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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

謎は深まるばかり

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パルディック・ロスト…元々貴族の出では無かったのだが、10年程前から斬新な食品を開発。
それにより莫大な利益と数多くの雇用を産み出し、一般人ではあったが貴族の仲間入りを果たす。
奇妙、奇天烈な物を求め、日々放浪の旅に出ているが、現在でも3ヶ月に1品の割合で新商品を開発し、悉く売り上げを伸ばしている為、誰も文句を言わない。



黒髪パッツンの少女『黒羽(クロハ)』…パルディック・ロスト伯爵の護衛兼諜報員(と言う名の市場調査員)。年齢は12才の戦争孤児。
系列の屋台等の飲食店の調査に日々励んでいる。
ちなみにいつも一緒に居る赤羽(アカバ)とは姉妹関係ではない。


赤髪パッツンの少女『赤羽(アカバ)』…同上。
ちなみに黒羽(クロハ)とは姉妹関係ではない。



ザクッ!

「うむ…漁師町では魚の鱗や骨を素揚げしてツマミとして振る舞う所もあるが、身ごと揚げるのも良いモノだな。
鱗がサクサクでまるで衣の様…
なる程、『クチグチグチグジ』の薄い鱗ならではの食感か…
ふむ…魚粉製造に回してる分をこれに回せば、雇用が…ブツブツ…
おっと、つい夢中になってしまったね。(ロスト)」

「いえ、お気に為さらず…
というか、僕が目覚めるのを待っていたとは思いませんでしたよ…」

「ヴァンディットさんに聞いたんだ、数日中には目覚めるかも、とね。」

「そういえば、ヴァンディットさんとは商会に居た時からの仲なんでしたよね?」

「あぁ。彼女を見付けてから幾度か商会に寄ってよく他愛の無い会話をしたもんだ。
たまに事業の相談に乗ってくれた事もあるのさ。(ロスト)」


元々ヴァンディットは、商人のジョーの紹介で奴隷商会から買って主従関係を結ぶ事となった。

パルディック・ロストとはその前からの仲らしく、今でも顔を合わせれば親しげに会話をするという。


ムグムグ…

「今だから言うが、ジョー殿に働き掛けてヴァンディットさんと君を引き合わせたのは私なんだ。(ロスト)」

(『え?』)

「え?そうなんですか?」

「あぁ、当時からゴーマンが悪巧みを含んだ表情で彼女を見ていたからね。
変な事になる前に君の様な者と一緒に居た方が良いだろう、と思ってね。(ロスト)」

「あ、そういう…
つまり″僕″って名指しで指名した訳じ「いや、名指しで指名したよ。(ロスト)」

「へ?」
(『へ?』)

「当時の口振りそのままで言うなら、″最近頭角を現してきている『ノアール』…?『ノア』…?とか言う少年が居るだろう?彼にヴァンディットさんを任せてみるのも良いのではないでしょうか?″
ってね。(ロスト)」

「へ、へぇ~…」

(『やべ…このおっさんが何者か、本当に分かんなくなってきたぜ…』)


当時ノアがヴァンディットと出会ったのはアルバラストでの大立回りで『野盗200人殺し』という通り名が一気に広まった時期である。

その直後に商会に赴いてヴァンディットと行動を共にする事になったので、少なくとも最初期のオードゥス編辺りからノアの事を知っていた事になる。


「…パルディックさん…あの…」

「…この話はここまでにしましょう。
正直私も″何処まで口に出して良いか探り探り″なモノでね…
もし良かったら南方に私の領があるので来てくれると嬉しいな。(ロスト)」


話を中断したパルディック・ロストは、そう言いつつ『クチグチグチグジ』の素揚げを美味しそうに食べている黒羽と赤羽の方へと歩を進める。


「…では機会があればお邪魔させて頂きます。」

「えぇ、楽しみにしていますとも。
それと今回は本当にお疲れ様でした。(ロスト)」


一緒に居た黒羽と赤羽は、ノアに軽く会釈してその場を去っていった。
後で聞いた話だが、パルディック・ロストはそのまま自領へと帰っていったらしく、本当にノアに一声掛けていくだけだったらしかった。





「ふぅむ…何か謎だけが深まっちゃったなぁ…」

(『…だな。
″何処まで口に出して良いか…″か…
下手に口走れない、もしくは話すと誰かに不都合がある、とかか?
それにしちゃ口調は落ち着いてるから、脅されてると言った類いのモノではなさそうだな…』)


ノアは腰に手を当てて鬼神と共に考察するが、特に何が浮かぶでも無かったので、一先ず考えるのは後回しにした。

そんな感じでボーッと突っ立っていると


ムグムグ…

「何ぞ話は終わったんか?(バド)」
「坊が貴族と話しとるとは珍しいのぅ…『クピッ…』(ルド)」

「うーん…僕も正直よく分かってないんだけどね…」

「『パリパリ…』何じゃそりゃ。(ロイ)」


酒瓶片手に呑兵衛のドワーフ3人組がやって来た。
ノアとパルディック・ロストが話している間、ミリアの面倒を見てくれたり、いつものガハハ笑いの声量を抑えてくれたりと、少し気を遣ってくれていた。


トテテテ…

「っと、少し話し込んじゃってゴメンねミリア君。」

「いえ。それにしても凄いですね、パルディック・ロスト伯爵とお知り合いなんて…(ミリア)」

「うーん…あちらさんは僕の事を知ってるみたいだけど、僕の方は全然接点が無いから不思議でしょうがないんだよねぇ…」


商人見習い(メルカドール)のミリア曰く、パルディック・ロストは物腰柔らかな性格とは裏腹に、交遊関係に関しては付かず離れずを保つらしい。

食品関係で財を成したからか、情報漏洩には人一倍気を使っているらしい。
にも関わらず、ノアとは分け隔てなく話していた為、ミリアにしてみれば不思議でしょうがないと言う。

なのでノアは「間に共通の知り合い・従者であるヴァンディットさんが居るからだろう」と考察する事にした。





クピピ…

「やっほーノア君。
ミリアちゃん、だっけぇ?良い子ねその子ぉ。
大人しくって、べんきょー熱心でぇ。
『商人見習い(メルカドール)』なんらってぇ?(酔いどれエスメラルダ)」

モワァッ…

「酒臭っ!
…もぅ、酔いすぎですってエスメラルダさん。
それとミリア君は中性的な顔立ちですけど男の子なんですからね?」

「嘘おっしゃい、エスメラルダおねーさんの目は誤魔化へまへんよぉー?(エスメラルダ)」

「うっわ、悪酔いしてるよ…
ミリア君、あぁなったエルフに近付いちゃダメですからね?」

「は、はい…(ミリア)」


ドワーフ3人組以上に酒精の匂いを漂わせ、ドワーフ3人組以上に酔っているエスメラルダからミリアを守る為、自分を盾にするノア。


「あー!信じへ無いんらぁ!
らっはら確かめてみなはいよぉ。(エスメラルダ)」

『ガシッ。』

「え?」

『ほよん。』

「…え?(ミリア)」


酔いどれエスメラルダに手を掴まれたノアは、そのまま為すがままにミリアの胸元へと誘われた。

手に僅かな柔らかさを感じて少し固まった後、右手をパー、左手をグーにして直ぐに行動を開始した。


『バチィンッ!』

「ひぃっ!?(ミリア)」

「『ゴィンッ!』ふぎゃあっ!?(エスメラルダ)」


その日、通りには痛々しい破裂音と、鈍い音と共に尻尾を踏まれたかの様なエルフの悲鳴が響いたと言う。
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