蒼き英雄

雨宮結城

文字の大きさ
上 下
48 / 78
第四章 ゲーム学校編

Part1

しおりを挟む
〈Sword&MagicAdventure内の第二十階層にて〉

そこではたくさんのプレイヤーが、ゲームのラスボス、ゲータを倒す為、奮闘していた。

「っ!」

「おい、誰かアタッカーはいないのか!」

「ふん、愚かな、我に敵うわけがなかろう」

総勢二十人のプレイヤーは、二手に分かれ、ゲータの巨大な手を止めていたが、圧倒的な力の為、全員で止めるので、精いっぱいの状況だった。

「くそ!あと少しで倒せるのに、アタッカーが…」

ゲータのHPバーは、四つ合った中、残り一つで、あと二、三撃攻撃を加えれば、勝てる状況だった。だが、ラストアタックを決めるプレイヤーが、二十人のプレイヤーで挑んだ為、いなかった。

「ヤバい、そろそろ」

「ふん、これでどうだ!」

ゲータは抑えらていた手を上に挙げ、両腕を地面に思い切り下げた。

「うわ!」

二十人のプレイヤーは、吹き飛ばされた。そして、プレイヤーの方のHPバーも、残り僅かだった。

「くそっ、ここまで来て」

「もう、ダメなのか……!」

もう勝てない、そう思っていた矢先、マントを被った二人のプレイヤーが、颯爽とゲータのボス部屋に入り、プレイヤー達を追い抜き、ゲータへと挑んだ。

「ふん、まだ虫けらがいたか」

ゲータも、そんな二人のプレイヤーを倒す為、片手に魔力を込め、二人に放った。

「ハァ!」

「っ!」

二人は避け、槍を持った一人の女性プレイヤーが、ゲータの片手に一、二撃与え、ゲータを不利な体制へと追い込んだ。

「グオ!」

「っ!リタ!」

女性プレイヤーは、もう一人の男性プレイヤー、リタの名を呼び、リタは頷いた。そしてゲータを倒す為、ゲータへと迫り、頸を斬ろうと考えていたリタは、ゲータの顔の方へと飛んだ。

「ぐぬ!」

「…」

リタと言う少年は、何も言わず剣に魔力を込め、ゲータの頸を斬った。

「ふうっ!」

「!ガァー!」

そして、ゲータは消滅した。最終層である第二十階層のボスであり、Sword&MagicAdventureのラスボスであるゲータを倒した為、ダンジョン攻略は、全制覇したのだった。

