ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

″ドブ掃除″開始

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カコッ…(納刀。)

「…あなたがそれ言います?
こちとらあなたの忠告を守ってるだけですよ。
変に暴れて報復食らったら堪ったものでは無いですからね。」

【ほぅ、私を前にして武器を納めるか。
つまり本当に私を相手にするつもりでは無い様だな。】

「現状あなたに勝てそうもありませんから、大人しくしているだけですよ。
それよりも何ですか″アレ″、あなたの配下か何かですか?」

【あんな″ドブの底の汚泥″みたいなモノが私の配下な訳無いだろう。】


獣人国での擬似的大氾濫以来の対面となった両者。
ノアは無意識的に荒鬼神ノ化身を納め、敵対の意思は無いと示したからか、思いの外【魔王】の口調は柔らかい。

『黒い液体』は自身とは何の関係も無いとしつつも、【魔王】アクロスにはどうやら心当たりがある様子。


【まぁ私なりに″スキャン″してみた所…】

「″スキャン″…?」

【調べてみた所、あれは謂わば″【魔王】擬き″だ。】

「…は?」

【まぁ私には程遠いが、″簡単には殺せん″。
ま、少年なら″撃退″は容易であろう。】

「…だから、派手に暴れられないんだっての。」

【ふむ、そんな事か。
私は【魔王】だ、″ドブ掃除″に腹を立てる程器は小さくない。好きにやれ。】

「…はい?」





ッカッカ!攻めぃ!攻め立てぃ″アーク″!
そのガキはもう

『ガギュィンッ!』ゴリンッ!『ゴリィンッ!』(『黒い刃』を次々に一刀両断。)

…は?(ゲッシュバルド)」


高笑いを上げて『黒い液体』に攻勢を仕掛けさせるゲッシュバルドだが、耳をつんざく様な切断音によって素頓狂な声を上げていた。


「クリストフ!
今よりそこの『黒い何か』に攻勢を仕掛ける!
その中で″広範囲を焼く″かも知れん!
なので″熱″に対する防御を固めておけ!」

「カシコマリ!(遠くからクリストフ)」


戦術を決めたノアが離れた場所に居るクリストフへ指示を出す。

そんなノアの<聞き耳>に


<″こ、広範囲を焼く!?″
ノ、ノア君!あ、あまり派手な事はしない方が…
ほら、一応ここは現在【魔王】の占領下に…(ライリ)>

「それなら大丈夫!
″【魔王】から許可は貰った″から!」

<<<<<ハァッ!?>>>>>


当然の事だが、ノアの口からあり得ないワードが飛び出した事で周囲から素頓狂な声が上がっていた。


「何を訳の分からん事を…!
貴様【魔王】の手先であったか!(ゲッシュバルド)」

「訳の分から無い事を言い続けてる人に言われる筋合いは無いね!
一先ずアンタにはご退場願おうかな!」

ぐおっ。(徐に足を上げる。)


ノアが【魔王】の事を口走ったからか、ノアを【魔王】の仲間だと勘違いするゲッシュバルド。

それを他所にノアは足を振り上げ、まるで四股を踏むかの様な姿勢になる。


「何をするか知らんが今が好機!
やるのだア

「そぉいっ!」

『ズムンッ!メキメキメキッ!』(地面を踏み砕くノア)

ーァあ″あ″あ″あ″っ…!?(踏み砕いた地面から落下するゲッシュバルド)」


この街は″何故か″地下空間が数多くあり、ノアが戦闘を行っていた場所も例外では無かった。

『黒い刃』が地面を斬り刻む際の音の変化によって、地下に空間がある事を察知していたノアはそこに狙いを定め、『黒い液体』の直ぐ近くに居たゲッシュバルドを地下へと落とした。

死ぬ事は無いだろうが、足から落ちた為、高齢と言うのも相まって骨折は免れないだろう。
だがこれで『黒い液体』から離す事は出来た。


『『『『ズズズズズ…』』』』(『黒い液体』が蠢く。)

