ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

いつの間にか外堀を埋めていた両親。

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~色々あって20分後・人通りの少ない路地~


「ご、ごめんねノア君、急にあんな…(何故か照れクロラ)」

「い、いや…びっくりしたけど、う、嬉しかった…よ…(何故か照れノア)」

「やっば…少年の唇って意外と柔らかいのね…(何故か照れポーラ)」

「ちょ、おいポーラ…(照れノア)」


ノアよりも先に獣人国を発つクロラとポーラは、ノアの母アミスティアから唆されて″思い出作り″をし終わった所であった。

何をしたかは定かでは無いが、3人共時折唇に指を触れさせて何かの感覚を思い出している様子であった。


「そ、それで、明日には″エルフの森″に向かうんですよね?」

「そうね、明日発たないと到着が難しくなるらしいの。(ポーラ)」

「準備は殆ど終えたから後は獣人国に定期的に来る馬車を待つだけになったの。
確か明日の早朝だったハズ。(クロラ)」

「それじゃ明日の早朝見送りに行きますね。」


その後、エスメラルダの居る冒険者ギルドに戻ると言う2人。
ノアもそろそろ獣人国を発つつもりなので挨拶回りに向かおうかと考え、ここで別行動を取る事にした。


「それじゃあノア君また明日。(クロラ)」
「口寂しくなったらまた来ても良いぞ少年。(ポーラ)」

「こらこらポーラ、また明日ね。」


ノアは未だに頬を赤く染めながら手を振って2人を見送る。
その表情は少し名護惜しそうに見えた。

と、そんなノアに


ガッ!「っ!」ガシッ!

「むがががが!?」ズルズル…


突如、気配も音も無く何者かに口を塞がれ、羽交い締めにされたノアは、何の抵抗も出来ずに路地に引きずり込まれて行ったのだった。





~10分後・とある高級料理店~ 


「「かーんぱーい!(レドリックとアミスティア)」」

『『カッシャーン!』』

「カ,カンパイ…」


街のとある高級料理店にて、家族3人水入らずで盛り上がりを見せていた。
と言っても両親だけ異様に盛り上がり、息子のノアは気恥ずかしそうにして、声もいつもより小さかった。


