ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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ヴァリエンテ領・大規模氾濫掃討戦編~街(前哨基地)建設~

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~高級宿『羊の数え歌』前~


「あれ?ファマスさんにフィラさん。
それにシトラちゃんまで…
どうしたのですか、皆さん勢揃いで?」

「今朝の新聞と此度の手紙…
もしやと思って駆け付けました。(ファマス)」

「新聞?」

「皆まで言わずとも理解しております。
…ここを発ち、討伐に向かわれるのですね…?(フィラ)」

(あれ?手紙の内容は見てないんじゃ…
それに…討伐…?まぁ掃討も討伐も似た様なモノか…)

「噂では現在イグレージャ・オシデンタルは死地と化していると聞いております。
ノアさ…いえ、【鬼神】さん、御武運を…。(シトラ)」

(あれれ?まだ氾濫は起きてないハズだけど…?)

(『何かの話と間違えてんじゃねぇか…?』)


ファマス一家の話す内容と、手紙に書かれた内容とが何処と無くズレている。
首を傾げつつもノア達はファマス一家と共に一先ず宿に入ろうとした時であった。


「ファマス殿暫し御待ち下され。(クリストフ)」

「む?(ファマス)」

ペラ…(ノアに今日の朝刊を手渡す。)

「ノア殿はこちらに目を通して下され。」

「え?…う、うん。」

「御三方、ノア殿は恐らくイグレージャ・オシデンタルの状況は知らぬハズですぞ。(クリストフ)」

「え?違うのですか!?(ファマス)」
「【魔王】討伐に向かうのでは無いのですか?(フィラ)」

「え?」

「「「え?」」」


恐らく話が食い違っているのだろうと察したクリストフが話に割って入り、ノアには確認を。
ファマス一家には待機して貰う。





「…何と…ノア殿はヴァリエンテ領に氾濫掃討戦参加の為に呼ばれたのですな…(ファマス)」

「なる程、皆さんは僕が【魔王】討伐に向かうと勘違いしていた訳ですか…
まぁ無理も無いでしょうね…」


やはりと言うべきか、後に新聞を確認したノアは驚きに顔を強張らせ、一家はギルドを介して届いた手紙が別件だという事を知るのであった。


「【勇者】軍…と言うよりかイグレージャ・オシデンタルは、自業自得としか言えませんね…
【魔王】とは一度相対しましたけど、律儀で線引きのしっかりした人です。
彼が提示したルールを害しない限りは消される事も無かったのに…
まぁ行った悪行の数々でどのみちタダじゃ済まなかったでしょうけどね。」

「結局イグレージャ・オシデンタルは何がしたかったのか分からぬままでしたな…
【勇者】軍を立ち上げる所までは理解出来ましたが、やっている事は史実に出て来る【魔王】の如き所業でしたしな。(クリストフ)」

「憶測ですが、イグレージャ・オシデンタルは【魔王】討伐にかこつけて″南に広がる食糧生産拠点を掌握″するのが目的だったのでは、と言うのが我々の見解にございます。
元々イグレージャ・オシデンタルは小さな農村だったと聞き及んでおり、息子が【勇者】、近隣の教会の娘が【聖女】と判明して以降、信者や貴族等からの献金で肥大化していったと聞いております。(ファマス)」

「特に【勇者】の父ゲッシュバルドに至っては人が変わった様に裕福で、讃え奉られる様な存在となった事で、非常に金遣いが荒かったと窺っております。(フィラ)」


あくまで可能性の1つではあるだろうが、″【魔王】討伐までの間如何なる行いも罪には取られない″と言う法を降し、【勇者】軍にわざと村や街を襲わせた後に各地を次々に掌握するのが目的だったのでは、と言うのがファマスらの見解であった。

裏付けと言える程ではないが、【勇者】軍が蹂躙していった村や街は、パルディック・ロスト伯爵が治める一大食糧生産地帯やダンジョン等の観光資源を有する街が殆どであった。

