蒼き英雄(旧)

雨宮結城

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第三章

Part10

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「ほう」

「ハァ!」

「これは意外、まさか姫様以外が知っているとは」

カインは魔法に反応したカオリに歩み寄る。その行動を見て、ミレイユ姫は逃げるよう指示した。

「逃げなさい!」

「!はい!」

ミレイユ姫は、何とか時間を稼ごうとするが。

「動くな」

「!?」

カインは逃げようとしていたカオリと、時間を稼ごうとしていたミレイユ姫を、魔法で止めた。

「(身体が)」

「(動かない)」

「さてさて」

「っ!」

「君、名前は?」

「カオリです…(口が、勝手に)」

「ではカオリ、これから君の記憶を覗かせてもらうよ」

カインはカオリの記憶を覗く為、抵抗できないよう、強い催眠魔法をかけた。

「動かないように」

「はい…」

カオリはカインによる催眠魔法で、意識が飛んでしまっていた。

「っ(カオリ)」

「さて」

カインはカオリのひたいに、自身のひたいを当て、カオリからアスタに関する記憶を読み取った。

「……!これか」

カインはカオリの記憶から、アスタがモルドと戦う前、眠りから覚醒し、第二十階層の人達を救った時。そしてアスタがゲータと戦っている時、アスタの力、顔や姿、名前を記憶から読み取った。

「ほお、コイツか。アスタ、と言うんだな」

カオリから記憶を読み取った事により、アスタの存在がカインにバレてしまった。

「…こんなもんかな」

十分な量の記憶を読み取ったと判断したカインは、自身の頭部をカオリの頭部から離した。

「感謝するよカオリ、君のおかげで、ゲータを倒した者の名が分かった」

「はい…」

「さて、アスタ、コイツがゲータを。…後はソイツをどうここに呼ぶか、か」

カインは、アスタの存在こそ分かったが、アスタをどうこの場所、この世界に呼び寄せるか考えていた。

「…(ヤツはこの世界の住人ではない。どうする、…ちょっと賭けになるが、この方法で試すか)」

「…」

カインはある能力を使う為、集中する。

「!?その姿は」

「…ふぅ、これで上手くいったかな」

「どうして、その姿は」

「そう、この姿はアスタだ。変身魔法は便利だな。まあ、それは良いとして」

「っ!」

ミレイユ姫に近寄るカインは、ミレイユ姫に眠りの魔法をかけた。

「悪いが姫様、アンタにはしばらくの間、眠っていてもらう」

「なっ、うっ、ん」

「姫様!」

ミレイユ姫が眠りの魔法で倒れた所を見たメイド達は、ミレイユ姫の名を呼んだ。

「さあカオリ、この状況を、このキューブで記録するんだ。いいね」

「はい、仰せのままに」

「と、その前に」

カインはこの状況をさらに酷く見せる為、剣を出現させ、自身の腕に傷をつけ、出た血を剣につけ、それをミレイユ姫にかけた。

「(これでいい、この状況、そしてこの世界の危機なら、ヤツは現れる。記憶を見た限り、アスタはそう言う人間だ。だが正直、この作戦は賭けに近い、何せ、この世界にいるならともかく、アスタはこの世界の人間ではない。だが恐らく、アスタは来るだろう。ふん、勘のくせに、何故かそんな自信がある)カオリ、記録はできたか?」

「はい、こちらです」

「どれどれ」

カインはカオリが手に持っていたキューブをもらい、記録がしっかりと出来ているか確認した。

「これで良い。さて」

カインは変身魔法を解き、ユウヤに近づく。

「っ、!お前、何を企んでいる」

「君にはあまり関係ない。それより剣士君、君には少し働いてもらう」

「なんだと」

「…」

カインはユウヤに対して、特殊な魔法をかけた。

「!…」

魔法をかけられ、ユウヤは眠った。

「これで良い。剣士君、君にはここにいた時の記憶を、一時的に忘れてもらった。目が覚めた時、君は普段通りのダンジョンからの帰り道で、突然倒れた。そして目が覚めた君は、普段通り過ごす。だが、過ごす中で、アスタを見たら、ここにいた時の記憶を思い出す」

