ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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天空大陸~サキュバスの街でトリップ・オア・トリート

【閑話】1話丸々使う程では無いけど、そこそこ重要な話の詰め合わせ①

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タイトル:『久々登場ヴァモス君』


~獣人国にて・大通り~


『今回の【魔王】殲滅戦への協力要請に対し、獣人国としては"不参加"を正式に表明。
理由として、海上都市マリが立案した作戦内容に致命的な欠陥があり、それについては以下の20の要因で以て説明す。
・うんぬん。
・かんぬん。』



「う~わ、これが本当なら酷い話だぜ?(犬獣人)」

「出立の時刻を遅らせて、捨て駒同然の扱いをさせておいて美味い所だけ掻っ浚う…
言葉を濁らせているが、王はオカンムリだろうぜ?(獅子獣人)」

「その上王都・海洋種・獣人国、後【鬼神】が参戦する前提で話を進めてたらしい。
【鬼神】に至っては西の辺境ヴァリエンテ領で大氾濫を凌いだ直後だとさ。迷惑なやっちゃで。(猫獣人)」


獣人国の大通り、とある一画にデカデカと立て看板が立てられていた。
そこには海上都市マリの王エンデバーが掲げた【魔王】殲滅に対して不参加を表明する文言とその理由が書かれていた。

その内容が中々に酷かった為、マリ側に同情する者は全く居なかったと言う。

と、そんな事を書かれていた立て看板を見て、何故か肩を落としている者が1人


「…そっかー…
ノア様が参戦するって話は嘘だったのかー…(ヴァモス)」


真っ白な毛並みに(獣人から見て)端正な顔立ちをした狼獣人のヴァモスは、耳を垂らしつつ立て看板を眺めていた。

彼は丁度働き先の給仕として買い出しに来ており、専用の給仕姿である為遠くからでも目を引く。

彼は数ヶ月前、ヒュマノ聖王国の人間に奴隷として、もう1人の少女と共に飼われ虐げられていた。

だが、たまたま王都でノアと出会した事で助けられ、色々あって現在はもう1人の少女と共に獣人国で平和な毎日を送っている。

ノアと一緒に居たのは約1ヶ月程度であったが、ヴァモスはノアに対して尊敬の念と共に、年齢的には同世代ではあるものの父性を抱いていた。

とはいえノアは冒険者である為、約3ヶ月程前にヴァモスともう1人の少女の下から旅立っていった。

ノアからは後の事を任せると言われ、張り切ってはいたものの、ここ最近少し寂しく思っていた。

そんな折、海上都市マリのエンデバーが【魔王】殲滅を宣言。
噂では【鬼神】も召集するとの事で、また会えるのではと少し期待していたヴァモス君。

だがそれが嘘であった事が判明し、こうして消沈しているのである。


「おーいヴァモス、こっちの買い出しは終わったから行くぞー。(先輩犀獣人)」

「…あ、はーい!今行きまーす!(ヴァモス)」

「どうしたボーッとして。
ラーマさんから大事な話があるらしいから、急ぐぞヴァモス。(先輩犀獣人)」

「は、はい!(ヴァモス)」


そんなヴァモス君がノアと再会するのは約1ヶ月後の事である。






タイトル:『久々登場ベレーザちゃん』


~獣人国・ラーマの館裏・中庭~


「はい1、2!1、2!
そこでターンしてベールを靡かせる!(ラーマ)」


『『『バファッ!』』』(色とりどりのベールが宙を舞う)


「違う違う!それじゃただ投げただけじゃない!
もっとこう、羽衣の様に宙に靡かせる様に!(ラーマ)」

「「「「「はい!(踊り子達)」」」」」


所変わってここは獣人国にある歓楽街の一画。
一見さんお断りの少し格式の高い社交場である。

ここには100人以上の踊り子達が在籍しており、連日館に訪れた人達を目で楽しませているが、時には式典の様な重要な場で踊りを披露する事もあり、重要な役割を担っている。