まぁ【勇者】の父ゲッシュバルドが居ない今、真相は闇の中である。





「…それで、ノア殿。
これから如何なされるおつもりですかな?(クリストフ)」

「…本当はこの後パルディッグ・ロスト伯爵が暮らす街に向かおうと思ってたけど、予定を変更する。」

「では、これから西に…ヴァリエンテ領へと向かうのですね?(ヴァンディット)」

「いや、北上して一旦″実家″に向かう。」

「「「「「え?」」」」」


この場にいる全員はてっきりこのままヴァリエンテ領に向かうものだと思っていた為、ノアの口から″実家″という単語が出て来た事で素頓狂な声が上がる。


「どうやらヴァリエンテ領で氾濫に対する準備が滞っているらしく、志願兵を募っているのだけど【魔王】関連やイグレージャ・オシデンタルの一件が影響して集まりが悪いらしい。
なのでルルイエさんの手紙に″信用の置ける戦力を″との一文があった。
なので″実家″の父さん母さん、出来ればマドリック(熊獣人)さんに協力を仰いで行こうと思っている。」


このノアからの発言に、誰も反対する事は無かったが、これから行われる掃討戦が中々に厳しいものになると予感させるのであった。





「皆さんは一先ず荷支度を済ませて直ぐにでも発てる様に準備を始めて下さい。」

「はっ。(クリストフ)」
「りょーかい。(ラインハード)」

「ファマスさん、申し訳無いのですがロストさんに一報を入れて貰えないでしょうか…?」

「それ位でしたら承りましょう。
他には何か御座いますでしょうか?(ファマス)」

「チュニクさんに商談(スロア領への衣服支援)の方宜しくと伝えて下さい。」

ニッ。「畏まりました。(ファマス)」





~ドワーフ国・王城近くのとある一室~


″げははっ!コイツ人形みてぇに動かねぇぞ!″

″『隷属の首輪』着けてんだからそりゃそうだろ!″

(ヤメロ…)

″へへっ!身動き1つ、文句1つ言わねぇ若い雌が3人も居るんだ!手ぇ出しても構わねぇだろっ!″

″既に″おっ勃ててる″奴が何言ってやがる。
″【魔王】討伐までの間如何なる行いも罪には取られない″んだからヤッちまっても構わねぇだろ″

(ヤメロ…)

″くほほっ!これが【聖女】かぁっ!
本当に″処女″だったんだなぁ!あひひっ!
何だお前手ぇ出してねぇのか!最高だぜこりゃ!″

″くっちゃべってねぇでさっさと済ませろよ。
100人以上が待機してんだからよ。″

″穴がありゃ何でも良いんだから″ソイツ″でも良いだろ。″

(ヤメロ…)

″ぎゃははは!何人分の″モノ″を垂れ流してんだよコイツら!
もう【聖女】の面影はねぇなぁ!″

″前も後ろもガバガバだ。
最初は涙流してひぃひぃ言ってたのにモノホンの人形みてぇになっちまった。
面白くねぇ。″

(メ…ロ…)

『ドゴッ!』『ドスッ!』『ボコッ!』

″何やってんだ?″

″俺が使ってやってんのに反応1つしやしねぇ。
だから教えてやってんだよ!誰が主人かってなぁ!″

(……)

″あーあ、もうすぐでドワーフの国かぁ。
ここまで好き勝手出来たのに、この旅も終わりなんてなぁ。″

″おら、″性処理係″漸く仕事が回ってきたんだからしっかり働けよ。″

(   )



″【俺が手を出すのはここまでだ。
流石に訳も分からず捕らえられ、『隷属の首輪』を掛けてまで″利用″され、挙げ句にモンスターの苗床にするのは気が引ける。】″

(…ダ…レ…タスケ…)





「…【勇者】アーク殿…
その、眠れたかのぅ?(ドワーフの兵士)」

「……(アーク)」

「…あまり…良い報せでは無いんじゃが…
おヌシの故郷イグレージャ・オシデンタルが今日…消滅したらしい…(ドワーフの兵士)」

「……(アーク)」

「…それともう1つ悪い報せがある…
おヌシと共にここで保護された女性…【聖女】以外の者達なんじゃが…
先程部屋のシーツと自身の髪を使って首を吊っているのを発見してな…
発見が少しでも早ければ、その…(ドワーフの兵士)」

「…っ…ぇ…ぅぁ…(アーク)」

「…落ち着いたらいつでも報せてくれ。
我らは部屋の外で待機しとるからの。(ドワーフの兵士)」


衰弱しきった【勇者】アークを前にしたドワーフ国の兵士の表情は暗い。
ピクリとも動かないアークが小刻みに震え出したのを見て、申し訳無さそうに退出していった。  


「…ぁ…ぁぁ…(アーク)」

【『ゅう』者】ズズズ…
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