ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

市場散策

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~大通り・生鮮品通り~


『『『ワイワイガヤガヤ…』』』

「さぁさぁ、いらっしゃいいらっしゃい!
漸く外出制限が解除されたんだ、食料品の買い時だよ!」

「今日の釣果は凄いぞ!『マナビイワシ』に『コロモエビ』、『ナメクジラ』なんかもあるぞぉっ!」


式典以降、獣人国には″生鮮品通り″と言う名の通りが出来た。
ヒュマノ聖王国が消滅した事で、海へと赴き、漁業が行える様になったからである。

だが船等は無い為、そういった設備が整うまでは専ら釣りで賄っている。

そこで、傭兵業で各地へと散っていく元奴隷の獣人達を一時的に雇い、人海戦術で海産物の確保に勤しんでいる。

お陰で連日店先には鮮度の良い海産物が並び、そのどれもが美味な為、獣人の多くを虜にしている。

特に猫科の獣人に人気な様で


「ふふ~ん♪今日は~、にゃ~にを食べようかにゃぁ~♪
『魔鯛』はちょっと高いから『魔アジ』にしようかにゃぁ~♪(ベレーザ)」


肩から下げたポーチを手にルンルン気分でお買い物に来たベレーザ。

その後ろで


「おっちゃん、『ナメクジラ』を5キロ。(ヴァモス)」

「あいよ。『ナメクジラ』を5キロね!」ぬとん…


粘りけのある粘膜に包まれた白い肉の塊がまな板に置かれ、店の店主がヴァモスから指定の量切り分けていく。


「ま!待つにゃぁあっ、ヴァモス!
早まるにゃあっ!(ベレーザ)」

「ベレーザこの間言ったでしょ?
「今度ステージで足グネったらご飯に『ナメクジラ』を加える。」って。(ヴァモス)」

「き、昨日のは汗で滑っちゃっただけにゃっ!ノーカンにゃ!(ベレーザ)」

「汗でって…開演直後の1歩目だったでしょうが…
安心しなって、また気付かない様に″混入″させるから。(ヴァモス)」

「″混入″って言わないで欲しいにゃ!
疑心暗鬼になるんにゃあっ!(ベレーザ)」

((((((まーたやってるよ、あの2人…(周囲)))))))


抵抗を続けるベレーザであったが、追加注文の『マナビイワシ』と共にお買い上げとなった。

ちなみに本日のメニューは『マナビイワシのハンバーグ(ナメクジラ混入)』だそうだ。


ザクッ!ムシャムシヤ…

「相変わらず仲良いね、2人は。」

「にゃぅ…?あ、ノア様!(ベレーザ)」
「あ、ノア様!(ヴァモス)」


不意に声を掛けられたので振り向くと、『コロモエビ』のフライを片手にムシャムシヤと頬張っているノアが立っていた。


「オオッ!【鬼神】だ!救世主だ!」
「お疲れさんだ!【鬼神】君!」
「目ぇ覚ましたのね【鬼神】君!心配したわ!」
「街を守ってくれてありがとうな!」
「はっはー!こりゃ目出度いな!」


と、通りに居た獣人達から割れんばかりの歓声が上がる。
それをノアは少し気恥ずかしそうに応対していた。



~※ここでちょっと注釈~

ちょっと前まで″力の制御下″にあった時は台詞に″『』″がついてましたが、現在は馴染んだので通常通り″「」″に戻ってます。(忘れてた訳じゃナイヨ。)

~注釈終わり~



「もう大丈夫なのですね?(ヴァモス)」

「あぁ、もう通常通り。」

「それは良かったです「にゃ」。(ヴァモスとベレーザ)」

「ふ…2人共強くなったなぁ…」

「「え?」」


不意にそう言われたヴァモスとベレーザだが、良く分かっていない様子。

1ヶ月半程前に初めて会った時と比べ、非常に落ち着いた雰囲気を醸し出している。

以前であればノアが一挙手一投足するだけで「ノア様!ノア様!」と過剰過ぎる程に反応していたが、現在は周囲に居る他の獣人達にしっかり溶け込んでいる様に思われる。

今も病み上がり直後にノアと10日振りに対面した割に、2、3言葉を交わす程度で、落ち着いた様子を見せていた。


(…大丈夫そうだね。)

(『だな。』)


未だに疑問符を浮かべている2人を他所に、ノアは心の中でそう判断していた。





「…所でノア様?(ベレーザ)」

「ん?」

「…さっきからずっと肩車しているそちらの子はどなたでしょうか…?(ヴァモス)」

「ど、どうも…(ミリア)」

「迷子さんかにゃ?(ベレーザ)」

「あぁ、この子はねぇ…」


2人からそう問われたノアは、クランを立ち上げた事、サポートの一環でミリアを『商人見習い(メルカドール)』として雇った事を伝えた。

先程「街を回りたい」と言ったミリアの要望を叶える為、通りに繰り出したのだが、人流が多くなるにつれ、小柄で華奢なミリアではガタイの大きい獣人に押されて間を縫って行くのも難しそうだったので、ノアがミリアを肩車して向かう事にしたのだった。


