【R18】小学生から高校生に成長したファンの少年が、中年男の俺を愛してやまない。

DAKUNちょめ

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将来的に必要なグッズ、パート2

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神鷹家を出て自宅に戻った走はそのままキッチンに行き、夕飯の準備をしている母親の前にホールのアップルパイを差し出した。


「ただいま。これ真弓から。」


「お帰りなさーい。
きゃぁ、嬉しい!
神鷹さんの作るアップルパイ、食べたかったのよ!
久しぶりだわー。」


料理の手を止め、走の手から両手でパイの箱を受け取った母親が満面の笑みを浮かべる。

季節の変わり目あたりになると、走は母親に真弓の手作りアップルパイを催促される。
年に4回ほど、それを行事の様にもう数年繰り返している。

小学生の頃から真弓と一緒にアップルパイを作り続けた走は、既に真弓と全く同じ味のアップルパイを自宅で一人で再現する事も出来るが、あえてそれを母親には言わないでいる。


「神鷹さんにお礼言っておいてね。
それにしても神鷹さんのアップルパイって、いつまで食べられるのかしらね。
走も高校生だし、いつまでも神鷹さんの家に入り浸ってばかりじゃなくなるでしょ。」


走は無言で制服の入ったバッグをダイニングテーブルの上に置き、冷蔵庫から水のペットを取り出すと椅子に座って渇いた喉を潤す様に水を流し込んだ。


「だって彼女が出来たらデートしたりと、忙しくなるわよね。」


返事をしない息子に、母親が「なぜ?」と聞かれた体で話を続ける。

走が高校生になったあたりから、母親の『彼女は居ないの?』『好きな女の子は居ないの?』と探りを入れられる様な言い回しを含む会話が増えた。

恋バナがしたいのか冷やかしたいのか、奔放な母親は息子の恋愛事情を知りたがって走から、それらしい話を幾度となく引き出そうとしてきた。


「何度も言ってるけど彼女を作るつもりは無いんだってば。
俺と趣味の合う女子も居ないし、そんな女子との会話って続かないし気を遣うから疲れる。
金森とか友達と話してる方が楽だし、真弓に仕事の話しを聞いてる方が有意義だ。」


「そうかも知れないけど彼女が出来たら変わるモンよ?
親の欲目かもだけど、走はモテそうだし彼女なんてすぐ出来ると思ってたわ。」


「俺、無愛想だから全然モテないよ。」


走は言葉を選んで当たり障りの無い返事をしながら、嘘はつかずに母親の質問に答えていく。

ある時走は、母親に何度も訊ねられ何度も答えた『彼女や好きな女の子の有無』の会話の中に、『真弓離れが出来るか』を織り交ぜて訊ねられている事に気付いた。

幼い小学生が近所のオジサンに懐いて交流が始まり既に5年。
高校生になってまでも週に何度も会いに行くのは、色んな意味で不安要素のある疑念を抱かせる事になってしまった様だ。
その中には性的な事も含まれているかも知れない。

さすがに、走の方が真弓を強く求めているとは思ってもいないだろうが…。

ならばいっそ、本当の事を言ってしまえれば……

冷静さを欠きそう思った事もあったが、どんなに真剣に真弓への想いを親に伝えた所で簡単に認めてくれる筈は無く、自分はまだ社会的には子どもに分類されてしまい、非難の声は全て真弓に向かうのだと気付いた。

それゆえに今はまだ、本当の事を知られてはいけないのだとも。


「じゃー走に好きな人はいるの?」


「好きな人は……いる。」


普段、好きな女の子は居ないの?と問うて来る母親に返事をした事は無かった。
否定も肯定もせず聞こえて無い体で、答えたくないと無言での返事をしていた。

好きな人はと聞かれ、走は初めて返事をした。


「そう、どんな人なの?」


問いながら母親はアップルパイの箱を開き、ナイフを入れて細くパイを2切れ切り出した。
そして1つを走に差し出す。


「シャイで…とても可愛い人。」


差し出された細いパイを口に運び、2口目で全て飲み込む。
口中に広がる甘い香りと味に、先ほどまで唇を重ねていた真弓を思い出した走の口元が無意識に綻ぶ。


「そう。今は走の片想いって事なのね。
もし、その人とお付き合い出来る事になったら紹介してね。
あんたにそんな顔をさせる、そのシャイで可愛いって人。」


細く切り出したパイを食べた母親は残りのパイを箱に戻して片付け、ダイニングテーブルの走に背を向け夕飯の準備に戻った。


「……ああ。」


母親の指摘に内心焦った走は口元を隠す様に片手で覆う。
そんな顔って、どんな顔をしていたんだと無理矢理に無表情を作って抑揚の無い声で母親に返事をした。


「もうじきパパも帰って来るし夕飯も出来るから、着替えてらっしゃい。」


「ああ…。」


とりあえず声を出す程度の返事を母親に返して平静を装い続け、走は自室への階段を上った。









走が帰ってしばらくして、ポツポツと雨が降り出した。

俺のつゆだくはんぺん状態の布団は一旦軒先に移動させたが雨を吸い過ぎて重量が増しており、これをコインランドリーやクリーニング店に持って行くのも中々に骨が折れそうだ。

