転移した世界がクソだったんで魔王を作る事にした。

DAKUNちょめ

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第一章

10―人を人として見れるか否か。

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「真神!?まさか真神帝斗?マジかよ!!あ、病み少年ダイスケも居る!
二人とも生きていたのか!スゲーじゃん!
ハハハ!久しぶり~!」


階段を降りた所で、いきなり「人間」に会った。
瞬時に互いを警戒して身構えて距離を取り、互いの姿を確認する。
俺は目の前に居る、軽い雰囲気を持つ人懐っこい茶髪の男に見覚えがあった。
見覚えはあるのだが、顔を見るのが余りにも久しぶり過ぎて名前が思い出せない。

俺の隣で病み少年と言われた大輔が眉間にシワを刻んで、あからさまに苛立った表情をした。


「チッ!リア充寺島め!今すぐ爆発しろ!」


本人の耳には入らない様に、俺の隣で小声で悪態をつく大輔。
セコいなぁと思いつつ、そうか、寺島だったかとかつてのクラスメートの名前を思い出した。


リア充寺島。
そう言えば、大輔とは典型的な程に対極のキャラで、そんな奴が居たな位の印象。
俺としては、仲良くなりたいタイプでもないが、嫌う理由もない奴。
仲が良い女子が学校中におり、それらの殆どと友人以上との関係だとか言われていた気がする。


「寺島、久しぶりだな。…3年ぶり…位か?」

「え、3年?あははは!」


寺島はプッと噴き出して、楽しそうに笑った。
クラスメートだった時と同じ、屈託のない明るい笑顔。
男の友人も多かったし、彼女未満の女友達が多かったのも頷ける。

だが、俺と大輔は警戒を解けなかった。
そんな奴が、たった一人で常に命の危険に晒されているような場所に居る。
たった一人で3年も生き延びている。


「真神たちが教室を出てから今日で1335日、4年近く経ったよ。」


寺島が自身の手巻きの腕時計を指差す。
時間の経過を数えていた様だ。
見た目に反して几帳面な一面があるんだな。


「この世界の頭オカシイところはさ、どれだけ進んだ所で窓の外の風景も変化無いけど、俺達の見た目も変わらない事だよね。
服も身体もさほど汚れないしさ。

まぁ、元の世界に戻った時に髪ボサボサのヒゲボーボーのオッサンみたいになってるよりいいんだけどね。」


元の世界……そう言えば、元の世界に戻る為に俺達は前に進み、生き抜いているのだったか。
最終的な目的はそうかも知れないが、今の俺の頭には生きて葵に会う!しか無かった為に、元の世界に戻るなんて意識を忘れていた。


ふと、大輔がいつもの様に俺に聞いてくる問いかけが頭に浮かんだ。
一緒に行動してる俺より、別行動していたコイツに聞いた方が少しは分かるだろうと。


「寺島、教室に居た他の皆はどうしている?
まさか、お前一人で教室を出たんじゃないよな?」


俺の隣で威嚇するチワワの様に唸っていた大輔が、表情をパッと変えた。
やはり大輔も気になる様だ。


「聞いてくれよ!真神!俺達、10人で教室を出たんだ!
男子が俺を含めて4人、女子が6人。」


寺島が立てた指を折りながら数を数えていく。
その人数の多さに俺と大輔が怪訝そうな顔をした。


「女子を俺達で守ってやるぜ!なんてさ、カッコイイじゃん?
ワケの分からないバケモンに襲われてさ、気持ち悪いし、女子はきゃあきゃあ言うし。
だから俺達で守ってやってたワケよ。」


何となく先が読めて来た。
だが、こちらからは何も言わずに大輔に目配せだけした。
寺島の動きの全てから目を離すなと。


「最初は良かったんだよ、女子に頼られて気持ちいいしさ。
でもここの世界ってさ……食料の調達が出来ないじゃん?
ゲームみたいにモンスター倒して食うなんて無理だし。」


