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第五章 過去編
Part3
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ゲータ達が魁平隊に入り、戦士となった一年後。
ゲータ、ミユ、カイン、メギドは、魁平隊の仲間達と共に、スレイヤーからの命令の元、任務を行なっていた。
その任務は、村や街に現れたモンスター狩りだ。
このモンスター達が現れては、魁平隊が出動し、モンスター達を狩っていた。
「ゲータ!そっち行ったぞ!」
「おう!カインの方も、まだいるぞ」
「ああ、分かってる」
「カァー!」
「…フッ!」
ゲータの拳による魔力攻撃に、モンスターは消滅した。
「…ハァ!」
「キュルー!」
カインも、モンスターを倒していった。
「ミユ、メギド、そっちは終わったか?」
「ええ、ゲータの方も終わったみたいね」
「おうよ」
「こっちも片付いた」
「流石メギドだな」
「ゲータに言われてもな。そっちの方が早く終わったろ」
「そう言うなってメギド、お互いモンスターを狩れたんだ。これでこの村も、一時的かもしれないが、平和になる」
「…そうだな」
そう、モンスターは、いつ、どこに現れるかは不明な為、一度救った場所に、またモンスターが現れるのは、よくあるケースなのだ。
そしてその日の夜、ゲータとミユは、スレイヤーのお城の部屋から星を見つつ、話し合っていた。
「今日もゲータの大活躍だったわね」
「そんな事ねーよ、てか、戦闘中俺の事見えてたのか?ミユ様もお強くなったな」
「もう、からかってるつもり?そりゃあ、ゲータはあまりにも強いんだもの。嫌でも目に映るわよ」
「ふふ、そうか」
「ええ、今や魁平隊のリーダーはゲータなんだから。しっかりしてよね」
「ああ、分かってるさ。……なあミユ」
「?どうしたの?」
「俺、ダインさんの様に、リーダーしてるかな」
「…そうね。ゲータなりに、できてるとは思うわよ」
「比べるもんじゃないんだろうけど、リーダーともなると、やっぱりあの人の方がこうできていたんじゃないかと、考える時もあってな」
「そうね。ダインさんは、ホントにリーダーって感じだったし、急な任務が入って、殉職してしまったものね」
「あの人が殺されて、当然皆悲しんだ。かくゆう俺も……。スレイヤー様は、次のリーダーは俺と、決めて下さりはしたが、昔も今も思うよ。俺って、リーダーって器じゃない。誰かを引っ張る力は、やっぱりダインさんの方が圧倒的にあった。それは誰しもが思ってる」
「何が言いたいの?」
「俺なんかが、リーダーでホントに良いのかな」
「…バカね」
優しい声で答えるミユ。
「え?」
「ゲータだって、十分リーダーしてるわよ。覚えてる?昔私達の村が襲われた時、貴方もそうだけど、私やカイン、メギドは何も言えなかった。でも、貴方だけは、一人立ち上がった。その時思ったわ。私はこの人に、とことんついて行こうって。その時の貴方は、間違いなくリーダーだった。貴方が立ち上がったからこそ、私やカイン、メギドも、貴方についていこうとなった。貴方は、貴方が思ってる以上に、素晴らしいリーダーよ」
「ミユ…」
「さあ、もう寝ましょ。明日だって、きっと任務があるわ」
「…そうだな」
ゲータとミユは、各々のベットに入った。
「ありがとな、ミユ」
「いえ、それとゲータ」
「ん?」
「…いえ、やっぱりなんでもないわ」
「そうか、おやすみ、ミユ」
「ええ、おやすみ」
二人は眠りについた。
そして朝になり、目が覚めるゲータ。
「…?ミユ、もういない」
ゲータは着替え、部屋の扉を開ける。開けると、道の脇で、ミユと、スレイヤーの右腕剣士である、マキが二人で話しているのを見かけた。
