蒼き英雄

雨宮結城

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第五章 過去編

Part3

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ゲータ達が魁平隊に入り、戦士となった一年後。

ゲータ、ミユ、カイン、メギドは、魁平隊の仲間達と共に、スレイヤーからの命令の元、任務を行なっていた。

その任務は、村や街に現れたモンスター狩りだ。

このモンスター達が現れては、魁平隊が出動し、モンスター達を狩っていた。

「ゲータ!そっち行ったぞ!」

「おう!カインの方も、まだいるぞ」

「ああ、分かってる」

「カァー!」

「…フッ!」

ゲータの拳による魔力攻撃に、モンスターは消滅した。

「…ハァ!」

「キュルー!」

カインも、モンスターを倒していった。

「ミユ、メギド、そっちは終わったか?」

「ええ、ゲータの方も終わったみたいね」

「おうよ」

「こっちも片付いた」

「流石メギドだな」

「ゲータに言われてもな。そっちの方が早く終わったろ」

「そう言うなってメギド、お互いモンスターを狩れたんだ。これでこの村も、一時的かもしれないが、平和になる」

「…そうだな」

そう、モンスターは、いつ、どこに現れるかは不明な為、一度救った場所に、またモンスターが現れるのは、よくあるケースなのだ。

そしてその日の夜、ゲータとミユは、スレイヤーのお城の部屋から星を見つつ、話し合っていた。

「今日もゲータの大活躍だったわね」

「そんな事ねーよ、てか、戦闘中俺の事見えてたのか?ミユ様もお強くなったな」

「もう、からかってるつもり?そりゃあ、ゲータはあまりにも強いんだもの。嫌でも目に映るわよ」

「ふふ、そうか」

「ええ、今や魁平隊のリーダーはゲータなんだから。しっかりしてよね」

「ああ、分かってるさ。……なあミユ」

「?どうしたの?」

「俺、ダインさんの様に、リーダーしてるかな」

「…そうね。ゲータなりに、できてるとは思うわよ」

「比べるもんじゃないんだろうけど、リーダーともなると、やっぱりあの人の方がこうできていたんじゃないかと、考える時もあってな」

「そうね。ダインさんは、ホントにリーダーって感じだったし、急な任務が入って、殉職してしまったものね」

「あの人が殺されて、当然皆悲しんだ。かくゆう俺も……。スレイヤー様は、次のリーダーは俺と、決めて下さりはしたが、昔も今も思うよ。俺って、リーダーって器じゃない。誰かを引っ張る力は、やっぱりダインさんの方が圧倒的にあった。それは誰しもが思ってる」

「何が言いたいの?」

「俺なんかが、リーダーでホントに良いのかな」

「…バカね」

優しい声で答えるミユ。

「え?」

「ゲータだって、十分リーダーしてるわよ。覚えてる?昔私達の村が襲われた時、貴方もそうだけど、私やカイン、メギドは何も言えなかった。でも、貴方だけは、一人立ち上がった。その時思ったわ。私はこの人に、とことんついて行こうって。その時の貴方は、間違いなくリーダーだった。貴方が立ち上がったからこそ、私やカイン、メギドも、貴方についていこうとなった。貴方は、貴方が思ってる以上に、素晴らしいリーダーよ」

