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取り敢えず南へ編

″出そう″な街『アンテイカー』

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~ウォルタメを出てから5時間後・夕方~


「おや?あれがもしや『アンテイカー』では御座らんかな?(クリストフ)」

「ん?何か見えるの?」

「広大な窪地のど真ん中に街が広がっており…
その街の中央には教会が見えますね…(マグワイト)」

「スゴい地形ね…
山の中腹から一樹に地盤沈下したかの様に断崖絶壁に囲まれているのね…(ラインハード)」

「街の周りは鬱蒼とした森に囲まれてて、こう言っては失礼でしょうけど、確かに″出そう″ですね…(ヴァンディット)」


空が赤みがかってきた夕暮れ時、殆ど一本道を歩いていた一行の目の前に突如広大な窪地と下り坂が見えてきた。

今まで平らな地面が続いていたのに、急にボコンと深く、広大な窪地が出現した為、隕石落下によるクレーターに街を造った、と説明されれば信じてしまうだろう。

下り坂は長く緩やかで、くねくねと蛇行しながら窪地の底まで繋がっていた。

窪地の底には鬱蒼と森が生い茂り、坂の上から覗き見た感じ″黒一色″と言った感じである。

そんな如何にもな森の真ん中に、円形の街が広がり、街の中心には鐘付きの教会が建っていた。

恐らくその教会にエミが在籍していたのだろう。


「確かにあそこが目的の街だろう。
それじゃあ行こうか。」

「そうっちゃね。(ミダレ)」スッ…
「そうですね。(ミリア)」スッ…

「…2人共、ピッタリと真後ろに付いたけどどうしたの…?」


下り坂を下り、いざ『アンテイカー』に、と促すと、ノアの背後にピッタリミダレとミリアがくっついてきた。

それはもう、2人の呼吸音が聞こえる程にピッタリと、である。


「な、なんか、″出そう″やな~って思ったら思わず…(ミダレ)」
「お、同じく…(ミリア)」
「そういう事なら…(ラインハード)」スッ…
「そうですねぇ…(ヴァンディット)」スッ…

「あ、増えた。」


結局ノアを先頭にして『アンテイカー』へと向かう事となった。





『『『『『ザッザッザッザッザッ…』』』』』

「いやー、下れば下る程暗さが増していきますなぁ。空はまだあんなに赤々としていると言うのに、眼下はまるで深夜の様…
…程良く湿度があって日中はほぼ日陰でしょうからキノコにとっては好条件…
うーむ、老後はここに移住するのも良いかもしれませぬな。(クリストフ)」

「そもそも君は一体幾つなんだい?
見た目からでは全然判断が付かないのだが…(マグワイト)」

「プリップリの生後2ヶ月目で御座いますぞ。(クリストフ)」

「…(絶句のマグワイト)」

「そんな口調の生後2ヶ月が居て堪るか。」


なだらかな下り坂を談笑しながら下って行く男性陣。
1歩、また1歩と進む度に夜へと近付いていく感覚は確かに不気味な感じである。

ちなみに女性陣はと言うと


「ノア君待って!歩くの早いっちゃ!
もっとゆっくり行こ!ね?行こ!(ミダレ)」

「いつも通りのペースだよ…
それに″2人″のペースに合わせたら本当に夜になっちゃうよ?」

「そ、そうですよミダレさん…
こうも腕に抱き付かれては、私まで遅れてしまいますよ…?(ヴァンディット)」

「ヴァンディットさんはしっかり目を開けて歩きましょ。転んじゃいますよ。」

「ハィ…(ヴァンディット)」

「どうするヴァンちゃん、明かり点けよっか?(ラインハード)」

(私よりも怖がってる人を見ると何だか落ち着いてきたわ…(ミリア))


何故かヴァンディットとミダレが異様に怖がり出し、お互い腕を絡めてノロノロと歩いている。

ラインハードは既にケロッとして2人の隣を並進し、先程まで皆と同様に怖がっていたミリアは自分よりも怖がっている2人を見て落ち着きを取り戻していた。

というか、ヴァンディットは吸血鬼、ミダレはサキュバスなのだから夜は得意なのでは?
と思うが、言わないでおこう。


カチッ!『『パァアアッ…』』(ラインハードの″目″から放射状に光が発生。)


「…あの、ノア殿…?
彼女のあの″目″は何かのスキルか何かの影響で…?(マグワイト)」

「いや、まぁ、あぁ言うモノだと思って下さい。」

「えぇ…(マグワイト)」


まだ会って数時間のマグワイトに、全ての事を話すつもりも無いし、「彼女の体は機械なんですよ。」と言っても信じられないだろうから、この場では有耶無耶にしておく。

一先ずラインハードからの提案で明かりを点ける事に賛成をする2人。
これで安心してくれると良いのだが…


「あああっ!言い表せない臨場感が増して余計に怖いっちゃ!(ミダレ)」

「フフフ…フタリトモ、コッチ…コッチ…(ラインハード)」

「ハーちゃん!そういう演出しなくて良いからぁ!(ヴァンディット)」

「…悪化した…」

(『怖がりなのに肝試しに来た仲良しパーティかよ…』)


白いワンピースを来た少女(ラインハード)から発せられた光でボンヤリと発光し、端から見れば幽霊に見えなくも無い。

それを分かってか、ラインハードは情感たっぷりに震える声を発して2人に手招きしていた。


「ラインハードさん、悪ふざけはそこまでにしましょ。
ラインハードさんとミリアちゃんはヴァンディットさんと手を繋いであげて下さい。
そんでミダレは俺と手を『ガシッ。』うわっ、本当に怖かったんですね、手が冷たくなってるじゃないですか。」

「はーい。(ラインハード)」
「分かりました。(ミリア)」

「は、はわわ…(ミダレ)」


ラチが明かなかったので、ラインハードとミリアがヴァンディットを。
ノアがミダレの手を引いて連れて行く事にした。

するとそこに


『『『ヒィイイイン…』』』

「ん?何の音だろ。」

「風切り音の様ですな。(クリストフ)」

(『前方からだな。
距離は200、序でに誰かが樹上を伝ってここにやって来るぞ。』)


まるで矢が飛んで来る様な風切り音が何処からともなく響いてきた。
どうやら音の出所は街の方からで、それと同時に街の方から生い茂る木々を伝って数人の人影が迫ってきていた。

そしてその直ぐ後


『『『ジャキィッ!』』』

「わ!?け、剣が飛んできましたよ!(ヴァンディット)」
「こ、これはお化けの仕業でしょうか!?(ミリア)」
「我々の目と鼻の先で停止しておりますな。
恐らくあの御三方が放ったモノでしょうな。(クリストフ)」


どうやら風切り音と共に飛来してきたのはレイピアと呼ばれる細身の剣で、鍔と刀身の所に十字の装飾が為されていた。


『『『ギシッ!』』』

「問おう!汝達は何用でここに参った!」

「まさかとは思うが、″【勇者】軍″の一派では無いだろうな?」

「現在″【勇者】軍″侵攻中との報せを受けて厳戒態勢を敷いている!
汝らが何者であるかが判明するまでは『アンテイカー』に入れる訳にはいかない!」
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