「?(ミユと、あの人は確か、マキさん。二人で何を…あ、行っちゃった)そう言えば、昨日何か言いかけてたな。(一体、何を言いかけたんだ?)」
その日も、ゲータ達はスレイヤーから命令を受け、昨日と同じメンバーで、モンスター狩りに向かった。
「ふっ!」
「ハァ!」
ゲータは、いつも通り戦闘していたが、朝のミユの事が気になり、ちょくちょくミユの方を見ていた。
だが、特に変わった様子はなかった。
そして任務が終わり、お城へと戻ってきたゲータ達。
「今日も疲れたー、なあメギド」
「ふんっ、俺はまだまだ余裕だな」
「お!さすがだな」
「まあな」
そして、部屋が別々のため、分かれるゲータ、ミユとカインとメギド。
「じゃあ後でな」
「おう」
「…」
「…なあ、ミ」
「ミユ」
「?」
声の方を振り向くゲータ。そこには、マキがいた。
「マキさん」
「ミユ、もういいかしら」
「はい!じゃあゲータ、先に部屋に行ってて」
「あ、ああ」
マキとミユは、二人でどこかお城内の部屋に向かっていった。
「…とりあえず、部屋に行くか」
ひとまず部屋に向かうゲータ。だが、部屋に着いた時、やはりミユの事が気になった。
「…ミユには悪いが、やっぱり」
ゲータはミユの魔力を探し、感知した。
「いた、ここは、地下か?」
地下にいることに気になりはしたが、ミユの元へと、ゲータは向かった。
〈その頃、ミユとマキは〉
「それで、話と言うのは」
ミユとマキは、地下の部屋に着き、話していた。
「はい、この事は、内密でお願いしたいのですが、スレイヤー様が、人を殺しているかもしれないんです」
「…それは、どういう事?」
「ダインさん、覚えていますか?」
「ええ」
「そのダインさんの殺害された現場に行った時、死体を見せてもらいました。そしたら、ダインさんはモンスターに殺されたと聞いていましたが、死体を見るに、モンスターではなく、人に斬られたように見えたんです」
「どうしてそう思うの?」
「それは、斬られた箇所が、明らかに人の急所を狙い斬られたものだったからです。そして、その斬られ方、私やゲータ、カイン、メギドのいた村で起きたあの事件、あの時も私は死体を見ました。ダインさんの殺され方が、私達の村で起きた事件と、とても殺され方が似ていました。この二つの事件は、無関係ではないと、私は思っています」
「…」
「そして、この場所で訓練していた時、図書室で本を読みました。するとそこには、人がモンスターを呼び覚ます魔法や、自身の魔力を、あたかも他人の魔力と入れ替えることができる、そしてそれは、暗殺者がよく使う魔法。私はそれを見た時、一つの可能性を考えました」
「それが、スレイヤー様の事だと」
「はい、スレイヤー様程の方なら、人の急所を的確に斬ることや、モンスターを大量に召喚することなど容易い事。そしてそれを私達に狩らせる。なぜその方法を使うかは、私も分かりませんが、とにかく、スレイヤー様が、人を殺しているかもしれないと思い、今貴方にお話しました」
「なるほど、話は分かったわ」
「随分と冷静ですね。貴方はどう思っているのですか?」
「貴方は」
「…」
「知りすぎてしまったのね」
「え?」
〈その頃、ゲータも地下に到着し、ミユの部屋まで向かっていた〉
「(ミユ、どこだ?)」
〈そしてミユの方は〉
「ごめんなさいね」
「え?それはどういう」
「私、マキじゃないの」
「?どういう事ですか?」
「それはね」
マキは、魔法を発動させた。だがその魔法は、人を元の姿に戻す魔法だった。
マキに化けていたその正体は。
「!?」
「こういう事よ」
「スレイヤー、様」
スレイヤーが、マキに化け、ミユと会話していたのだ。
