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取り敢えず南へ編

【勇者】軍第6次部隊ノーキン隊:硬

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~『ウォルタメ』から500メル後方・【勇者】軍第6次部隊待機場所~


ワァアアアアアア…


「…あの、ノーキンさん…
村に【鬼神】が居るから、ヒュブラスカさんが穏便に事を済ませに行ったハズですよね…?」

「あー…そのハズだなぁ…
なーんで悲鳴が聞こえて来てんだぁ…?(ノーキン)」

「…まさかヒュブラスカさん、しくじっちゃったんじゃないですかね…」

「ヒュブラスカが?
いや、まっさかー…ん?誰か走ってくるぞ?(ノーキン)」

「新入りの冒険者ですよ。
何だか切羽詰まった表情してますが…」
 

【鬼神】と一時的な友好関係を築きに向かったハズの【勇者】軍第5次部隊のヒュブラスカからの合図を待っていた【勇者】軍第6次部隊のノーキン一行であったが、何故か村の方からは悲鳴が聞こえて来た事に困惑気味であった。

村まで誰か確認にでも向かわせようかと思った矢先、誰かが山の斜面を駆け降りてくるのが見えた。

それは最近【勇者】軍に加入した新人冒険者のハインであった。


「き、きぃ…っぁ、【鬼神】っは!
居まっぇん…した!ヒュブラッカ…がやられ…え!
こっち…ぃ向かって、来へ…(ハイン)」

「何言ってんだか分かんねぇよ!
落ち着いて話せ!(ノーキン)」


山の斜面を全力で駆け降りて来た為か、新人冒険者のハインはノーキンに事情を説明するが、殆ど何を言っているのか分からない口調であった。

だがノーキンは


「ま、第5次部隊の悲鳴と新入りの切羽詰まった感じからしてヒュブラスカがしくじったのは間違いないな。
おい誰か足速い奴、後続の第7・8・9・10次部隊ん所行ってここに集結させろ。(ノーキン)」

「「「「了解。」」」」

「他は散開して接近に備えろ。
『脳金(クラン名)』、仕事だ。(ノーキン)」

「「「「「「「おぅ。」」」」」」」

『『『『『『ピキピキピキ…』』』』』』


ヒュブラスカ隊のしくじりを悟ったノーキンは周りの者に指示を出す。
その後自身のクラン『脳金』の者達をこの場に召集し、即座に各々が準備を開始。

『脳金』の者達は一様に筋骨隆々で、武器を持たず、拳にサックを装着しており、【拳士】である事が窺えた。

だがそこから更に変化が加わり、『脳金』の者達の体表が次々に黒く、金属の様に硬化し、光沢が出ていた。


「あ、あの…お、俺はどうすれば…?(ハイン)」

「あ?【勇者】軍なんだから戦えよ。
腰に差してる剣は飾りか?(ノーキン)」

「あ、あんな奴と戦った事なんて…(ハイン)」

「何言ってんだお前ぇ、一応俺達ゃ″【魔王】討伐″を掲げてんだぜ?
あんな奴ゴロゴロと出て

『ズドォンッ!』

「う、うわ『ガッ!』っぁ…(ハイン)」


腑抜けるハインに戦えと命じている最中、山の斜面を駆け降りるのでは無く、飛び降りてきたノアが【勇者】軍第6次部隊の目の前に着弾。

その際に飛散した瓦礫がハインの頭に命中、そのままハインは意識を失ってしまった。


チュチュン!チュインッ!

「はっはー!来たなぁ?
【鬼じ…ん?俺の知ってる【鬼神】じゃぁねぇなぁ。
歳が一回り位違ぇし、腰に差してる剣も二刀じゃねぇ。(ノーキン)」

「ノーキンさん、【鬼神】は最近剣を4本刺しに変えたらしいですぜ。
確かに歳は全然違いますが…」

「ん?今はそうなってんのか?まぁ良いや。
ここまで近付いてんのに気配が殆ど無ぇ、かなりの手練れだ、お前ぇら抜かるなよ?(ノーキン)」

「「「「「「おぅ!」」」」」」

『『『『『『ダンッ!』』』』』』


新人冒険者のハインが一撃で気絶する程の瓦礫の弾丸を、ノーキンは硬化した腕で事も無げに弾いていく。

既にノーキンの周りには『脳金』メンバーが続々と集まり、ノーキン同様に体表を硬化させた状態でノアへと向かって行った。


『『ギュルルッ!ヒュパッ!』』(ガントンファーを装備して構える音)

ダッダッダッダ!