『『グビグビグビ…』』

「ぷはー!今日のお酒は特段美味しく感じるわぁ!葡萄酒8本ジャンジャン持ってきて!(アミスティア)」

「はーい!(給仕)」

「ぷはぁ!取り敢えず腹ん中に何か入れるぞ、ドラゴンステーキを塊3つで!(レドリック)」

「はーい!(給仕)」


ジョッキに並々と注がれた葡萄酒を一気に飲み干した両親は、大人数並の注文を取る。

ちなみにアミスティアは酒豪で、レドリックはノア並の胃袋を持っている。

ノアにはオレンジジュースをジョッキに注がれているが、チビチビと飲んでいた。


「で、どうだったかしら?彼女達の唇は?(アミスティア)」

「ブフッ!?」


陽気な母親からストレートな感想を聞かれたノアは思わず吹き出してしまった。


「お客様!?」

「げっほげっほ!!」

「如何されましたかお客様!?」
「どうしましたかお客様?」

「うぇっほげっほ!!」

「あらあら息子がごめんなさいねぇ。(アミスティア)」フキフキ…


心配した給仕がやって来るが、アミスティアが手早く片付けてその場を収めていた。


「けほけほ…ま、まさか見てたの…?」

「流石にそんな無粋な事はしないわよ。(アミスティア)」

「ノアの仕草を見れば大体何があったか分かるさ。(レドリック)」

「し、仕草て何さ…?」

「「自分の唇に触れてキスの感触を思い出「ホラホラ!『ゴトンッ!』葡萄酒が届いたよ飲んだ飲んだ!『ゴトンッ!』」


話を遮るかの様に手荒に葡萄酒を置くノア。
やっぱり両親には色んな面で敵わないなと感じるのであった。





『『『ムグムグ…』』』

「それにしても良い娘さん達とお付き合いしてるのね。
早く孫の顔が見たいわぁ。(アミスティア)」

「ブフッ!?」

「お客様!?」
「如何されましたかお客様!?」
「どうしましたかお客様?」

「あ、ウチの息子は吹き出し癖があるのでお構い無く。(レドリック)」


食事が開始されてもアミスティアからのファイアボールストレートは止まる事を知らず、ノアはヒヤヒヤしながら並べられたドラゴンステーキを口へ運んでいた。


「い、幾ら何でも気が早すぎるでしょ…
そう言うのは段階を踏んで…先ずは相手の親御さんにご挨拶とか…」

ムグムグ…

「ほぅ、そこら辺はしっかり弁えてるんだな。
それじゃあ、相手の親御さんに了承貰えてたらあの娘達の事との今後を真剣に考えるという事だな?(レドリック)」

「うん…『ムグムグ』…え?どういう事…?」


ノアとしては礼儀とか順序をしっかりしておきたい様子。
そんな息子の考えを受けてか、レドリックはアイテムボックスからある物を取り出してノアの前に提出した。


『『スッ…』』

「…何これ手紙…が2通…?
″クレイラス牧場″と″ポルク・リズリー家″…?
″クレイラス牧場″って言えば、ウチの村や周辺地域に乳製品を卸してる牧場で、″ポルク・リズリー家″って時たま教会のある2つ隣の村でバザーを開いてくれてる貴族の名前だよね…?
これがどうしたの、父さん?」

「クロラちゃんの実家が″クレイラス牧場″で″ポルク・リズリー家″がポーラちゃんの実家だ。
ノアには言ってなかったが、双方の親御さんと俺達は面識あったんだな、実は。(レドリック)」

「ブフッ!?」

「お客様!?」
「お客様!?」
「お客様?」

「お気になさらず~。(アミスティア)」フキフキ…


本日もう何度目になるか分からない吹き出しをかますノア。
アミスティアの事後処理も手慣れたものである。


「え?え?何…どういう事!?」

「元々乳製品融通やバザーの件で軽い繋がりはあったんだが、ノアが村を出て数日後にオードゥスで色々やっただろ?
後にギルドの方から双方の家に連絡が行ったらしく、両家から御礼の菓子折りを持ってきてくれてそこからの仲なんだ。(レドリック)」ムグムグ…


ノアが旅立って数日後、オードゥスの街でクロラとポーラが巻き込まれたバーサークベアの一件。

元はクロラと同郷であるバッツ、ガッツの行いが引き金となって引き起こされたもので、2人は完全に被害者であった。

クロラに至っては、その前にモンスターを他者に擦り付ける″押し付け″をノアに対して行っていたが、不問とする措置を取っていた。

当時(と言っても3ヶ月前)は、武器や【固有スキル】等も限られ、バーサークベアに対して必死こいて戦って勝利し、後にギルドを介して一連の事件の経緯が両家に伝えられたとの事。

両家からは一人娘を助けてくれた事に対する感謝としてわざわざノアの実家に訪れ、クロラの実家である″クレイラス牧場″はそれに加えて″押し付け″を不問としてくれた事に対する御礼をしてくれたらしい。


「そこから双方とやり取りをし出してな、顔を合わせる度に色々と知らせてくれたのさ。
″「初めて娘が食事以外で心を満たされらしい(クレイラス)」″とか″「毒舌気味な娘が初めて他者に好意を寄せている(ポルク)」″とかな。(レドリック)」


2人はどうやら定期的に冒険者ギルドを介して故郷に手紙を送っていたらしく、その都度話題の中にノアが居た様だ。

そんな手紙が続けば双方の両親は嫌でも気付くので、その事についてノアの両親にも伝わっていたらしい。


「ウチの村周辺では双方の同意があれば一夫多妻が認められてるから、冗談混じりに「ウチの息子如何です?」って聞いてみたの。
そしたら双方が″「お願いします。」″って返事してたわよ。
これ、その書状よ。(アミスティア)」

ペラッ…

「あ、本当だ…」


レドリックが先程取り出した手紙を捲って中を確認してみると綺麗な字でお付き合い・婚約を認める文章が書かれていた。


「堅実派のノアの事だから遅々として進展しないだろうから、俺達の方で外堀を埋めておいたぞ。(レドリック)」

「くっ…完璧な迄に僕の事を分かってらっしゃる…(泣)」


両親の用意周到っぷりに心の涙が止まらないノア。
双方の了解を得ているハズなのだが、一層ノアは困った表情をしていた。

その理由を両親は既に知っている。


「…″寿命″の事、気にしてる?(アミスティア)」

「そりゃ…ね…
僕が2人に対して色々と踏み切れないのはそういう部分もあるかな…
責任を取るなら最期まで、って気持ちが強いけど、今のままじゃ何もかもが中途半端になっちゃうから…」


一応″とある伝手″で延命出来なくも無いが、短い命だからこそこの性格でいられていると感じているノアは、それが変わってしまうのではと感じ、延命をずっと躊躇っているのだ。

するとここでアミスティアが


「そう…
ねぇノアちゃん?ちょっと変な事聞いても良いかしら…?(アミスティア)」

「え?何突然…
…え?まさかこれ以上何かあるの…?」


改まった様子のアミスティアに、何故か言い知れぬ恐怖を感じて身構えるノア。
だがアミスティアの口からは意外な言葉が出てきた。


「ノアちゃん…″神様″にはもう出会った…?(アミスティア)」

「…は?」
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