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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

??「あらやだ、キスもまだだったの?襲っちゃえ襲っちゃえ。」

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~獣人国を出て西に2キロメル程進んだ街道~ 


ズシャッ!

「うぁああああっ!来るな!来るんじゃねぇっ!」

スタスタスタ…

「俺ぁ重鎧を着込んでんだ!生半可な攻撃ぁ効かねぇんだぞ!」

スタスタスタ…

「そ、それ以上来てみろ!この巨大な戦斧で叩き潰してやる!お前位の子供なんて1発だぞ!」

スタス…

「やってみろ!」ドガァッ! 

「うぁあぁああっ!」グォオオッ!


街道に叫び声が響き渡る。
字面だけ見れば加害者と被害者であるが、発しているのは逆である。

重鎧を着込んで戦斧を掲げているのは野盗で、スタスタと歩み寄っているのはノアで、彼の後ろには死屍累々と野盗総勢30人近くが転がっているが、全員気絶しているだけである。

現在手が回っていない騎士達に代わりノアが野盗退治に駆り出ていた。
ノアとしてはガントンファー型ショックムーヴァーの使用感を確かめに来た認識しか無いので野盗にとっては恐怖体験であった事だろう。 

突然強襲されて瞬く間に次々と撃破され、あっという間に野盗のリーダーただ1人となってしまった。

そして今、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。


~4秒後~


「げぇ…」ズズゥンッ!

「うん、良い感じ良い感じ。」


戦斧をガントンファーで受け流した直後、重鎧の脇腹の隙間に差し込んで2発発射。
呼吸困難に陥らせる事で速攻で終わらせたのであった。





ガシャガシャ…『『ゴロゴロ…』』

「あ、ノア君ご協力ありがとうございますー!(モモ)」

「後の連行は私共の方で行います!(チワ)」

「あ、モモさん、チワさんお疲れ様です。」


少しして犬姫の騎士、モモとチワの2人が野盗40人を運べる程の鉄製の荷馬車を引いてやって来た。

気絶している野盗を後ろ手に縛り、ドンドンと荷馬車へ乗せていく。
結局ノアも手伝って、約20分位で完了させたのであった。


ガシャガシャ…

「ん?この気配はハナさん…?
調書終わって応援に来たのかな…?」


すると獣人国の方から追加で騎士が駆けて来たのであった。
気配の感じから騎士団長のハナであったが、やけに慌てた様子でやって来た。


「どうしたんですかハナさん?
息を切らせて慌てた様子ですが…?」

「また野盗でも出た?(モモ)」

「ち、違う違う…
大変なの!【勇者】アークの故郷、イグレージャ・オシデンタルが″【魔王】討伐に向けて開戦″を全世界に表明したのよ!(ハナ)」

「「「…はぁ?」」」





~その頃の獣人国・王城~


″「本日早朝、西の大国イグレージャ・オシデンタルより危急の報せが届いた!
『本日イグレージャ・オシデンタルは、【勇者】の使命とも言える″【魔王】討伐″の為、挙兵する事をここに宣言する!
我等の呼び掛けに応じる者あらば参集せよ!
応じぬ者は義援金を幾ばくかを求めん。
共に【魔王】を打ち破ろうぞ!』とな。(ローグ)」″


王城のテラスから国王ローク・ラグナーが報せを読み上げ、街に居る住人や冒険者等は真剣に傾聴していた。


″「数日前に申したが、我等獣人国ヴァーリアス・フェアレスとしては、【魔王】の戦力、規模等の情報が全く出揃っていない状態では動くつもりが無い為、暫くの間『静観』を決め込むつもりだ。
だが冒険者ギルドにて義勇兵の募集は掛けるので我こそはという者の参加は自由である!」″


~街・大通り~

「…との事だが、行くか?」
「「「「「いや。」」」」」
「つーか【勇者】って洗脳前の″やらかし″に対する謝罪行脚に出るとか言ってなかったか?」
「すっぽかすつもりか、【魔王】討伐して帳消しにするつもりか…」
「イグレージャ・オシデンタルって最近不祥事多くてかなり人が抜けてってるって噂だぜ?」
「そんなんで勝てんのかよ…」
「【鬼神】が手も足も出なかったらしいじゃん…
一先ず様子見だな…」