「…」

「これで上手くいったはずだが、さてさて、どうなるかな」

カインはユウヤに、一種の催眠術魔法をかけ、ユウヤを第一階層のダンジョン前へとワープさせた。

そして現在、アスタを見たユウヤは全ての記憶を思い出し、その出来事を、サキにミユキ、ヒナやメイに説明した。

「という訳だ」

「…カイン、なかなか手強そうな相手だな」

「えぇ、ですが、一つ安心した事もあります」

「あぁ、ミレイユ姫様は、無事なようだな」

「そうですね、アスタさんを誘い込む為にも、ミレイユ姫様は生きているはずです」

「そうと分かれば、後はアスタさんを起こして、あのお城に行けば」

「えぇ、カインが待ち受けているでしょう。と、こうのんびりしてる場合ではありませんね。アスタさんに薬を」

「…」

「よし、飲んでくれました」

「……んっ、んーん」

アスタは薬により、毒が消え、目を覚ました。

「!」

起き上がるアスタ。

「アスタさん、良かった」

「ミユキ」

「動けるか、アスタ」

「あ、あぁ、よっと、動けるみたいだ」

「そうか、なら良かった」

「あぁ」

「コイツが、アスタ」

「ん、ミユキ、この人達は?」

「あ、そうでしたね。こちらは神道流継承者のサキさん。そして…」

「ユウヤだ」

「メイです」

「全員、アスタさんの味方です」

「そうだったのか、よろしくな」

「はい、よろしくです。アスタさん。私の事は、サキと呼んでください」

「私も、メイで大丈夫です」

「…」

「ほら、ユウヤも」

「わーてるよサキ。…俺様の事は、ユウヤと呼べ」

「あぁ、分かった」

「なあ」

「?」

「ホントにコイツが、あの英雄と呼ばれたアスタなのか?」

ユウヤは、初期装備のアスタを見て、ホントにこの人物が、カインと戦えるのか不安になり、皆に聞くユウヤ。

「そうだが、何故だ?」

ヒナがユウヤに聞いた。

「どう見ても初期装備を着たただのレベル一の剣士にしか見えねーぞ」

「ユウヤ、アスタさんに失礼ですよ」

「なら聞くが、サキ、お前はコイツが、ホントにカインを倒せると思ってるのか?」

「もちろん思っていますよ」

「たく、どんな考えをしたら、コイツが最強に見えるんだ?」

「確かに今のアスタさんの格好は、レベル一の剣士です。ですが、剣士の実力は、見た目よりも、内に秘めている力です。アスタさん、貴方は、内になんらかの力を持っていますね?」

「あぁ、そうだけど、何で分かったんだ?」

「直感です。ですが、直感とは言っても、アスタさんを見ていると、感じるんです。内にスゴい大きな力を持っていると」

「直感だあ?もっとなにか、理由を言えよな」

「理由は正直の所、分かりません。ただ私が言えるのは、感じる。それだけです」

「…おいアスタ」

「ん?」

「お前は、カインに勝てると、そう思っているか」

「…戦ってみない事には、まだ分からない。でも、負けるつもりはない。それだけは言える」

「ふんっ、そうか、英雄様は自信まんまんって面してると思っていたが、お前は少し違うな」

「俺は英雄じゃないさ。俺は、ただの一人の剣士だ」

「そうかよ」

「他に言いたい事はありますか、ユウヤ」

「いや、もうねーよ」

「そうですか、なら、私達六人で、急いでお城まで行きましょう。ミレイユ姫様達が
いつまで無事かは分かりません。急いだ方がいいでしょう」

「そうだな、急いで行こう。カインの相手は俺がする。皆は他の人達を頼む」

「はい」

「分かりました」

「ま、安心しとけよアスタ。仮にお前がピンチになっても、俺様がカインをぶっ倒してやる」

「それは頼もしい限りだ。でも俺も、負けない」

「この戦いは、絶対負けない為の戦いです。気を引き締めて行きましょう」

「おう!」

サキが指揮をとり、喝を入れるアスタ達、そして、ミレイユ姫を救う為、アスタ達は、お城へと向かうのだった。
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