「いやー、驚いたわ。貴方がここまで、勘のいい娘だとわね」
「…」
驚きで、何も発せられないミユ。
「貴方の推理、中々のものだわ。でも、少し違うわね」
「え…」
「どうせなんだし、答えを授けましょう」
「…」
「ダインと貴方達の村の事件、あれは確かに、首謀者は私よ。でもね、あれをやったのは、マキよ」
「!?そんな、なんで、マキさんが…」
「マキには随分と、色んな仕事を頼んだわ。貴方達の村に注意喚起として行った。そう貴方達は思ってるでしょうけど、ホントはね、戦士になりえる重要な存在を探していたのよ。貴方達の世代で言うなら、ゲータがまさにそうだった」
「!?ゲータが!?(だから、マキさんはゲータを見ていた)」
「しかもゲータは、覚醒という私が持てなかった大いなる力も秘めている。覚醒持ちの子を産むのは、とても稀な事、でも、一度生まれれば、その親からまた覚醒持ちが生まれることはない、だから、用済みとして、マキには貴方達の村の暗殺を頼んだわ」
「!?」
「ホントは、ゲータの親だけを殺す予定だったけど、一つの家庭だけが不幸じゃ可哀想でしょ?だから村の者全員を始末させたのよ」
「そんな、理由で…大人だけでなく、子供まで」
「殺すのに大人も子供も関係ないわ。ようは邪魔かどうかよ。私は邪魔な存在だと判断し殺しを命じた。この世界に村や街がいくつあるか知ってる?その内の何個かが消えた所で、世界は大して気にしないわ」
「…」
「そしてダイン、あの男も勘のいい奴だったわ、私の正体まであと一歩と言う所まできたもの。でもその前に、マキに殺しを命じたけどね」
「ダインさんまで…」
「そして」
「!」
「人の心配ばかりしてる場合じゃないわよ。ミユ」
「!」
その頃ゲータは部屋を探し、やっとの思いでミユがいた部屋まで辿りついた。
「ここか」
そして扉を開けた。
「ミユ、!?」
ミユは横に倒れていた。
「ミユ!だいじょぶ、か…」
ゲータがミユを抱えると、ミユの心臓から血が出ていた。
「!?ミユ、おい!ミユ!嘘だろ」
「あら?」
「!?」
「ゲータ、こんな所に来ていたのね」
「スレイヤー様、大変なんです!ミユが…」
ゲータがスレイヤーの方を見ると、スレイヤーの右手が血で染まっていた。
「…スレイヤー、様、その血は…」
「ああ、この血。ミユのよ」
「!?」
「この娘、マキに化けた私に、私の正体を見破られてね」
「正体?一体何を…それに、マキさんに化けたって」
「にしても」
「…」
「この娘も愚かよね。たしかに私本人に確認を取らず、マキに伝えたのは良いわ。でも、魔力を入れ替える事まで知っていたんだから、マキにも注意を向けるべきでしょうに」
「…」
「私の右腕であるマキにも」
「貴方が、ミユを」
「あら?この状況で私じゃないとでも?」
「!」
ゲータはミユをゆっくり寝かせ、その後、スレイヤーに向け、拳に魔力を込め、攻撃を仕掛けようとした。しかし。
「!」
「あら、ダメよ。そんな事しても」
その攻撃は、あっさり止められてしまう。
「くっ!」
「いくら覚醒持ちの貴方でも、その力を使いこなしていない貴方では、私には勝てないわ。最も、その力を使っても、私は負ける気がしないけど」
「!」
ゲータは左手に魔力を込め、再度攻撃するが、それもあっけなく止められる。
「!?」
そしてスレイヤーは、ゲータの顔に左手を当て、ゲータを洗脳した。
「そうね、せっかくなんだし、貴方にはこれから、魁平隊の裏の顔、暗殺部隊へと入団をお願いするわね」
「!」
「おい」
「はっ!」
スレイヤーが一声呼ぶと、そこにマキが現れた。
「マキ、今日からゲータは、貴方の所の暗殺部隊の隊員よ。この子を導いてあげてね」
「はい、スレイヤー様」
「さてゲータ、貴方にはこれから知識を与えるわ、よく覚えるのよ」
