蒼き英雄(旧)

雨宮結城

文字の大きさ
上 下
24 / 78
第二章

Part10

しおりを挟む
「モルドは、アスタを知っている?」

「どういう事だ、何故モルドが、アスタの事を」

「それは私にも分かりません。ですが、そう言ってたのは確かです」

「そっか(アスタが、一体どうして)」

「アスタが何故っていう疑問はあるが、ひとまず状況を整理しよう。モルドという新たな支配者が、姫様の城を占拠している。そしてそこには、ミョルドなる者が率いる軍勢がいる。そして姫様達は、殺されていないなら、恐らく地下牢かどこかに閉じ込められている。そして騎士長達は、殺されたか、姫様達同様、閉じ込められている。そしてどういう訳か、アスタがモルドに狙われている。こんな所か」

「はい、こうなると、私達だけとなると、少し不安ですね。ギルドにクエストとして申請するのはどうかな、お姉ちゃん」

「うん、それは良い考えだと思う。少しでも協力者はほしいし、それとミレイユ姫様の護衛をしていた、神道流の人も手伝ってくれるなら心強いし」

「っ!」

「ん、どうしたの?サオリちゃん」

「神道流、それ、私がこの世界で培った流派なの。まさか後継者がいたなんて」

「!?そうだったの?サオリちゃん」

「ええ、私も驚いてる」

「なら、尚更その人の力は借りたいね」

「そうだね、サオリさんの培った流派の方なら、とても安心です」

「ならあとは、他の剣士達か」

「そうですね、レベル条件を設ける?」

「そうだね、あまり犠牲者は出したくない。レベル五十以上の人を集めよう」

「そうね、それでいきましょう」

「一ついいか?」

「どうしたの?ヒナちゃん」

「人が集まるのは良いんだが、アスタはどうする」

「アスタは……カオリちゃん」

「あ、はい」

「二十階層にいる人達は、多分安全な状況ではないよね」

「そうですね、姫様のお城を占拠したヤツらが、そのまま何もしないとは考えにくいです」

「そうだよね、なら、まずその人達を救おう。そしてヒナちゃんには、戦いが終わるまで、皆を守ってあげてくれない?」

「分かった」

「ありがとう。今のアスタは、ヒナちゃんと一緒でお願い。今のアスタを戦いの場には連れて行きたくない。ヒナちゃんと一緒にいる方が、アスタは安全だと思う」

「あぁ、アスタは任せてくれ」

「うん。じゃあ作戦を決めよう。ボクの考えだけど、まずボク達で第二十階層にいる人達を救おう。そしてそれが終わったら、クエストに協力してくれた人達と合流して、ヒナちゃんはそこでそこにいる人達を、アスタも含めて守ってほしい。そしてミユキには、地下牢にいると思われるミレイユ姫様達を助けて。そして最後に、ボクとサオリちゃんと剣士達で、モルド達の相手をする。もし何か変更があれば、また考える。どうかな?」

「私は良いと思うよ」

「私もお姉ちゃんの考えに賛成です」

「私も賛成だ。だが、カオリはどうするんだ?」

「カオリちゃんには、選んでほしい」

「選ぶ、ですか?」

「うん、ボク達と一緒に、危険な方に行くか。安全なここに留まるか」

「私は…」

「…」

「私も、何か役に立ちたいです、回復魔法くらいしか使えませんが、私も行きます!」

「分かった。じゃあカオリちゃんは、ヒナちゃんと一緒に、第二十階層にいる人達に怪我をしている人がいたら、回復魔法をかけてあげて」

「はい!」

「よし、じゃあ行こうか」

ユキ達は、モルド達を倒しに行く為、まずはクエスト発注など、準備を始めた。その頃、ミレイユ姫の城を占拠したモルド達は。

「モルド様、姫やメイド達の地下牢への禁錮、完了しました。それと、新たに使えそうな駒の方も、完了です」

「そうか」

ミレイユ姫達を逃がした際、神道流の使い手であるサキは、モンスター達だけじゃなく、モルドとも戦っていた。

「ふぅ、これで、あとはアナタだけですね」

暗闇の中から、モルドは姿を現した。

「…」

「時間がないので、すぐに終わらせます」

サキは、モルドがとんでもない力を秘めていると分かったからこそ、時間をかけず一撃で仕留めようと考えた。

「神道流奥義、神道!」

その技は、自身に秘めている全ての魔力を、剣九割、足一割に注ぎ込み、最速かつ最強の威力を誇る技である。自身が持っている魔力が多ければ多いほど、さらに威力があがる技だ。

「…」

サキは構えから剣を抜き、神道流の奥義をモルドにぶつけた。

「…ハァー!」

サキは神道流奥義神道を、モルドの核から首めがけて斬ろうとした。だがモルドは、その技を片手一つで止めた。

「!」

「…これじゃ足りないな。俺を、いやゲータを倒したヤツの剣は、こんなものではなかった。ヤツの、アスタの剣は!」

そう言うとモルドは、サキの刀を片手で破壊し、サキの首を締め、持ち上げた。

「なっ!うっ!」

「お前、アスタという男を知っているか」

「うっ、そんな、人は、知らない」

「そうか、ならこのまま」

「うっ、くっ」

「…」

モルドはサキの首を締め続け、それに耐えられなかったサキは、気絶してしまう。

「うっ…」

「…気絶したか」

「モルド様、この者の事は、私にお任せいただけないでしょうか」

「別に構わん、好きにしろ」

「は!」

その後ミョルドは、サキを地下牢に連れ去り、サキを新たな駒とする為、サキを洗脳し、ミョルドの意のままに動く操り人形とされてしまった。

「にしても見つからないものだな、アスタと言う男は」

「そうでございますね」

「お前も見たのだろう?アスタを」

「はい、あなた様を見つけた際に、確かに確認しました」

モルドの正体は、アスタがゲータと戦っていた際に、ゲータが召喚したモンスターの内の一人だった。そしてミョルドは、ゲータがプログラムとして創った魔術師だった。モルド達のキューブを回収していたミョルドは、当然アスタの事を確認していた。だがそこで殺すことはせず、その時は、モルド達のキューブの回収だけを行なっていた。

「俺を見つけ、蘇らせた後、お前はまた確認しに行ったのだろう?その時はいなかったのか?」

「はい、その時は既にアスタと言う男はいませんでした。これは私の推測ですが、何者かに見つかり、そのままアスタという男は、連れていかれたと思われます。あの状態で一人で動くとは考えにくいです」

「そうか、早くアイツに会って、この力を試したかったのだがな」

そう、モルドは、以前アスタと対決した時よりも、遥かにパワーアップしていた。というのも、モルドが蘇った際、ミョルドが、一番吸収の適正があるモルドをみて、他のモンスターのキューブをモルドの体に取り込ませていた。そうした事により、モルドは急激な進化を遂げていた。

「早く会って、この力を試したいものだな」

「ほっほっ、それも、戦を始めれば、きっと会えます」

「ふっ、そうだな」

「…同士達よ!ついにきた戦の時、我々の力を、愚かな人間共に見せつけるのだ!」

「おおー!」

モルド達が戦という戦争の準備を終え、それを実行しようとしていた。そして少し時が戻り、ユキ達は、第二十階層で働かされている人達を助ける為、動いていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...