蒼き英雄(旧)

雨宮結城

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最終章 The Final

Part4

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「どうしてフェイさんの名前が…」

「フェイさん、サオリさんのお知り合いですか?」

「はい。そして、アスタの、親友の名前です」

「!?アスタさんの」

「はい」

「そのフェイさんと言う方は、今どうされているのですか?」

「フェイさんは、四年前モンスターに襲われ、殺されています」

「!?では、何故フェイさんの名前が」

「分かりません。ですが、この事は一刻も早く皆さんに。特にアスタには知らせなくては」

「そうですね、ここは新聖騎士団の方々に任せて、皆さんを呼びましょう」

「そうですね」

サオリとサキは、この情報を一刻も早く皆に伝える為、ミレイユ姫のお城に皆を呼んだ。

「皆さんいますか」

「今度はなんだ、スレイヤーの居場所が分かったのか?」

サオリ達に聞くユウヤ。

「居場所はまだです。ですが、皆さんに伝えなきゃいけないことが、あれ」

「どうしました?サオリさん」

「ユキちゃん、アスタと一緒じゃなかったの?」

「あー、アスタは今考え事してるみたいで、後から行くとは言ってたんだけど」

「そう、じゃあ皆さんに話し終えたら、私がアスタに伝えに行くわ」

「うん」

「それで、話の内容はなんなんだ」

「それは、連合会の方々が、全員殺されました」

「!?」

驚くユキ達。

「それと、連合会が集めてくれた情報、破れていたのもありましたが、それを持ってきました。そして、問題なのは」

「なんだ」

「フェイと言う名前が書かれていたことです」

「!?え、フェイさんの名前が」

驚くミユキ。

「フェイ?誰だソイツは」

ユウヤは当然フェイを知らない為、サキに聞いた。

「フェイさんは、アスタさんの親友だった人です」

「だった?」

「はい、フェイさんは、四年前モンスターに殺されています」

「なっ!?」

「どういう訳か、フェイさんの名前が書かれていた。理由は分かりません。ですが、書かれている以上、何か理由はあるはずです」

「それと、これを見てください」

サオリは、キューブの映像を見せた。

「これは、連合会が一人の少女に殺されていく映像です。そしてこの少女、おそらくスレイヤーに関係がある人物でしょう。しかも、かなり腕のたつ者です」

「確かにこの人、動きが素人じゃないね。たった一人で複数人を相手に、余裕すら残してる」

マキを分析するユキ。

「ええ、それと、フェイさんについては、アスタの親友である以上、アスタには早く伝えようと思っていたんですけど、ユキちゃん、アスタは今、何処にいるの?」

「アスタは、フェイ君と過ごしたあの宿に、あれ?」

「どうしたの?」

「アスタの居場所が分からない」

「え?」

「この世界にいないってこと?」

「分からない。でも、メニューから探してるけど、いないんだ」

「じゃあ、リアルワールドに戻った?でも何で」

「サオリさん、外の方に聞いてみましょう。この世界にいないのなら、もしかしたら外の世界にいるのかもしれません」

「そうですね。ちょっと聞いてきます」

サオリは、青山にシステムコンソールから連絡を取り、アスタが戻っていないか確認をとった。

「聞こえますか。青山さん」

「サオリ君かい?」

「はい」

「どうしたんだい?」

「アスタの事なんですけど、そっちに戻っていませんか?」

「アスタ君かい?アスタ君なら、今もカプセルの中だよ。なにやら数分前は、こっちに戻ってきたみたいだが」

「そうですか、分かりました。教えて頂きありがとうございます」

通信を切ったサオリ。

「…アスタ、貴方はどこへ…」

皆の所へ戻ったサオリ。サキがサオリに聞いた。

「どうでした?」

「アスタは、外の世界にはいませんでした」

「そんな、では何処に」

「…分かりません。…とりあえず、スレイヤーからの襲撃を防ぐ準備をしておきましょう」

「準備ですか?」

サオリに聞くミユキ。

「ええ、と言うのも」

「スレイヤーに対して敵意を向けているのは、連合会の方々と私達だけでしたが、連合会が殺された以上。スレイヤーはおそらく、私達を狙うはずです。ですので、スレイヤーからの襲撃を防ぐ為にも、今は準備しましょう。アスタの事は、準備してる間に、私が探してきます。皆さんは、ここで待っていてください。では、行って…」