「そうだな。入手出来る食料は明かりのついた教室のみで、それも購買で売られていた様な物が一食分しかない。
明かりつきの教室は、数百メートル、あるいは数キロ歩かないと現れないし、10人が腹を満たすのは…まぁ無理だろうな。」


「だったら食料は前線に立って頑張った男子の物じゃん?
最初はさ、女子も守って貰ってるんだし、ダイエット出来るから大丈夫とか言ってたんだよ。
でも1週間も経たない内に、キレちゃってさー男子対女子で喧嘩になったんだよね。」


愚痴を溢す様に口を尖らせてブー垂れる寺島は、以前の寺島が教室で「昨日さームカつく事あってー」と明るく日常の愚痴を友人に話す様なテイストだ。
だが寺島は、その表情とは全く別物の殺気を身体から放ち始めた。


「殺し合いが始まっちゃってさ、みんな鬱陶しいなぁって思って。
だから俺が全員、殺しちまった。
アレってさ、ためらわずに殺そうって思ったモン勝ちだよな?
傷つけ合ってグズグズしてる間に、元気な奴から順にみんなぶっ刺した。」


ニコニコと笑う寺島の手には、背に掛けていたロングソードが抜かれ握られていた。


「なぁ真神達は、何人殺した?
俺はまだ9人なんだけどさ。
真神とダイスケ、これで11人になるよ。」


「リア充バカ寺島!!人を殺すワケ無いだろ!!
教室を出てから初めて会ったクラスメートがお前なんだから!
だいたい、クラスメートを殺すって何なんだよ!!」


俺の隣で萎縮するように寺島を警戒していた大輔が、思わず身を乗り出してしまった。


「ダイ!前に出るな!!」


俺が大輔の肩を掴んで引き戻す前に、寺島のロングソードが大輔の腹部を下から貫き、背中の真ん中より上辺りから剣先が鮮血と共に飛び出した。


「ぐはっ…!!」


「やっぱり知らないんだな!
伊林先生が現れてさ、俺だけにって教えてくれたんだよ!
クラスの奴らで殺し合って、最後の一人になったら元の世界に戻れるんだって!!
だから俺、クラスメート探してたんだぁ!!
3年以上、一人でさ!!」



「寺島っ…!お前!!
先生がって!そんなワケ無いだろうが!!」


俺達の担任の伊林は、この世界に来ていない。
実はそんな不思議な力を使える者でした、的な人物でもない。

コイツは罪悪感から逃れる為にそんな幻を見たのか、あるいは、俺達がまだ遭遇していないだけで、そんな風に人心を惑わせる魔物が居るのか。

とにかく、同級生を殺す事を正当化して俺達を襲いに来た。
俺は腹部を貫かれた大輔の肩を掴んだまま、赤く染まっていく大輔の背を見て顔を歪めた。


「て…帝斗…………ごめん……お願いだ……。」


口から血を噴き出した大輔は、深く懐に潜り込んだ寺島の身体を上から押さえ付けて、身体を起こして態勢を整えないようにしている。


「馬鹿!離せ!オタク中二病!!抱き着くな!
お前キショク悪いんだよ!離しやがれ!」



「俺が生きてる内に…コイツ…寺島、殺して…。
でないと俺……安心して……死ねない……。」



大輔の言葉に、寺島と俺の二人が同時にヒュッと息を呑んだ。


「ダイ!馬鹿な事を言ってんなよ!
人を殺すって何だって言ってたじゃないか!
それに、お前は死なない!!死なないから!!」


焦った俺が大輔に声を掛けると、大輔にしがみつかれている寺島も焦った様に声を出した。


「ごめん!冗談なんだ!俺、真神を殺す気は無いよ!?
だから、離してくんないかな!なぁ!」



大輔の呼吸が途切れそうになる。
口から流れ出た鮮血は寺島の顔や肩に掛かり、寺島の白いシャツを赤く染め上げていくが、それらは人の命以外の状態を維持しようとする世界において、キレイな状態に戻っていく。
流れ出た大輔の血を吸った寺島のシャツは何事も無かったかのように白くなった。