「!」
ゲータは抗ったが、スレイヤーには敵わなかった。
そこからゲータは、スレイヤーから、自身に覚醒の力がある事を教わった。それと、ゲータに宿っている負の感情を元に、ゲータにもう一つの人格を創り、元のゲータの人格を、新たに出てきた負の感情の人格に支配させた。
そうする事により、ゲータはスレイヤーの意のままに動く、洗脳戦士へと生まれ変わった。
そしてゲータは、暗殺部隊の一人として、数々の暗殺をこなして見せた。
そしてある時、スレイヤーから、別の次元にいる覚醒持ちを連れてこいと、ゲータに命令が下った。
そしてゲータは、その次元、地球へ向かった。
だがその時、いや、洗脳された時から、ゲータは支配からは逃れていないが、心は残っていた。
その為、自我はあったのだ。その為ゲータは、連れて来いとは言われたが、その覚醒持ちの人物を、仲間に引き入れようと考えた。だが、その考えを負の人格にバレ、その覚醒持ちを殺す方へと、考えがいってしまった。
だが、どうしようもない元のゲータは、申し訳ないとは思いつつも、殺してでも、その覚醒持ちの力も取り込み、スレイヤーに復讐を誓った。
そして、その覚醒持ち、アスタとの決戦時。
「…起きない。死んだか(そんな、殺してしまった)まあ、俺も覚醒状態になったこの状態なら、なかなかの結果だったな」
「ハァ、アスタさん!」
「ん?アイツら、来ていたのか、まあ少し考えれば当然か。(もう、勝てないのか)コイツを取り込む前に、邪魔なアイツらを始末するか(ダメだ、これ以上、殺しは!)」
アスタを殺し、サオリ達の方へ行こうとしたゲータ。だが、向かう途中、後ろから音がした。
「!?(まさか!)」
「…」
「おいおい、マジか、アスタ(生きている!?)。心臓を握り潰したんだぞ、なのに」
音の先には、死んだと思われていたアスタが、蒼い光に包まれ、復活したのだ。
「フッ、やはりお前は最高だよ、アスタ!(まだ、希望が)」
「ハァ」
そしてアスタは、覚醒の更に上の力、白い髪に赤い瞳から、蒼い髪に黄色い瞳へと進化した。
「っ!」
「フッ、ハハハ、良いぞ、その力、その未知の力こそ、俺が求めていたモノだ!(この力、この力なら、奴に!)どっちが勝ち残るか、勝負といこうか!」
「くっ、ハァー!」
アスタはゲータの方へ剣を構えた瞬間、目にも止まらぬ速さでゲータに迫った。
「!」
「っ!くっ、んー!」
「ハハハ、良いぞいいぞ、その意気だ!(これ程の力があれば、奴に勝てる!)」
「んー!」
ゲータは、なんとかして、スレイヤーに勝つ為に、アスタを取り込もうと考えた。
「んっ、んーん!」
「(もう少し、もう少しでヤツを)(もう少しで、この少年を!)」
「んっ」
ゲータの力に負けそうなアスタだったが、そこで、彼の、フェイの声がアスタを動かした。
「いけ!アスタ!」
「!?、んっ、んーん、ハァーァ!」
「(ん!?)何だ、この力は(これ程の力、俺では勝てない、なら)」
「これが」
「!?」
「人間の、想いの力だぁー!」
「んっ!」
「ハァーァ!」
「くっ、んっ、んーん。こんな、所で、(良いんだ)!?(勝てないのなら、俺がアスタを取り込む必要はない。後は、彼に、アスタに託す)」
ゲータはこの瞬間、仲間であるカイン、メギド、そして、恋人のミユの存在を思い出し、心で涙を流した。
「…フン、俺の負けか(後は)、死んでも忘れぬぞ、アスタ、いや(頼んだ)、蒼き英雄よ(英雄、アスタ)」
そう言うと、ゲータのバリアは破られ、アスタの剣が、ゲータの心臓を貫き、ゲータは消滅した。
「ハァ、ハァ、ハァ」
あまりの疲労に、アスタは仰向けに倒れる。
「やっと、終わったよ、フェイ」
そして。