「ミユ…」

「さあ、もう寝ましょ。明日だって、きっと任務があるわ」

「…そうだな」

ゲータとミユは、各々のベットに入った。

「ありがとな、ミユ」

「いえ、それとゲータ」

「ん?」

「…いえ、やっぱりなんでもないわ」

「そうか、おやすみ、ミユ」

「ええ、おやすみ」

二人は眠りについた。

そして朝になり、目が覚めるゲータ。

「…?ミユ、もういない」

ゲータは着替え、部屋の扉を開ける。開けると、道の脇で、ミユと、スレイヤーの右腕剣士である、マキが二人で話しているのを見かけた。

「?(ミユと、あの人は確か、マキさん。二人で何を…あ、行っちゃった)そう言えば、昨日何か言いかけてたな。(一体、何を言いかけたんだ?)」

その日も、ゲータ達はスレイヤーから命令を受け、昨日と同じメンバーで、モンスター狩りに向かった。

「ふっ!」

「ハァ!」

ゲータは、いつも通り戦闘していたが、朝のミユの事が気になり、ちょくちょくミユの方を見ていた。

だが、特に変わった様子はなかった。

そして任務が終わり、お城へと戻ってきたゲータ達。

「今日も疲れたー、なあメギド」

「ふんっ、俺はまだまだ余裕だな」

「お!さすがだな」

「まあな」

そして、部屋が別々のため、分かれるゲータ、ミユとカインとメギド。

「じゃあ後でな」

「おう」

「…」

「…なあ、ミ」

「ミユ」

「?」

声の方を振り向くゲータ。そこには、マキがいた。

「マキさん」

「ミユ、もういいかしら」

「はい!じゃあゲータ、先に部屋に行ってて」

「あ、ああ」

マキとミユは、二人でどこかお城内の部屋に向かっていった。

「…とりあえず、部屋に行くか」

ひとまず部屋に向かうゲータ。だが、部屋に着いた時、やはりミユの事が気になった。

「…ミユには悪いが、やっぱり」

ゲータはミユの魔力を探し、感知した。

「いた、ここは、地下か?」

地下にいることに気になりはしたが、ミユの元へと、ゲータは向かった。

〈その頃、ミユとマキは〉

「それで、話と言うのは」

ミユとマキは、地下の部屋に着き、話していた。

「はい、この事は、内密でお願いしたいのですが、スレイヤー様が、人を殺しているかもしれないんです」

「…それは、どういう事?」

「ダインさん、覚えていますか?」

「ええ」

「そのダインさんの殺害された現場に行った時、死体を見せてもらいました。そしたら、ダインさんはモンスターに殺されたと聞いていましたが、死体を見るに、モンスターではなく、人に斬られたように見えたんです」

「どうしてそう思うの?」

「それは、斬られた箇所が、明らかに人の急所を狙い斬られたものだったからです。そして、その斬られ方、私やゲータ、カイン、メギドのいた村で起きたあの事件、あの時も私は死体を見ました。ダインさんの殺され方が、私達の村で起きた事件と、とても殺され方が似ていました。この二つの事件は、無関係ではないと、私は思っています」

「…」

「そして、この場所で訓練していた時、図書室で本を読みました。するとそこには、人がモンスターを呼び覚ます魔法や、自身の魔力を、あたかも他人の魔力と入れ替えることができる、そしてそれは、暗殺者がよく使う魔法。私はそれを見た時、一つの可能性を考えました」

「それが、スレイヤー様の事だと」

「はい、スレイヤー様程の方なら、人の急所を的確に斬ることや、モンスターを大量に召喚することなど容易い事。そしてそれを私達に狩らせる。なぜその方法を使うかは、私も分かりませんが、とにかく、スレイヤー様が、人を殺しているかもしれないと思い、今貴方にお話しました」

「なるほど、話は分かったわ」

「随分と冷静ですね。貴方はどう思っているのですか?」

「貴方は」

「…」

「知りすぎてしまったのね」

「え?」

〈その頃、ゲータも地下に到着し、ミユの部屋まで向かっていた〉

「(ミユ、どこだ?)」

〈そしてミユの方は〉

「ごめんなさいね」

「え?それはどういう」

「私、マキじゃないの」

「?どういう事ですか?」

「それはね」

マキは、魔法を発動させた。だがその魔法は、人を元の姿に戻す魔法だった。

マキに化けていたその正体は。

「!?」

「こういう事よ」

「スレイヤー、様」

スレイヤーが、マキに化け、ミユと会話していたのだ。

「いやー、驚いたわ。貴方がここまで、勘のいい娘だとわね」

「…」

驚きで、何も発せられないミユ。

「貴方の推理、中々のものだわ。でも、少し違うわね」

「え…」

「どうせなんだし、答えを授けましょう」

「…」

「ダインと貴方達の村の事件、あれは確かに、首謀者は私よ。でもね、あれをやったのは、マキよ」

「!?そんな、なんで、マキさんが…」

「マキには随分と、色んな仕事を頼んだわ。貴方達の村に注意喚起として行った。そう貴方達は思ってるでしょうけど、ホントはね、戦士になりえる重要な存在を探していたのよ。貴方達の世代で言うなら、ゲータがまさにそうだった」

