蒼き英雄(旧)

雨宮結城

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最終章 The Final

Part7

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アスタはスレイヤーのいる次元、さらにはお城にまで来ていた。

「よし、これで全員揃ったわね。(と言っても、二人だけだけど)ミレイユ姫は手に入った。これでヤツらは、簡単には手出しできない。それで、ヤツらへの要求だけど、マキ、要求を出す際は貴方に行ってもらうわ」

「はい」

「要求をのまなかった場合だけど、アスタ、貴方に、見せしめとしてソウルワールドの第一階層の破壊を命じるわ」

「…」

「まあ、ヤツらが要求をのむとは思わないけどね」

「要求をのまないとしってて、何故ミレイユ姫様を誘拐したんだ」

「ん?理由は簡単よ。のまざる得ない要求でも、ヤツらは拒否する。そこで見せしめに、ヤツらの世界を破壊する。ミレイユ姫はそのステップの一に過ぎないわ。利用できるものは利用する。それだけよ」

「…(スレイヤー、コイツは、どこまでも、悪なんだな)それはそうと、俺がここに来た理由は覚えてるよな」

「ええ、覚えてるわよ。ついて来なさい」

「…」

スレイヤーは玉座から降り、アスタをある場所へと案内した。

「…」

「ここよ」

「…」

アスタはある部屋に着き、ドアを開ける。そこは、牢がいくつもある部屋だった。

「…(暗いな。光の魔法を)」

アスタは光魔法を発動させ、球体の光を創りだした。

そのお陰で、辺りが見えるようになった。

「私は外にいるわ。用が済んたら出てきなさい」

スレイヤーはドアを閉めた。

「…」

アスタは前を歩いた。すると、一人の少女がいた、ミレイユ姫だ。

「…ミレイユ姫様」

「…ん、んーん、!?ここは…!?アスタ様」

「良かった、無事か」

「アスタ様、ここは」

「…ここは、スレイヤーのお城、もっと言えばここは俺たちがいた次元じゃなくて、スレイヤーが支配する次元だ」

「!?そんな、!?そうだ、私、マキに気絶させられて…気づいたらここに」

「怖い思いをさせてすまない、でも安心してくれ、貴方の事は、俺が絶対に守るから」

「アスタ様…」

「…」

アスタは、隣の牢へ移動した。そこにも、一人の少女が見えた。

「…」

その少女も、気を失っていた。

「大丈夫か、ヒナ」

「ん、!?ここは…!?アスタ!?」

「良かった、無事みたいだな」

「あぁ、なんとかな」

「ヒナさん」

「?、!?ミレイユ姫様」

「ヒナさんもここにいたんですね」

「?ここ?アスタ、ここは一体どこだ」

「ここは、ソウルワールドとは別の次元、スレイヤーが支配する次元だ」

「!?スレイヤー、あの女か」

「あぁ……」

「ん?」

アスタは、ヒナがいる牢の奥に座っている男の方を向いた。

「アスタ、コイツと知り合いなのか?」

「…もしかしたら、な」

「?」

「なあ、アンタ」

「?」

その男は目を覚まし、辺りを見る。そして、アスタの方を向いた。

「…アス、タ?」

「!?良かった、生きてたんだな、フェイ…」

「!?」

フェイ、その名前を聞き、驚くヒナ。

「ホントに、良かった」

嬉しさのあまり、膝から崩れ落ちるアスタ。

「生きててくれて、良かった」

アスタは涙を流した。

それも当然。四年前、死んだと思われていた親友と、こうして再会できたのだから。

〈回想〉

「貴方にいい情報を渡すわ」

スレイヤーはそう言うと、アスタの肩に手を置き、耳元で囁いた。

「ヒナを人質にとっている」

「!?」

「そして、フェイは生きている」

「!?それは、どういう」

〈現在〉

「…」

嬉しさで涙を止められないアスタ。

「お前、ホントにアスタなのかい」

「ああ、俺は、アスタだ」

「!?アスタ!」

フェイは、アスタの方へ駆け寄る。

「良かった、僕も二度と会えないじゃないかと」

「俺もだ、たく、心配させんなよな」

「…悪かった、連絡する手段がなくて」

「でも、こうしてフェイが生きててくれて、俺は嬉しい」

「あぁ、僕もだ」

「…」

「アスタ、ここからどうするんだい?」

「それは任せてくれ」

「…ん?」

部屋から出てきたアスタ。

「終わったか?」

「あぁ」

「…では行くぞ」

「…」

スレイヤーは、再び玉座の方へ戻り、ソウルワールドにいる者と話を始めた。