「えと…本日より『きじん』の『商人見習い(メルカドール)』になりました、ミリアと言います。
よ、よろしくお願いします。(ミリア)」

「よろしくにゃ。(ベレーザ)」
「よろしく。(ヴァモス)」

「そう言う訳でミリア君に街を見せている訳なんだ。」

「にゃる程にゃるほ…ど…?(ベレーザ)」
「…ん?君?(ヴァモス)」

「さて、ミリア君。
回ってみたい所はあるかな?」

「あ、で、ではあそこの鮮魚店に…(ミリア)」

「了解。
それじゃあヴァモス、ベレーザ、またね。」

テクテクテクテク…


そう言って再びノアはミリアを肩車して別の店へと歩いていった。


「…聞き間違いかにゃ?(ベレーザ)」

「…多分…(ヴァモス)」





~とある鮮魚店前~


「…すごい…血色の良い塩漬けされてない魚が店頭に並んでる…
釣って直ぐに凍らせたからでしょうか…
″品質レベル″は″5″か″6″…ですか…?(ミリア)」

「はは、惜しかったな。
″品質レベル7″なんだな、この『オカシラ鯛』は。
何だ?<鑑定>の練習中かな嬢ちゃん。(店主)」

「あ、あの…(ミリア)」

「おっちゃん、この子は中性的な顔立ちですけど男の子なんですよ?
ね、ミリア君。」

「え、あ、は、はい…(ミリア)」

「え?あぁ…そりゃ済まんかったな…(店主)」


肩車された状態で店頭に並ぶ様々な魚の状態を1つ1つ確認していくミリア。
どうやら自身が算出した予測の″品質レベル″と、店主自身が持つ<鑑定>結果と照らし合わせ、<鑑定>の取得に励んでいるらしい。

立派な【商人】になるには<鑑定>の取得が必須である為、日に数回は品定めをしなくてはならない。

ある程度は″勘″でどうにかなる場合もあるが、それは場数を踏んで経験を積んでいる事が前提である。


「うーん…″品質レベル″の5から下は当てれるのに上を合わせるのが難しい…(ミリア)」

「そりゃ、ね。
見た目が美品でも、数日餌を口にしていなくて痩せ細っていたりすると、″品質レベル″は下がっていく場合もあるからそこはジックリ観察していくしかないね。」

「ノアさんは<鑑定>持ってるのですか?(ミリア)」

「僕の場合<鑑定>ではなく<観察眼>かな。
対象の空腹具合も戦闘に於いては重要になってくる。
″腹が減っては戦は出来ぬ″なんて諺もあるでしょ?」

「なるほど…(ミリア)」

「そーそー。
なのでさっきからお腹を『キュルキュル』鳴らしているミリア君?
何か食べたいものあーる?」

「ふぇっ!?き、聞こえてたんですかぁっ!?(ミリア)」

「そりゃこれだけ密着してればね。」


肩車状態故、例え<聞き耳>を発動していなくともミリアの腹の虫がさっきから唸りを上げているのが聞こえていた。


「丁度良いから適当に何尾か焼いて貰って食べよう。
さっきのフライだけじゃ僕も足りな「あああっ!勿体無いっ!(??の大声)」…んぉ?」


と、突如通りの奥から誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。

肩車されているミリアは思わず驚いてノアの頭に抱き付き、身を縮こませていた。


「け、喧嘩…?奥で何かあ「あー、心配しなくて大丈夫だよ。」…ほぇ?(ミリア)」

スタスタ…


不安そうな表情でノアの髪を掴んで縮こまっているミリアを他所に、ノアは怒鳴り声の発生源へと突き進んでいく。

人混みを避けて進んでいった先に見たものは


「鱗や骨を捨てる等勿体無い!(バド)」
「″センベエ″にすれば酒の″アテ″になるんじゃぞ!(ルド)」
「んだんだ!(ロイ)」

「えっ!?″アテ″になんの!?
よっしゃ!おっちゃん作って作って!(エスメラルダ)」


まだ午前中だと言うのに酒精の匂いをプンプンと漂わせたドワーフ3人組とエルフが、魚の鱗や骨を捨てている店の店主にだる絡みしている所であった。


「わ、ドワーフ族とエルフ族だ…(ミリア)」

「そして知り合いの″呑兵衛4人衆″である。」

(『あーあー、出来上がってんなぁコイツら…』)
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