ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

機械に感情を持たせるのは難しい

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~名も無き広大な大地の最奥・数千メル級の山頂付近~


『『『ゴォオオオオッ!』』』(猛吹雪)

《これだけあればあの規模の住み処でも事足りるだろう。》

〔突然帰ってきたと思ったら″土産″を持っていくだなんて、リューさんあそこ気に入ったの?〕

《我等が上位種に″、上様″に認められた者まで居るのだ、気に入る所では無いぞ。》 

〔へー、ボク達でも楽しめるかなぁ。〕

《面白い者はチラホラ居るぞ。さぁ行こうか。》

『『ドゥンッ!』』

バサッ!『『バササッ!』』バサッ!


街への土産として『涼虫(スズムシ)』を贈る為、自身の住み処に戻っていた四季龍インヴェルノは〔仲間〕と共に住み処を発ち、一気に山を下る。


『『『キィイイン…』』』(魔力の集束。)

〔!ねぇリューさん。〕

《ふむ、高濃度の魔力の集束…
麓の人族が言う所の大氾濫の第一段階が始まったか…》

〔リューさんは街に協力するの?〕

《…どうだろうな。
大氾濫はある意味自然の摂理。
人族はそれに抗って街を興すのだ、それ相応の覚悟あっての事。
友義を結んで間も無い故、協力は渋ってくるだろうし、その辺は彼等の意思を尊重しようと思っている。》





~街建設地・地下60メル~


『『『ズズズズズ…』』』(徐々に掘削。)

『『バシャバシャ!』』(脛の辺りまで水。)

「2層目の砂地が現れてきた。
ここでも地下水が染み込んで来ているので掘削はここまでにしよう。(技術職1)」

「そうだな。
『『グンッ!』』よし、引き上げてくれ!
それとまた頼むぞ嬢ちゃん!(技術職2)」


街建設地の地下深く。
数ヶ所予定している内の3ヶ所の井戸を開通している途中である。

技術職の何名かが潜り、土属性魔法で徐々に地下水脈まで掘削しつつ、内壁の補強を進めていた。

だがそこそこ深くなってしまった為、風魔法で空気を送ったとしても下まで空気が届きにくくなってしまった

なので2層目までの掘削に止めて技術職達はこの場を離れ、入れ替わりにとある人物が井戸内に潜って″植茸″をするのだとか。


『『ガラガラガラ…』』(滑車で運搬中。)

「はー…空気が美味い…(技術職1)」

ヒュンッ!(とある人物が高速で通過。)

「…にしてもあの嬢ちゃん達が″金属″で出来てるなんて今でも信じられねぇよ…
人間そのままじゃん。あの娘とんでもねぇ技術者だったんだな。(技術職2)」

「【鬼神】と一緒に居るから何かしら一芸はあると思ったがとんでもねぇ…
何で今まで名前を聞かなかったんだろうな…(技術職2)」

「「不思議だなぁ…」」





~井戸の底~

バシャンッ!(着地。)

「到着。
これより、個体名クリストフ殿から賜った″自浄作用″のあるキノコの″植茸″を開始します。(エル) 」

「エル殿ぉ、砂地の層に数本埋め込んでくれれば良いですぞ。
汚れ等を吸着して沈殿させ、直ぐにでも飲み水として利用出来ますぞぉ。(上からクリストフ)」

「畏まりましたクリストフ殿。
″植茸″を行いますので穴から顔を抜いて下さい、暗いので。(エル)」


穴の入口に傘を突っ込んでラインハード製の新作、ランドールの片割れエルに指示を出すクリストフ。

本当ならクリストフ自身が″植茸″すれば良いのだが、穴のサイズがクリストフの胴回りとピッタリである為、入る事が出来なかった。

子供達からは「着ぐるみ脱いだら入れるんじゃない?」と言われたが、スルーしていた。





~井戸直上・地上~


「畏まりましたぞ。(クリストフ)」キュポン。


「やだぁ…穴にキノコさんが顔を突っ込んで…(アマエ)」ドキドキ…

「やめぇや、アマエ。子供達が近くに居るんだぞ。(ミダラ)」
「今日はキレッキレだなアマエ。(ラハラメ)」


地上では胴回りピッタリのクリストフが井戸から顔を抜いている所をサキュバスのアマエが目撃し、何故かドキドキし、仲間が突っ込んでいた。


「それにしてもラインハード殿の作る機兵は毎度高性能ですな、見た目からは分かりませんでしたぞ。(クリストフ)」

「ふふん、造形には魂込めてるからね。
でも感情が固いかな。
私みたいに魂を乗せてる訳じゃないから時間が必要だと思うけど。(ラインハード)」


作業の為に井戸に潜ったエルの製作者、ラインハードは現場で待機。
人間と見間違う程の造形に自信を持っていたが、感情までは完璧とはいかなかった様子。

だがこの後、ひょんな事からその問題解決の糸口が見付かる事になる。


「″植茸″の方完了致し…あ。(井戸の底のエル)」

「む?どうしましたかエル殿?(クリストフ)」
「どしたのエルちゃん?(ラインハード)」

「魔力残量が1割を切りました。
このままでは井戸から上がる事が出来ません。(井戸の底のエル)」

「あ、しまった。新品の魔石と交換するの忘れてた…(ラインハード)」


糸口はラインハードがエルの動力源である魔石の交換を忘れていた事から始まった。


「えーっと、予備の魔石、魔石…
あ、予備が無い…(ラインハード)」

「ラインハードさん、魔石なら何でも良いの?」

「あ、ノア君。
うん、動力となるならどんな魔石でも大丈夫。(ラインハード)」

「了解。
それならミダレさん、ブローチの魔石少し貰っても良い?」

「うん、『パキッ!』良いっちゃよ。(ミダレ)」


丁度駆け付けたノアがミダレにお願いし、誘惑香を魔力変換した魔石を貰う事に。


「ありがとう。」

ヒュンッ!(井戸内に入る。)


そのままノアは井戸の底へと飛び込んでいった。





ザザザッ!(内壁に両足を付けてブレーキ。)

「エルさん、やっほー。」

「あ、ノア様。(エル)」

「これ、取り敢えず急拵えの魔石。
これだけあれば足りるかな?」

「はい、充分です、ありがとうございます。(エル)」

(『なる程、確かに感情が固いな。』)


ミダレから生成された魔石を手にしたノアが降りてくると、エルは固い口調と動作で礼をしてきた。


コクン、コクン…(魔石を飲み込む。)

「あ、それで充填出来るんだね。
じゃあ取り敢えず作業が終わったみたいだし井戸から出よう。
ついでだし抱えていくよ。」

「はい、畏ま『『『キュゥウウウン…』』』…(エル)」

「じゃごめん、抱えるよ。」


そう言ってノアはエルの背中と、薄い金属製のスカートから延びる細い足に手を回す。


「しっかり掴まっててね?」

「うん…でも、ちょっと気恥ずかしいわ…(エル)」

「ははは、気にしない気にしない。」ダンッ!





「あれ?」
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