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出逢い、覚醒編
宇宙人の憂鬱 6.
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わたしが軽い夕食をすませると、ルクスはまだうちに居て、ジュースの入ったコップをつかもうと必死になっていた。
わたしはなんだか自分が母親になった気がして、ルクスが自分の娘の様な気になって、彼女の行動を眺めていた。
時々、母性のようなものを感じることはあっても、ルクスを見ていると、異常なほどに愛おしく思えてくるのは何故だろう。
彼女が親にも虐め殺されたという話を聞いたからか?
それだけではない気がして、その正体を知りたくて、わたしはルクスを眺めていた。
可愛い!
こんな子供なら欲しいと、本気で思えてきた。
まだ、結婚すらしていないのに、子供だけ欲しいなんて。
わたしが見詰めているのに気が付いて、ルクスはどうしたの?と、視線で尋ねてくる。
その表情に、さらにキュンと胸を射抜かれる。
「ありがとうね、そう思ってくれて、ありがとう」
ルクスは今にも泣き出しそうな声で、わたしの思考を読み、そう言った。
「いつでも出てきて良いのよ、暇な時にはお話ししましょう」
わたしが言うと、ルクスは「ありがとう」と言って、笑って見せた。
やはりどこか悲しげな笑顔だった。
「仕事の時は、邪魔はしないね」
「うん、お願い」
言ってから、わたしはルクスに向かって、「雰囲気だけでも、お菓子でも食べる?」と誘ってみた。
ルクスは嬉しそうに目を輝かせて、期待の眼差しをわたしに向けてきた。
「お菓子、お菓子」
ルクスは歌いながら、わたしが台所の棚から、甘いクッキーを持って来るのを待った。
安い袋菓子だが、ルクスはこんなの食べたことないよと、涎を垂らしそうな表情を浮かべた。
「やっぱり雰囲気だけってのは辛い」
ルクスはそう言うと、わたしにお願いがあると言って、こちらに向き直って、正座した。
「わたしに身体を、少しだけ貸してくれない?」
真剣な眼差しで頼んでくるものだから、幽霊に身体を貸しても大丈夫なのかと躊躇したが、貸してやることに決めた。
だけど一応目的は聞いておく。
「お菓子の味を確かめたいの」
ルクスは笑ってそう言った。
ルクスがわたしの身体を乗っ取る気なら、とっくにやっている。
幽霊だからね、わたしが気付かないうちにやれてしまう。
わたしは彼女を信じることにした。
「ありがとう」
「さあどうぞ」
わたしは腕を広げて、彼女を迎え入れる格好をした。
彼女はクスリと笑うと。スーッとわたしの身体に侵入してきた。
冷たい感覚が、身体を支配して行く。
そしてほんの少しだけ、身体が重くなり、頭がボウッとした。
その瞬間、わたしの身体からエネルギーが迸るような感覚を覚えた。
手の先から、痺れるような感覚があったので、視線を向ける。
皮膚から光が漏れているように見えた。
身体からはエネルギーが湧き上がってくる。
活力が漲ってきた。
ルクスがお菓子を取ろうと手を伸ばした。
そうすると、クッキーの方から勝手に、伸ばした手に吸い付いてきた。
クッキーが浮いたのである。
テレキネシス、そんな言葉が、わたしの脳裏に浮かんだ。
ルクスはわたしの身体を使ってクッキーを7個ほど味わってから、わたしの身体から離れた。
満足そうに笑顔を浮かべる。
目的はお菓子だけでは無かったのかも知れない。
ルクスはわたしを守ると言った。
わたしの身体に入ったのは、この力を確認したかったのかも知れない。
わたしはこれからいったいどんな事件に巻き込まれていくというのか。
可愛いルクスとの冒険の日々に期待するほどわたしもバカではない。
少し怖ろしくなって、身震いした。
ルクスは何事もない様子で、テーブルのお菓子を取る仕草をしたり、楽しそうに笑っていた。
わたしはなんだか自分が母親になった気がして、ルクスが自分の娘の様な気になって、彼女の行動を眺めていた。
時々、母性のようなものを感じることはあっても、ルクスを見ていると、異常なほどに愛おしく思えてくるのは何故だろう。
彼女が親にも虐め殺されたという話を聞いたからか?
それだけではない気がして、その正体を知りたくて、わたしはルクスを眺めていた。
可愛い!
こんな子供なら欲しいと、本気で思えてきた。
まだ、結婚すらしていないのに、子供だけ欲しいなんて。
わたしが見詰めているのに気が付いて、ルクスはどうしたの?と、視線で尋ねてくる。
その表情に、さらにキュンと胸を射抜かれる。
「ありがとうね、そう思ってくれて、ありがとう」
ルクスは今にも泣き出しそうな声で、わたしの思考を読み、そう言った。
「いつでも出てきて良いのよ、暇な時にはお話ししましょう」
わたしが言うと、ルクスは「ありがとう」と言って、笑って見せた。
やはりどこか悲しげな笑顔だった。
「仕事の時は、邪魔はしないね」
「うん、お願い」
言ってから、わたしはルクスに向かって、「雰囲気だけでも、お菓子でも食べる?」と誘ってみた。
ルクスは嬉しそうに目を輝かせて、期待の眼差しをわたしに向けてきた。
「お菓子、お菓子」
ルクスは歌いながら、わたしが台所の棚から、甘いクッキーを持って来るのを待った。
安い袋菓子だが、ルクスはこんなの食べたことないよと、涎を垂らしそうな表情を浮かべた。
「やっぱり雰囲気だけってのは辛い」
ルクスはそう言うと、わたしにお願いがあると言って、こちらに向き直って、正座した。
「わたしに身体を、少しだけ貸してくれない?」
真剣な眼差しで頼んでくるものだから、幽霊に身体を貸しても大丈夫なのかと躊躇したが、貸してやることに決めた。
だけど一応目的は聞いておく。
「お菓子の味を確かめたいの」
ルクスは笑ってそう言った。
ルクスがわたしの身体を乗っ取る気なら、とっくにやっている。
幽霊だからね、わたしが気付かないうちにやれてしまう。
わたしは彼女を信じることにした。
「ありがとう」
「さあどうぞ」
わたしは腕を広げて、彼女を迎え入れる格好をした。
彼女はクスリと笑うと。スーッとわたしの身体に侵入してきた。
冷たい感覚が、身体を支配して行く。
そしてほんの少しだけ、身体が重くなり、頭がボウッとした。
その瞬間、わたしの身体からエネルギーが迸るような感覚を覚えた。
手の先から、痺れるような感覚があったので、視線を向ける。
皮膚から光が漏れているように見えた。
身体からはエネルギーが湧き上がってくる。
活力が漲ってきた。
ルクスがお菓子を取ろうと手を伸ばした。
そうすると、クッキーの方から勝手に、伸ばした手に吸い付いてきた。
クッキーが浮いたのである。
テレキネシス、そんな言葉が、わたしの脳裏に浮かんだ。
ルクスはわたしの身体を使ってクッキーを7個ほど味わってから、わたしの身体から離れた。
満足そうに笑顔を浮かべる。
目的はお菓子だけでは無かったのかも知れない。
ルクスはわたしを守ると言った。
わたしの身体に入ったのは、この力を確認したかったのかも知れない。
わたしはこれからいったいどんな事件に巻き込まれていくというのか。
可愛いルクスとの冒険の日々に期待するほどわたしもバカではない。
少し怖ろしくなって、身震いした。
ルクスは何事もない様子で、テーブルのお菓子を取る仕草をしたり、楽しそうに笑っていた。
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