なのに、死にゆくだけの大輔の背を貫く剣先の周りだけは真っ赤に真っ赤に染まったまま赤色が消えない。
大輔の死は、僅か先の免れない未来だ。


「冗談……ダイを刺しておいて、それを冗談だと……。
クラスメートを殺していくのが、寺島の言う正しいこの世界のルールだと言うならば、俺もまた、それに則っても文句は無いよな。」


俺は腰のベルトの内側に括り付けた鞘から日本刀を抜いて構えた。

大輔も、俺も
もう、命を奪うのには…それなりに慣れていた。
奪わなければ奪われる。そんな世界でずっと生きて来た。

それが、襲いかかる相手が人間だから知り合いだから倒す事なんて出来ないなんて言うならば

自分の死を差し出さなければならない。

もっと早くに、そう理解すべきだった。
寺島が殺気を放った時点で俺がコイツを殺していれば



大輔は死ぬ事は無かったんだ。







廊下に倒れた寺島は、息をしていなかった。

武器の扱いなんて知らなかった俺達は、自分流にがむしゃらに武器を扱う方法を見つけ、今まで無理矢理武器を振るって異形の敵を倒して来た。

だが……人間の急所と呼ばれる場所の知識だけは…ある。

俺は背を丸めた状態で、大輔に押さえつけられた寺島の心臓辺りを刺した。
残酷だと分かっていたが、苦しませたり喚かれたりを避けたくて、確実に刃が心臓を傷つけるよう刺した刃をグリっと揺らした。

寺島のシャツが赤く染まったまま白くならなかった時、ああ終わったんだなと思った。

寺島は叫んでいたようだが、俺にはナニも聞こえてなかった。





「……帝斗……元の世界ってさ……俺、居ないよね……。
もし、戻れてさぁ……そこに俺が居たら……仲良くしないでよ……。
だって、それ俺じゃないもん。」


「そうだな…前のままの世界に戻るワケ無いよな…。
俺も、寺島が居たらどんな顔して会えばいいか分からないし。
皆が消えた後の世界に戻れたとしても、皆が消えた理由を説明も出来ないしな。」


血塗れで廊下に横たわる大輔の身体の隣に座って、最後の会話をした。


「俺の親友はお前だけだし、俺はこの世界で葵を探すだけだよ…。
元の世界は……別に……いいよ。」


「帝斗…約束……絶対に……葵ちゃんと会うまで死なない事……生きる事を諦めない事………約束……。
じゃないと俺………化けて出るょ……………」




廊下には

俺一人が座っていた。

大輔の遺体も、寺島の遺体も消え去っていた。

涙も出ない。叫び声も出ない。

たった今、目の前で死んだ親友の骸は無くなり、泣いて縋る事も出来ない。


「………進むしか無いんだよな……。」


俺はフラフラと立ち上がり、奥に向かって一人で歩き始めた。












俺達は、宿代を無料にしてもらう事が出来、そのまま町を離れる事にした。

昨日の騒ぎを知ってか、誰も俺達にちょっかいを出す様な真似はしなかった。

あの、バーロンの密偵だか何だかなイケメンが本当の事を話すかどうかは分からないが、まぁ、この町を去る俺にはどうでも良い話だしな。


「お前は、この町に残ってりゃ良かったのに。
なんで危険だって分かっていて俺達に同行するんだよ。」


「身寄りの無い俺が町に残っても、住む場所もないし食ってくのも大変なんだよ。
ニイチャン達と居る方が…いつでも食うモンがあるし…。」


俺が食い飽きたシリアルバーとカロリーバーが、ダイにはよほどのお気に入りとなったようで。
確かに……俺も経験したから分かるが、食えない日々を過ごす辛さを思えば、いつでも口に入れるモノがあるのは有り難い事だ。


