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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

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ヴァリエンテ領…アルバラストを中心として大陸の最西端に位置する街。
更に西側には数千メル級の山々がまるで人界と異界とを分け隔てるかの様に聳え立っている為、そこから外側がどうなっているかあまり知られていない。

故に『山頂には竜の住み処がある』とか『エルフが暮らしている』とか『実は魔界の入口』等の都市伝説が数多く存在している。

理由の1つに、山々に長年存在する″魔素″が関係している。

【研究者】の推測では、山に棲息する″強力なモンスター″から漏れ出ているとされているが、山へと通じる″広大な大地″と″魔素によって強化されたモンスター″が数多く棲息している為調査所か迂闊に近寄る事も儘ならない。

故にこの地を治めるヴァリエンテ・ルルイエ伯爵には大きな期待が掛かっており、約10年周期で発生する″大氾濫″を総力を上げて収めつつ″広大な大地″の開拓が望まれている。

″広大な大地″は街が3つは造れる程広大で、魔素だけで無く、栄養や水源等も豊富な為人員が確保出来れば街又は前哨基地を建てる事が可能であろう。人員が確保出来れば。





~レドリック、ジョー・ルーシー姉妹側~


「…という所までは知っているが、具体的にどんな地形で、どんなモンスターが出現するかまでは覚えてないな。
何せその地に訪れたのは前回の氾濫の時だけだったし、それ以外は常に封鎖してたハズだからな。(レドリック)」

「そうだな。
この地は今我らが居る兵舎区画の更に奥、2層の防壁を跨いだ奥に位置している。
街に近い所では比較的安全なモンスターばかりだが、山に近付けば近付く程強力なモンスターが散見される。
今兵にモンスターの情報を持って来させているから確認して欲しい。
地形は実際に見て貰った方が良いだろう、確かレドリック殿の″感知範囲″は広大であったな?(ルルイエ)」

「えぇ、感知系スキルはカンストしてます。
精度を求めるなら1500、地形を探るだけなら2000まで行けますよ。(レドリック)」

「はっはっは、それは頼もしい。(ルルイエ)」

「「「うへぇ…(ジョー・ルーシー姉妹)」」」





 ~ノア・アミスティア側~


「あっらぁ、あなた達大氾濫に参加する有志の冒険者さんなの?
それも母子でだなんて!(市民1)」

「夫もこの街に居るので家族での参加ですわ。(アミスティア)」

「お子さんは新人さんなのに大変ねぇ。
でも安心なさいね?
何てったってルルイエ様は2回もこの街を氾濫の脅威から救って下さったとてもお強い方なのよ。(市民2)」


″街の状況″を調べに来たノアとアミスティア。
ふと辺りを散策していると、先程領主のヴァリエンテ・ルルイエ伯爵とのやり取りを見ていた街の人々から話し掛けられたのであった。

街の人々は、近々に迫っている大氾濫に対して何ら変わらぬ日常を送っていた。

それは過去のルルイエの実績があった為、今回も上手く行くだろう。
という漠然とした安心感があるからであろう。


「最近体を悪くしちまったが、まぁ氾濫までには治るだろう。
今までもそうして来たんだ、大船に乗ったつもりでいられるってもんだ。(市民3)」

「本当は俺も志願兵に名乗りを上げたんだが、【勇者】軍が暴れたり、【魔王】の報復があったりしただろう?
家族が第一だから断っちまったんだ。(市民4)」

「まぁ市民上がりの志願兵1人居なくたって″常勝領主″のルルイエさんが居るんだから問題無いだろう。(市民5)」

「「……。」」


その後も市民達が集まって来てはルルイエ伯爵が昔立てた武勲や以前の氾濫についての話で盛り上がり、そして必ずと言って良い程言葉尻には『だから安心だ。』が付けられていた。

そう言いつつ笑みを浮かべて話す市民達の表情とは対照的に、ノアとアミスティアは少し渋い顔をするのであった。





~女性陣+美幸と悠~


「皆様方はこちらの宿をお使い下さい。(カルル)」

「「「「ありがとうございます。」」」」

「それと御二人は恋人同士とお聞きしましたので別に宿を…(カルル)」

「あ、いえ、大丈夫ですよ…!(美幸)」
「そうですよ、皆さんと同じ宿で…(悠)」

「ですが『2人は特別な関係だから』と宿の指定まで御座いましたが…?(カルル)」

((あンの2人は…!!(美幸と悠)))


ノア一家とジョー達が情報収集にあたっている間、同じクランの女性陣と美幸と悠はカルルに連れれるまま宿に辿り着く。

レドリックとアミスティアによる根回しを強引に遠慮した美幸とミリア、ミダレの3人はズンズンと宿の中へと入っていった。

残るヴァンディット、ラインハード、悠も後に続こうとしたが、浮かない表情のカルルが立ち尽くしていたのが気になった。


「どうされましたか?(ヴァンディット)」

「…付かぬ事を聞きたいのですが、ヴァンディットさんは【錬金術】や医療、ラインハードさんはき、機械いじり…?と言うものに精通し、ユウさんはドワーフの国で【技士】としての技術を得ていると聞きました。
正直な所、父の…ヴァリエンテ・ルルイエの体は良くなると思いますか…?(カルル)」


不安そうな表情のカルルは、気丈に振る舞ってはいるが獣人国での擬似的大氾濫の際に受けた傷が中々癒えていないルルイエを心配し、体の調子…医療関係に聡いヴァンディット、現在装着している補助器具の面でラインハードと悠に相談を持ち掛けてきた。

ヴァンディットとラインハードはまだしも、悠に至っては殆ど初対面と言って良い程なのに、何故悠が一時的に滞在していたドワーフ国の事を知っているのか等は置いておこう。

それ程までに父親の体を心配し、形振り構っていられなかったのだと予想された。


「…ここですと街の方々に聞かれるかもです。
一先ず宿の案内にかこつけて中でお話ししませんか?(ヴァンディット)」

「っ、す、済まない。(カルル)」


突然の相談に応じてくれた事に嬉しさ半分なカルルであるが、逆に中で話すという事は、ヴァンディットからして思う所があるのだという事に気付いたカルルは、また複雑な表情をするのだった。





~クリストフ・とある店先にて~


「あっらぁ、変わった人(?)ねぇ…(市民1)」
「人(?)…で良いんだよな…?(市民3)」
「兵呼ばなくて大丈夫かしら…?(市民2)」

「いや、私はですな…つかえるキノコと申しましてな…
…おや?″これ″はもしや使えるかも知れませんな…!(クリストフ)」
 

新しく街に訪れる度に街の人々から不審がられるクリストフは、とある店の店先にて″ある物″を見付け、今後は″それを着けて″『私は人です』とゴリ押す事になる。
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