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取り敢えず南へ編
すいませんでした!
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~カステロ正門脇の沿道~
「えっと…皆は気にしないで街に行ってきて良いよ?」
「いやいや、ノア君置いて私達だけって…ねぇ?(ラインハード)」
「「そうですよ。(ヴァンディット、ミリア)」」
「そうっちゃよ。(ミダレ)」
カステロへと続く門脇の沿道では、地面にドカリと胡座をかき肩を落とすノアが1人。
誰も想定していなかった事態に呆然とする中、ノアは女性陣達に街へ向かう様に促す。
「ヴァンディットさんとラインハードさんは確かアンテイカーで受けた依頼の薬品と彫金細工の受け渡しがここだったでしょ?」
「「うっ…(ヴァンディット、ラインハード)」」
「ミリアちゃんは確か『商人見習い(メルかドール)』の定期レポートが無かったっけ…?」
「は、はい、ありますが…(ミリア)」
「ミダレさんは街に何か用がある訳でも無いだろうけど、今は夏の陽気だし、僕と炎天下を共にする必要ない。
イスクリードがへばっちゃうよ。」
「ノア君…(ミダレ)」
《契約者様…》
「僕の場合、元々【ソロ】で旅する中でこういった事も想定してるから慣れているけど、皆を付き合わせる訳にはいかないからね。」
ノアは気丈に振る舞いつつ各々の何かしらな理由を付けて街へと向かう様に促す。
「それにほら、こっちにはクリストフが居るからそこまで心配する必要は無いよ。」
「はい、勿論ですとも。
寧ろ私の手でこの沿道を第2の保養地として盛り立ててみようではありませぬか。(クリストフ)」
「うん、止めようね。」
一先ず街から立入を禁止されているのは【鬼神】であって『きじん(クラン名)』では無いので、せめて女性陣は街に行って貰う事にする。
別に強がりでも何でもなく、実際にノアはどんな場所でも訓練してきたので沿道位であれば全然余裕であった。
「では用事が済んだら直ぐに戻って…
「うーん…そう来たか~…
それなら…『ゴソゴソ…』」
ヴァンディットが用事を終えたら直ぐにでも戻ると言ってきたので、ノアは少し首を傾げる事に。
すると徐にアイテムボックス内で何やら操作し
ジャラ、ジャリ…
「はい、これ。」
「「「「え?」」」」
ノアはアイテムボックスから徐に金貨の詰まった小袋を数個手に取り皆に配る。
普段別に皆の財布を共にし、小遣い制にしている訳でも無く、各々所持金はあるのだが、ノアは気にせず小袋を渡し、皆はポカンとした表情でそれを受け取る。
「クランリーダーからの命令です。
今から配るこのお金を全部使って″『美肌の湯、全15種巡り』″に行ってきなさい!
ここ数日山中を歩きっ放しなので髪や肌が汚れています!
″女の子なんだから″もっと美容や健康に気を使って、より美しく綺麗になってから戻ってきて下さい、ちゃんと使い切るまで帰ってきちゃダメだからね!」
「「「「は、はい…」」」」
アンテイカーで貰ったパンフレットに書かれた″『美肌の湯、全15種巡り』″の項目を突き出しながらクランリーダーとしての権限を発動。
ノアから言われてハッとなった一同は自身の髪や肌に触れ、足下を確認すると砂埃でそこそこ汚れていた。
ちなみに小袋の中のお金は″『美肌の湯、全15種巡り』″4周分(ミリアは年齢を考慮して3周分)入っており、とても1日では使い切れない程の額であった。
ノアから怒涛の勢いで捲し立てられつつしっかり女の子扱いされた一同は、圧と嬉しさに負けてそのまま押し切られてしまったのだった。
ガコォン…
「行ったな。」
「行かれましたな。
ノア殿はこれからどう致しますか?(クリストフ)」
「そうだなぁ…取り敢えず街に入れないんじゃ食事も出来ない訳だし先ずは適当に食料確保を
『バカァンッ!』(門の小扉を蹴破る音。)
お?」
女性陣が街に入って行ったのを見届け、ノアはのんびり食料確保でもしようかと考えていると、門の方から轟音と共に小扉が開かれ、中からメガネを掛けた女性が飛び出してきた。
その時の勢いで門兵が吹き飛ばされていたが、女性は気にする事無くキョロキョロと周囲を確認していた。
と
「おぉおおおおおっ!【鬼神】さぁああああんっ!『ズザザザザザッ!』
この度は本当にごめんなさいぃいいっ!(ガネメ)」