「…繋げ」

「はっ!」

「…」

ソウルワールドにいるある人物と繋がった。

「こんにちは、それともこんばんはかな、ユキ」

「…」

繋がったのはユキだった。

「貴方の方から連絡が来るとは」

「まあ、話があるからな」

「ミレイユ姫様は無事ですか」

「ええ、無事よ」

「…そう、それで、話とは」

「ミレイユ姫は今人質、それは理解してると思うけど、私の要求は一つ、ソウルワールドの支配権を、私に委ねること。それだけよ」

「…」

「さあ、どうするの?」

「もし、断ったら?」

「その時は、見せしめに一部の街を破壊するわ」

「…」

「さあ、答えは?」

「………」

「…」

「…分かりました」

「(ふっ)」

「ただ、支配権を委ねるなら、貴方には、これからこちらの世界へと来てほしい」

「…何故そんな事を」

「支配者なら、自ら足を運ぶ時も、必要なんじゃないでしょうか」

「…まあいいだろう、私とマキがそちらに向かおう」

「どうも」

通信が終わった。

「良いのですか?スレイヤー様」

「ええ、まあ、ずっとここにいるのも退屈してたし、たまにはね」

「…」

「さあ、行くわよ、マキ」

「はい」

スレイヤーとマキは、ユキ達がいるソウルワールドへと向かうこととなった。

「アスタ、お前には、ここの護衛を任せる」

「…分かった」

「ではお前ら、ここで待っていろ」

「はっ!」

その場にいた、スレイヤーの部下であり、暗殺部隊の魁平隊。その者達に喝が入った。

「(ナイスだ、ユキ)」

そう、これは、アスタとユキによる作戦だった。

〈回想〉

ユキに、アスタがリアルワールドの人間ではないと話していた時、実はもう一つ話していた。

「…ユキ」

「ん?」

「実は、極秘なんだが、ユキに伝えておくべき事がある」

「極秘?」

「あぁ、フェイは、生きている、かもしれない」

「!?フェイ君が!?」

「あぁ」

「どこから知ったの?」

「スレイヤーだ」

「!?信用できる情報なの?」

「正直な所、ヤツは危険だ。でも、恐らくはホントだと思う」

「…アスタ、何か危険な事しようとしてない」

「…そうかもな」

「ならボクも」

「ダメだ」

「!?」

「この事がスレイヤーにバレる訳にはいかない、だから俺一人で動く。そして、確かめに行く」

「…じゃあ、何でボクに話したの?」

「…ユキにずっと黙ってるってのは、なんだが俺にはできそうになかったからな。ユキには悪いが、上手いこと動いてほしい。あと、コレ」

「…コレは?」

「コレは、連絡用のキューブだ。事が上手く運んだら、一回。緊急事態や、助けが欲しい時は、二回合図する。ユキはこれを持っていてくれ」

「…分かった」

「じゃあ、俺は行ってくる」

「アスタ!」

「…?」

「無茶はしないでね」

「…うん、分かってる」

さらに、ユキが皆に伝える際。

「皆に伝えることが」

「これからのスレイヤーとのやり取り、ボクに全部任せてくれないかな」

「ユキちゃんに?」

「うん」

「何か勝算があるの?」

「…正直、今言えるのは、ボクを信じてほしいってことだけ。無理を言ってるのは分かってる。でも、皆には、ボクがこれから何をしても、ボクを信じてついてきてほしい。お願い、皆の助けが、必要だから」

「…」

ユキに全てを任す、ユキの人柄を知ってる者達だからこそ、あまり心配は無かったが、それより、ユキに大事な事を背負わせてしまうのが、やはり皆考えていた。だが、決断した。

「…」

「…分かったわ」

「!ホントに」

「うん、でも忘れないで、私達は仲間、何か困ったらすぐに頼ってね」

「うん、もちろん」

「…これから先は、ユキちゃん、貴方を信じて、ついて行くわ」

「私も、お姉ちゃんについて行く」

「私も、サオリさんの意見に賛成です」

「私も、信じます」

「まあ、俺様より強い者の意見は聞くさ。スレイヤーをぶっ潰すまで、付き合ってやる」

「皆、ありがとう」

〈そして、現在〉

アスタは、魁平隊を気絶させ、フェイ達がいる牢まで向かった。

「…アスタ?」

アスタに気づいたヒナ。

「待たせたな」

「どうしたんだ?」

「皆、逃げるぞ」

「!?」

アスタは、ヒナ、フェイ、ミレイユ姫の三人を解放した。

そして、スレイヤーとマキがいない今がチャンスと思い、アスタはフェイ達を逃がす作戦を決行した。
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