「…」

リタは、手に持っていた剣を、背中にあった鞘にしまった。

「やったねリタ!」

「あぁ、エリーナ」

それを見ていたプレイヤー達。

「またあの二人か」

「今回もラストアタック奪われちまったな」

「あぁ、あの二人、何者なんだろうな」

「さて、ボスを倒して経験値やお金も手に入ったし、ログアウトするか」

「そうね」

ダンジョン攻略全制覇を成し遂げた為、二人は一旦ログアウトした。

〈そして現実世界にて〉

「……ふぅ」

ヘッドギアを外し、現実世界へと戻ってきた、プレイヤーネームリタこと、桐山武尊。

「はぁ、このゲームも、遂にクリアしたか」

武尊は、Sword&MagicAdventureというVRMMOゲームを、発売当初から友人である、プレイヤーネームエリーナこと、襟川陽菜と、やり込んでいた。

「…おっ、陽菜からだ」

陽菜からスマホにメッセージが届いた。

「お疲れ様、今回もナイスアタック。…確かに、皆があそこまで削ってくれたお陰で、倒せたからな。お陰でラストアタックが出来た」

武尊は、陽菜にもスマホにメッセージを送る為、打ち込み、陽菜に送った。

〈襟川陽菜の自宅にて〉

「お!キタキタ。えーと、陽菜こそ、サポートさんきゅっか、…武尊は優しいね。私ももう一回送ろ」

〈桐山武尊の自宅にて〉

武尊のスマホが鳴る。

「…もう遅いし、寝るね。あっそうだ、明日向こうで、二人でパーッとしよう。じゃあ、明日学校でね、か。確かにもう遅いしな、寝るか」

二人が話していた時間は、二十三時だった。明日が学校な為、二人は眠りについた。

〈そして次の日〉

「…」

アラームが鳴り、それを止め起きる武尊。

「う、んーん朝か」

武尊は歯を磨いたり、学校に行く準備を整え、一階のリビングへと向かった。

「あ、おはよう、武尊」

「おはよう、母さん」

「おはよう、武尊」

「父さんもおはよう」

「武尊、昨日は遅くまでゲームしてたでしょ、部屋を覗いたら、ヘッドギア被ってたからね」

「もー、部屋は勝手に見ないでくれよ」

「武尊も、もう高校二年生だ。進路について、ちゃんと考えろよ?」

「分かってるよ、父さん。母さんも、心配しなくて大丈夫だよ」

「そう、なら良いけど」

「今日も、陽菜ちゃんと学校か?」

「あぁ、家が隣だからな。今日、と言うより、いつも一緒に登校してるよ」

桐山一家は、いつもの様に、明るく接し、話していた。

「そうか、俺はそろそろ出るが、武尊、遅刻はするなよ?ましてや、陽菜ちゃんを待たせるんじゃないぞ」

「分かってるよ」

「じゃあ母さん、行ってくるよ」

「はい、行ってらっしゃい」

父である桐山総司が、家を出た後、武尊も朝食を食べ終え、玄関に向かった。

「じゃあ、行ってくるよ。母さん」

「ええ、気をつけてね」

「あぁ」

扉を開けると、そこには陽菜が待っていた。

「…あ、おはよう。武尊」

「あぁ、おはよう陽菜」

二人は小さい頃から、家が隣と言うこともあり、いつも一緒に遊んでいた。幼なじみってやつだ。そして昨日も、Sword&MagicAdventureというゲームを、二人でプレイしていた。

そして二人は、登校しながら、今までの様に会話していた。

「そう言えば、昨日の武尊カッコよかったよ。あのボスにラストアタック決めに行くとこ」

「ありがとう、俺もラストアタック決めてスカッとしたよ」

「ねぇ、武尊は学校でどんなゲーム作るの?」

「そうだな、正直、あのゲームが理想郷過ぎて、何も思い浮かばない」

「そうなの?」

「あぁ」

「ふーん、まあ実を言うと、私もなんだよね」

「陽菜もか」

「うん、あ、そうだ」

「ん?」

「文化祭の出し物、一緒にゲーム作らない?」

「一緒に?」

「ええ、だって、何人で作っても、作品になればOKでしょ?」

「まあ、そうだな」

「あれ、武尊あんまり乗り気じゃないね」

「そりゃあ、昨日やったゲームが一番だからな。作れと言われても、簡単には思い付かない」

「…まあでも、今はまだ五月だし、文化祭は十月。間に合うよ」

「そうだな」

武尊や陽菜が通っている、東京都立ゲーム高等学校は、年に一度のイベントである文化祭で、生徒達がゲームを作り、それを全校生徒に見せ合うと言う行事があった。

そして、今の桐山武尊と襟川陽菜は、十七歳の同い年で、クラスも一緒。そんな二人も、文化祭でどんなゲームを作ろうか考えていた。だが二人と言うよりかは、陽菜は乗り気ではあるが、武尊はあまり乗り気では無かった。