「!?ゲータが!?(だから、マキさんはゲータを見ていた)」

「しかもゲータは、覚醒という私が持てなかった大いなる力も秘めている。覚醒持ちの子を産むのは、とても稀な事、でも、一度生まれれば、その親からまた覚醒持ちが生まれることはない、だから、用済みとして、マキには貴方達の村の暗殺を頼んだわ」

「!?」

「ホントは、ゲータの親だけを殺す予定だったけど、一つの家庭だけが不幸じゃ可哀想でしょ?だから村の者全員を始末させたのよ」

「そんな、理由で…大人だけでなく、子供まで」

「殺すのに大人も子供も関係ないわ。ようは邪魔かどうかよ。私は邪魔な存在だと判断し殺しを命じた。この世界に村や街がいくつあるか知ってる?その内の何個かが消えた所で、世界は大して気にしないわ」

「…」

「そしてダイン、あの男も勘のいい奴だったわ、私の正体まであと一歩と言う所まできたもの。でもその前に、マキに殺しを命じたけどね」

「ダインさんまで…」

「そして」

「!」

「人の心配ばかりしてる場合じゃないわよ。ミユ」

「!」

その頃ゲータは部屋を探し、やっとの思いでミユがいた部屋まで辿りついた。

「ここか」

そして扉を開けた。

「ミユ、!?」

ミユは横に倒れていた。

「ミユ!だいじょぶ、か…」

ゲータがミユを抱えると、ミユの心臓から血が出ていた。

「!?ミユ、おい!ミユ!嘘だろ」

「あら?」

「!?」

「ゲータ、こんな所に来ていたのね」

「スレイヤー様、大変なんです!ミユが…」

ゲータがスレイヤーの方を見ると、スレイヤーの右手が血で染まっていた。

「…スレイヤー、様、その血は…」

「ああ、この血。ミユのよ」

「!?」

「この娘、マキに化けた私に、私の正体を見破られてね」

「正体?一体何を…それに、マキさんに化けたって」

「にしても」

「…」

「この娘も愚かよね。たしかに私本人に確認を取らず、マキに伝えたのは良いわ。でも、魔力を入れ替える事まで知っていたんだから、マキにも注意を向けるべきでしょうに」

「…」

「私の右腕であるマキにも」

「貴方が、ミユを」

「あら?この状況で私じゃないとでも?」

「!」

ゲータはミユをゆっくり寝かせ、その後、スレイヤーに向け、拳に魔力を込め、攻撃を仕掛けようとした。しかし。

「!」

「あら、ダメよ。そんな事しても」

その攻撃は、あっさり止められてしまう。

「くっ!」

「いくら覚醒持ちの貴方でも、その力を使いこなしていない貴方では、私には勝てないわ。最も、その力を使っても、私は負ける気がしないけど」

「!」

ゲータは左手に魔力を込め、再度攻撃するが、それもあっけなく止められる。

「!?」

そしてスレイヤーは、ゲータの顔に左手を当て、ゲータを洗脳した。

「そうね、せっかくなんだし、貴方にはこれから、魁平隊の裏の顔、暗殺部隊へと入団をお願いするわね」

「!」

「おい」

「はっ!」

スレイヤーが一声呼ぶと、そこにマキが現れた。

「マキ、今日からゲータは、貴方の所の暗殺部隊の隊員よ。この子を導いてあげてね」

「はい、スレイヤー様」

「さてゲータ、貴方にはこれから知識を与えるわ、よく覚えるのよ」

「!」

ゲータは抗ったが、スレイヤーには敵わなかった。

そこからゲータは、スレイヤーから、自身に覚醒の力がある事を教わった。それと、ゲータに宿っている負の感情を元に、ゲータにもう一つの人格を創り、元のゲータの人格を、新たに出てきた負の感情の人格に支配させた。

