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出逢い、覚醒編
宇宙人の憂鬱 28.
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露天駐車で、家の脇に車が止められていた。
青系の色の小型車である。
車体の色は、母の好みの色だった。
車内には装飾品も何も無く、スッキリした車内で、よく整理されていた。
わたしは助手席の方に回り込んで、素早く乗り込んだ。
ルクスもわたしに取り憑いて、すんなりと膝の上に座る。
「母さん、わかっていたの?」
わたしは母に、疑問をぶつけた。
「何が?」
本当に何を聞かれたのかわかっていないという様子で、首を傾げる。
「知っているのよ?予知のこと」
「ああ、あれね」
母は車のスイッチを入れると、車を発進させた。
「あれはね、好きなものを見ることが出来ないのよ。見たいものを見るというような使い方が出来ないの」
わたしじゃなかったら、と言うか、悪辣な人種だったら、そんな言い訳は絶対に信じないな。
わたしはルクスが言っていたことを理解している。
母の予知は、それほど都合のいいことではなかったということだ。
予知能力はわたしにも備わっているらしい。
でも、実感もない。
その能力に利用価値を見出す人たちが、どういう手段で、それを手に入れようとするのか。
考えたって想像できない。
未来を読めたら、お金儲けに使えるのかな?
ーそうじゃないよ、未来ってのは決まっていて、変える手段なんてないんだよー
ルクスはそう言って、悲しげに微笑んだ。
「そうか。じゃぁ、株で大儲けとかできそうにないんだね」
ーそんなものじゃない。そのためにある能力じゃないんだよー
「じゃあ、なんのために」
ー貴方の未来には、一回だけ選択肢が与えられる。その一回を間違わないようにしないとー
「一回って、答えは、教えてくれないんだよね」
ー残念ながら、教えることはできないー
ーわたしにはわからないのよー
ーその時が来たら、多分貴方にだけわかるのよ。わたしには、その時を知ることも、答えを知ることも出来ないー
「ずいぶんと難しい問題なのね」
ーそうね!たぶん、世界の命運とか、そういうの?かかってるかもねー
ルクスはわざとおどけてみせた。
でも本当にそんな運命ならば、わたしには重いな。
ーあなたはやりきるよー
ーあなたの母も、その母も、成し遂げてきた。だから多分貴方も大丈夫ー
「根拠のない」
ーでも、わたしは確信しているー
「どうかな、わたしはただの、弱い人間」
ーもう!わたしがノセてあげようって気遣っているのに、本当に!ー
ルクスは頭を抱えて、それでいて顔は笑っていた。
呆れられたのかな?
ーそうではないよ、やっぱり貴方で正解だった。今回も勝たせてもらうー
「???」
なるようになるか。
状況が、まだ理解できていないのだ。
だいたい幽霊が見えるなんて、わたしには絶対にない力だって思っていた。
それなのに、不思議な幽霊ちゃんとの出会いや、不思議な体験の数々、更には使命的なものまであるらしいのだ。
母や祖母、わたしの先祖からそういう力が有ったなんて、少しも知らされてなかったし、自分自身気付かなかった。
どうしてわたしなのかすらも理解していない。
何がなんだかわかっていないのだ。
母やルクスになんと言われようと、簡単にノセられるわけにも行かない。
ルクスは落ち着いた、安らかな眼差しで言った。
ーそれでいいー
ーあなたはそれでいいー
ーあなたのペースでいけばいいのよー
わたしは、なんのことかよくわからなかった。
ルクスはわたしの方の辺りに手を添えて、じっとどこかを見据えていた。
青系の色の小型車である。
車体の色は、母の好みの色だった。
車内には装飾品も何も無く、スッキリした車内で、よく整理されていた。
わたしは助手席の方に回り込んで、素早く乗り込んだ。
ルクスもわたしに取り憑いて、すんなりと膝の上に座る。
「母さん、わかっていたの?」
わたしは母に、疑問をぶつけた。
「何が?」
本当に何を聞かれたのかわかっていないという様子で、首を傾げる。
「知っているのよ?予知のこと」
「ああ、あれね」
母は車のスイッチを入れると、車を発進させた。
「あれはね、好きなものを見ることが出来ないのよ。見たいものを見るというような使い方が出来ないの」
わたしじゃなかったら、と言うか、悪辣な人種だったら、そんな言い訳は絶対に信じないな。
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予知能力はわたしにも備わっているらしい。
でも、実感もない。
その能力に利用価値を見出す人たちが、どういう手段で、それを手に入れようとするのか。
考えたって想像できない。
未来を読めたら、お金儲けに使えるのかな?
ーそうじゃないよ、未来ってのは決まっていて、変える手段なんてないんだよー
ルクスはそう言って、悲しげに微笑んだ。
「そうか。じゃぁ、株で大儲けとかできそうにないんだね」
ーそんなものじゃない。そのためにある能力じゃないんだよー
「じゃあ、なんのために」
ー貴方の未来には、一回だけ選択肢が与えられる。その一回を間違わないようにしないとー
「一回って、答えは、教えてくれないんだよね」
ー残念ながら、教えることはできないー
ーわたしにはわからないのよー
ーその時が来たら、多分貴方にだけわかるのよ。わたしには、その時を知ることも、答えを知ることも出来ないー
「ずいぶんと難しい問題なのね」
ーそうね!たぶん、世界の命運とか、そういうの?かかってるかもねー
ルクスはわざとおどけてみせた。
でも本当にそんな運命ならば、わたしには重いな。
ーあなたはやりきるよー
ーあなたの母も、その母も、成し遂げてきた。だから多分貴方も大丈夫ー
「根拠のない」
ーでも、わたしは確信しているー
「どうかな、わたしはただの、弱い人間」
ーもう!わたしがノセてあげようって気遣っているのに、本当に!ー
ルクスは頭を抱えて、それでいて顔は笑っていた。
呆れられたのかな?
ーそうではないよ、やっぱり貴方で正解だった。今回も勝たせてもらうー
「???」
なるようになるか。
状況が、まだ理解できていないのだ。
だいたい幽霊が見えるなんて、わたしには絶対にない力だって思っていた。
それなのに、不思議な幽霊ちゃんとの出会いや、不思議な体験の数々、更には使命的なものまであるらしいのだ。
母や祖母、わたしの先祖からそういう力が有ったなんて、少しも知らされてなかったし、自分自身気付かなかった。
どうしてわたしなのかすらも理解していない。
何がなんだかわかっていないのだ。
母やルクスになんと言われようと、簡単にノセられるわけにも行かない。
ルクスは落ち着いた、安らかな眼差しで言った。
ーそれでいいー
ーあなたはそれでいいー
ーあなたのペースでいけばいいのよー
わたしは、なんのことかよくわからなかった。
ルクスはわたしの方の辺りに手を添えて、じっとどこかを見据えていた。
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