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取り敢えず南へ編

不穏と日常

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~ドワーフ国『フェレイロ』・国王シトルベの私室~


「消えた?(シトルベ)」

「あぁ、消えた。
魔力枯渇状態から回復した後、平原からは【魔王】も数千人規模の【勇者】軍も全てな。(【諜報】1)」

「一部戦闘で出来たと思われる血溜まりと複数の穴が確認出来たが、死体なんか残っちゃいなかった。
ただ…生存者は居た…(【諜報】2)」

「ならばその生存者から何か聞き出せんか?(シトルベ)」

「その生存者なんだが、色々と分からん事があってな。
【勇者】パーティなんじゃよ。(【諜報】1)」

「何?【勇者】パーティ?
こん騒ぎの中心人物じゃねぇが。
丁度良ぇ、各国から100を越える罪が発生しとるんじゃ。序でに聴取取っとけ。(シトルベ)」


ドワーフ国フェレイロでは現在、【魔王】vs【勇者】軍による戦闘報告を国王シトルベへと伝えられている所であるのだが、監視していた【諜報】が全員魔力枯渇状態に陥り、事の顛末が不明なのであった。

その上双方共に姿を消し、平原には【勇者】含めた4人組パーティしか残っていなかったと言う。

だがその【勇者】パーティに関して不可解な点があった。


「まぁ聞けシトルベよ。
その【勇者】パーティの近くにゃ切断された『隷属の首輪』が落ちとったんじゃ。(【諜報】2)」

「あ?何でヒュマノ製の魔導具がんな所にあるんじゃ?
まさか【勇者】の持ち物か?(シトルベ)」

「いや、どうやら【勇者】パーティに着けられていた様だ。手足に跡が残っちょるし、【勇者】パーティの″状態″から判断しただけじゃがな。(【諜報】3)」

「″状態″…?…おい、まさか…(シトルベ)」

「そのまさかだ。
4人共に強姦された痕があった、男女問わずな。
それに空腹と脱水症状で心身消耗状態だ。
恐らく【魔王】討伐宣言辺りから奴隷同然だったと推測される。(【諜報】1)」


【魔王】の件も気になる所ではあるが、【勇者】パーティの状況証拠から察せられた状態があまりにもあんまりであった事に、国王が更に頭を抱える事になる。


「…一先ずはイグレージャ・オシデンタル本国に伝書を飛ばして連絡を取れ。
【勇者】軍の報告も含めて諸々な。(シトルベ)」

「その事なんだがな、さっき【勇者】軍消失を受けてイグレージャ・オシデンタルに鳩(伝書鳩)を飛ばしたんじゃが、引き返して来よったんじゃ。(【諜報】2)」

「…何?(シトルベ)」





~アルゴダ・工房区画~


「あの【鬼神】殿、女性方から目を離さぬ様にお願い致します。
ここに居ると危ういかも知れませんので。(衛兵)」

「え?この工房区画って何かあるのですか?」

「えぇ、まぁ…(衛兵)」


4日振りの昼食を終え、商人見習い(メルカドール)のミリアと合流したノアが工房区画を散策していると突然衛兵が不穏な事を口にし出した。

数区画進んだ辺りでそんな事言うなよ、と思いたい気持ちもあるが、その後に続く衛兵の言葉で何のこっちゃ分からなくなった。


「何せこの工房区画では″辻ドレス″に遭われる方が多数居られますので…(衛兵)」

「…え?辻ドレ…え?」

(『辻ヒールとかは聞いた事あるが、″辻ドレス″なんて聞いた事ねぇな。』)


″辻ドレス″という聞き慣れない単語が飛び出し、混乱するノア。
衛兵も恐らく分かっていないだろうと見越して言葉を続ける。


「まぁ見ていて下され。
あちらの方々なら間違いなく″辻ドレス″に遭われると思いますので…(衛兵)」

「は、はぁ…」


″辻ドレス″について未だに何のこっちゃ分からないノアだが、衛兵に促された通り、目を輝かせて散策している女性陣を見守る事にした。

すると直ぐに


ザッ…

「…お嬢ちゃぁん、中々良い体付きしてるじゃなぁい…(コーディ)」

「え…?は、始めまして、っちゃ…(ミダレ)」


可愛らしい服を見回していたミダレの背後から、金髪頭で筋骨隆々、パツパツのシャツを着込んだ大男が忍び寄ってきた。

その姿に思わず息を飲むミダレ。



「ちょ、助けに行かないと…」
「大丈夫です、奴は男にしか興味ないので御安心を。(衛兵)」

「…え?」



何か不穏な言葉が聞こえた気がしたがそんな事言ってられない。
ミダレの対面に居る金パツ(金髪で筋肉パツパツの略)はドンドンとにじり寄っていく。

そして


グァアアッ!(ぶっとい腕をミダレに伸ばす。)

ピタッ!(ミダレから離した所に黒地のスカートを宛がう。)

「やっぱり!
あなたフード被っててもスタイルの良さが分かっちゃうんだからもっと露出した方が良いわ!勿体無いわよ!
肌を出すのが嫌なら私が作ったこの『スリットスカート』とか如何?
飛んだり走ったりしない限りは露骨に露出はしないわ!(コーディ)」

「わぁ!このスカート可愛いっちゃね!
白地はあったりするっちゃが?(ミダレ)」

「あるわよぉ!黒地も良いけど、白地は小麦色の肌が映えるからあなたにピッタリよぉ!(コーディ)」



「…あ、あれ?」

「奴は″【ドレスアップ・バイオレンス】のコーディ″…
気に入ったスタイルの娘に服を勧める金髪の″奇行子″さ。(衛兵)」

「【ドレスアップ…】何て?」

「おぉっと、そんな事言ってたらまた別の奴が来やがった…!(衛兵)」

「ねぇ聞いて?」



取り敢えず害は無さそうなので次に移るとしよう。今度は作られた布地をマジマジと眺めていたミリアに忍び寄る影が。


「お嬢ちゃん、もしかして【商人】かな?ハァハァ…(チュニク)」

「え?あ、はい!そうです!良くお分かりで。(ミリア)」

「手帳片手に布地を眺める子なんて【商人】位と相場が決まってるよぉ。
そんな君に、誂え向きな服があるんだけどどうだい?<観察>系スキルに補正が掛かる様に誂えたモノなんだけどね?ハァハァ(チュニク)」

「え?そんな品があるのですか?(ミリア)」



「ちょ、ちょっと、あの人ミリアちゃんを見る目付きが何て言うかこう…″キマッて″ますよ…!」

「奴は【ペド・フィギュア】のチュニク。
13才以下の子をまるで着せ替え人形の様に代わる代わる服を着させる子供服専用商店の4代目。(衛兵)」

「ちょ、それって大丈…」

「安心してくれ、奴は男の子にしか欲情しない。(衛兵)」

「…ん?」



「おや娘っ子、その歳で作業服にご興味があるのか…?(サムエ)」

「あ、はい。よく機械いじりをするので…(ラインハード)」

「なる程…だったら油汚れに強く、解れ難い『オーバーオール』はどうだ…?
多少はサイズの擦り合わせを要すが御安くしとくぞ…(サムエ)」

「本当ですか?
それなら黒と紫の物を2着ずつ下さい!(ラインハード)」

「慌てるな娘っ子、ゆっくり選べ…(サムエ)」



「おぉ、今度はマトモそう…」

「あのおっちゃんは【露骨】のサムエ。
女性相手には堅物な印象だが、好みの男の子には流暢

「そんなんばっかだな、この街。」


個性的な店主と出会いつつ散策は続く。
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