「(後は頼んだ、アスタ。どうかスレイヤーを、倒してくれ)」
ゲータの微かな意識が、アスタに願った。
第五章 過去編 完
ゲータ、ミユ、カイン、メギドは、魁平隊の仲間達と共に、スレイヤーからの命令の元、任務を行なっていた。
その任務は、村や街に現れたモンスター狩りだ。
このモンスター達が現れては、魁平隊が出動し、モンスター達を狩っていた。
「ゲータ!そっち行ったぞ!」
「おう!カインの方も、まだいるぞ」
「ああ、分かってる」
「カァー!」
「…フッ!」
ゲータの拳による魔力攻撃に、モンスターは消滅した。
「…ハァ!」
「キュルー!」
カインも、モンスターを倒していった。
「ミユ、メギド、そっちは終わったか?」
「ええ、ゲータの方も終わったみたいね」
「おうよ」
「こっちも片付いた」
「流石メギドだな」
「ゲータに言われてもな。そっちの方が早く終わったろ」
「そう言うなってメギド、お互いモンスターを狩れたんだ。これでこの村も、一時的かもしれないが、平和になる」
「…そうだな」
そう、モンスターは、いつ、どこに現れるかは不明な為、一度救った場所に、またモンスターが現れるのは、よくあるケースなのだ。
そしてその日の夜、ゲータとミユは、スレイヤーのお城の部屋から星を見つつ、話し合っていた。
「今日もゲータの大活躍だったわね」
「そんな事ねーよ、てか、戦闘中俺の事見えてたのか?ミユ様もお強くなったな」
「もう、からかってるつもり?そりゃあ、ゲータはあまりにも強いんだもの。嫌でも目に映るわよ」
「ふふ、そうか」
「ええ、今や魁平隊のリーダーはゲータなんだから。しっかりしてよね」
「ああ、分かってるさ。……なあミユ」
「?どうしたの?」
「俺、ダインさんの様に、リーダーしてるかな」
「…そうね。ゲータなりに、できてるとは思うわよ」
「比べるもんじゃないんだろうけど、リーダーともなると、やっぱりあの人の方がこうできていたんじゃないかと、考える時もあってな」
「そうね。ダインさんは、ホントにリーダーって感じだったし、急な任務が入って、殉職してしまったものね」
「あの人が殺されて、当然皆悲しんだ。かくゆう俺も……。スレイヤー様は、次のリーダーは俺と、決めて下さりはしたが、昔も今も思うよ。俺って、リーダーって器じゃない。誰かを引っ張る力は、やっぱりダインさんの方が圧倒的にあった。それは誰しもが思ってる」
「何が言いたいの?」
「俺なんかが、リーダーでホントに良いのかな」
「…バカね」
優しい声で答えるミユ。
「え?」
「ゲータだって、十分リーダーしてるわよ。覚えてる?昔私達の村が襲われた時、貴方もそうだけど、私やカイン、メギドは何も言えなかった。でも、貴方だけは、一人立ち上がった。その時思ったわ。私はこの人に、とことんついて行こうって。その時の貴方は、間違いなくリーダーだった。貴方が立ち上がったからこそ、私やカイン、メギドも、貴方についていこうとなった。貴方は、貴方が思ってる以上に、素晴らしいリーダーよ」
「ミユ…」
「さあ、もう寝ましょ。明日だって、きっと任務があるわ」
「…そうだな」
ゲータとミユは、各々のベットに入った。
「ありがとな、ミユ」
「いえ、それとゲータ」
「ん?」
「…いえ、やっぱりなんでもないわ」
「そうか、おやすみ、ミユ」
「ええ、おやすみ」
二人は眠りについた。
そして朝になり、目が覚めるゲータ。
「…?ミユ、もういない」
ゲータは着替え、部屋の扉を開ける。開けると、道の脇で、ミユと、スレイヤーの右腕剣士である、マキが二人で話しているのを見かけた。
「?(ミユと、あの人は確か、マキさん。二人で何を…あ、行っちゃった)そう言えば、昨日何か言いかけてたな。(一体、何を言いかけたんだ?)」