と言うのも、Sword&MagicAdventureに出会ってから、彼はその魅力に惹かれ、あれと同等のゲームを作ることは無理と思っている程だった。

武尊はどうせ作るからには、あれを超えるゲームを作りたいと思っているが、そんな事は出来る訳がないと考えていた。

そして話している内に、学校へと着いた。そして、自分達のクラスに行くまでの間も、二人はクラスが同じと言う事もあり、話していた。

「そう言えば、武尊。例の話どうなると思う?」

「例の話?」

「うん、Sword&MagicAdventureを制作したチームの人達が、一般の人達と、私達の学校の中から、百人限定で参加できるやつ」

「あぁ、あの話か」

「ねえ、どんなゲームだと思う?」

「さあ、なんだろうな。でも、あのゲームみたく、ワクワクさせてくれるゲームなら良いな。まあ、まだ当たってないけど」

「絶対当てよう」

陽菜は目をキラキラさせながら、武尊の方を見た。

「当てようって、あれほぼほぼ運だぞ?」

「そんな事分かってるわよ。でも、当たりたいじゃない」

「まあな」

「今日のHRで発表されるのかな?」

「かもな」

二人はクラスに着き、お互いの席に着いた。

「…(あのゲームを作った人達だ、きっと凄いゲームなんだろう)」

「おーい、席につけー」

先生が来た。

「はい、皆さん気になっていると思う、例の話。その抽選結果が決まった」

「おお!」

自分か自分かと、期待に胸を膨らませる生徒達。

「このクラスからは、五名選ばれた」

「(五名か)」

「じゃあ、発表していくぞー」

「…どうせ外れる。期待するだけ無駄だな」

先生が、三名の名前を言っていき、あと二人の所、武尊はやはり気になり、聞いていた。

「襟川陽菜」

「!?」

「!(ヤッタ!)」

「(陽菜が選ばれた)」

「そして最後、桐山武尊」

「!?」

「以上だ」

「!(やったね、武尊!)」

武尊の方を見て、喜ぶ陽菜。

「…(なんだろう、期待していなかっただけに、嬉しい)」

「はい、呼ばれた人達は、帰りに先生の方から内容を話すから、授業が終わったら先生の職員室に来てください」

「はい!」

「…」

武尊は、陽菜と一緒に、新たなゲームを共にできる喜びを噛み締めていた。そしてそれは、陽菜も同様だった。

「(ヤッタ!まさかホントに当たるなんて、絶対そのゲーム、クリアする)」

「…(楽しみだ)」

そして、授業が終わり、先生の職員室へと集まった、選ばれた五名。

「よし、お前ら、せっかく掴み取ったチャンス、無駄にはするなよ」

「分かってますよ」

「そして、内容の方だが。日にちは、今月末の三十一日、このホテルに行くように。時間はお昼の十二時集合だ」

「分かりました」

「よし、解散」

解散していく者達、そんな中先生は、武尊と陽菜を止めた。

「あ、武尊、それに陽菜も」

「はい?」

「なんですか?」

「良かったな、お前ら二人共、無事通過できて。お前ら幼なじみなんだろ?大事にしろよ」

「はい!」

「それと、せっかく当たったんだ。進路の勉強も大事だが、祭りだ。楽しんでこい」

「はい」

「楽しんできます」

「あぁ。じゃあ、気をつけてな」

「はい、さようなら」

「さようなら先生」

「おう」

二人は帰っている時、あまりの嬉しさに、興奮しっぱなしだった。

「やったよ武尊、無事通過できた」

「あぁ、そうだな。楽しみだ」

「あー、早く三十一日にならないかなー」

「待っていれば、三十一日なんてすぐさ」

「そうね」

「陽菜、今日も、やろうな」

「ええ、帰ったら練習しなきゃね」

「あぁ」

二人は家に着き、またあのゲームをプレイしていた。ホテルで行なわれる一大イベントの為に、強くなった状態でプレイする為に。

二人は、当然学校の勉強もしつつ、あの世界に行って、毎日プレイしていた。

そして時は過ぎ、二〇三四年五月三十一日、当日。その日は来た。

「遂に」

「あぁ、きたな」

「えぇ、ホントにあっという間だったね」

「そうだな、皆はもう着いたかな」

「ねえねえ武尊、早く行こ!」

「あぁ」

二人は、イベントが行なわれるホテルまで、興奮のあまり、急いで向かった。するとそこには、アスタ達の姿もあった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...