そうする事により、ゲータはスレイヤーの意のままに動く、洗脳戦士へと生まれ変わった。

そしてゲータは、暗殺部隊の一人として、数々の暗殺をこなして見せた。

そしてある時、スレイヤーから、別の次元にいる覚醒持ちを連れてこいと、ゲータに命令が下った。

そしてゲータは、その次元、地球へ向かった。

だがその時、いや、洗脳された時から、ゲータは支配からは逃れていないが、心は残っていた。

その為、自我はあったのだ。その為ゲータは、連れて来いとは言われたが、その覚醒持ちの人物を、仲間に引き入れようと考えた。だが、その考えを負の人格にバレ、その覚醒持ちを殺す方へと、考えがいってしまった。

だが、どうしようもない元のゲータは、申し訳ないとは思いつつも、殺してでも、その覚醒持ちの力も取り込み、スレイヤーに復讐を誓った。

そして、その覚醒持ち、アスタとの決戦時。

「…起きない。死んだか(そんな、殺してしまった)まあ、俺も覚醒状態になったこの状態なら、なかなかの結果だったな」

「ハァ、アスタさん!」

「ん?アイツら、来ていたのか、まあ少し考えれば当然か。(もう、勝てないのか)コイツを取り込む前に、邪魔なアイツらを始末するか(ダメだ、これ以上、殺しは!)」

アスタを殺し、サオリ達の方へ行こうとしたゲータ。だが、向かう途中、後ろから音がした。

「!?(まさか!)」

「…」

「おいおい、マジか、アスタ(生きている!?)。心臓を握り潰したんだぞ、なのに」

音の先には、死んだと思われていたアスタが、蒼い光に包まれ、復活したのだ。

「フッ、やはりお前は最高だよ、アスタ!(まだ、希望が)」

「ハァ」

そしてアスタは、覚醒の更に上の力、白い髪に赤い瞳から、蒼い髪に黄色い瞳へと進化した。

「っ!」

「フッ、ハハハ、良いぞ、その力、その未知の力こそ、俺が求めていたモノだ!(この力、この力なら、奴に!)どっちが勝ち残るか、勝負といこうか!」

「くっ、ハァー!」

アスタはゲータの方へ剣を構えた瞬間、目にも止まらぬ速さでゲータに迫った。

「!」

「っ!くっ、んー!」

「ハハハ、良いぞいいぞ、その意気だ!(これ程の力があれば、奴に勝てる!)」

「んー!」

ゲータは、なんとかして、スレイヤーに勝つ為に、アスタを取り込もうと考えた。

「んっ、んーん!」

 「(もう少し、もう少しでヤツを)(もう少しで、この少年を!)」

「んっ」

ゲータの力に負けそうなアスタだったが、そこで、彼の、フェイの声がアスタを動かした。

「いけ!アスタ!」

「!?、んっ、んーん、ハァーァ!」

「(ん!?)何だ、この力は(これ程の力、俺では勝てない、なら)」

「これが」

「!?」

「人間の、想いの力だぁー!」

「んっ!」

「ハァーァ!」

「くっ、んっ、んーん。こんな、所で、(良いんだ)!?(勝てないのなら、俺がアスタを取り込む必要はない。後は、彼に、アスタに託す)」

ゲータはこの瞬間、仲間であるカイン、メギド、そして、恋人のミユの存在を思い出し、心で涙を流した。

「…フン、俺の負けか(後は)、死んでも忘れぬぞ、アスタ、いや(頼んだ)、蒼き英雄よ(英雄、アスタ)」

そう言うと、ゲータのバリアは破られ、アスタの剣が、ゲータの心臓を貫き、ゲータは消滅した。

「ハァ、ハァ、ハァ」

あまりの疲労に、アスタは仰向けに倒れる。

「やっと、終わったよ、フェイ」

そして。

「(後は頼んだ、アスタ。どうかスレイヤーを、倒してくれ)」

ゲータの微かな意識が、アスタに願った。

第五章 過去編 完
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