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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

恐怖のかくかくしかじか

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~ヴァリエンテ領内~ 


「やっほー、ノアちゃん遅かったじゃない。(アミスティア)」

「どうした?イグレージャ・オシデンタルで″道草″でも食ってたか?(レドリック)」

「や、やぁノア君、獣人国振り…(ジョー)」

『『オロオロ…(ラーベとラベルタ)』』

「ヒィ…ヒィ…(美幸)」
「ハァ…ハァ…(悠)」

「「情報量。(突っ込むノアとクリストフ)」」


身分証明を終え、門を潜りヴァリエンテ領内に入って暫し、噴水のある広場に見知った気配が集まっていたのでそちらに向かってみると、前述した様に既に両親のアミスティアとレドリックが到着していた。

その足下には、居候中のハズの美幸と悠が息を切らした状態で転がっていた。
大方良い機会だから序でに連れて来たのだろう。

そこまではまだ分かる。そこからが謎だった。

何せ、レドリックの肩には何故か大商人のジョーが担がれており、その周りでは護衛兼従業員のルーシー姉妹が困惑した表情でオロオロとしていた。


「…色々聞きたい事があるけど一先ずそれらは置いておこう…
皆『真っ直ぐ』来たんだってね、そりゃ早い訳だ…」 

「当たり前じゃない。
最短最速で目的地に着くのが1番効率が良いのは百も承知でしょ?(アミスティア)」

「俺としてはもう少しのんびり来るつもりだったが、アミスティアが張り切っているものだから俺もそのノリで付いて行ったのさ。(レドリック)」

「ヒィ…ヒィ…(美幸)」
「ハァ…ハァ…(悠)」

「…こっちの2人は…?」

「「訓練のついで。」」

「ついでだったのね…南無…」

「ヒィ…ヒィ…(美幸)」
「ハァ…ハァ…(悠)」


ついでで連れてこられた2人は、『真っ直ぐ』来た為心底疲れきっているのか、ノアからの言葉に全く反応出来ていなかった。





「…それでジョーさんは何故ここに…?
…と言うか、状況的に見て何故捕まったのです?」

「いやはや、この様な往来では話辛い事だからそれはまた追々…
それよりもレドリック殿に下ろす様に言ってくれないか…?こちらから言っても聞く耳を持ってくれないのだよ…(ジョー)」

「だそうだけど父さん、下ろしてあげたら?」


未だレドリックの肩に担がれているジョーから懇願される形で説得を行ってみるノア。

すると


「ノア、ジョーが″かくかくしかじか″なのは知ってるか?(レドリック)」

「「「ん?(ジョー、ルーシー姉妹)」」」

「″かくかくしかじか″の事?」

「あぁそうだ。(レドリック)」

「だったら知ってるよ、勿論彼女達も″しかじか″だって事もね。」

「なら話が早い。(レドリック)」

「あ、あの2人共?一体何の話を…?(ジョー)」


急に″かくかくしかじか″で会話を始めた2人に、ジョーは混乱する。

2人の中では通じているが、勿論ジョーには何のこっちゃな様子。


「実はコイツな、″かくかくしかじか″で最近″かくかくしかじか″なんだ。
にも関わらず何度も″しかじって″るから連れてきたって訳。(レドリック)」

「あらら…それで…」

「レドリックの″かくかくしかじか″所か私の″しかじか″も″しかって″来たからデリカシー無いのよね、ジョーって。(アミスティア)」

「ちょ、何か造語が混じってきてませんか!?(ジョー)」


「だからこの歳で嫁の貰い手無いんだ、コイツ。(ボソッとレドリック)」
「隠してるけど3回縁談があって全部断られてるのよね…(ボソッとアミスティア)」
「やめたげなよ…(ボソッとノア)」


「急に鋭利なナイフで刺してきましたね!
と言うか何故その話を知ってる!?(ジョー)」


「まぁとにかく″かくかくしかじか″あって″しかじった″から連れてきたんだね?」

「そう、だから″処刑″。(レドリック)」
「″処刑″、″処刑″♪(アミスティア)」
「ごめんジョーさん、擁護出来ないよ。」

「何をどう話したら″処刑″に繋がるんです!?
離して!解放して下さいって!(ジョー)」


ザックリ説明すると、ジョー扮する【諜報】のナサケ達が美幸や悠の監視ついでにアミスティアとレドリックの家の周りを彷徨いていたのだが、ずっと監視される事に嫌気が差し、いっその事捕まえてしまおうと考えたらしい。

処刑については、長年の付き合いから来るノリである。





カッカッ…

「…まさかこれ程早くお越しになるとは思ってもみなかった…
御三方(ノア一家)とは獣人国振りであったな。(ルルイエ)」

「ルルイエ伯爵様の頼みですもの、断れないわ。(アミスティア)」

「昔色々と世話になったからな、″何処かの誰か″と違ってな。(レドリック)」

「ふぐ…(下ろして貰えたジョー)」

「ドンマイ、ジョーさん。」


少しの間茶番を繰り広げていると、広場の奥から杖を突いた老齢だが体躯のがっしりした男性が兵士数人とカルルを連れてやってきた。

ヴァリエンテ領の領主であり、此度の大氾濫を前にしてノア一家に協力を求めてきたヴァリエンテ・ルルイエ伯爵であった。


「…ルルイエさん、もしかしてその杖は…」

「はっはっは、歳は取りたくないモノだ。
獣人国での大氾濫がまだ尾を引いている。
少し前までならこの様な怪我、立ち所に癒えていたというのにな。(ルルイエ)」


杖を突いて歩いてきたヴァリエンテ・ルルイエ伯爵の両靴には金属製の補助器具が取り付けられ、それで何とか歩けていられる状態であった。


「我が領の前哨戦のつもりで挑んだと言うのに、それが元で領内の問題に取り組めんとは、全く駄目な領主であるな、儂は。(ルルイエ)」

「父上…(カルル)」

「笑えない冗談は年寄りの始まりですぞ。
ルルイエ殿はまだまだ若い。今回は俺達に任せて療養に努めて下さいな。(レドリック)」

「あぁ、そうさせて貰う。
可能な限り援助はさせて貰う。何なりと申し付けてくれ。(ルルイエ)」


ルルイエの自虐に、カルルや周りの兵士の表情が曇る。
近しい間柄故、冗談と捉えるのが難しくなってきたのだろう、レドリックの言い回しを聞いて落ち込んでいた心を奮い立たせる様に努める者もちらほら居た。





「一先ずノアのクランの者達とミユキやユウ達は、宿を取って各々自由に過ごすと良い。
俺らはある程度情報は得ているが、もう少し詳しい所を知りたい。
ルルイエ殿、各種情報提供の方願えますかな?(レドリック)」

「あぁ勿論だ。(ルルイエ)」

「私は″街の状況″を知りたい所だから少し回ってくるわ。
ノアちゃんも一緒に。付き添いで誰か兵士さんが居ると良いのだけど…(アミスティア)」

「わ、私が付きましょう。(カルル)」


出会いの挨拶も早々に、レドリックが温度を取って各々情報収集を開始。
早速大氾濫に向けての準備に取り掛かるのだった。
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