サオリがアスタを探しに行こうとした瞬間、お城の扉が開いた。

「?」

「ハァ、ハァ、会議中すみません」

そこには、新聖騎士団の団員の一人がサオリ達の所へと来た。

「どうしたんですか?」

「それが、一人の少女がこの城に乗り込んで来たんです」

「一人の少女、ですか?」

「はい、たった一人なのに、強さが段違いなんです」

「分かりました。皆さん、ひとまず外へ出ましょう」

サオリの言葉を合図に、サオリ達は城に乗り込んで来たという少女の所へと向かった。

「(一人の少女、まさか)」

サオリは、その人物が連合会を殺した者と同一犯である可能性を考えていた。

「…」

「…!」

その一人の少女の所まで着いたサオリ達。

「…貴方達が、この世界で最強の剣士様達でしょうか」

「貴方、連合会の方々を殺した人ですね」

「いかにも」

「なぜ殺したのですか」

「スレイヤー様からのご命令です。私はスレイヤー様の忠実なるしもべにして、右腕の剣士、マキです」

「…スレイヤー、自分の手は汚さず、貴方に命じるまま、自分だけは安全な場所にいる。随分と臆病なのですね」

「スレイヤー様は優しいのです。自分が出ればたくさんの死者が出る。なので私の様な部下に仕事を任せ、スレイヤー様の望む世界を創る。その目的の中で、邪魔な存在は私が片付ける。これが役割と言うものです」

「そんなものは、優しさとは言わない!」

怒り剣を抜くユキ。それに続いてサオリ達も剣を抜く。

「…まあ、あなた方がどう思うかは自由ですが、今相手をするのは、私ではありません」

「…どういう事だ」

マキに問うユキ。

「街の方々が、心配ではありませんか?」

「…!」

その瞬間、ミレイユ姫のお城が存在する第二十階層の街に、突然爆発が起きた。

「!これは」

爆発に驚くサオリ。

「始まりましたね」

「まさか、ボク達がここにいる事を知ってて、街の方の注意を逸らしたのか」

「はい、その通りです」

「…」

「では役割の為、私は少し失礼します」

「待て!」

「…」

ユキがマキを止めようとしたが、瞬間移動で逃げられてしまった。

「…逃げられた」

「とにかく、街の人達を守らないと」

「そうですね、今すぐ向かって…」

ミユキが言い、それに続いてサキも発言し、街へと行こうとした。

「(サキ様!)」

ユキ達が街へ助けに行こうとした途端、第十九階層の牢獄を管理している者から、サキに連絡が入った。

「(!どうしましたか)」

「(それが、また腕輪の魔法が解かれ、罪人達が暴れ回っているのです)」

「(なっ!?)」

「(我々だけでは対処できません、どうか増援を!)」

「(分かりました)サオリさん」

「…どうしましたか」

「また牢獄で、罪人達が暴れているみたいです。私はこれから牢獄へ向かいます。ですから、街の方はお願いします」

「…では、役割を決めましょう。ユキちゃんとミユキちゃんとメイさんは、このまま街へと向かって対処してください。私とサキさんは牢獄へ向かいます。ユウヤさんは、ここでミレイユ姫様を守っていてください」

「俺は守りか」

「はい、いつどこで敵が現れるか分かりません。ミレイユ姫様のお城が手薄になってはいけないと思います。なので、ユウヤさんにはここの守りをお願いします」

「…わーたよ」

「ありがとうございます。では皆さん、対処しましょう」

「了解!」

皆の役割分担を決め、返事をし、おのおのが向かう先のトラブルへ、対処に向かった。

だが、街のトラブルは、スレイヤーの罠だった。マキがお城へ侵入し、街への注意を逸らして、牢獄でもパニックを起こし、ユキ達がそれぞれ対処に向かう。その動きをスレイヤーはよんでいた。そして、ミレイユ姫のお城が手薄になるのも、スレイヤーは当然考えていた。
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