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第一章•帝国編
3話◆温室の危険な薔薇。暴れん坊覇王ディアーナ。
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「ロージア様は、王子様なんですか?
どうして、このような離れに?」
ミーナが核心を突いた質問をする。
本来ならば庶民であるミーナから、恐らく皇族の関係者であるロージアにこのような質問する事は不敬にあたる。
だが、有頂天になった彼女達は認知欲求と言うのだろうか?
彼の事を知りたくて矢継ぎ早に質問をする。
「勝手に答える事は出来ないんだ…ゴメンね…?」
ロージアは困った表情を見せて儚げに苦笑する。
あーあざとい野郎だわ。ウゼー。
私はめんどくせぇ、と少し困ったような顔をする。
それがロージアには、私が彼を心配をする顔に見えたようだ。
目が輝く。
「ゴメンね、僕…少し休むよ…また、来てね?」
柔らかい口調で、さりげなく少女達を追い払うロージア。
「また、来ます!ロージア様!」「必ず来ます!」
ミーナとビスケは互いを牽制し合うように自分をアピールする。
リリーは無言で頭を下げ、二人の後について温室を出て行った。
「じゃあね、ロージア様。」
私もロージアに背を向け、温室から出て行こうとした。
「ディアーナ…」
いきなり、背後から緩く抱き締められた。
抱き締められた事には驚かなかった。
こいつ、私に気配を悟られないままテーブルの位置から温室の出入口までの決して短くはない距離を、いきなり詰めて来やがった!
そっちの方が驚きだわ!
少し駆けただけでよろけていたアレ、病弱なフリ?
「ねぇ、僕が何者か…気にならない?」
「…あなたは、わたくしを何だと思っているの…?」
私の正体を知っている?と思って聞いてみたが…
私のした質問の意味を理解していないようだ。
「ラジェアベリアという遠い国から来た、強い女の子…?」
それなら、それで都合がいい。
聖女や女神と呼ぶには魔力の無い私は、普通の人間の少女と同じようにしか見えない。
「そうよ、わたくしラジェアベリアの王子様と仲良しだったの。
だから、あなたが王子様でも興味は無いわ。」
「…ふふっ、ナニそれ。…君って、色んな妄想持ってるんだね」
まぁ、信じないでしょうね。もう、存在しない国の話しなんて。
私は、するりと彼の腕から抜ける。
「そんな架空の国の架空の王子様なんかより、僕のモノになってよ…ディアーナ。
僕、君が気に入ったんだ…。」
何だろう…この感覚…どこかで経験したわ…。
髪に触れようと手を延ばすロージアから私は一歩後退る。
「ロージア殿下!いい加減にして下され!
私が陛下に叱られるんですぞ!」
アゴーン皇帝の側近が、両手に拳を握って震えながら声を上げる。
「ちぇっ…つまんないの……ふふっ、そんな怯えないでよ…。」
アゴーンの側近の手が震えているのは、怒りからではなく、怯えから…なの?
ロージアこいつ、何者?
「また来てねディアーナ…来なかったら僕が君に会いに行くよ?」
こいつ…本当に何者?
私は、冷や汗だらだらの皇帝の側近と離れを出て、城に向かう。
「ねえ、側近ジジイ…アイツ、何なの?」
「……私からは…説明出来ない…陛下に尋ねてみるといい…。」
「勝手に離れに入ったのを許したとか、咎められるんじゃない?」
「そっちの方がマシだ。
お前…いや、姫に何かあったら…私の首が飛ぶ…。」
私に…何か起こる可能性があると?
ロージアが私に何かをする?