しばらくはランの布団を使わせてもらう事にするが……。
当たり前だが俺の布団が復活しない間は、ランが泊まりに来たら2人で同じ布団で寝なきゃならないワケで……。


「うぐぁあ!何だこの、ワケの分からん感情!
嫌なんだか嬉しいんだか!いや、嬉しいワケネェわ狭いし落ち着かんし!
クッソ恥ずかしい事されるわ、どんな顔をしていたらいいんだよ!
おちおち寝てらんねーし、気が休まらんし!
延々とエロい事されそうになったら俺は、どうしたらいいんだ!!」


一人大きな声を出して散々喚き散らした後、ちゃぶ台の上に突っ伏して、苦悩する様に片方の手で頭を抱えた。

自分でも説明の付けようが無い考えが沸々と湧き起こり、感情を制御出来ない。
今、胸の内側に渦巻く感情の名が分からない。
苛立ちにも似ているが、ランに対しての苛立ちでは無く、答えを導き出せてない自分に対しての苛立ちに近い気もする。


「……エロい事されてしまいたいって期待?
ンなワケねーだろ。
ランが特別とは言え奴は男だし……俺は本来、男に欲情するような趣味はねぇ。」


自然に沸き起こる感情を否定をし続けて無理矢理蓋をする。
その繰り返しで胸中がモヤモヤしている。
ランからのスキンシップ、それが不快な行為では無いと、自身でも理解しているのだが、まだ素直に受け入れられない。

本人と相対している時は否定する余裕すら無い時もあるが。


「いや…アイツを好きだってのは認める。
認めるが…避妊具…は今まだ用意する必要は無いよな。
……無い……んだが……。」


自分からランに高校を卒業するまで待ってくれと言った。
逃げる言い訳にしたつもりはなかったが、その条件をランは呑んでくれた。
だから、まだ2年以上の猶予はあるが……。

ランと共にドラッグストアで買ってきた洋酒をグラスに注いでちびちび飲みながらスマホを手にした。


かつて━━
自分が受け入れる側での性行為に関する事項を調べようなどと思った事があっただろうか………。
こんなエエ年になってアダルト系のサイトでアドバイスを検索する事になるとは。
しかも男同士の……

だが、未成年のランに「お前がヤリたいんだから、お前が調べて準備をしろ」なんて言える筈もなく…。


「って言うかよ、こんなトコ見に行って事前準備ってモンを検索しているとか、ランに言えるワケねぇし。」


━━どんだけ期待してんだって思われても困る!
これは、俺が大人の責任としてランに負担がかからないよう最低限の準備をしておくための知識を必要としてだな!
今すぐ避妊具を購入とかなんて思ってな…………━━


「……………あ」


スクロールとポチポチを繰り返している途中で、酔いのせいか指先がブレて画面を叩いてしまった。

操作ミスとは言えネットショップの買い物カゴの中に、その行為専用のローションを入れてしまい、購入前の画面を見てダラダラと冷や汗をかいてしまう。


━━だが、コレ絶対にあった方がいいヤツなんじゃね?
スムーズに行為をするためには。
でも必要になるのって、まだ2年以上先だよな!?
今、買う必要は無いし……いざとなればドラッグストアで………
買うのか?ドラッグストアで俺がこれを!?━━


「これ持ってレジって…!
う…うわぁあ…!それは無理だ!!」


その日が近付いた時に、いそいそと買いに行く?
ランとの行為をするかも知れない日が来るより、これを購入する日が来る方が何か嫌だ!

酔った勢いに後押しされたせいもあったのか、買い物カゴに入れた商品に避妊具を1つ追加して購入ボタンを押した。

そこで気が抜けたのか、俺はガックリと脱力した様に眠ってしまった。

深夜に起きて茶の間から寝室に向かう時に、手にしたスマホの画面を見た。

『購入ありがとうございました』の画面を見て、思い切り苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。

ホントに買っちまったんだなと。


「お、ランからのお休みメッセージが来てたか……
寝てしまってたからな。」


5年前から毎日欠かさず続く、おはようと、おやすみのメッセージ。
脇目も振らずに一途に真弓だけを見続けたランからの「何より真弓が大切だから」とのメッセージでもある。

照れ臭く、何ともこそばゆい。


「茶の間で居眠りしちまっていた。
こんな時間にスマン。おやすみ…………と。」


深夜の2時半、メッセージを送ってスマホを閉じた。


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