沿道に立つクリストフとノアを見付けたカステロの冒険者ギルドのマスターガネメは、謝罪しながらスライディング土下座をかましてノアの前に到達したのだった。
「つまりあの『【鬼神】立入禁止』措置は冒険者ギルドを通さずに領主代理の独断で行った事だって事ですな?(クリストフ)」
「はい!既にこの事は領主であるバルディック・ロスト伯の方に報告致しましたので、早ければ明日にでも取り下げられると思いますです。(ガネメ)」
「…にしても、その領主代理があの″ゴーマン″が任命した人だったのか…」
「はい…前代の領主は元々冒険者で、フリアダビア奪還作戦に呼ばれて命を落とした為、代わりにシルヴィオが務める事になりました。
冒険者出身では無かったので、現場の事を軽視し、それによって我々との衝突はしょっちゅうありますが、公に出す様な大きな問題を起こさずに来たのですが、今回は流石にやり過ぎですのでそこそこの処分は食らう事になると思われます。(ガネメ)」
「ふむ…確かに物的被害が出ていない事から解任までは行かないでしょうな。(クリストフ)」
「…本音を言えば、アイツになってから職員の心労が増えていますので、大きな問題起こしてさっさと辞めちまえ、って思ってますがね…(ガネメ)」
((憎しみが深い…(クリストフとノア)))
冒険者ギルドマスターのガネメが来た事で立入禁止の理由は判明した。
大急ぎでバルディック・ロスト伯爵に報告が行っているとは言え、解除されるのは早くても翌日になるだろうと言うので、仕方無くノアはこのまま門の外で待つ事にしよう。
という事にした。
「まぁガッカリはしましたが、そこまで腹を立ててはいないので気長に待つ事にしますよ。」
「本当に、本当に申し訳ありません!
明日まで違った形で支援致しますのでどうか…(ガネメ)」
冒険者ギルドマスターのガネメは、何度か頭を下げつつも他に報告しなければならない所がある為、足早にその場を去っていった。
ジワリと話が良い方向に向かっている一方、不穏な動きはカステロの地下排水路で起こり始めていた。
「えっと…皆は気にしないで街に行ってきて良いよ?」
「いやいや、ノア君置いて私達だけって…ねぇ?(ラインハード)」
「「そうですよ。(ヴァンディット、ミリア)」」
「そうっちゃよ。(ミダレ)」
カステロへと続く門脇の沿道では、地面にドカリと胡座をかき肩を落とすノアが1人。
誰も想定していなかった事態に呆然とする中、ノアは女性陣達に街へ向かう様に促す。
「ヴァンディットさんとラインハードさんは確かアンテイカーで受けた依頼の薬品と彫金細工の受け渡しがここだったでしょ?」
「「うっ…(ヴァンディット、ラインハード)」」
「ミリアちゃんは確か『商人見習い(メルかドール)』の定期レポートが無かったっけ…?」
「は、はい、ありますが…(ミリア)」
「ミダレさんは街に何か用がある訳でも無いだろうけど、今は夏の陽気だし、僕と炎天下を共にする必要ない。
イスクリードがへばっちゃうよ。」
「ノア君…(ミダレ)」
《契約者様…》
「僕の場合、元々【ソロ】で旅する中でこういった事も想定してるから慣れているけど、皆を付き合わせる訳にはいかないからね。」
ノアは気丈に振る舞いつつ各々の何かしらな理由を付けて街へと向かう様に促す。
「それにほら、こっちにはクリストフが居るからそこまで心配する必要は無いよ。」
「はい、勿論ですとも。
寧ろ私の手でこの沿道を第2の保養地として盛り立ててみようではありませぬか。(クリストフ)」
「うん、止めようね。」
一先ず街から立入を禁止されているのは【鬼神】であって『きじん(クラン名)』では無いので、せめて女性陣は街に行って貰う事にする。
別に強がりでも何でもなく、実際にノアはどんな場所でも訓練してきたので沿道位であれば全然余裕であった。
「では用事が済んだら直ぐに戻って…
「うーん…そう来たか~…
それなら…『ゴソゴソ…』」
ヴァンディットが用事を終えたら直ぐにでも戻ると言ってきたので、ノアは少し首を傾げる事に。
すると徐にアイテムボックス内で何やら操作し
ジャラ、ジャリ…
「はい、これ。」
「「「「え?」」」」
ノアはアイテムボックスから徐に金貨の詰まった小袋を数個手に取り皆に配る。
普段別に皆の財布を共にし、小遣い制にしている訳でも無く、各々所持金はあるのだが、ノアは気にせず小袋を渡し、皆はポカンとした表情でそれを受け取る。
「クランリーダーからの命令です。
今から配るこのお金を全部使って″『美肌の湯、全15種巡り』″に行ってきなさい!