「おっ!トンファーか!渋いねぇっ!」

ボッ!『ガキッ!』ガ『ガンッ!』(繰り出された拳を回避し、ガントンファーを喉に叩き付けて衝撃を発射。)

「ぅえっほ!?何か仕込んでやがんな!」

(む…硬い…
体表の変化といい、<防御系スキル>を使用しているのか…?)


通常の人間がまともに食らえば一撃で気絶する衝撃を喉に受けた『脳金』メンバーだが、2、3度えづき、後退する程度であった。


「ッラァッ!」ボッ!

パシッ!ゴッ!『ミキッ…』(繰り出された拳を<受け流し>、肘に掌底を打ち込む。)

「ぐぅっ!?」

(よし、関節部は弱い。
恐らく<鉄鋼皮>の類いだろう。)

ドッ!『ガガンッ!』ガッ!ガンッ!(相手の脇にガントンファーを2発発射、膝を蹴って頭が下がった所に1発撃ち込んで気絶を狙う。)

「ぅ…ぉ…」ふらふら…

(…予想よりも硬い…
<防御系スキル>に加えて【適正】による何かしらの固有スキルも使用しているな?)


短時間の間に3人程ガントンファーを絡めた体術を行使したが、決定打には繋がらなかった。



『脳金』…ノーキンをリーダーとする【拳士】のみで構成された30人程のクラン。
防御系スキルを数多く取得しており、″硬くて重くて近い″戦闘スタイルを得意としている。

ちなみに『脳金』とは、″脳以外金属″の略である。





「ノーキンさん、あのトンファー何やら仕込まれている様です。
が、致命傷となる程の威力は無いものと思われます。」

「なら結構。
囲んで叩け、散開させた奴等にも順次攻撃を開始させろ。(ノーキン)」

「へい。」





「ぬぅん!」ボッ!

ガッ!ガガンッ!「ぐ!」ズムンッ!ガガガガンッ!(繰り出された前蹴りを<受け流し>、顎に2発発射、怯んだ隙に鳩尾に拳を叩き込み、序でに4発喉に叩き込んだ。)

「ぐぇえ…がぁあっ!」

(コイツらに対しては過剰に攻撃を加えた方が良い、かなり硬いから1人1人を倒すのに時間が掛かってしまう…
かと言って力の制御下でそこそこ本気を出したら相手を殺してしまう。)

(『一旦力の制御を解除した方が良いな。』)

(だね。)


等と相手の戦力と自分の状態を照らし合わせ、どの状態がベストなのかを鬼神と話していると


ヒュンッ『パシッ!』

(矢?
仲間が周りに居るんだぞ…あ、硬いから気にせず攻撃を仕掛けているんだな…?)

(『ある意味俺らの戦法と似ているな。』)


何処からとも無く矢が飛来。
近くには倒れている『脳金』メンバーが居るのにも関わらずであった為、一瞬困惑したが、よくよく考えれば自身がいつも行っている戦法であったので妙に納得してしまった。


チュンッ!チュインッ!(ノーキンの体に矢が当たる音)

「継続的に射ち続け、奴の行動を鈍らせろ!
俺達の事ぁ気にすんな!
矢如き効きゃしねぇ!(ノーキン)」


仁王立ちするノーキンの体に矢が当たる度火花が散るが、当のノーキンは全くそれを意に介していなかった。


(ほーん、矢が効かないねぇ…試してやろうか…?)

(『やったれやったれ。』)

スチャ…(背中から魔竹弓を取り出す音)


ノアは不敵な笑みを浮かべつつ左手のガントンファーを仕舞い、弓を取り出す。
その行動を見たノーキンは直ぐに指示を出す。


「散開組!奴から攻撃が飛んで来るぞ!
気を付け

『バキュゥ『ガギュンッ!』

「ぐぉおああっ!?」

「何!?(ノーキン)」


火薬が炸裂したかの様な音が響いたかと思うと、『脳金』のメンバーの悲鳴が上がった。

そちらの方を見てみると、ノアが放った矢が『脳金』メンバーの肩を貫いていたのだった。
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