ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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天空大陸~サキュバスの街でトリップ・オア・トリート

塩の融通完了

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『『バッサバッサッ!』』

〔ノア様~?ノア様~?
恐らくこの辺りで木蓮様から治療を受けてるハズですが…
あ、居ましたね。(ハーピークイーン)〕

グィンッ!(急降下) 





《…という訳でこの『種』をお渡しします。
旅の中で育てるのは難しいでしょうが、あなたの身体であったり、冒険の助けにもなるでしょうからなるべく早く栽培する事を勧めます。(木蓮)》

「ありがとうございます。
仲間が薬草の栽培をしてるので、育てられないか聞いてみる事にします。
…ん?誰か近付いて来ますね。」

『『バッサバッサッ!』』

〔ノア様~、体調の方はどうでしょうか~?(ハーピークイーン)〕


『調和の樹』の本体である木蓮から何やら受け取ったノアの下に大型のハーピー族、ハーピークイーンが飛来。

どうやら治療を終えたであろうノアを探しに来たらしい。

ハーピークイーンは、『調和の樹』の根に脚を掛けて止まり、ノアに声を掛ける。


「お陰様でこの通り。もう完全回復です。」ブンブン…

〔それは良かった。(ハーピークイーン)〕

「ハーピークイーンさんが直々にここに来たという事は、以前お話した″あの件″についてですか?」

〔覚えておいででしたか。
最近″あの件″に触れ辛い状況でしたので発言は控えてたのですが…(ハーピークイーン)〕


ノアは右腕をブンブンと振って完全回復をアピールする。

その後ハーピー族との初遭遇時に話していた″あの件″について触れる事となった。



″あの件″とは、天空大陸第3諸島『ハルモニア』がこの地、具体的には新興された街『フロンテイラ』最奥の山の頂上付近に留まっている理由についてである。

『ハルモニア』には、精霊からケット・シーやクー・シー、小人へと変化した種族が多数居り、基本的に食事を摂らなくとも魔力の濃い高高度に居れば生活に支障は無い。

だが『ハルモニア』に生息するハーピー族や来訪してくる龍・亜龍種はそうはいかない。
彼等は生物である以上少なからず″塩″が必要となるが、空の上、それもかなりの高高度となると入手する事は非常に難しい。

なのでハーピー族は、眼下に連なる山々が元々海の底であった事から、そこから採掘する形で″塩″を得ていたのだとか。

だが近年山からの採掘量は減少の一途を辿り、ほぼほぼ枯渇状態であったとか。

そんな時にひょんな事から地上でノアと遭遇し、海洋種と繋がりがある事から、″塩″の融通を求められたのであった。

つまり本日は、天空大陸に赴けたのは、大火傷の治療、ヴァリエンテ領・『フロンテイラ』との友好関係の締結、それに加えて″塩″の融通についての話し合いと、一石三鳥な訳であった。

話し合いと言っても、ノアを介して海洋種の長であるリヴァイアに融通出来ないか掛け合ってみるだけである。

もし話が通れば、商人を介して間接的に入手するか、直接『ハルモニア』に融通して貰うかは当人達に委ねる事にしよう。





ペラッ。(アイテムボックスから符を取り出す。)

「丁度ここは水辺なので、ちょっとリヴァイアさんに掛け合って来ますね。」

〔あ、では私も向かいます。
最初に話を持ち掛けたのは私ですので…(ハーピークイーン)〕


ノアは以前リヴァイアから貰った転移符を取り出して龍宮城へと向かおうとすると、ハーピークイーンも同行する様子。


《それじゃ行きましょうか主さ》

《あ、餓龍王グリード様、少しお話が…(木蓮)》

《「え?」》


相棒のグリードもノアと共に龍宮城へ同行しようとすると何故か木蓮が呼び止めた。


《主様、こちらの木蓮さんが何か用があるみたいなので…》

「あ、うん。じゃあ一旦ここで別行動だね。
ハーピークイーンさん、行きましょうか。」

〔は、はい!(ハーピークイーン)〕



『『『キュィイイインッ…シュパァアッ!』』』(水面にゲート出現&転移)



《…それで、お話って何かしら?》

《主様の治療代、って訳では無いのですけど…(木蓮)》





~約2時間後~


『『『キュィイイインッ…シュパァアッ!』』』(水面にゲート出現&転移)


「…ハーピークイーンさん…?」

〔い、いやはや申し訳ありません…(ハーピークイーン)〕


2時間程してリヴァイアとの話し合いを終えて転移してきたノアとハーピークイーンだが、何故か窘められていた。


〔海の底があの様に美しい所だとは思わず、つい…(ハーピークイーン)〕

「まぁ普通海の底なんて行ける所じゃ無いし、凄くきらびやかだもんね、あそこ。」


どうやらハーピークイーンは龍宮城前に自生している発光する海草による光の絨毯に目を惹かれ、話し合い所では無かったらしい。

よくよく考えればハーピー族は鳥と人間が半々な見た目である為、光り物には目が無いのだろう。

因みに約2時間の内訳はこうである。


・龍宮城前の光の絨毯で1時間。
・話し合い2分。
・龍宮城周りの光の絨毯で1時間。



「まぁでもリヴァイアさんからすんなり了承を貰えて良かったですね。
この下にある山が元々海底だったからか、比較的楽に(龍種的に容易く)岩塩層を通してくれるみたいですし。」

〔はい!これで皆に嬉しい報告が出来ます、会わせて頂きありがとうございます!(ハーピークイーン)〕


どうやらたった2分の話し合いの末、『ハルモニア』眼下の山の麓に岩塩層を通して貰える事になり、『フロンテイラ』・『ハルモニア』双方で採取出来る様にしたとか。

と、そんな1羽と1人の所に


《主様、お帰りなさい。》

「あぁグリード。
…あれ?横に居る龍種はどなた?」

《あ、見た目変わってるけど木蓮さんですよ。》

「え?」


水辺に立つノアとハーピークイーンの下に<人化>形態のグリードと、しなやかな体付きの龍種がやって来た。

先程の木蓮が木の肌を持つ老齢のお婆ちゃん龍だとするならば、今目の前に居る龍種は製材後の木材に鉋(カンナ)を掛けて滑らかになった様な肌を持つ若いお姉さん龍と言った感じである。

が、グリード曰くこのお姉さん龍が木蓮だと言う。


「えええええええっ!?
この人が木蓮さん!?んなハズ無いでしょ!?
品種改良でもしちゃったの!?」

《あははっ!どう?凄い変わり様でしょ?
グリード様にお願い事したら若返っちゃった♪(木蓮)》

「うっわ!言動も何か若返ってる!?
え!?グリード木蓮さんに何やったの!?」

《え…それはいくら主様でも、恥ずかしくて言えませんよ…》

「ちょ、ええっ!?
一体この2時間の間に何があったんだよぉっ!?」


グリードが珍しく恥じらいの表情でノアからの質問に口籠っていた。
それだけ主であるノアにも言い辛い事を行ったらしい。

まぁ木蓮は『調和の樹』の本体、謂わば木の龍である為、栄養は地面から吸収する。

グリードは際限無く食べまくれる爆食の龍、故に禁忌龍と言われているのだが、無茶苦茶食べるという事は出る方も…ねぇ?
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