城に戻った私は、側近ジジイと共にアゴーン皇帝の所に向かった。
一足前に城に戻ったミーナとビスケは、ロージアについてキャアキャア楽しげに語り合っている。
いや、多分彼の存在はこの城ではタブーだろう。
城の中でキャッキャ大声で話して良いものではない。
リリーはそれを理解しているのか、二人に人差し指を立て黙るように促す。
本当に、出来の良いオフィーリアみたいだわね、リリー。
「ディアーナ様!」
城の敷地内、城の正面大扉の前でアゴーン皇帝が私の姿を見つけて駆け寄って来る。
皇帝が自ら走り回って私を探し、しかも私を様付けで呼んでるのを見た包帯だらけのハゲが顔を青くしていた。
誰だ、お前。
ああ、コイツ馬車の中で私が顔面に右ストレートぶっ込んだ奴か。
もう動けるんだー。タフじゃん。
「ディアーナ様…」
アゴーン皇帝は、私の前で緊張の糸が切れたかのように地面に膝をついた。そして大きな安堵のため息を吐く。
「……村の娘達が……ロージアの名を口にしていたから…
離れに行かれたのだと…。」
「ああ、ごめんなさいね。勝手に離れに行ったわ。
側近ジジイは叱らないでやってね?
わたくしを止められる者など居ないのだから。」
アゴーン皇帝は何度も頷きながら苦笑する。
「……聞いて良いのかしら?ロージアの事。あれ…ナニ?」
自分の口から出た質問に少し驚く。
無意識の内に思っていたようだ。
ロージア、お前、人間じゃないよね?と…。
「ロージアは…私の弟です…。」
あら、意外に普通。
アゴーンは35歳前後に見えるし、ロージアは15歳前後に見えるから、親子ほど離れていると思うけど…。
まあ、母親が同じとは限らないし…。
正妃の子と側室の子とか、腹違いでね。
「同じ…母親から生まれた、実の弟…です。」
うおぅ!お母さん頑張ったね!高齢出産!?
「……五年前に生まれた…。」
「…へー……ロージア5歳なんだ……それは随分と、ませてるわね…」
「ディアーナ様…貴女をアイツに…逢わせたくなかった…。」
アゴーン皇帝は苦悶に満ちた顔をしている。私の隣に居る側近ジジイも、同じような表情をしている。
苦しいような、悲しいような…って
ワケわからん!!!難しい事、考えるのキライだわ!
だから結局、アイツ何なんだよ!!
もう、サクっと説明しろ!!
「側近ジジイ!説明しろ!
お前が話を聞けと言ったコイツはロージアの事を話す気が無いみたいじゃない!
だったらジジイ、お前が答えろ!
ロージア、アイツ何者なの!」
さっきまでは思ったわよ。
ロージアの話を城でするのはタブーなんじゃないかって。
だから、ミーナやビスケが城でロージアの名を出した事も、それはいけない事だと思ったわよ!?
だが私には関係ないな!空気を読む!?
んなもん、知るか!!
空気を読まな過ぎて、口調が素になりまくりだわ!
しかも人がたくさん居る所でロージアの名前を連呼してるわ私。
私は皇帝の胸ぐらを掴む。
「「貴女をアイツに逢わせたくなかった」…何でよ?
そんな苦悶に満ちた顔をされてもね、
「それは、どういう事なの!?でも、聞いてはいけないのね」
にはならないわよ!」
側近ジジイがアゴーンを庇うように、私とアゴーンの間に身を出す。
「姫!皇帝はロージア殿下の事で苦しんでらっしゃいます!
そのように責められては…!」
少女に胸ぐらを掴まれた皇帝の姿を見た、城の敷地内の兵士達が慌てふためく。
皇帝を助けるの?助けるべきなの?少女から?えー?
みたいな、どう動いて良いか分からないといった空気が流れている。
そんな中で、意を決したように皇帝が声を上げる。
「ろ、ロージアは普通の人間ではない!!」
「んな事、知っとるわ!!このヘタレ!
