ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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天空大陸~サキュバスの街でトリップ・オア・トリート

スカウトになるか誘拐になるか

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「『ファルマ』と言う国は"蘇生薬"の一大生産国でね、高級・低級に関わらず特許申請して莫大な利益を得ている。(ナサケ)」

「ふむふむ。」

「『ファルマ』は市場に出回る"蘇生薬"に対し、特許侵害がなされていないか、密造品が出回っていないか、そして新たな"蘇生薬"が産み出されていないかを常に監視しているのさ。(ナサケ)」

「ふむふむ…
 あ、もしかして『ファルマ』の目的はヴァンディットさんだったりします?」

「話が早くて助かるよ。
 王都としてはそうであろうと睨んでいる。
 現フロンテイアでの大氾濫の後に慌ただしく動きを見せている事然り、『ファルマ』の教諭と選手以外の関係者が既に王都に入っている事も含め、まず間違い無いだろう。(ナサケ)」


 闘技大会の用心棒(バウンサー)としてノアを候補に挙げたのは『ファルマ』側である事と、軽く経緯を伝えられるとノアは直ぐに目的がヴァンディットであるとアタリを付ける。

 大氾濫を前にして突貫で製造した"蘇生薬"の事が何処からか漏れ、それによってヴァンディットが『ファルマ』に狙われているのだと言うが、現段階では良い情報なのか悪い情報なのかは定かでは無い。


「え?もしかしてヴァンディットさん製の"蘇生薬"が『ファルマ』製の物と似ていて、特許侵害にあたるとかそんな感じですか?」

「いや?何も引っ掛かってないよ。
 それなら王都に来る前に通達が来るハズだしね。(ナサケ)」

「あ、そりゃそうか。」

「寧ろ『ファルマ』国内からは、安価でありながら高品質な製品を作り上げた事で、叶う事ならスカウトしたい、なんて声も挙がってる程だ。(ナサケ)」

「じゃあ特に心配する事は無いんですね?」

「いやそれがね、スカウトだけならまだしも『誘拐』に発展するかも知れない人物が現地入りしてるのさ。(ナサケ)」

「えぇ…唐突に不穏な…」


 ヴァンディット製の"蘇生薬"は、設備や材料の乏しい新設の街で作り出したとはとても思えない非常に高品質な代物で、一部を除いて入手が難しい素材もあるが、殆どが安価で比較的容易に入手出来る物であった為、『ファルマ』に衝撃が走ったと言う。


「ちなみに君は"蘇生薬"の材料について知ってるかな?(ナサケ)」

「その辺は分野じゃなかったので全く。
 全てヴァンディットさんに任せてます。」

 ペラ…(再びメモ)

「それがヴァンディットさんが申請した"蘇生薬"の材料さ。(ナサケ)」

「どれどれ…」


 再びナサケの懐から紙が1枚出され内容を確認。
 そこにはヴァンディット製"蘇生薬"の材料が記されていたのだが



『悠久草』
『春季草』
『夏季草』
『秋季草』
『冬季草』
『縦横無尽に駆けるキノコ』
『ハイキュアマッシュルーム』
『万年茸デマンネン』
『聖霊銀浄龍水(ミスリルジョウリュウスイ)』

 あと強力な濾過装置。

 等々。



「…あ、これ…」



 ~思い起こされる記憶~


『ノア様、『聖霊銀』を少し戴いて良いですか?』

『グリードさん、『龍鱗』を少し戴いても?』

『ミリアちゃん、ヴァリエンテ領で『悠久草』の買付をお願いします。
 年中そこかしこに生えているのでたっぷりとお願いします。』

『クリストフさん、『縦横無尽に駆けるキノコ』と『ハイキュアマッシュルーム』と『万年茸デマンネン』を戴けませんか?』

『ハーちゃん、この部分を高圧に保ちたいのだけど…
 造れたりします?』

『はーいニャーゴちゃーん、この薬液の樽に暫し浸かってて下さいね~。』

『にゃーご。』←生きる強力な濾過装置

『ミダレさんとお友達方、蘇生薬製造には大量の魔力が必要です。
 ノア様に果敢にアタックして得た精気を魔力変換して融通して貰えるとありがたいです。』

『よし、後は菜園で育てている素材でどうにかなりそうですね。』


 ~~



「これ全部身の回りで揃えた素材ばかりだ。」

「まぁ素材の中に『龍』が入ってたから何と無く察してたよ。
『悠久草』は広く分布していて容易に用意出来、『春・夏・秋・冬季草』は季節になればこれまた容易に用意可能、キノコ類は地域こそ限定的だが、調達自体は容易。
 問題は"『聖霊銀浄龍水(ミスリルジョウリュウスイ)』"と"濾過装置"さ。(ナサケ)」


 ヴァンディット製"蘇生薬"の材料を確認してみると、各人から用立てて貰った物ばかりであった。

 ナサケ扮するジョーにしてみれば、一部を除いて用意するのは容易であるが"『聖霊銀浄龍水(ミスリルジョウリュウスイ)』"と"濾過装置"だけは容易では無いと言う。


「前々から"蘇生薬"への『聖霊銀(ミスリル)』の使用をどの国でも画策されていたが、容易に集められる代物では無い。
 出場選手メモにある『神聖国』ですら作れる者は少ないし、余程法整備がされてない場所に赴かなければアンデットモンスターに遭遇する事すら叶わないしね。
 その上『龍』に関する素材も得なければならず、何処を探してもそういった販路は確立されてない。
 "濾過装置"だって濾紙を使う簡易的な物じゃ無く、余計な成分を完璧なまでに除去可能な強力な物を要す。
『ファルマ』ならともかく、設備の整っていない新設の街で製造出来るだけの技術と希少な素材を確保出来る独自ルート。
 これだけでもスカウトに足る人材だと思うだろう?(ナサケ)」

「うーん、確かに…」


 改めて聞いてみるとヴァンディットの有能さを再認識する機会となった。
 ノアからすれば材料を提供しただけに過ぎないが、それらを結集させて"蘇生薬"を製造してしまうのだから本人の持つ知識と技術力はかなりのモノであるだろう。

 だからこそスカウトしに来る者も居るし、『誘拐』してでも確保しようと画策する者も居るのだろう。


「話が逸れたが、『誘拐』を画策している者の目星は既に付いている。
 前例もあるのでまず間違い無いだろう。(ナサケ)」

「その人物とは?」

「"ファルマ蘇生薬製造部門長のジャスト"。
 過去に『神聖国』から"聖霊銀(ミスリル)"欲しさに誘拐紛いな行いを2度も引き起こしている輩さ。(ナサケ)」

「ほぅ…」





 ~冒険者ギルドの窓際~


「…王都の【諜報】と長い事話し込んでいるな…(ガロ)」
「一体何の話をしているのかしら…(マーゴット)」

「ノア君は王都の闘技大会で用心棒(バウンサー)を依頼されてこっちに来たっとちゃ。
だから多分その話だと思う。
…いつも大変な目に遭ってるから本当はゆっくりして欲しいっちゃけど…(ミダレ)」

「「……。(ガロとマーゴット)」」


窓際から外に居るノアを見詰めるミダレは、今回も何かしら起こるのではと少し不安げな様子である。


「それならここに居る間位はゆっくり出来るようお祭りをしっかり楽しんで貰わないとね。(マーゴット)」

「そうだな。
今年はマーゴットがミダレに着て欲しいと思って拵えた衣装が何着もあるからな。
彼氏君も気に入ってくれると良いな。(ガロ)」

「へ?(ミダレ)」
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