その日も、ゲータ達はスレイヤーから命令を受け、昨日と同じメンバーで、モンスター狩りに向かった。
「ふっ!」
「ハァ!」
ゲータは、いつも通り戦闘していたが、朝のミユの事が気になり、ちょくちょくミユの方を見ていた。
だが、特に変わった様子はなかった。
そして任務が終わり、お城へと戻ってきたゲータ達。
「今日も疲れたー、なあメギド」
「ふんっ、俺はまだまだ余裕だな」
「お!さすがだな」
「まあな」
そして、部屋が別々のため、分かれるゲータ、ミユとカインとメギド。
「じゃあ後でな」
「おう」
「…」
「…なあ、ミ」
「ミユ」
「?」
声の方を振り向くゲータ。そこには、マキがいた。
「マキさん」
「ミユ、もういいかしら」
「はい!じゃあゲータ、先に部屋に行ってて」
「あ、ああ」
マキとミユは、二人でどこかお城内の部屋に向かっていった。
「…とりあえず、部屋に行くか」
ひとまず部屋に向かうゲータ。だが、部屋に着いた時、やはりミユの事が気になった。
「…ミユには悪いが、やっぱり」
ゲータはミユの魔力を探し、感知した。
「いた、ここは、地下か?」
地下にいることに気になりはしたが、ミユの元へと、ゲータは向かった。
〈その頃、ミユとマキは〉
「それで、話と言うのは」
ミユとマキは、地下の部屋に着き、話していた。
「はい、この事は、内密でお願いしたいのですが、スレイヤー様が、人を殺しているかもしれないんです」
「…それは、どういう事?」
「ダインさん、覚えていますか?」
「ええ」
「そのダインさんの殺害された現場に行った時、死体を見せてもらいました。そしたら、ダインさんはモンスターに殺されたと聞いていましたが、死体を見るに、モンスターではなく、人に斬られたように見えたんです」
「どうしてそう思うの?」
「それは、斬られた箇所が、明らかに人の急所を狙い斬られたものだったからです。そして、その斬られ方、私やゲータ、カイン、メギドのいた村で起きたあの事件、あの時も私は死体を見ました。ダインさんの殺され方が、私達の村で起きた事件と、とても殺され方が似ていました。この二つの事件は、無関係ではないと、私は思っています」
「…」
「そして、この場所で訓練していた時、図書室で本を読みました。するとそこには、人がモンスターを呼び覚ます魔法や、自身の魔力を、あたかも他人の魔力と入れ替えることができる、そしてそれは、暗殺者がよく使う魔法。私はそれを見た時、一つの可能性を考えました」
「それが、スレイヤー様の事だと」
「はい、スレイヤー様程の方なら、人の急所を的確に斬ることや、モンスターを大量に召喚することなど容易い事。そしてそれを私達に狩らせる。なぜその方法を使うかは、私も分かりませんが、とにかく、スレイヤー様が、人を殺しているかもしれないと思い、今貴方にお話しました」
「なるほど、話は分かったわ」
「随分と冷静ですね。貴方はどう思っているのですか?」
「貴方は」
「…」
「知りすぎてしまったのね」
「え?」
〈その頃、ゲータも地下に到着し、ミユの部屋まで向かっていた〉
「(ミユ、どこだ?)」
〈そしてミユの方は〉
「ごめんなさいね」
「え?それはどういう」
「私、マキじゃないの」
「?どういう事ですか?」
「それはね」
マキは、魔法を発動させた。だがその魔法は、人を元の姿に戻す魔法だった。
マキに化けていたその正体は。
「!?」
「こういう事よ」
「スレイヤー、様」
スレイヤーが、マキに化け、ミユと会話していたのだ。
「いやー、驚いたわ。貴方がここまで、勘のいい娘だとわね」
「…」
驚きで、何も発せられないミユ。
「貴方の推理、中々のものだわ。でも、少し違うわね」
「え…」
「どうせなんだし、答えを授けましょう」
「…」
