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出逢い、覚醒編
宇宙人の憂鬱 11.
しおりを挟む-最近、スーパームーンがあったでしょ?―
ルクスの思考が流れ込んでくる。
スーパームーン。月が地球に最接近して、地上から見た月が、ほんの少しだけ大きく見える現象。
―この間のスーパームーンの時に、地獄の門が開いたのよー
―地獄の門って、本当にあるの?―
ヘルズゲート。
ホラー映画などでよく出てくる単語で、ゲームなどにも見られる単語である。
―そう、あるのよ。わたしもそこを通って帰ってきたのよー
ルクスはさらりと怖いことを言う。
ルクスも地獄の住人なのかな。
ルクスは続けた。
―ヘルズゲートを通って、地獄の王が復活するのよ。そのために、取り敢えずこの町を乗っ取るための軍団が攻めてくるのよー
この町って、なんだか小さな話。
わたしは少しホッとしたが、話を最後まで聞いた時に、その考えは吹き飛んだ。
―この町の住人を生け贄にして、地獄の王を復活させるの。王が復活したら、軍団をもっと呼び寄せて、侵略の開始よー
そう来たか!
わたしは地獄の軍勢の目的がわかったことで、何となく安心してしまった。
ヒーロー小説のパターン。
わたし達が勝つパターンよね。
楽観的に考えないと、怖ろしくなって、逃げ出したくなってしまった。
もっとも、ルクスの言う事が全て嘘で、何も怒らないという事も考えられる。
ルクスが嘘を言っていないという保証は、どこにも無い。
―わたしは嘘は言っていないよー
ルクスはいつ来てもおかしくない地獄の先兵に備えながら、緊張した思念を送ってきた。
わたしの中で、ルクスがもの凄く緊張しているのがわかった。
わたしは、ルクスのために、深呼吸をしてあげた。
同じ身体を使っているのだ、リラックスできるかも知れない。
ルクスは、-ありがとうーと呟いた。
―まだ時間がかかるの?―
ルクスの緊張が解けていないのがわかったので、彼女に尋ねてみた。
―まだ来ないよ。でもそんなに時間は無いはずー
ルクスはかなり固くなっている。
そんなに強い相手なのかな。
まあ、見た目で言えば、ルクスはただの女の子。
子供である。
悪の軍団などと腕力勝負出来るような力はなく、負けるのは決まっているようなものだ。
わたしはルクスに聞いてみた。
―そんなに強いの?そいつらは-
ルクスはまた黙りこくっていたが、重い思考を発した。
-強いらしいわ。デミ戦ったことはないのー
そうだろうな。
こんないたいけな少女が、暴力で勝てるわけがない。
わたしはそう思ってしまった。
だが、ルクスはもう少し楽観的だった。
―わたしは負けるつもりはないー
―勝算はあるによー
―でも、実際にはまだ使ったことがないのー
ルクスは一気に言ってのけた。
―わたしには必殺技があるのよー
ルクスが何を狙っているのかはわからなかったが、必殺技の存在に、ほんの少し疑問があった。
本当に勝てるのだろうか?
ルクスは、必殺技に自信が無いのかも知れない。
怯えているというか、恐れを抱いている気がしてならない。
乗り移られた状態だから、彼女の感情や思考が、手に取るようにわかった。
そんなことを考えていたら、わたしの左前方、部屋の片隅に、黒い光が迸った。
轟音が響いて、空間が、1メートルほど縦に裂けた。
そして、その裂け目から何者かの手のように見える、指のように見える物が伸びてきて、避けた空間の両端をつかんだ。
そして、何かが這い出してこようとしていた。
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