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目の当たりにした将来的に必要なグッズ。

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買い物から帰ったランは荷物を手際よく片付けていき、昼食の下準備に取り掛かった。

家事は手分けして行う。
と言うか…以前は全て俺がやっていたのだから、ランがウチの家事をする様になって俺はかなり楽をさせて貰えるようになった。

日曜日はまとめて掃除をする日だ。

ランが食事の支度をする間に俺は洗濯機を回しながら風呂やトイレを掃除し、掃除機をかけていく。


しばらくすると家の中にカレーの薫りが漂い始めた。

自分の家では家事を一切しないと言うが、我が家でのランは主夫と言って足りる程に立派に家事をこなす。
特に料理。
外食やレトルトや冷凍食品などをつまみつつ酒を飲んで楽に済ませようとする俺が栄養を偏らせてないかと、おふくろみたいな心配の仕方をする。

理由は俺とずっと一緒に居るために長生きして欲しいからだそうだ。
20歳以上も年の差があるから親に言うのと同じみたいな事を言われる。
ありがたいんだが何か恥ずかしいわ。


「真弓、少し早いけど昼ごはんが出来た。
食おうぜ。」


昼を少し過ぎた頃に、ランが俺に声を掛けて来た。


「あー了解。
そういやぁアップルパイ作らなきゃならんのだったな。」


ランの母親に、定期的におねだりされるアップルパイ。
昨日、ランはその材料を買い込んでウチに来た。
昼飯を食ったら作るか。


茶の間に行き、ちゃぶ台の前に腰を降ろすと出来たばかりのスープカレーが用意してあった。
山盛りの飯と共に、野菜が盛りだくさんスープカレーの中に入っている。
どんだけ俺に野菜を食わせたいんだ。


「………!うま……」


「これなら真弓も野菜たくさん食べられるだろ?
ナスにピーマン、トマト、レンコン、ジャガイモ、ブロッコリー……揚げた野菜がとにかくたくさん入っているし。」


「こんなモン作れるなら自分んチでも作れば良いのに。
お前んトコの母さん喜ぶだろ。」


「そうだな、気が向いたらな。」


毎回そう言って、気が向いた試しが無いらしい。
ランは自分の持つ家事スキルを俺の為だけに使うモノだと言う。


「……飯食って落ち着いたらアップルパイ作るか。」












昼飯を食って後片付けをし、2人でまったりとした時間を過ごしてから夕方近くになってランとアップルパイを作った。

ランが小学生の頃から一緒に作っていたので、もう手慣れたモンだ。
何だったら俺より手際がいい。

オーブンにパイを入れ焼き上がるまでの間に、ランがくっついて来たりしたが、ハグと軽いキス位で昨夜のような過剰なスキンシップは無かった。

とは言え━━
そのハグと軽いキスでも俺は過敏に反応してしまうんだが。


台所でランが俺の背にピッタリとくっつき、手を前に回して俺を緩く抱き締める。

背後から俺の肩に額を預けたランの生暖かい呼気が、俺の肩甲骨辺りに掛かる。

俺の腕の下を通り、後ろから俺の胸と腹に回されたランの手が俺の身体を服の上から撫で始めた。

直に触れられているワケでも無いのに、逆にその曖昧な感触が昨夜の愛撫を思い出させ、より強く想像心を掻き立てる。

━━こんな……だったっけ?━━

瞬間、俺の中に昨夜との差を確認したい欲求が起こり、そんな考えを焦ってかき消す。


「ちょ、ちょっと待て…何で今サカってんだよ、お前は…。」


「パイが焼けたらドラッグストア行って…その後真弓とお別れしたら、しばらく会えなくなると思ったら何だか寂しくなって。」


「2日と空けずに顔見に来てるじゃねぇか!
…ッて、だから何で!それが台所で、なんだよ!」


「それは…茶の間に行ったら、押し倒してしまいたくなるから。
台所だと、少しセーブ出来る。何となく。」



━━何じゃそれ!!━━



さわさわとシャツの上から俺の胸や腹を撫でていき、少しずつ俺の背後から前に移動してきたランが、俺の顎先や唇の端にチュッチュと啄む様なキスを落としてゆく。

唇が重なっても中に舌先を潜り込ませる様な深いキスはせず、浅く軽い口付けが続く。


茶の間に行ったら押し倒したくなるから、台所だとセーブ出来るって言ったが……

セーブって欲情しにくくなるって意味か?
だからキスも軽いので大丈夫って意味か?
じゃぁセーブしなかったら……どんだけ濃厚なの…

いやいやいやいや!!

何を考え、何を知りたいと思ったんだよ俺は!!