「ダインと貴方達の村の事件、あれは確かに、首謀者は私よ。でもね、あれをやったのは、マキよ」
「!?そんな、なんで、マキさんが…」
「マキには随分と、色んな仕事を頼んだわ。貴方達の村に注意喚起として行った。そう貴方達は思ってるでしょうけど、ホントはね、戦士になりえる重要な存在を探していたのよ。貴方達の世代で言うなら、ゲータがまさにそうだった」
「!?ゲータが!?(だから、マキさんはゲータを見ていた)」
「しかもゲータは、覚醒という私が持てなかった大いなる力も秘めている。覚醒持ちの子を産むのは、とても稀な事、でも、一度生まれれば、その親からまた覚醒持ちが生まれることはない、だから、用済みとして、マキには貴方達の村の暗殺を頼んだわ」
「!?」
「ホントは、ゲータの親だけを殺す予定だったけど、一つの家庭だけが不幸じゃ可哀想でしょ?だから村の者全員を始末させたのよ」
「そんな、理由で…大人だけでなく、子供まで」
「殺すのに大人も子供も関係ないわ。ようは邪魔かどうかよ。私は邪魔な存在だと判断し殺しを命じた。この世界に村や街がいくつあるか知ってる?その内の何個かが消えた所で、世界は大して気にしないわ」
「…」
「そしてダイン、あの男も勘のいい奴だったわ、私の正体まであと一歩と言う所まできたもの。でもその前に、マキに殺しを命じたけどね」
「ダインさんまで…」
「そして」
「!」
「人の心配ばかりしてる場合じゃないわよ。ミユ」
「!」
その頃ゲータは部屋を探し、やっとの思いでミユがいた部屋まで辿りついた。
「ここか」
そして扉を開けた。
「ミユ、!?」
ミユは横に倒れていた。
「ミユ!だいじょぶ、か…」
ゲータがミユを抱えると、ミユの心臓から血が出ていた。
「!?ミユ、おい!ミユ!嘘だろ」
「あら?」
「!?」
「ゲータ、こんな所に来ていたのね」
「スレイヤー様、大変なんです!ミユが…」
ゲータがスレイヤーの方を見ると、スレイヤーの右手が血で染まっていた。
「…スレイヤー、様、その血は…」
「ああ、この血。ミユのよ」
「!?」
「この娘、マキに化けた私に、私の正体を見破られてね」
「正体?一体何を…それに、マキさんに化けたって」
「にしても」
「…」
「この娘も愚かよね。たしかに私本人に確認を取らず、マキに伝えたのは良いわ。でも、魔力を入れ替える事まで知っていたんだから、マキにも注意を向けるべきでしょうに」
「…」
「私の右腕であるマキにも」
「貴方が、ミユを」
「あら?この状況で私じゃないとでも?」
「!」
ゲータはミユをゆっくり寝かせ、その後、スレイヤーに向け、拳に魔力を込め、攻撃を仕掛けようとした。しかし。
「!」
「あら、ダメよ。そんな事しても」
その攻撃は、あっさり止められてしまう。
「くっ!」
「いくら覚醒持ちの貴方でも、その力を使いこなしていない貴方では、私には勝てないわ。最も、その力を使っても、私は負ける気がしないけど」
「!」
ゲータは左手に魔力を込め、再度攻撃するが、それもあっけなく止められる。
「!?」
そしてスレイヤーは、ゲータの顔に左手を当て、ゲータを洗脳した。
「そうね、せっかくなんだし、貴方にはこれから、魁平隊の裏の顔、暗殺部隊へと入団をお願いするわね」
「!」
「おい」
「はっ!」
スレイヤーが一声呼ぶと、そこにマキが現れた。
「マキ、今日からゲータは、貴方の所の暗殺部隊の隊員よ。この子を導いてあげてね」
「はい、スレイヤー様」
「さてゲータ、貴方にはこれから知識を与えるわ、よく覚えるのよ」
「!」
ゲータは抗ったが、スレイヤーには敵わなかった。
そこからゲータは、スレイヤーから、自身に覚醒の力がある事を教わった。それと、ゲータに宿っている負の感情を元に、ゲータにもう一つの人格を創り、元のゲータの人格を、新たに出てきた負の感情の人格に支配させた。