私を誰だと思ってやがる!!」
被せ気味に声を張り上げてしまった。
「……月の聖女ディアナンネ……いや、月の女神ディアーナ様……
…貴女は本当に……本物の……?」
皇帝の目が潤む。いい歳こいたオッサンが男泣きしている。
そして私は、男のクセに泣き虫ってのが嫌いなんだけど……
私の最愛の人も泣き虫なのよね…意外に…。
私はアゴーン皇帝の胸ぐらを掴む手を離し、その手で皇帝の頭をグリグリと撫で回した。
「月の女神ディアーナはね………慈悲の女神じゃないわ……
それでも…いいかしら?」
泣き顔の皇帝と側近のジジイは、意味が分からないと顔を見合せている。
ゴメンね、バスガス爆発帝国在住の皆さん。
私、ディアーナは今……この国をプチしたくなってます!
そう、私…慈悲の女神でも、癒しの聖女でもありません。
優しさなんて求めないで。
夫と父は私をこう呼びます。
暴れん坊覇王ディアーナ。
この呼び名、何か色々混ざってない?
この国は、レオンハルト皇帝の先祖が慈悲を与えられた月の聖女ディアナンネを崇めている。
街の中にはディアナンネを象った彫刻や、絵画があったりするが雰囲気はそれぞれ違う。
共通するのは、藍色の髪に金色の瞳の若く美しい少女だというだけ。
儚い美女のようだったり、純粋無垢な少女のようだったり。
テーマに添っての創作に近い。
ディアーナが個人的に一番気に入った彫刻は、ゴツい鎧を身に付けて馬に乗っていた。
「まるで世紀末…覇王のようでステキだわ…。」
この国の民にとって、ディアナンネは身近な神だった。
皆から愛されていた。
小さな教会こそあったが、祈りを捧げる時は心にディアナンネを想えば、どこでいつ祈りを捧げても自由。
ゆえに、あちこちにディアナンネを象ったものがある。
「まるで、お地蔵さんみたいな信仰のされ方ね…
見たら手を合わせて、お饅頭の一つでも置いておきたくなるような」
ディアーナが思ったように、祈るのも、拝むのも、無視するのすら自由。
それこそが、慈悲と自由を司る月の聖女ディアナンネの教えだったハズなのに
五年程前に、聖女ディアナンネ教という名を掲げた宗教が出来た。
その宗教の最たる目的が、ディアナンネを受肉させる事。
その宗教の大教会が建ったあたりから、国が歪み始める。
どうして、このような離れに?」
ミーナが核心を突いた質問をする。
本来ならば庶民であるミーナから、恐らく皇族の関係者であるロージアにこのような質問する事は不敬にあたる。
だが、有頂天になった彼女達は認知欲求と言うのだろうか?
彼の事を知りたくて矢継ぎ早に質問をする。
「勝手に答える事は出来ないんだ…ゴメンね…?」
ロージアは困った表情を見せて儚げに苦笑する。
あーあざとい野郎だわ。ウゼー。
私はめんどくせぇ、と少し困ったような顔をする。
それがロージアには、私が彼を心配をする顔に見えたようだ。
目が輝く。
「ゴメンね、僕…少し休むよ…また、来てね?」
柔らかい口調で、さりげなく少女達を追い払うロージア。
「また、来ます!ロージア様!」「必ず来ます!」
ミーナとビスケは互いを牽制し合うように自分をアピールする。
リリーは無言で頭を下げ、二人の後について温室を出て行った。
「じゃあね、ロージア様。」
私もロージアに背を向け、温室から出て行こうとした。
「ディアーナ…」
いきなり、背後から緩く抱き締められた。
抱き締められた事には驚かなかった。
こいつ、私に気配を悟られないままテーブルの位置から温室の出入口までの決して短くはない距離を、いきなり詰めて来やがった!
そっちの方が驚きだわ!
少し駆けただけでよろけていたアレ、病弱なフリ?