ローグからの報せを受けた街の住人や冒険者達であったが、反応は大分悪い。

今回獣人国以外にも王都や復興中のフリアダビア、アルバラスト等にも要請を掛けているらしいが、どこも反応は″芳しく無い″との事だ。





~再び獣人国を出て西に2キロメル程進んだ街道~


<…者の参加は自由である…>

「…確かにそんな事言ってますね…」

「…ノア君は行きますか…?(モモ)」

「…普通に考えて行くと思います…?」

「「だよねぇ…」」


獣人国の方から聞こえる国王ローグからの報せを聞いた一行だが、皆が皆渋い表情である。

敵の戦力が出揃っていない間に潰しに掛かるのは戦術としてあるにはあるが、それは正確な情報収集があって初めて出来る事である。

大陸の南端にあるという『南獄大陸』で【魔王】がどの様な状況にあるのかが知れていれば話は別だ。

だが諜報員のナサケからもそう言った有力な情報が無い事からして、イグレージャ・オシデンタルには何か策があるのだろう、と思う事にする。


(と言うか、【勇者】アークさんは式典の後謝罪行脚に向かうとか言ってなかったっけ…?)

(『言ってたな。』)


と、ここで変に考えてても仕方が無いので、騎士団犬姫は野盗を乗せた荷馬車を引いて、ノアは荷馬車の屋根に乗って獣人国へと戻るのであった。





~獣人国・冒険者ギルド~

カランコロンカラン♪

「失礼しまーす、野盗退治の報告に…って、あれ?クロラさんにポーラ。
それとエスメラルダさん、どうしてここに?」

「あ、ノア君。(クロラ)」
「や。(ポーラ)」


報告の為に冒険者ギルドの中に入ると、ここ最近話の中に全く出てこなかったジェイルやロゼ含め、クロラとポーラの4人パーティに加え、エルフのエスメラルダが集まっていた。


「実はノア君が目覚める迄の間にお世話になった人達に挨拶回りを済ませてたの。(クロラ)」

「ほら私達、″エルフの森″に向かう予定だったでしょ?
少年が目覚めたからそろそろ行こうか、って話になってたのよ。(ポーラ)」

「え?そんな直ぐに向かう感じなの?」


実は国交式典の直後から獣人国を発ち、″エルフの森″に向かう予定であると、エルフ族族長に伝えていたらしく、森へと通じる″ゲート″を開く日を設定したのだと言う。

ちなみに″エルフの森″まで約1ヶ月掛かるらしく、″ゲート″を開いてられるのは設定した日から±3日であるとの事。


「流石にノア君に一言も言わずに旅立っちゃうのは嫌だったから待ってたんだ。(クロラ)」
「待ちくたびれちゃったわ。(ポーラ)」

「ご、ごめん…」

「それで私は″エルフの森″までの引率。
一度″ゲート″を開いちゃうと暫くは外界に出られなくなっちゃうから、用事とかあったら早目に済ませちゃってね?(エスメラルダ)」


と、エスメラルダは何故かクロラやポーラに目で合図を送っていた。


「用事…用事か…
今からじゃ壮行会なんかも開けな『ガシッ。』…うぇ?」

「あ、あの、ノア君、ちょっとこっち来て…くれる…?(クロラ)」

「え?え?」

「ご両親から許可は貰ってるからね…?(ポーラ)」

「え?何の?…え?何の…?」

(『あ。(察)』)

カランコロンカラン♪


顎に手を当てて思案していたノアだが、クロラとポーラから突然手を引かれてギルドの外へと出ていってしまった。


ズルン…

『んじゃ主、報告は俺が済ませておくからゆっくりして来な。』

「ちょ、何を察したの!?鬼神?おーい?」


何かを察してノアの中から出てきた鬼神が主に手を振る中、ノアは2人と共に何処かへ消えていった。
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