ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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取り敢えず南へ編

ミコトとシトラの事情

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~巨大なスライム掃討後~


「<気配感知>を使える人は範囲最大にして瓦礫の中を探って!
抜け無く丁寧によ!
召喚獣出せる人やバディが居たら動員して!(ガネメ)」

「「「「「おぅ!」」」」」


スライム掃討が完了したので、瓦礫の山と化した元保養施設をガネメ指示の下捜索が行われていた。
その直ぐ近くでは


「何じゃこの水路は…まるでダンジョンじゃなかか?(バド)」
「ただ単に排水だけを目的とした造りにしたせいで″溜まり場″がボコボコ出来ちょるやんけ。(ルド)」
「こりゃ害虫害獣がわんさか発生するぞ?
この街の領主代理は地下水路に繁殖場を設けとったんか?(ロイ)」

「シルヴィオの息が掛かった業者によって造られた物ですね。
記録として残されていた図面と幾つもの相違点が見られますね…恐らく浮かせた金を懐に回したのでしょう…(マーカス)」


巨大な黒いスライムが出現した、地下排水路へと繋がる大穴を見たドワーフ3人組は、口々に問題点を口にしていた。

シルヴィオの下で秘書(本当はバルディック・ロスト伯爵が潜入させた)として働いていたマーカスは浮き彫りとなった問題点を記録していた。





~崩壊地点から少し離れた路地~


「皆さんお待たせしました。」

「いやー、婦人服の商店が壊されてなくて助かったねぇ。
猫獣人の団体さんは、尻尾の辺りを思い思いの形に切り取って調節して下さいね。(ゾネス)」

「「「「「いやー、助かったにゃ~。(猫獣人族の団体客)」」」」」

「服、感謝。(ミコト)」
「あ、ありがとうございます。(シトラ)」


巨大強酸性スライムを【鬼哭死重奏・穢払ノ癒火】で″浄化″した後、ノアは立入禁止措置解除を報せに来た私設傭兵部隊リーダーのゾネスと共に婦人服を扱う商店へと向かっていた。

理由は崩壊した保養施設から脱出した者達への着替えである。
皆保養施設の休憩所に居た為、ユカタ姿である。

ノア組の女性陣は、ヴァンディットによる空間魔法内に着替え等の所持品を保管していた為無事であったが、猫獣人族の団体客やミコト、シトラはそういう訳にもいかなかった。


「今回の事はこちらの落ち度である為、無事獣人国に帰還出来る迄の費用等は私バルディック・ロストの方にお申し付け下され。(ロスト)」

「あらやだ~そこまで畏まらなくて良いのよ~領主様。【鬼神】さんとお仲間さん達に助けられて既に大助かりなんだからぁ。(団体客1)」

「「「うにゃうにゃ。」」」


と、猫獣人族の団体客は受けた被害の割には柔らかな態度であった。


「それとそちらの御二方…おや?
そちらのお嬢様は何処かで…(ロスト)」

「あ、いえ、あの…(シトラ)」

スッ…

「援助、感謝、だが、 不要。
早々に、街を発つ故。(ミコト)」

「む…左様ですか…(ロスト)」


ミコト、シトラの2人は何故かロスト伯爵からの援助を受けようとせず、間を置かずに街を出ると言い出した。




「命(ミコト)さん、何で直ぐに街を発つんです?」

「ふ、知る必要の無い…(ミコト)」

「おや、お知り合いだったのですな。(ロスト)」
「あら?お知り合いだったのですねミコト?(シトラ)」





「…ちょっと君誰「無理があるぞ。」


街に入る前はシトラに対して誤魔化していたハズの命(ミコト)だが、色々あって素が出てしまい隠し切れなくなってしまったのだった。


「まぁ…ミコト、いつの間に【鬼神】さんとお知り合いに…(シトラ)」

「色々あったんですよ、色々と。ね?命(ミコト)さん?」
↑(治療費欲しさに、ゴーマン元男爵が出した殺害依頼によって殺されそうになった人。)

「え、あ、あぁ…(ミコト)」
↑(治療費欲しさに、ゴーマン元男爵が出した殺害依頼を受けた人。)

「ミコトが私以外の人に心を開く(?)なんて…
一体どんな切っ掛けだったのですか?(シトラ)」
↑(恐らく治療費が必要だった人。)


シトラ曰く、これでも命(ミコト)は心を開いている判定らしい。

命(ミコト)としては切っ掛けをシトラに聞かれると困るらしく、いつも以上に歯切れが悪かったが、ノアとしては都合が良かった。


ヒソヒソ…

「良いんですかぁ?
切っ掛け話しちゃいますよ、ミコっさぁん?
知られたく無いんですよねぇ?
さっきも彼女に誤魔化してましたしぃ。(小声のノア)」

「い、言う、言う、言う…
だから、お嬢には、黙って…(小声のミコト)」

「へへへ、分かってますよぅ。(小声のノア)」


(((((((…わぁ、何か悪い顔してる…(シトラ以外の面々。))))))))


今更赤の他人を装うとした命(ミコト)には流石に無理があり、半ば脅しの様な交渉術で街を発つ理由を聞くノアなのであった。





「″綿花栽培を生業としている一家の娘″さん?
…と言うと、彼女は貴族の娘さんですか?(小声のノア)」

「違う。でも豪商。
金持ち、広大な土地、所有。(小声のミコト)」

「ほぅ…それで、その豪商の娘さんと命さんが何でこの街に…?
…というか、あの娘ですよね?治療費が必要だったのって。(小声のノア)」

コク。


命(ミコト)と一緒に居た娘シトラは、カステロの街から南西に位置する広大な土地で綿花栽培を生業としている豪商の娘なのだと言う。

綿花とは一般的に綿糸や綿織物等の服飾等の素材として知られているが、種は食用油や石鹸。
搾油後のカスは飼料や肥料等、幅広く扱われている物である。


「シトラの親、バルディック・ロスト、伯爵の隣領を、使わせて貰ってる。
ただ、1年位前から良くない奴等、彷徨いて耕地拡大の邪魔と、事業の明け渡しを求めて来てた。(ミコト)」

「え?綿花栽培をまるっと明け渡し?
大分無茶苦茶じゃない?」

「うん、無茶苦茶。
断り入れたら、『災いが振り掛かるぞ』って脅された。
無視してたら、シトラに毒盛られた。(ミコト)」

「ほぅ…」

「どうやら、金貰って内通してた者が居た。
他に内通者居ないか、炙り出しと、これ以上の被害受けない為、獣人国近くの街に逃げて療養してた。
この間炙り出し完了の文、来た。
シトラの治療完了したから、帰る途中、だった。(ミコト)」

「…まさかと思うけど、ロストさんと良くない奴等が繋がってるかも知れないから早々に街を発とうとしてるとか?」

「可能性はある…
…けど、やり方が回りくど過ぎるから、そちらの線は無いと思う。
逆にバルディック・ロスト伯爵に、迷惑掛けたく無い。だから発つ。(ミコト)」

「あ、そっちの理由ね。」


街を足早に発とうとしていたのは、バルディック・ロスト伯爵がシトラに毒を盛ったと思われる良くない連中と繋がっている疑いがある訳で無く、単に迷惑を掛けたくないから、らしい。


「なる程ね。
…そういえば、シトラさん。湯疲れだったらしいけど、治ったの?」

「う…ま、まだ…(ミコト)」

「路銀は?」

「…瓦礫の下…(ミコト)」

「じゃあさ、少しの間行動共にしない?」

「…え?(ミコト)」
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