「ねぇ、僕が何者か…気にならない?」
「…あなたは、わたくしを何だと思っているの…?」
私の正体を知っている?と思って聞いてみたが…
私のした質問の意味を理解していないようだ。
「ラジェアベリアという遠い国から来た、強い女の子…?」
それなら、それで都合がいい。
聖女や女神と呼ぶには魔力の無い私は、普通の人間の少女と同じようにしか見えない。
「そうよ、わたくしラジェアベリアの王子様と仲良しだったの。
だから、あなたが王子様でも興味は無いわ。」
「…ふふっ、ナニそれ。…君って、色んな妄想持ってるんだね」
まぁ、信じないでしょうね。もう、存在しない国の話しなんて。
私は、するりと彼の腕から抜ける。
「そんな架空の国の架空の王子様なんかより、僕のモノになってよ…ディアーナ。
僕、君が気に入ったんだ…。」
何だろう…この感覚…どこかで経験したわ…。
髪に触れようと手を延ばすロージアから私は一歩後退る。
「ロージア殿下!いい加減にして下され!
私が陛下に叱られるんですぞ!」
アゴーン皇帝の側近が、両手に拳を握って震えながら声を上げる。
「ちぇっ…つまんないの……ふふっ、そんな怯えないでよ…。」
アゴーンの側近の手が震えているのは、怒りからではなく、怯えから…なの?
ロージアこいつ、何者?
「また来てねディアーナ…来なかったら僕が君に会いに行くよ?」
こいつ…本当に何者?
私は、冷や汗だらだらの皇帝の側近と離れを出て、城に向かう。
「ねえ、側近ジジイ…アイツ、何なの?」
「……私からは…説明出来ない…陛下に尋ねてみるといい…。」
「勝手に離れに入ったのを許したとか、咎められるんじゃない?」
「そっちの方がマシだ。
お前…いや、姫に何かあったら…私の首が飛ぶ…。」
私に…何か起こる可能性があると?
ロージアが私に何かをする?
城に戻った私は、側近ジジイと共にアゴーン皇帝の所に向かった。
一足前に城に戻ったミーナとビスケは、ロージアについてキャアキャア楽しげに語り合っている。
いや、多分彼の存在はこの城ではタブーだろう。
城の中でキャッキャ大声で話して良いものではない。
リリーはそれを理解しているのか、二人に人差し指を立て黙るように促す。
本当に、出来の良いオフィーリアみたいだわね、リリー。
「ディアーナ様!」
城の敷地内、城の正面大扉の前でアゴーン皇帝が私の姿を見つけて駆け寄って来る。
皇帝が自ら走り回って私を探し、しかも私を様付けで呼んでるのを見た包帯だらけのハゲが顔を青くしていた。
誰だ、お前。
ああ、コイツ馬車の中で私が顔面に右ストレートぶっ込んだ奴か。
もう動けるんだー。タフじゃん。
「ディアーナ様…」
アゴーン皇帝は、私の前で緊張の糸が切れたかのように地面に膝をついた。そして大きな安堵のため息を吐く。
「……村の娘達が……ロージアの名を口にしていたから…
離れに行かれたのだと…。」
「ああ、ごめんなさいね。勝手に離れに行ったわ。
側近ジジイは叱らないでやってね?
わたくしを止められる者など居ないのだから。」
アゴーン皇帝は何度も頷きながら苦笑する。
「……聞いて良いのかしら?ロージアの事。あれ…ナニ?」
自分の口から出た質問に少し驚く。
無意識の内に思っていたようだ。
ロージア、お前、人間じゃないよね?と…。
「ロージアは…私の弟です…。」
あら、意外に普通。
アゴーンは35歳前後に見えるし、ロージアは15歳前後に見えるから、親子ほど離れていると思うけど…。
まあ、母親が同じとは限らないし…。
正妃の子と側室の子とか、腹違いでね。
「同じ…母親から生まれた、実の弟…です。」
うおぅ!お母さん頑張ったね!高齢出産!?
「……五年前に生まれた…。」
「…へー……ロージア5歳なんだ……それは随分と、ませてるわね…」
「ディアーナ様…貴女をアイツに…逢わせたくなかった…。」
アゴーン皇帝は苦悶に満ちた顔をしている。私の隣に居る側近ジジイも、同じような表情をしている。
苦しいような、悲しいような…って
ワケわからん!!!難しい事、考えるのキライだわ!