(…さて、さっきまでこの『黒い何か』改め『【魔王】擬き』は、素人丸出しな爺さんの指示通り(?)動いていたが、ここからどう動くか…)


ゲッシュバルドが地下に落ちたものの、『黒い液体』改め『【魔王】擬き』は助けに動く事は無く微動だにしなかった。

寧ろ『黒い刃』を自身の周囲にウネウネと漂わせて攻撃の″起こり″を分かり辛くしていた。


(普通はあちらの初動を見てからどう対処するか考えるモノだが…)


『『『『スラッ…』』』』(荒鬼神ノ化身4本抜刀。)


(用事があるのでね、ドブ掃除をさっさと済ませよう。)ゴゥッ!


荒鬼神ノ化身4本を手にしたノアから『【魔王】擬き』へと駆け出した。


(一先ずは、さっきから気になってた事を確かめてみよう。)

(『そうしよう。』)

「『黒い液体』と言えば悪霊を彷彿とさせるから効果があるかも知れない。
【鬼哭死重奏・穢払ノ癒火】っ!」

『『『『ギィイイッ』』』』(白熱化。)

『『『ボボボボッ!』』』(癒しの炎を『【魔王】擬き』へ飛ばす。)


ポッ!ポポッ!『『ゴォオオッ!』』(『【魔王】擬き』に触れて即炎上。)


「お、やっぱり燃えた。
…となると悪霊の類かと思ったけど…」

(『癒しの炎に苦しんでる様子では無ぇな。』)


【鬼哭死重奏・穢払ノ癒火】は浄化の効果がある炎を発生させるモノで、悪霊等のアンデットモンスターや不浄のモノには効果絶大である。

癒しの炎が『【魔王】擬き』を焼いてるという事は、アンデットモンスター又は不浄な存在である事は明白。

だが『【魔王】擬き』が癒しの炎に焼かれているものの、苦しんでいる素振りは見せなかった。

それどころか


『『『ジュゥウウ…』』』(癒しの炎に焼かれて消滅。)

『『『ボコボコボコッ!』』』(即座に再生。)


(『焼け落ちた傍から再生してやがる…
いつか戦ったヒュドラかよ…』)

(ヒュドラだったらまたグリードが喜んじゃうだけなんだけどね…
これで『【魔王】擬き』の正体が余計分からなくなったよ…一体何なんだアレ…)


浄化の炎で『黒い液体』がボロボロと焼け落ちるのとほぼ同時に、中から『黒い液体』が湧き出し、謂わば再生が行われていた。

丁度浄化と再生が拮抗するイタチごっこが行われている為、これでは幾ら待っても『【魔王】擬き』を倒すのは難しいだろう。




『『ビュシュシュンッ!』』(炎上しながら『黒い刃』を放つ。)

ガッ!ガシッ!『ギュキッ!』グイッ!(その『黒い刃』を掴んで引っ張る。)

「だったら斬り刻んで燃える速度を上げてやるまでだ。」『『チャキ…』』


高速の刃を放って来た『【魔王】擬き』の攻撃を逆に利用して自身の下まで引き寄せるノア。
生成した腕には、白熱化した荒鬼神ノ化身が握られており、斬り刻む事で延焼面積を増やすつもりの様だ。

すると


『『『『カキカカカ、カカコカ…』』』』(細い刃を無数に出現させ、何かを形作る。)

「???」
(『???』)


引き寄せられいる『【魔王】擬き』は、自身の周囲に『細い黒い刃』で何かを描き出す。
まるで何かの模様の様だが、ノアと鬼神はそれが何なのか当初は分からなかった。


『『『ガチンッ!』』』(完成。)
『『『ヒィイイインッ!』』』(何かが発動。)

(…これもしかして…)

(『…″魔法陣″だな…』)


『【魔王】擬き』の周囲に形作られた模様の様な物の正体は″魔法陣″で、直後周囲に展開していた3つの魔法陣からは

″ドラグノス・ブロア(竜のブレス)″
″ジャッジメント・サンダー(強力な雷)″
″デストロイ・アーム(超速の拳)″

が放たれたのであった。
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