約3ヶ月前に催された海洋種との国交式典の際にも友好の証として式典を大いに盛り立てた事で内外で大きな話題を生んだ。

そんな踊り子達の中に混じって日々練習に励む少女が居る。



「はい!今のが次なる大舞台で披露する踊りよ。
今回は通しで踊る事に重点を置いたから指摘は最小限にしたけど、明日以降は厳しめにいくから覚悟しててよ~♪(ラーマ)」

「「「「「「はーい…(踊り子達)」」」」」」


「はにゃ~、疲れたにゃ~…
やっぱ初めて踊るモノは上手く体が動かせないのにゃ…(ベレーザ)」


黄色の中に少し橙色が入る鮮やかな体毛と、黒の縞々模様が特徴的な虎獣人の少女。
名をベレーザと言い、一言でいえば"元気"な女の子である。

彼女も先程のヴァモス同様過去に奴隷としてヒュマノの人間に飼われ虐げられていたが、ノアによってヴァモスと同時に助け出された経緯がある。

ノアには好意もあるが、それ以上に命の恩人でもありヴァモス同様父性の様なモノを感じている。

因みにヴァモスにもベレーザにも歴とした両親は"居た"のだが、訳(獣人国編~全ての始まり~を参照)あって死別しているが、そもそも2人共両親の事を殆ど覚えていないと言う。

何せ奴隷として過ごした時間の方が多く、両親の事を思い出そうとすれば奴隷の時の事を思い出してしまう為、無意識に考えない様にしている。



「あはは凄い汗ねベレーザ、お疲れさま。
見て、足ガクガク。
私『剣士』役だから普段使わない筋肉使って大変よ。(先輩猫獣人)」

「うにゃ~…
私は『拳士』役で【適正】とも噛み合ってるから汗だけで済んでるのにゃね…(ベレーザ)」


共に踊りの練習をしていた先輩猫獣人がベレーザの下に駆け寄ってきた。

ベレーザは自立の一環でこのラーマの館で踊り子として所属し、ヴァモスは給仕として住み込みで働いている。

以前は自然に笑みを浮かべるのも難しかったが、今は良き仲間達とヴァモスのお陰で平和に過ごしている。





「それにしても、この『役』って何なのかしら…
他に『魔法使い』役だったり『弓』役が居るみたいだけど…(後輩犬獣人)」

「また式典かにゃ…?
あれ?でも王都と海洋種との式典はもう終わったよにぇ?(ベレーザ)」

「…まさか海上都市マリの凱旋式に駆り出されるとか…?(獣人国不参加をまだ知らない先輩兎獣人)」

「ラーマさんが、買い出しに行ってる給仕の人達が戻ってきたら話すって言ってたよ。(同年代獅子獣人)」


実を言うと踊り子達は、自分達が何故練習をしているかをまだ聞かされていなかった。

先に踊りのテーマと『配役』を決めて一先ずラーマの指示で踊っていただけであった。

汗を拭ったり、息を整えたりしながら、踊り子達は次に何処で踊りを披露するか話し合っていた。




「ただいまー。(先輩犀獣人)」

「買い出しから帰りましたよー。
キンキンに冷えたバナナナナナナジュースの差し入れでーす。(ヴァモス)」

「「「「「やったー!(踊り子達)」」」」」

「うにゃー!ヴァモスゥー!私にもハリー!(ベレーザ)」


買い出しに行っていた給仕のヴァモスや他の獣人達が戻ってきた。

どうやら練習に励む踊り子達の為に、冷えた飲み物を買いに行っていたらしい。


「あら、丁度良い所に帰ってきたわね。
それじゃあ早速お話ししちゃいましょうか。(ラーマ)」


ヴァモス達が買い出しから戻ってきたのと、館の主人であるゴリラ獣人のラーマが中庭に出てきたのは殆ど同時であった。


「あ、ラーマさん。
何か大事な話があるらしいですけど…?(ヴァモス)」

「そうなのよ、大体1ヶ月後の事だから早目に話しておかないとね。
皆!そのままの体勢で良いから耳だけ傾けて頂戴。(ラーマ)」


館の主人ラーマは声を張り上げて傾聴を促す。


「さきの式典での演目が国内外で高く評価されたの。
それで来月王都で開かれる『闘技大会』の開会式で演目を披露する事になったのよ!(ラーマ)」


ヴァモスとベレーザや踊り子達一行は、約1ヶ月後王都に行く事になった。
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