ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

有用であれば敵の技術でも

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クラン創設に際して、斡旋された『商人見習い(メルカドール)』を待つ間、ノア達一行は海洋種殻族のゴアと魚族のマーミーが営んでいる『武器屋アルマ』『防具屋アルマドゥーラス』に来ていた。


「おー、目ぇ覚めたかっ!
 中々目覚めないからエルダー(クラーケン)様が心配していたぞ!(ゴア)」

「そのエルダークラーケンさんは大丈夫でしたか?
腕と足を貫通する程の攻撃受けてましたが…」

「心配しなくて大丈夫よ。
 毎日マグマ風呂に足しげく通って、一昨日位には完全に傷が癒えたみたいだから。(マーミー)」

「おー良かった良かった。」

 (『スケールのデカい話だな。』)

「それで?病み上がりにここへ何の用だ?
まぁ防衛戦後だから防具の補修か?(ゴア)」

「いえ、実は武器製作の相談をしに来たのですが…」

「「へぇ?」」


実は【魔王】戦の時、ノアが配下のセルトと近接戦闘した際に敵の装備ながら「良いな」と思っていた武装があったのだ。





「えーっと、掌よりも少し大きい位のサイズで、魔力の塊(?)か、金属片を発射させる射出機みたいなモノで…
発射時に何かが爆ぜる音が…」

「ん?ん?
待て待て、一体何の武器種の話をしているんだ?
ボウガンか?暗器の類か?(ゴア)」


ノアからのザックリとした説明を聞いてはみたものの、ゴアは思い当たる節が無い様子。

地上とは明らかに技術レベルが抜きん出ている海洋種であればノアの欲している″とある装備″が作れるのでは、と思っていたが、初っぱなから暗礁に乗り上げてしまった。

すると


「ねぇねぇノア君、もしかしてノア君が作って欲しいモノって″銃″の事?
ほら、私が居たダンジョンの機兵が持ってたガトリング砲みたいな…(ラインハード)」

「あ、それそれ。」


どうやらノアが欲していたのは銃器の類で、【魔王】配下のセルトが所持していたハンドガン″MP-G(魔力貫通銃)″の事であった。

発砲時に大きな音が聞こえてしまうのは致し方無いとは言え、殆ど密着した状態でも攻撃を仕掛けられるのは何とも魅力的であった。



MP-G(魔力貫通銃)…【魔王】アクロスが存在した時間軸で1800年代に人類軍によって開発された火薬式の銃器をベースに、【魔王】軍が開発した銃器。

火薬の代わりに魔力を使用するので戦場で弾切れを起こす心配が殆ど無い。

MP-G(魔力貫通銃)は初期モデルで魔力消費が多いが、頑丈で中々壊れない事が利点であった為、後年まで愛用する者が多かった。



「モンスター相手だったら剣やナイフ、拳や蹴りでも良いんだけど、この間みたく対人だとちょっと取り回しがね…」

「うーん…でも掌サイズの銃器って難しいと思いますよ。
この間の防衛戦で私も銃器を使っていたのはノア君も知ってると思いますが、アレ、中に色々な術式を付与した魔石を組み込んでいるので、どうしても大型になってしまうのですよ。(ラインハード)」

「…やっぱり難しいかな…」


先日の防衛戦でラインハードが魔装鉄甲内に仕込んでいた銃器を用いた遠距離狙撃だが、内部には″耐衝撃″や″魔石生成″等の術式を組み込んだ魔石が10~20程仕込まれていると言う。

故に全体的に大型になってしまうらしく、ノアが望む様な掌サイズは非常に難しいと言う。





※ラインハードが記した、簡単な銃器に関するメモを見ながら


「ふむふむ…
なぁ少年よ、質問良いかな?(ゴア)」

「…はい、何でしょうか…?」


内部構造や原理、予想される威力等が記されたメモを見てうんうんと唸っていたゴアが徐に質問を開始。


「さっきの話を聞く限り対人であって、対モンスター用の使用では無いとの認識なんだが、それで良いだろうか?(ゴア)」

「あ、はい、その認識で大丈夫です。
実は間近でその武器を見る機会があったのですが、どうやらただ単に何かを発射するモノだったらしく、地面に着弾した後に追加効果とか無かったので、モンスター相手には通用しないかなー、って…」