ここ数日山中を歩きっ放しなので髪や肌が汚れています!
″女の子なんだから″もっと美容や健康に気を使って、より美しく綺麗になってから戻ってきて下さい、ちゃんと使い切るまで帰ってきちゃダメだからね!」
「「「「は、はい…」」」」
アンテイカーで貰ったパンフレットに書かれた″『美肌の湯、全15種巡り』″の項目を突き出しながらクランリーダーとしての権限を発動。
ノアから言われてハッとなった一同は自身の髪や肌に触れ、足下を確認すると砂埃でそこそこ汚れていた。
ちなみに小袋の中のお金は″『美肌の湯、全15種巡り』″4周分(ミリアは年齢を考慮して3周分)入っており、とても1日では使い切れない程の額であった。
ノアから怒涛の勢いで捲し立てられつつしっかり女の子扱いされた一同は、圧と嬉しさに負けてそのまま押し切られてしまったのだった。
ガコォン…
「行ったな。」
「行かれましたな。
ノア殿はこれからどう致しますか?(クリストフ)」
「そうだなぁ…取り敢えず街に入れないんじゃ食事も出来ない訳だし先ずは適当に食料確保を
『バカァンッ!』(門の小扉を蹴破る音。)
お?」
女性陣が街に入って行ったのを見届け、ノアはのんびり食料確保でもしようかと考えていると、門の方から轟音と共に小扉が開かれ、中からメガネを掛けた女性が飛び出してきた。
その時の勢いで門兵が吹き飛ばされていたが、女性は気にする事無くキョロキョロと周囲を確認していた。
と
「おぉおおおおおっ!【鬼神】さぁああああんっ!『ズザザザザザッ!』
この度は本当にごめんなさいぃいいっ!(ガネメ)」
沿道に立つクリストフとノアを見付けたカステロの冒険者ギルドのマスターガネメは、謝罪しながらスライディング土下座をかましてノアの前に到達したのだった。
「つまりあの『【鬼神】立入禁止』措置は冒険者ギルドを通さずに領主代理の独断で行った事だって事ですな?(クリストフ)」
「はい!既にこの事は領主であるバルディック・ロスト伯の方に報告致しましたので、早ければ明日にでも取り下げられると思いますです。(ガネメ)」
「…にしても、その領主代理があの″ゴーマン″が任命した人だったのか…」
「はい…前代の領主は元々冒険者で、フリアダビア奪還作戦に呼ばれて命を落とした為、代わりにシルヴィオが務める事になりました。
冒険者出身では無かったので、現場の事を軽視し、それによって我々との衝突はしょっちゅうありますが、公に出す様な大きな問題を起こさずに来たのですが、今回は流石にやり過ぎですのでそこそこの処分は食らう事になると思われます。(ガネメ)」
「ふむ…確かに物的被害が出ていない事から解任までは行かないでしょうな。(クリストフ)」
「…本音を言えば、アイツになってから職員の心労が増えていますので、大きな問題起こしてさっさと辞めちまえ、って思ってますがね…(ガネメ)」
((憎しみが深い…(クリストフとノア)))
冒険者ギルドマスターのガネメが来た事で立入禁止の理由は判明した。
大急ぎでバルディック・ロスト伯爵に報告が行っているとは言え、解除されるのは早くても翌日になるだろうと言うので、仕方無くノアはこのまま門の外で待つ事にしよう。
という事にした。
「まぁガッカリはしましたが、そこまで腹を立ててはいないので気長に待つ事にしますよ。」
「本当に、本当に申し訳ありません!
明日まで違った形で支援致しますのでどうか…(ガネメ)」
冒険者ギルドマスターのガネメは、何度か頭を下げつつも他に報告しなければならない所がある為、足早にその場を去っていった。
ジワリと話が良い方向に向かっている一方、不穏な動きはカステロの地下排水路で起こり始めていた。
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