ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

オードゥスを通り過ぎてアルバラスト目前

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~アルバラスト~


「各員補給を済ませたら再び旧イグレージャ・オシデンタルへと向かいます!
食糧や水は多目に!
周囲2ケメルの範囲の川や井戸等の水源は壊滅してるのですからね!(ライリ)」


「『ドラガオ(西にあるダンジョン)』方面にある村に向かいたい…
2ヶ所の道が寸断されて流通が滞っているらしいのだ。(【商人】)」

「ヨシ!良いぞ通れ!(兵士)」


「ねぇ通して下さいよぉ、ちょこっと風景画を撮りに行くだけですって。(【記者】)」

「だったら許可証を提示してくれ。(兵士)」

「そんな固い事言わず…(【記者】)」

「駄目だ。何が【魔王】の琴線に触れるか分かったものでは無い。(兵士1)」

「″あの″【魔王】だぞ?次奴が掲げたルールを破れば″アレ″所では済まない。
当事国は元より、周辺国のダンジョンを破壊して氾濫させると言っているのだぞ。
お主の新聞社が全ての責任を負えるというのか?(兵士2)」

「ぅ…はい…申し訳ありませんでした…(【記者】)」


「はぁ…はぁ…た、助かった…もう足が…」

「落ち着いて。兎に角水と食糧を持ってきましょう。衰弱が酷いのでな。(兵士3)」


比較的閑散としている時間帯のアルバラストではあるが、西門付近は昼夜問わず騒がしい事になっていた。

【勇者】軍の被害に遭った村々から逃げてきた難民が着の身着のままやって来て保護を求めてきたり、王都から派遣されてきた隊員が24時間体勢でイグレージャ・オシデンタルを監視する為に物資の補給にやって来たり、【魔王】軍の現況を取材する為にやって来た【記者】が連日アルバラストを訪れていた。

ちなみにイグレージャ・オシデンタルへと続く街道には4ヶ所以上の関所が設けられており、侵入者を悉く排除していた。


「…漸く難民の数も落ち着いてきたな…(兵士1)」

「安心するな?山に入ればこの街に辿り着けずに息絶えた者達の亡骸がゴロゴロと出てくるぞ。
別班の兵士が20人規模で発見したとか…(兵士2)」

「救えねぇ話だ…(兵士1)」

「だからこそ、1人でも多く救わねばならん。
山中で難民を新たに4人発見した。(アルバ)」

「「ア、アルバ領主!?」」ババッ!

「敬礼は良い。
『ズズズ…』それよりも酷く衰弱しているから早く治療してやってくれ。(アルバ)」

「「は、はい!」」

「ふぅ…老体に堪えるな…(アルバ)」


西門の番をしていた兵士の下にアルバラスト領主のアルバが何処からともなく出現。

兵達は慌てて敬礼するがアルバはそれを止めさせ、自信の能力である影の中から救助した難民を出して治療を促す。

アルバは領主の傍ら、合間を見つけては外に出て未だ後を立たない難民の救助に奔走している。

正直な所、以前のアルバであれば″他国の事は他国の事″と割り切り、程々に救助して後は静観を決め込んでいた事だろう。

元大規模義賊ギルド『救世』のリーダー、【無血開城】の二つ名を持っていた当時のアルバならいざ知らず、領主となったアルバが他国の事まで気に掛けるつもりは無い。

しかもあの【魔王】が絡んでるとなれば尚更であるが


「ぃしょっ、と…
…こうして休んでいる間にも″あの少年″なら各地に飛び回って救助に向かうのだろうな…(アルバ)」


アルバはノアとの出会いで色々と考え方を改め、領主としての考え方に加えて『救世』当時の考え方を内包する様にした。

詳しくは語らないが、″彼ならそうするだろう″という考えである。
 
そんなアルバは近くの段差に腰掛け、少し休憩を取る事に。
本日は何だかんだ山中を駆け回ったので大体10ケメル程走ってきた所である。

すると


「ア、アルバ殿!お休みの所申し訳ありません!(兵士)」

「ぅおっと。(アルバ)」


心を落ち着けて休んでいたアルバの下に血相を変えた兵士が駆け込んできた。


「いや、いい。それで何だ?(アルバ)」

「は、はい!先程南方にある街、オードゥスより急ぎの報告が御座いました!
謎の人物2名と獣1頭が凄まじい速度でここアルバラストを目指しているとの事です!(兵士)」

「何だ?【勇者】軍の残党か…?
まぁ良い、兵を幾人か南門に集め

「あ、あの、その謎の人物2名の内1名ですが、未確認ながら″【鬼神】″であるとの情報が…(兵士)」

「な、何だとぉおおっ!?(アルバ)」





~アルバラストまで馬で10分(ノアなら5分)程の地点・街道~ 


ヒュンッ!ヒュヒュンッ!(木々が高速で後ろに流れていく。)

『『『ズダダダダダダッ!』』』(爆走する影が3つ。)

   
「良かったのですかノア殿、あの場にもう少し居なくて?
かのバザーは想い出の地では無かったのですか?(クリストフ)」

「あのままずーっと見てると、僕の想い出がクリストフのリンボーダンスに上書きされちゃうからね。」

「酷い!私頑張ったのに!(クリストフ)」

ハッ、フッ、ハッ、フッ…(ブラッツ) 


僅かな時間バザーを楽しんだ一行はアルバラストに向けて爆走を開始。

あまりの速度だったからか、2人と1匹は気付いていないが通り道にあった街オードゥスの門兵らに目撃されて大慌てで報告されていた。


(『嘘こけ主こら。』)

(え?)

(『最もらしい事言ってるが、本当は嬢ちゃん(クロラ)の事を思い出して無性に会いたくなっちまうから早々に切り上げたんだろう?』)



(チ、チガウヨォ…) 

(『違う訳あるか!
何年の付き合いになると思ってんだぃ!』)


まだ一月と経っていないのにクロラニウムが不足しがちなノアは、思いを振り払う様に駆ける。

すると


ダッダッダッダッ!

ウォンッ、ウォンッ!(ブラッツの鳴き声)

「「ん?」」


会話しながらのノアとクリストフ(あと鬼神)と違い前を向きながら爆走していたブラッツが鳴き声を上げてノア達に何か報せてきた。

なのでノア達が正面を向くと、既にアルバラストの防壁は間近に迫り、その前を幾人もの兵が集まって通せんぼしていた。


(うん?
何だろ、何かあったのかな…<万里眼>。
あと<聞き耳>を前の方に集中させて…と。)

『『『ギュンッ!』』』(視野拡大)

<…れー!止まれーっ!頼む止まってくれーっ!(アルバ)>

(『お、あれはアルバだな。
何か両手を大きく振って止まる様に言ってきてるぞ。』)

(…明らかに僕達に向かって言ってるよね…
そりゃこの速度で走ってたら何事かと思うか…)

ズダダダダダダダッダッダッタッタッタ…(減速)


アルバや兵の存在に気付いたノアは減速を開始。それに合わせてクリストフやブラッツも減速。

それを見た門のアルバは安堵の表情を見せていた。
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