「こら、離れろ。
パイが焼き上がったみてぇだぞ。」


甘ったるく香ばしい匂いがし、俺はランの額に手を当てて腕を伸ばしてヤツの身体を引っ剥がした。

服の上からのボディタッチと啄む様なバードキスは、ホッとすると共に、もどかしさを感じてしまう俺が居る。

だが、それをランには知られたくない。


「あ、そうみたいだな。
じゃぁドラッグストア行ってから……買い物した荷物を置きに来た時にパイを持ってく。
出掛ける支度するか。」


ゴネるわけでも無くアッサリと離れたランに、どこか物足りなさをも感じてしまう。

一体どうしたんだ、俺は……

昨夜の行為に触発され、頭ん中がスケベな思考になっちまってんのだろうか。

長年そういう行為が御無沙汰だったとは言え…単純過ぎるだろう俺。

その長く御無沙汰だった性的な行為、は置いておいても
ランとの肌と肌の触れ合いは正直、気持ちが良いと言うだけではなく、温かみのある心地よさを感じた。
人肌が恋しいって、こーゆーことだろうか。

いや、人肌恋しいからって誰でもいいってワケじゃねえし。
ランだから、いいんだろう……ってなーおいおい
高1の男子にオッサンがそんな風に思うって、どんなんだよ。


「………真弓?
……パイ作って疲れた?」


台所で流しの端に両手をついて、頭を傾げたり横に振ったりと挙動不審な動きをする俺にランが声を掛けて来た。


「……気にしないでくれ。」


一体誰のせいだと思ってやがるんだ。
そんな言葉は口から出せずに思い切り飲み込んだ。




少し時間を置き━━

ランと共に、新しく出来たというドラッグストアに向かった。
酒が安く売ってるらしいので俺の目当てはソレなんだが、ランはスプレーの湿布だとかテープだとか…
そんな物を買いたいらしい。


昼に買い物をしたスーパーから更に先に行くと、チラシの入っていたドラッグストアがあった。

近所ではあるが、スーパーより先のこちら側には滅多に来ないために存在に気付かなかった。

入口辺りにトイレットペーパーやティッシュが積んである。
割りと安めかも知れない。


「真弓、俺サポーターとか湿布ン所行くから、真弓はお酒見て来なよ。」


「あー了解。」


店に入ってすぐ、ランとは別行動をとる事にした。

酒類を売ってるブースに学生のランが行くのも印象が悪いしな。
俺は酒類を売ってる場所を探しつつ、興味深げに陳列された物を眺めながら迷う様に店内をアチラコチラふらふらと歩き回った。

入浴剤も豊富で「おお、これいいな」など目移りしてしまい、中々酒類のコーナーに辿り着かない。

そういうのもまた、意外に楽しいモンなんだが………


通路の角を曲がった所で、俺の足が止まった。
位置的に、店の奥の端の方に来たのだろうか。
そこは、避妊具がズラリと並んだ場所だった。

俺はドラッグストアでコンドームを買った事が無い。
そもそも、最後に購入したのだってコンビニで十年位前になるんじゃなかろうか。

こんなに多くの種類の避妊具が、キレイに陳列されているサマを目の当たりにすると……変に圧倒されてしまう。


「種類多っ……」


すぐにその場を離れようとしたが、ランとの昨夜の行為が頭に浮かんでしまった。

変な話だが避妊具を見たせいで、昨夜のランとの行為の先を、より現実味を帯びて具体的に想像してしまった。


━━もし…だ。もし、ランとする事になったら…
コンドームは必要だよな…
学生のランに用意させるワケにはいかない。
ここは大人である自分が用意すべきだろう。
……だが、今ではなくてもまだ大丈夫だよな!?━━


自分自身に問いかけ、勝手に納得した体にして俺はその場を離れた。

まさか、男を相手に自分がコンドームを購入する日が来るなんて思いもしなかったが…
ランとの事を真剣に考えるならば、必要な事なんだろうな。


「真弓、どこ歩き回ってんだよ。」


避妊具のコーナーを離れてすぐ、買い物カゴを下げたランと会った。

入浴剤をひとつだけ手にした俺を見て、ランが首を傾げる。


「初めて来たもんで酒類の場所が分からなくてな。」


「食品棚の奥にあるよ。
真弓の居た所とは逆方向だ。」


ランが俺の手から入浴剤を取り買い物カゴに入れ、俺を先導するように食品棚の方に歩いた。

俺は前を行くランの後ろ姿を見ながら、ボソッと独りごつ。


「ランとのその時が確実に来るのならば…俺の心の準備が整う前に、こちらの準備も整えとかなきゃだな。」



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