ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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取り敢えず南へ編

厄介事の予兆

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~冒険者ギルド~ 


ダンッ!

「うおおおおおおっ!
今日でもう5組のパーティが依頼取り下げてきたわよォッ!
地下排水路は『第10区画』まであるのに、何で直通所か中継経路を造らなかったのよぉっ、あのバカ領主代理ぃっ!
石畳をぶっ壊さない限り誰も到達出来ないじゃない!(ガネメ)」


冒険者ギルド内のカウンターに座るギルドマスターのガネメは、『害虫駆除依頼』の依頼取り下げ本日5組目になる冒険者パーティを見送った後に自身の拳をカウンターに叩き付けていた。

ちなみに、ガネメの座るカウンターは度重なるパンチによって歪んでいた。

ギルド職員達は、分かっていた地雷こと地下排水路に頭を悩ませていた。

領主代理主導で増設され、現場からは″ある意味ダンジョン″と称された地下排水路は″入口が1つしか無い″のだ。

なのに地下排水路は『第10区画』まであり、地下に流入する排水により水浸しになった現在に至るまで誰も『第5区画』より先に進めていないのである。

業者の介入を渋る(特に報酬面で)領主代理によって、害虫駆除は冒険者による水際対策と、増設時に撒いた『クリーナースライム』による捕食任せとなっていた。

そして今回発生する″厄介事″は、害虫によるモノでは無く、この『クリーナースライム』によるモノであった。





~地下排水路・第8区画~


『『『ガサガサガサガサッ!』』』(ガサガサがガサガサする音。)

ヂヂヂヂッ!『ガヂュッ!』バリバリ…(ガサガサをキッタネズミが捕食。)

ヂュゥ、ヂヂヂヂッ!『トプン。』……ッヂッ…ヂ…(ガサガサを捕食し一息吐いたキッタネズミをクリーナースライムが強襲。ジェル状の体内で溺れるキッタネズミ。)

『『『シュゥウウウ…』』』プルン…


地上からの光が僅かに差し込む酷く薄暗い閉鎖空間と化したここ地下排水路では弱肉強食の世界が連日繰り返されていた。

現在この地下排水路での食物連鎖の頂点はクリーナースライムだが、駆除目的で投入された当初はキッタネズミとガサガサによって蹂躙され、根絶の危機に瀕していた。

だがそこはスライム、彼等には″分裂・吸収″と言う強味がある。

クリーナースライムは自身を分裂させ数の暴力を克服。物量に対して物量で攻め立てつつ常に流れ込んでくる排水を吸収して体積を増加。

スライムは体内の核を破壊する事で容易に倒す事の出来る雑魚モンスターとして有名だが、核までの距離が遠くなれば脅威度が増して雑魚モンスターからモンスターへと変化する。

クリーナースライムは清掃業で良く扱われているモンスターであるが、それはしっかりとした管理の下での話であって、カステロの地下排水路の様に閉ざされた空間内に放り込むだけと言うのは非常識な話である。

と、″後に調査した者は口々に″話していた。


現在地下排水路『第8区画』に″生息″しているクリーナースライムは、直径2~3メルを超える巨大な個体が跋扈し、度重なる捕食によって半透明の体はどす黒く変色し、狂暴性を増している。

害虫駆除を担う為に投入されたクリーナースライムは、その職務を全うし、冒険者ギルドで想定しているガサガサやキッタネズミの1/20程しか生息していない状態となっていた。

ちなみに地下排水路内は常に水浸しとなっているが、これは排水が間に合っていなかったり何処かが詰まっていると言う訳でも無い。

最奥区画である『第9区画』と『第10区画』に、″最初期に投入されたクリーナースライムの巨体″が埋め尽くしている為、その分嵩が上がっているのであった。


エサとなるガサガサやキッタネズミが減少している現状を、跋扈している分体から得た″巨体″は、危機感を募らせる。

だがまだ望みはある。

何せ、常に流入してくる排水から、″上″には″エサ″となるモノが大量に居る事を物語っている。

脳を持たないスライムであるが、その位は容易に判断出来る。
ただ、まだエサは身近にある。

そのエサが底を付いた瞬間、この″巨体″は″上″を目指す事になるだろう。





~女性陣が街に入って大体3時間後・『美肌の湯』7つ目『美体の湯』~


「いやー、やっぱりヴァンちゃんのスタイル良いよね~。
さっきの『美髪の湯』で銀髪もサラッサラになったし。(ラインハード)」

「うふふ♪『サラサラ…』そうでしょ?
私スタイルとこの銀髪には自信あるのですよ。
それにしてもハーちゃんのボディは凄いよね、こんな湯けむりの中だと普通に人間の少女みたいだもの。(ヴァンディット)」

「本当です、関節部分を見てもとても機体とは思えません。(ミリア)」

「そんなミリアちゃんは将来有望株だねぇ。
はーぁ、けしからん。(ラインハード)」

「あ、あまりジロジロ見ないで下さい…!それに私、まだ子供だからそんな大した事…(ミリア)」

「「「いやいや、有望株よ。」」」

「ちょ、ミダレさんまでぇ…!
…って、あれ?それが″淫紋″と言うモノですか…?(ミリア)」

「え?…うん、そうっちゃよ。
『ツツツ…』コレがノア君とあっちが″契約″した証っちゃよ。(ミダレ)」

「ねぇねぇ、その″契約″について何があったか言わないけど、何があったんです?(ヴァンディット)」

「え、えぇ~…そ、それはノア君との秘密っちゃね、話せないよぉ~…
ね、ねぇ、イスクリード?(ミダレ)」

《うーん、そだねー。》モコモコ。(泡まみれイスクリード。)

「「「え~、気になる~!」」」

「ほーら、お嬢さん達!垢擦りの方始めますからいらっしゃいな。」

「「「「は~い!」」」」


ノアに促されて街に入った女性陣は、キャッキャとはしゃぎながら美肌の湯を満喫中であった。





~カステロ正門脇の沿道~


ジューッ!(ベーコン舞茸を焼く音。)

「『わー、肌がすべすべ~。』
な、展開が繰り広げられているやも…(クリストフ)」

「想像を掻き立てる様な事を言うんじゃないクリストフ!
追加のキノコを焼くんだ!」

(『しっかり想像してるな、ムッツリめ。』)

(っさい!)

「この『ベーコン舞茸』っつーのはカリカリに焼くとええな、酒のアテにピッタリじゃ。(バド)」

「おぅい!そこで鹿捕れたからこれも焼くべ。(ルド)」

「さっきチラッとここの領主代理を見たが、ありゃアカンな。人によって目付きを変えておる。(ロイ)」

「凄ぇ…流石ドワーフだ、研いで貰っただけなのに新品みたいだ…(門兵2)」


街に入っていないノアは、中から戻ってきたドワーフ達も交え、未だ和気藹々と食事の真っ最中であった。
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