「………お?珍しいモンが手に入ったぞ。
ダイ、食ってみるか?」


俺は何も持たない手の平を一回ダイに見せ、クイと手の平を裏返してから手の平に現れたモノを見せた。


「ナニこれ?平べったい……土?」


「疲れた身体にはいいぞ。」


ダイはチョコよりも、チョコが包まれた銀紙に目を奪われている。
また宝物にするとか言うんじゃないだろうな。
すぐ消えてなくなるのに、面倒くさいヤツ。

そう思い、ダイの頬をギュムと掴んで口を開かせて一欠片割ったチョコをダイの口の中に放り込んだ。


「つ、土っ!!………な、ナニこれ!!
あんまァァい!!ハチミツより甘い!!ナニこれ!ナニこれ!」


「チョコだ。たまにしか手に入らない。
俺は食わないからな。お前にやる。」


「えっ!こんなウマい物貰っていいの!?
ハティとスコルには……………。」


名前を呼ばれたスコルとハティは同時にダイの方に目を向けるが、金の目を細めてダイに微笑みながら舌先をチロチロと覗かせた。


「そんな板っ切れより、お前の方が美味そう。」


その後ダイは二人に背を向けて、無言でチョコをかじり始めた。
ダイをからかったスコルとハティは楽しそうに笑っている。


「お前らのオヤジ……フェンリルが言った通り、この先は他の勇者とやらを探してみようかと思う。
フェンリルが言った、俺の望みが叶うとやらも気になる所だし…。」


俺は、どの世界に流されても立ち止まる事が出来ない。
その世界で歩き続ける目的が何なのか分からなくても、生きていく。
それが、大輔との約束だから。


「ボク達は、テイトの行く場所について行くだけ。
どこでも、どんな所へでも。」


スコルが言い、ハティが同意するように頷いた。


「宿のおっちゃんが言うには、この町から北東に向かうと割と大きな街があるらしいよ。
人が多く集まるから危険やイザコザも多いけど、情報も集まると思うんだ。
ニイチャン達は、そこを拠点にして暫く行動すれば良いと思うよ。
南の大陸出身の冒険者として。」


口周りをチョコで茶色くしたダイが提案する。
冒険者……なんとまぁ俺にはそぐわないジョブだろうか。
まぁ、呼び方なんて何でも良いがな。
情報とやらを集める為ならば。


俺達は、宿の主に数日分の食料を分けて貰い、町を離れる事にした。











「ちょっと京弥!パン一個と薄いスープだけってひどくない!?
しかも一日2食だけって、あり得ないんだけど!!」


京弥と田上と末町の三人は、バーロンの居城にて三人で一つの相部屋を充てがわれた。
ベッドは3つしかなく、広さはそれなりにあるが調度品も少ない簡素な部屋だ。
そこに、京弥の奴隷となった綾奈も放り込まれた。

運ばれてくる食事は勇者となった三人分のみ、綾奈の分は京弥が自分の食料を分け与えるか別途費用を払って用意するしかない。

勇者として喚ばれた彼等には、王のもとに来た依頼に応えて魔物を倒す義務が課せられた。
その結果いかんによって報酬が与えられる。
だが、微々たる魔法しか使えない上に、魔物と戦う腕も無い彼等には報酬を得られる機会がほぼ無く、戦う回数を増やせば上がると思われた魔法力も武器を手にしての実技も短い期間では上がるハズも無く

バーロンの居城での彼等の立場や待遇は、決して良いものではなくなっていた。


「それにさぁ!ミチルは、あんな立派な服を着てんのに何でアタシは、こんな薄っぺらい下着みたいな服一枚なんだよ!
ありえねーんだけど!!」


日がな一日中、この部屋から出る事を許されてない綾奈は京弥達の今の立場を知らない。
時々、窓の外に見えるミチルの姿を見て自身の待遇との差を痛感する。


日本の学生だった頃には蔑む対象だったミチルが、自分より良い服を着て立派な騎士達にかしずかれて馬車に乗り込む姿を何度か見た。
立場の逆転に納得のいかない綾奈はギリッと爪を噛んだ。


