し悪魔的な殿下も結構、好きな俺がいたり…。」



現実逃避気味に頭が暴走した。



キョトンとした表情のまま口数が減った殿下との間を保たす為ってわけじゃないと思いたいが、気が付けば下半身丸出しでベラベラ一人で喋ってる俺が居る。

つか、ナニを言ってんだかな俺。

これ、殿下に愛想尽かされない?



「それがオズの正直な気持ちなの?」



「………本当の気持ちの、ほんの一部です。
もう言葉に出来ない位の気持ちもあるんで……

好き過ぎて、ただワーって叫びながら芝生の上を転げ回りたいとか。」



何だそれ。アホな子か。自分で言って呆れる。

無表情だった殿下がクスリと笑った。

それだけで、そこに花が咲いた様だ。



「オズって石頭だとか堅物だとか言われてるけど、頭の中ではそんな可愛い事を考えていたりするんだ?

知らなかったぁ。」



「こんな事、誰にも言えませんよ。
殿下にだから話したんです。………恋人だから。」




恥ッず!!

自分で口にした途端、ギュインとものすごい勢いで顔を背けてしまった。




「オズも僕を恋人だと思ってくれてるの?」



俺は顔を背けたまま、無言でコクコクと何度も頷く。
もう、恥ずかしくて照れ臭くて息が止まりそうだ。
声が詰まって言葉が出ない。

目と口をギュッと結んで真っ赤になっている俺の顔を見た殿下は、先ほどの態度がコレと同じだと理解してくれたようだ。



「やらしい事を考えたりするのに、恥ずかしがってこんな可愛い態度を見せたりするの。

オズの新しい一面を知ったなあ、僕。」



えっ!まさか、引いたりしてないだろうな!?

いつもの仏頂面の堅物な俺でなければ好きで無かったとか?



瞬間的に顔から赤みが引き、一変不安そうな眼差しを殿下に向けてしまった。

目は口ほどに物を言うと言うが、俺の表情がまさしくソレだったようで殿下が俺の首に両腕を回して抱き着いて来た。



「そんな顔をしないでオズ…。
嫌になったんじゃないよ?その逆。

オズの本当の姿を僕だけに見せてくれて嬉しい。」




「で…殿下……」




やっべ。殿下凄くいい匂いがする。

顔が近い、肌柔らかい、抱きつかれているだけで気持ちいい。

気持ちいい……って、丸出しの下半身が反応してる…。



ゆるゆると硬度を増してきたソレは、抱き着く殿下と俺の狭間でヌゥっと勃ち上がった。


いくら好きな相手に抱き締められたからって、今の会話のやり取りで勃つって、どうなんだよ。

抱き着かれたから勃ったの?

世の中の恋人同士は、街中でハグしただけでも勃つの?



そんなワケ無いよな!



「オズ、これ……」



「す、すみませんッ!

大好きな殿下にくっつかれて…
もう、それだけで身体が反応してしまったんです!」



馬鹿正直に言ってしまった。

下手な言い訳をして大好きな殿下に不安や不快感を与える位なら、俺が恥ずかしい思いをした方がずっといい。




「それもオズの本当の姿なんだね?

僕に反応してくれるんだ?

ああ…可愛い…オズが可愛くて、可愛過ぎて…

オズを食べちゃいたい。」




殿下が俺の首に両腕を回したままで、俺の頬や耳元にチュッチュッと何度も吸い付く。



…食べちゃいたいってアッチの意味だよな……

本気で言ってんのかな殿下…。

いくら好きだって言ってくれてても……俺、こんなんだぜ?
ムサいオッサンだ。

悪食にも程があるんじゃないか?

でもな……もう殿下には俺の気持ちを正直に話すべきだと思う。

声に出したり態度で示さなかったばかりに、互いの心が行き違うのは嫌だ。

好きな人に俺のせいであんな顔をさせるのはもう嫌だ。



「俺も、殿下に食べて貰いたいです…。」



だから嘘偽り無く本当の気持ちを正直に言った。



「いいの?恋人になったばかりだよ。
それに………
僕そういう事するの初めてだから、下手だと思うけど……いいの?」



ちょ……何か色んな意味でたまらんのだけど!

何か照れた様にそんな可愛らしい事言われたら、俺が殿下に教えてやるみたいじゃないか。

殿下の筆おろしが俺とか!?