「つまり殺傷武器では無く、非殺傷。
しかも中・遠距離の対象では無く、至近距離…
出来れば具体的な使用範囲を決めてくれんか?
もしかすると希望に沿える物が拵えられるやも知れんぞ?(ゴア)」

「えっ!?本当ですか!」


どうやらゴアに考えがある様で、詳しい数値の聞き取りを願い出てきた。
ノアは欲していたモノを作って貰えるならと、ゴアからの質問・要求に答えていくのだった。

結果、使用素材は以前エルダークラーケンから譲って貰った『大海獣の柔肌』1枚と『大海獣の粉砕牙』を1本ゴアに預け、製作期間は半日で作って貰える事になった。

そして現在、武器屋『アルマ』のカウンターの上には、大きな一枚皮の『大海獣の柔肌』と樽の様に大きな『大海獣の粉砕牙』がゴロリと置かれていた。


「わぁあ…(マーミー)」キラキラ…

「…まさかエルダー(クラーケン)様の素材をこんな形で取り扱う事が出来るとは…(ゴア)」ジーン…


マーミーはことばすくなに目を輝かせ、ゴアは感無量と言った様子で何やら噛み締めていた。


「…あの「よっし少年!お前さんの希望に沿う様な物を作ってやるから覚悟しな!(ゴア)」…覚悟て…」


よく考えてみれば、魚族のマーミーと殻族のゴアにとって、自身の種族の最上位素材を取り扱うのでそういった感情になっているのだろうと思われる。

製作を担当するゴアは異様にイキイキして早速工房に突入していった。

料金の話は一切決めていないのに、である。


「うぉおおっ!やったるぞぉっ!(ゴア)」

「ねぇゴア!端材!端材で良いから私にも融通させてくれない!?(マーミー)」

カランコロンカラン♪

「多分今は外野の声は聞こえないだろうから、料金は完成したらにしよっか。」

「ですね。(ヴァンディット)」

「ね。(ラインハード)」


ノア達はとりあえず製作を任せて『アルマ』を退店。
時間的に冒険者ギルドから斡旋された『商人見習い(メルカドール)』が来ていそうであった為、一行は冒険者ギルドの方へ戻る事にした。





~冒険者ギルド近辺・屋台通り~

テクテク…

「『商人見習い(メルカドール)』ってどんな感じの人が来るんでしょうね。(ヴァンディット)」

「″見習い″、″商人の卵″って言う位だから結構若いんじゃないかな?」

「じゃあノア君位の年齢の子が来るんですかね。(ラインハード)」

「かもね。」


などと話していると


<何でも将来有望株のクランから声が掛かったらしい。そこで【商人】としての目を養うんだぞ″ミリア″。>

<はい!>


(『お?もしかしてこの声の主が『商人見習い(メルカドール)』なんじゃないか?』)

(かもね。)


冒険者ギルド近辺を歩いていると、<聞き耳>の範囲内に『商人見習い(メルカドール)』候補らしき者と同行者らしき人物との会話を感知した。


<そ、粗相の無い様にな?挨拶は元気よくハッキリと言うんだぞ…?>

<心配し過ぎですよ″ベイゼル″殿、″ミリア″はしっかりしていますから。な?″ミリア″。>

<そうですよ″ベイゼル″さん。>


(『息子の旅立ちを心配する父親かな?』)

(まぁクランに預けるんだから心配なのも…って、あれ?
″ベイゼル″って…)

ダッ!

「あれ?どうしたの、ノア君?(ラインハード)」
「どうなさったのですかノア様?(ヴァンディット)」


<聞き耳>に入ってきた会話の中に聞き覚えのある名前″ベイゼル″を聞いたノアは、思わず駆け出すのだった。
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