「ちょっと京弥!アイツの服を持って来てよ!
アタシに、いつまでもこんな裸みたいな恰好させとくんじゃないわよ!」


「やかましい!!黙れ!!クソアマ!!」


京弥はテーブルにあった水の入った木製グラスを綾奈に向けて投げた。
グラスは綾奈の足元で弾かれ中の水を撒き散らして床に転がった。


「お前は奴隷だ!俺と対等な立場じゃねぇんだよ!!
ペットが飼い主に楯突くんじゃねぇ!!」


京弥は綾奈の服を掴むと、綾奈を床に叩きつける様に腕を斜めに振るった。
薄く安っぽい綾奈の服はすぐに破れ胸があらわになり、綾奈は胸を腕で隠したが、末町も田上もそんな綾奈に冷めた目を向けるだけだった。


京弥も田上も末町も、自分達に後が無いと感じていた。
このままでは城を追い出され、自分達が馬鹿にしながら追放された真神とかいう転校生と同じ道を辿ると。

この城を追い出されたら生きていく術が無い。
そのうえ、勇者として認められなくなった者は、その命を奪われるとも噂で聞いた。


コンコン━━


京弥達の部屋の扉がノックされた。


「は、ハイ!今開けます!」


京弥達の働きぶりに肩透かしを食った様になった、城の関係者達や魔物の討伐隊から声が掛かる事が減っていた三人は、久々に仕事が入ったと喜びいさんで扉を開けた。


「ごきげんいかがかしら、京弥クン、田上クン、末町クン。
それと、メス豚。」


開いた扉の外に立っていたのは、自身でデザインしたという黒いシルクのような高級そうな生地に金糸の刺繍とレースをあしらった膝丈のワンピースに、魔導師が被るような帽子をかぶり、ワンピースに合わせ黒地に金の刺繍をあしらった豪華なマントを身に着けたミチルだった。

精悍な顔付きの見栄えの良い騎士二人がミチルを守る様に左右に立っている。


「ミチル…ミチル!何なのよ!この扱いの差は!!
お前なんかが!お前なんかが何で!!」


床に尻をついていた綾奈が立ち上がり、ワナワナと震えながら濡れた床に足を踏み出した。
むき出しになった胸を隠しもせずに駆け出し、ミチルに掴み掛かろうとした綾奈の身体をミチルの隣に立つ騎士が突き飛ばした。


「勇者ミチル様に奴隷風情が触れるなど、身分をわきまえろ。」


「ああっ…!あああっ!!あああ!」


突き飛ばされた弾みで床に倒れた綾奈が激しく嗚咽を漏らして泣き崩れるのを誰もが無視し、京弥がミチルに声を掛けた。


「で、ミチル様は俺らに何の用があって来たんだよ。
まさか、俺達を馬鹿にしに来たんじゃないよな?」


「違うわよー、今ねお城に奴隷商が来ているの。
京弥クン、新しい奴隷買わない?
エサが少なくても文句を言わず、全裸のままで居させても文句を言わない。
そんで、いつでも何人でもお相手してくれるキレイなメス。
そんなのが何匹か居るみたいよ。」


田上と末町が互いの顔を見合わせる。
奴隷が人であるという認識が薄くなっているミチルに、何だか気味の悪さを感じずにはいられない。
京弥も同じ考えを持ったが無視をするわけにもいかず、ミチルに返事を返した。


「……知ってると思うがな、俺達にはそんな金ネェんだよ。
コイツ一人、養うだけで手一杯でな。
俺達自身の武器や防具さえ新調出来ない有様なんだ。」

「だったらメス豚を売っ払ったら?
異世界から来たメスなんて珍しいから高く買ってくれるらしいわよ!?
そうしたら京弥クン達、新しい強い武器も防具も手に入るし、栄養のある食事も取れるし、戦果も上がるんじゃない?」


京弥と田上、末町の視線が綾奈に注がれた。


「い、いやよ…イヤよ!!」


怯える綾奈にミチルがほくそ笑む。


「いい人に飼われるといいわね。
一人にヤらせるのも、10人にやらせるのも一緒でしょ?
私にそう教えてくれたのは、アンタだもんね。綾奈。」



    
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