だから結局、アイツ何なんだよ!!
もう、サクっと説明しろ!!
「側近ジジイ!説明しろ!
お前が話を聞けと言ったコイツはロージアの事を話す気が無いみたいじゃない!
だったらジジイ、お前が答えろ!
ロージア、アイツ何者なの!」
さっきまでは思ったわよ。
ロージアの話を城でするのはタブーなんじゃないかって。
だから、ミーナやビスケが城でロージアの名を出した事も、それはいけない事だと思ったわよ!?
だが私には関係ないな!空気を読む!?
んなもん、知るか!!
空気を読まな過ぎて、口調が素になりまくりだわ!
しかも人がたくさん居る所でロージアの名前を連呼してるわ私。
私は皇帝の胸ぐらを掴む。
「「貴女をアイツに逢わせたくなかった」…何でよ?
そんな苦悶に満ちた顔をされてもね、
「それは、どういう事なの!?でも、聞いてはいけないのね」
にはならないわよ!」
側近ジジイがアゴーンを庇うように、私とアゴーンの間に身を出す。
「姫!皇帝はロージア殿下の事で苦しんでらっしゃいます!
そのように責められては…!」
少女に胸ぐらを掴まれた皇帝の姿を見た、城の敷地内の兵士達が慌てふためく。
皇帝を助けるの?助けるべきなの?少女から?えー?
みたいな、どう動いて良いか分からないといった空気が流れている。
そんな中で、意を決したように皇帝が声を上げる。
「ろ、ロージアは普通の人間ではない!!」
「んな事、知っとるわ!!このヘタレ!
私を誰だと思ってやがる!!」
被せ気味に声を張り上げてしまった。
「……月の聖女ディアナンネ……いや、月の女神ディアーナ様……
…貴女は本当に……本物の……?」
皇帝の目が潤む。いい歳こいたオッサンが男泣きしている。
そして私は、男のクセに泣き虫ってのが嫌いなんだけど……
私の最愛の人も泣き虫なのよね…意外に…。
私はアゴーン皇帝の胸ぐらを掴む手を離し、その手で皇帝の頭をグリグリと撫で回した。
「月の女神ディアーナはね………慈悲の女神じゃないわ……
それでも…いいかしら?」
泣き顔の皇帝と側近のジジイは、意味が分からないと顔を見合せている。
ゴメンね、バスガス爆発帝国在住の皆さん。
私、ディアーナは今……この国をプチしたくなってます!
そう、私…慈悲の女神でも、癒しの聖女でもありません。
優しさなんて求めないで。
夫と父は私をこう呼びます。
暴れん坊覇王ディアーナ。
この呼び名、何か色々混ざってない?
この国は、レオンハルト皇帝の先祖が慈悲を与えられた月の聖女ディアナンネを崇めている。
街の中にはディアナンネを象った彫刻や、絵画があったりするが雰囲気はそれぞれ違う。
共通するのは、藍色の髪に金色の瞳の若く美しい少女だというだけ。
儚い美女のようだったり、純粋無垢な少女のようだったり。
テーマに添っての創作に近い。
ディアーナが個人的に一番気に入った彫刻は、ゴツい鎧を身に付けて馬に乗っていた。
「まるで世紀末…覇王のようでステキだわ…。」
この国の民にとって、ディアナンネは身近な神だった。
皆から愛されていた。
小さな教会こそあったが、祈りを捧げる時は心にディアナンネを想えば、どこでいつ祈りを捧げても自由。
ゆえに、あちこちにディアナンネを象ったものがある。
「まるで、お地蔵さんみたいな信仰のされ方ね…
見たら手を合わせて、お饅頭の一つでも置いておきたくなるような」
ディアーナが思ったように、祈るのも、拝むのも、無視するのすら自由。
それこそが、慈悲と自由を司る月の聖女ディアナンネの教えだったハズなのに
五年程前に、聖女ディアナンネ教という名を掲げた宗教が出来た。
その宗教の最たる目的が、ディアナンネを受肉させる事。
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