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取り敢えず南へ編

神父・教会としての役割

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~アンテイカー・通りにあるとある商店~ 


『『『グビグビグビッ!』』』(ポーションを3本纏めて一気飲み。)

ブスッ!ブスッ!(輸血用チノアラシの針を2本首に刺す。)

『『『ゴクゴクゴクッ!』』』(マナポーション3本を纏めて一気飲み。)

ズリズリズリ…(麻痺効果のある『シビビ』を患部に直接擦り込む。)

ズボッ!グヂュルッ!(肩と腕に刺さっていた血の針の破片を抜く。)

ヌリヌリヌリ。(商店のお姉さんからサービスで貰った化膿止めの軟膏を塗り塗り。)

クピクピクピ…(締めのポーション。)

「ゲフゥ…。」シュゥウウ…

「いやいや、″ゲフゥ″じゃなくて…」


朝方通りを散策していた時に見付けていた商店に入り、体力・魔力回復系ポーションをがぶ飲みして回復に努めるノア。

商店で働いていたお姉さんは、傷だらけで現れたノアに驚きつつも店主として対応。

見た目で言えば新人冒険者のノアから


″「マナ・回復ポーション各3、チノアラシの針2、シビビを素材のままで1つ。」″


という、言い知れぬ玄人感満載な注文が飛んできた事で、店主歴10年のお姉さんはノアが只者ではないと何と無く察していた。

しかも腕に刺さっていた破片を、シビビによって患部を麻痺らせてから取り除くという、上級冒険者ですらやらない施術をしていた事も、手慣れている感があった。


「一体どんなモンスターとやり合ったんだい?
この辺にはそんな傷を作る様なモンスターは居ないハズなんだけど…?」

「寧ろこの辺ってどんなモンスターが居るんですか?」

「ん?…もしかして君、教会の人達が言っていた″【鬼神】″って冒険者かい?
昨日北から侵攻してきていた【勇者】軍を返り討ちにしたっていう…」

「えぇ、昨日の夕方頃にやって来て、今日の朝から行動開始した矢先に色々ありましてね。
取り敢えず外で悪さをしていた奴は″撃退した″のでご安心を。」

「そ、そう?」


悪霊退治の証拠である『霊銀(スピリットシルバー)』を入手したが、ここで敢えて″撃退″としたのは、どす黒い人型が出現した原因があると思われるので、それを根絶しなければ完全に″討伐した″と言えないからであった。


「…っと、ここら辺に生息するモンスターだったね。
この辺、モンスターの類は居なくて、殆ど幽鬼(幽霊)とか悪霊、アンデットばかりね。」

「悪霊ってどんなのか分かりますか?」

「あまり見た事無いけど、幽鬼(幽霊)とアンデットの中間みたいな見た目らしくて闇魔法を使ってくるとか…
でもここ数年は目に見える程の悪霊は出て来てないってギルドマスターが言ってたわ。」

「ふむ、そうですか…
情報提供ありがとうございます。
実は色々と話を聞いて情報収集するつもりだったので助かりました。」

「いやいやこれ位…
また店に来てね、今度はボロボロの血塗れじゃなく、ね?」

「ははは。(確証は無い。)」


商店で回復と情報収集を終えたノアはその後2・3ヶ所(霊からの聞き取りも含む)でも情報収集を行いつつ教会の方へと向かうのだが…





~教会近辺~


〈ありがとうね坊や。
視える人を増やしてくれて。〉

〈欲を言えばもう少し増やして欲しかったけど…〉

〈無茶言ってやんな。
この坊主はさっき街の外で大立回りを繰り広げてたんだ、それは無理な注文って奴だ。〉


(あ、あれ?何でこんなに幽霊が居るんだろう…)

(『この街特有の祭りか何かじゃないか?』)


情報収集を終えたノアが教会に近付けば近付く程遭遇する霊の数が増えてきた。

またお願い事か、と思ったがそういう事でも無く、教会関係者(シンプソンとソシエール)を視える様にしてくれた事への感謝を述べてきた。


〈前は視える人が1人しか居なくて、それでも何とかなってたんだけど、不幸があって1人も居なくなっちゃったでしょ?
それでずーっと私達″待ってた″の。〉

〈これで漸く儂らも″旅立てる″ってもんじゃな。〉


(あー…)

(『あー…なる程な…』)


霊達の言う″待ってた″や″旅立てる″といった言葉を聞いたノアは、この場に集まってきた彼らの目的を察す。


(まぁこれも″覚悟″の1つだしなぁ…)

(『自分達の役目だと理解して受け入れるか、受け入れられずに拒むかはアイツら次第だがな。』)





~教会~


ギィイイイ…(扉)

「失礼しまー…


「……。(シンプソン)」

「……。(ソシエール)」


…あぁ…(察)」

(『どうやら後者くせぇな。』)


教会の扉を開けて中を覗き込むと、中にはシンプソンとソシエール、【聖騎士(パラディン)】の三兄弟が待機していた。

だがシンプソンとソシエールの2人は何やら思い詰めた表情で長椅子に座り込んでおり、外の状況と2人の様子を鑑みて、ノアと鬼神は予想が的中した事を悟ったのだった。


「あぁノア殿、怪我の方は大丈夫か?
大分出血もしていた様だが…(ヒューガ)」

「えぇ、ポーション類のがぶ飲みと輸血でもう大方回復しました。
直ぐにでも先程の地点に向かって調査と対処に向かおうと思うのですが…」

「なっ!?ついさっき帰還したばかりだぞ!?(ヒュージャ)」

「俺の仲間が被害を受けたのでね。
本当ならここに寄らずにさっさと済ませる予定でしたよ。」


体力的には差程消耗していないが、出血と魔力の回復が必要だったノア。

それが完了した今、直ぐにでも原因と思われる洞窟へと向かいたい所だが


「…どうです?
霊が視える様になった感想は?」

「「「…?」」」


思い詰めた表情の2人へと投げ掛けるノア。
【聖騎士】三兄弟はノアが何を言いたいか分かっていない様子。


「…望んだ通り霊が視える様になり最初は嬉しく思ったさ…
これで街に暮らす霊と対話が出来、親身に寄り添える存在となれる様精進しようと心に誓ったさ。
だが、″視えてしまった事でこれまで我々が担っていた役割の重さが明らかに変わってしまった″…(シンプソン)」

「…昔お世話になったお爺ちゃんお婆ちゃんに会えた時は凄く嬉しかったわ…
″立派になったね″って言ってくれた時は涙が自然と出た…言葉にならなくて何から話したら良いか分からなかった…
そしたらその2人から″お願い″されたの…(ソシエール)」


シンプソンに続いてソシエールが俯いたまま、表情が変わらないままポツリポツリと話す。


「2人からの″お願い″なら何でも聞こう、何か困ってる事があったら助けてあげよう、漸く恩返しが出来るって喜んだの…
…そしたら…(ソシエール)」


そこまで話したソシエールだが、その後を話すのが辛そうな様子であった。

そんな2人を代弁するかの様にノアがその先を口にする。


「″成仏させてくれ″…とかですかね…?」

「…う、ん…(ソシエール)」


肯定したソシエールは、それ以上何も言えずに啜り泣いてしまった。
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