そうする事により、ゲータはスレイヤーの意のままに動く、洗脳戦士へと生まれ変わった。
そしてゲータは、暗殺部隊の一人として、数々の暗殺をこなして見せた。
そしてある時、スレイヤーから、別の次元にいる覚醒持ちを連れてこいと、ゲータに命令が下った。
そしてゲータは、その次元、地球へ向かった。
だがその時、いや、洗脳された時から、ゲータは支配からは逃れていないが、心は残っていた。
その為、自我はあったのだ。その為ゲータは、連れて来いとは言われたが、その覚醒持ちの人物を、仲間に引き入れようと考えた。だが、その考えを負の人格にバレ、その覚醒持ちを殺す方へと、考えがいってしまった。
だが、どうしようもない元のゲータは、申し訳ないとは思いつつも、殺してでも、その覚醒持ちの力も取り込み、スレイヤーに復讐を誓った。
そして、その覚醒持ち、アスタとの決戦時。
「…起きない。死んだか(そんな、殺してしまった)まあ、俺も覚醒状態になったこの状態なら、なかなかの結果だったな」
「ハァ、アスタさん!」
「ん?アイツら、来ていたのか、まあ少し考えれば当然か。(もう、勝てないのか)コイツを取り込む前に、邪魔なアイツらを始末するか(ダメだ、これ以上、殺しは!)」
アスタを殺し、サオリ達の方へ行こうとしたゲータ。だが、向かう途中、後ろから音がした。
「!?(まさか!)」
「…」
「おいおい、マジか、アスタ(生きている!?)。心臓を握り潰したんだぞ、なのに」
音の先には、死んだと思われていたアスタが、蒼い光に包まれ、復活したのだ。
「フッ、やはりお前は最高だよ、アスタ!(まだ、希望が)」
「ハァ」
そしてアスタは、覚醒の更に上の力、白い髪に赤い瞳から、蒼い髪に黄色い瞳へと進化した。
「っ!」
「フッ、ハハハ、良いぞ、その力、その未知の力こそ、俺が求めていたモノだ!(この力、この力なら、奴に!)どっちが勝ち残るか、勝負といこうか!」
「くっ、ハァー!」
アスタはゲータの方へ剣を構えた瞬間、目にも止まらぬ速さでゲータに迫った。
「!」
「っ!くっ、んー!」
「ハハハ、良いぞいいぞ、その意気だ!(これ程の力があれば、奴に勝てる!)」
「んー!」
ゲータは、なんとかして、スレイヤーに勝つ為に、アスタを取り込もうと考えた。
「んっ、んーん!」
「(もう少し、もう少しでヤツを)(もう少しで、この少年を!)」
「んっ」
ゲータの力に負けそうなアスタだったが、そこで、彼の、フェイの声がアスタを動かした。
「いけ!アスタ!」
「!?、んっ、んーん、ハァーァ!」
「(ん!?)何だ、この力は(これ程の力、俺では勝てない、なら)」
「これが」
「!?」
「人間の、想いの力だぁー!」
「んっ!」
「ハァーァ!」
「くっ、んっ、んーん。こんな、所で、(良いんだ)!?(勝てないのなら、俺がアスタを取り込む必要はない。後は、彼に、アスタに託す)」
ゲータはこの瞬間、仲間であるカイン、メギド、そして、恋人のミユの存在を思い出し、心で涙を流した。
「…フン、俺の負けか(後は)、死んでも忘れぬぞ、アスタ、いや(頼んだ)、蒼き英雄よ(英雄、アスタ)」
そう言うと、ゲータのバリアは破られ、アスタの剣が、ゲータの心臓を貫き、ゲータは消滅した。
「ハァ、ハァ、ハァ」
あまりの疲労に、アスタは仰向けに倒れる。
「やっと、終わったよ、フェイ」
そして。
「(後は頼んだ、アスタ。どうかスレイヤーを、倒してくれ)」
ゲータの微かな意識が、アスタに願った。
第五章 過去編 完
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