いや、そういう俺も男相手はもちろん受け入れる側も初めてなんだけど……。




「俺も初めてですよ。
上手いかどうかなんて、関係ないです。

……俺はただ…殿下のものになりたい…。
それだけなんです。」



自分の口から出た言葉を自分の耳で聞いて、恥ずかし過ぎて脳内の俺が暴れまくる。

頭の中で両手で顔を覆って床の上を転がりまくる感じだ。

思考が止まりそうでヤバい。




「僕のもの?僕だけのオズ…」




甘い声音で囁かれて、堪らずに殿下の細い身体を抱き締める。

愛しい気持ちが募って歯止めがきかなくなりそうだ。

もう、このまま殿下と溶け合いたい!




「そうです…!俺は殿下だけの俺です!だから!!」




俺の本音、本気を殿下にぶつけて互いに抱き合って、気持ちが昂って……

もう、殿下と一つになりたい!!と思ったのは本当だ。

殿下も俺に対して、そう思って下さったのだと信じている。



俺達は心を繋ぎ、同じ気持ちを共有した。

だからこそ………同じ考えに行き着いた。




━━スゲー盛り上がった後にふと感じてしまった、『それヤるの今じゃ無い』感!━━




殿下の私室前の廊下や、窓の外から人の声や物音が多く聞こえるようになった。


朝を迎え、王族の方々の朝食がお済みになった王城は急に慌ただしく動き始める。

城に勤める者は、貴族から下男、侍女に至るまで皆が与えられた仕事に従事し始め、城の中がうるさい程に活気づく。



殿下は体調不良を理由に今朝は部屋から出なかったが、このままだと殿下の具合を診る為にと色んな者が部屋を訪れるだろう。

殿下の母君であらせられる王妃殿下は特にご心配なさって、治療士などを連れて見舞いに来るかも知れない。



「…………元気になりましたって、父上達に挨拶に行った方が良さそうだね。」



「そ、そうですね……。俺もお供致します。
その後いつもの通りに剣の稽古をしますか……。」



ハハハと困ったように苦笑して、もろ出しの下半身をしまう。

今の状況を鑑みた上で、今はその行為をするべきではないとの考えに至ったが、気持ちが萎えたわけではない。


俺の中では、今でも当たり前のように殿下に身を捧げたい自分が居る。




「そうだね。
父上にご挨拶をした後、いつもの様に剣の稽古をつけて貰おうかな。」




「そうですね。
御召し物を着替えなさるのですね。
今、侍女を呼びます。」




いつものように会話をし、いつものように振る舞う。

自分本位に焦ってはいけないのだと、自身に言い聞かせつつ。

て言うか…殿下、大好きだし…それはもう、自分でもよくよく分かっているのだが……

こうも、殿下と肌を重ねる事に執着する意識が働くとは思わなかった。



俺の中に在るいくつかの意識が自分を律し、自制を促し、殿下に無理を強いるような事はしないと意見を纏めたのに対し、異議を唱える意識がひとつ。


「俺、殿下と繋がって早く殿下のものになりたい。」


そんな事を言ったもんだから。

脳内議会が荒れたっぽい。


って、そんな事を考えて妄想してしまう俺自身、余裕あるフリをして思った以上に焦ってんのかな…。

殿下のものになりたい、は、殿下を自分だけのものにして縛り付けたいってのと同じかも知れない。



なんのかんのと殿下には縁談話しが舞い込んで来るし、殿下に淡い恋心を抱く姫君や令嬢も少なくはないと聞く。

殿下を信じてはいても、俺は自分に殿下を繋ぎ止めておく自信が無い。

いつ…殿下が心変わりするか…不安で仕方ない…

だから早く結ばれたいと思ってしまうのかも……



今度はいつ、殿下が俺を欲しいと思って下さるか分からないが……。




「オズ、今夜オズを抱くよ。」



「ふぁい!?」



突然の申し出に、気を付け!をした様にピンと背筋を伸ばして可笑しな返事をしてしまった。



「少し変だったけど、その返事はハイだよね。
今夜の警備交替は無し。
オズは朝まで僕を警護し、この部屋で僕と過ごす事。」



「きゅ、急にそのように…ではまず、後の兵士に…」



あまりにも急展開過ぎて、俺の思考がついていけなかった。

嬉しいより先に、俺の後番の兵士に伝えなきゃならんとか、その後の当番をどう組み替えるかとか警備責任者としての思考が先に浮かんだが、少し間を置いて噛みしめるようにじっくりと、殿下の言葉が俺の思考を上塗りしてゆく。



「今夜……ですか?」




「うん。今夜。
オズを僕のものにしたい。
だからオズ……今夜、僕とひとつになろう?」




ッッちょ…!!!
ひとつになろうとか、殺し文句!!

嬉しさと驚きと恥ずかしさとで、内臓が全部口から飛び出しそうなんだが!!!


俺の返事はハイ以外には有り得ない。

……ああ!嬉しいです!殿下!



「ふぁい!!」

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