ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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取り敢えず南へ編

頭覗かせて貰いますよ

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グイッ。「うぅ…(ビスマス)」

「よいしょっと。
おぉ…【鬼灯丸】殿は見事な身のこなしに御座いますな。
やはり私の心配など杞憂であったな。(クリストフ)」


昂雷猿帝と共に行動していたビスマスを回収してノアの下へ向かうクリストフ。


バシュゥッ!『バチィッ!』ビュォオッ!『バチィッ!』 

「グリード殿の方ももう少しと言った所ですな。
空に立ち込めていた積乱雲も大分小さくなり、あの者達への供給も断たれる事になるでしょうし。(クリストフ)」


次に空を見上げたクリストフは、雷鳴竜・ドラグナとグリードとの戦闘へ目をやる。

雷鳴竜とドラグナは積乱雲から供給された雷を湯水の如く使用し、グリードへ猛攻を仕掛けるも、それらの悉くを食われ、呑まれ、吸収されて数倍のプラズマレーザーと共に返され、体を霧散させられていた。

そしてまた体を再生させる為に雷を供給し…と言った流れが延々と繰り返されていた。

その結果、滝の様な土砂降りは小雨へと変化し、現在は止んでいる。
先程まで轟音凄まじかった雷鳴も、小さくなった雲の中で僅かに光を発している程度となっていた。

つまり戦いの終結が近付いていたのであった。





「ノア殿、体調如何ですかな?(クリストフ)」

「…あぁクリストフ…
火傷は治ったんだけど、まだ視力は回復してないかな。」


山肌に腰掛けて目を押さえていたノアの所まで向かい、経過を窺う。
クリストフが使った『ヒールダストマッシュルーム』によって火傷等の状態異常、体力等は回復しているが、″症状″までは回復出来ていない様だ。


「ノア殿、″べー″ってしてみて貰って良いですかな?(クリストフ)」

べー。(舌を出すノア。)

「…あの、ノア殿、舌では無く目の方で…(クリストフ)」

「あ、そ、そうだよね…この流れで舌な訳無いか…」


その後クリストフによる簡易的な診察の結果、やはり急激な光を見た事による一時的な視界不良であると言う。

全く見えていなかったら心配だったが、″見え辛い″との事等も考慮した結果である。
帰ったらヴァンディットにお願いして点眼薬を貰うとしよう。

と、そんな事を話していると


「あ。」

「ん?(クリストフ)」

「戻った。」スッ!

「あぁ、弱体化が解除されたのですな。
あ!そうだノア殿、再度″べー″ってしてみて貰って良いですかな?(クリストフ)」

べー。

「ノア殿、舌では無く目の方ですぞ。(クリストフ)」


弱体化が解除された事で力の制御も行われる様になったので、症状が改善されていないかな、と思ったクリストフだが、多少良くなった程度でまだ視界は良くない状態のままであった。





『『『ザッザッザッ…』』』

「…何しに来た?」

「分が悪くなったから攻撃を仕掛けに来たのですかな?(クリストフ)」


不意にノア達を取り囲む様に多数の反応が迫っていた。
だが、新手の敵対勢力と言う訳では無く、何度か相対し、後方待機していた″超強化状態の【勇者】軍の者達″であった。


「違う。
俺達のリーダーとも言えるビスマスさんがやられ、相棒の昂雷猿帝も虫の息。
ドラグナさんと雷鳴竜が奮闘しているが、ジリ貧でどうしようも無い。」

「俺達の強化状態も残り1~2分で切れる。
こっから束になって掛かったとしてもアンタらに勝てる見込みは無ぇ。」

「反動で気ぃ失っちまう前にアンタに″頼み事″をしにきたんだ。」

「…″頼み事″?(クリストフ)」


最後の抵抗に赴いた訳では無く、ノア達に″頼み事″があってやって来た様だ。


「…俺達はどうなったって良い。
ドラグナさんとビスマスさんを殺さないでやってくれ。」

「2人は″実験されていた″俺達を自分達共々逃がしてくれたんだ…」

「【勇者】軍としてこの地にやって来たのは、他の【勇者】軍に紛れて逃げる途中だったんだ、信じてくれ!」

「″実験″…?逃げる…?一体何処からだ?」


自分達と引き替えにドラグナとビスマスの身の安全の保証を要求してきたのである。
その他にも気になる単語が含まれていたが、言い逃れや苦し紛れの演技と捉える事も出来たが、全員の目が真剣に訴え掛けていた。

そこでノアは少しでも情報を引き出そうと、″実験″と″何処から逃げて来た″のかを探る事にした。




『『『シュゥウウ…』』』(【勇者】軍超強化部隊から膨大な魔力が抜ける。)

「ぐぅううっ!」
「「ガァアアアッ!」」
「あぐっ…力が…抜け…」
「「「ぅがぁああああ…」」」

ドサッ!『『ドシャッ!』』


超強化状態が解除され、反動によって次々に地面に倒れ伏していく。


「おぉ…何て間の悪い…(クリストフ)」

「いや、却って都合が良くなった。」

(鬼神、あの頭の中を覗くヤツやってくれない?)

(『″強制閲覧″か良いぜ、俺も少し気になったしな。』)


彼等が宣ったのが嘘か本当か、真偽の程を明らかにする為にも、ノアは気を失った【勇者】軍、序でに捕まえたビスマスの頭に触れて、脳内の情報を覗く事にするのだった。





「…っ、ぅう…
っ!しまった!気ぜ『ズキィッ!』ぅ…がふっ…!(ビスマス)」


不意に気を失い、捕虜となっていたビスマスが覚醒する。
だが、【竜攘虎迫】の反動によって体を動かす事が出来ずに再び地面に倒れ伏す。


「くっ…体が動か…【竜攘虎迫】が解除されて…
っ!そうだ、昂雷猿帝!昂雷猿帝は何処に

『ズッ、ズリリ…』(何かを引き摺る音。)

ドシャッ!〔ッ…グゥ…〕

「こ、昂雷猿帝…(ビスマス)」


体が言う事を聞かない状況ながら、先程まで戦闘を共にしていた相棒の昂雷猿帝を探すビスマスだが、自身の隣に両腕両足を滅茶苦茶にへし折られ、息も絶え絶えの昂雷猿帝が倒れ込んだ。


(゜゜)(゜゜)「うぃ。」

「お、【鬼灯丸】殿お疲れ様です。
少々お待ちを、ノアール殿は今情報収集にあたっております故。(クリストフ)」

(じ、情報収集…?
っ!?な、何だありゃ…(ビスマス))


首を回す事すら難しいビスマスが首を捻って視点を変えると、その辺に倒れ伏している【勇者】軍の仲間達の頭を赤黒く染まった腕で掴み回っているノアの姿があった。

ノアの異様に呆然とするビスマスであったが、不意にノアが振り向き、目が合う。

既に夜になり、辺りは闇に包まれているにも関わらず、ノアの赤黒く染まった眼はハッキリと見えていた。

【鬼灯丸】とは違う強烈な殺気に当てられたビスマスは瞬時に″殺される″と判断した。

が、ノアからは意外な言葉が返ってきた。


フシュ…(力の制御をする音。)

「驚いた。
他の【勇者】軍と違ってあなた達は″誰1人として襲撃や強奪等を行っていない″のですね。」


通常状態に戻ったノアは、驚いた様子でビスマスにそう告げていた。
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