801 / 1,025
獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~
クランを立ち上げてみては?
しおりを挟む
~王城・ローグの私室~
「そうだノア殿、″クラン″を立ち上げては貰えないだろうか?(ローグ)」
「え?″クラン″?」
(『え?面倒臭そうだな。』)←戻った。
今後の事や報酬、ツェドの話を済ませたので退出しようとするとローグから呼び止められて″クラン″の立ち上げをお願いされた。
クラン…個人やパーティ等が集まった集団。
同じ【適正】同士で組んだり、別パーティで組んでレイド戦に挑んだり、同じ思想、信念、目標等を持つ者等、立ち上げの理由は幾らでもあるが、そういった冒険者同士で構成した集団の事を言う。
堅苦しく書いたが、大半は気の合う者同士でワイワイやる為に立ち上げるのが殆どである。
本来ノアの様な【ソロ】の適正を持つ者には縁の無い話である。
その為
「何でですか?」
「…まぁ普通はそういう反応になってしまうだろうな…
勿論だが理由は2つある。
″追跡のし易さ″と″面倒事の回避″だ。(ローグ)」
「はぁ…」
いまいちピンときていないノアにローグが説明を始める。
まず1つ目の″追跡のし易さ″だが、ノアはこの4ヶ月で数々の戦果を挙げた事で広く名が知られる様になった。
二つ名である【鬼神】も、最初は仰々しいモノであったが、今では何だかんだ定着している。
とは言え現在のノアは″一冒険者″である。
【ソロ】故、パーティも組んでいなければクランなど、ローグから切り出されなければ考える事すら無かったであろう。
名の知れた冒険者は、少なからずパーティ位は組んでおり、更に規模を大きくしたモノが″クラン″である。
今回獣人国で発生した防衛戦の様な大規模戦闘の際に重要なのは″情報″で、モンスターの内容、内訳、その数、範囲等の情報も重要だが、″自国が保有する戦力″がどの程度のモノか。
これによって戦力を分散させるか、攻めに徹するか、守りに徹するか、罠を張り巡らせるか等の戦略が立てられる。
故に冒険者ギルドの方では早々に戦力の確認をしたいので、クラン→パーティ→個人の順に捜索される。
例え街の中に冒険者が数万人居ようが、クランは10~20程しか居ないので捜索は容易だ。
だが現状″一冒険者″のノアを捜索しようものならかなりの時間を要してしまう。
今回は自国で発生し、ノア自ら名乗り出て防衛戦に参加してくれたから良かったが、これが他国で起こった場合、近隣の国から要請されて派遣されるという形になるので、更に時間が掛かってしまうだろう。
「まぁノア殿の事だから、今後も騒ぎの直ぐ近くに居るとは思うが、万が一があるやもしれん。
その時にクランに在籍してくれていると非常に助かるのだ。(ローグ)」
「…なる程…そう言う事でしたら…
…それで、″面倒事の回避″と言うのは…?」
「これはノア殿自身と言うよりは、君の従者、ヴァンディット嬢やラインハード嬢の方に恩恵があると言えるな。(ローグ)」
「ほぉ?」
そして2つ目の″面倒事の回避″だが、これはローグが言った様に、ヴァンディットやラインハードの方に利点がある。
今回描写がされていなかったが、国交式典中にヴァンディットとラインハードが外に出る度、最低でも2回は貴族・冒険者問わず声を掛けられていた。
それこそ「お美しい」「可愛らしいですね」等の優しいモノもあれば、「俺の女・側女になれ」「カワイイネェ、オジサントオアソビシヨウヨ、ハァハァ…」等のキツいモノもあった。
その都度眷属のブラッツが出て来て威嚇したり、顔の知れてるノアが出て来て穏便(物理)に事を済ませたりしていた。
獣人国の者達はヴァンディットやラインハードの事は″ノアの従者″という事で周知されているが、外から来た者にはそれが見える形で表されていないので、今後もそう言った問題が付きまとってくるだろう。
「クランを立ち上げればそれぞれに″団章″が与えられる。
それを身に付けていれば、例えノア殿のクランに所属していると分からなくとも、クランという大きな集団に属しているという事が分かるので、面倒事は起きにくくなるだろう。(ローグ)」
「よし、立ち上げよう。」
(『よし、立ち上げよう。』)
日頃ノアの影の中で過ごしているのは、なにも錬金術の作業や機兵製作や機械修理依頼に励んでいるだけで無く、こう言った事情もあったのだ。
これを聞いたノアは、クラン立ち上げを即決したのだった。
「クラン立ち上げに関する細かい事は冒険者ギルドで色々説明されるだろう。
気になる事があればそちらで聞いてみると良い。(ローグ)」
「ありがとうございます。」
クラン立ち上げについて打診されたノアは、ローグの私室を出た後、その足で冒険者ギルドへと向かうのだった。
~30分後・冒険者ギルド~
「ご、ごほん…先程は失礼致しました…(受付嬢)」
「いえ…お気に為さらず…」ヨレ…
冒険者ギルドに訪れた現在のノアは、装備が少し着崩れし、髪はボサボサの状態であった。
何故なら、冒険者ギルドに訪れたノアを、受付嬢やギルドで働く職員、ノリで参加してきた獣人達に胴上げされたからである。
理由は勿論防衛戦の御祝いである。
御前試合の最中に防衛戦に突入し、損害軽微で終結させたその立役者が10日振りに昏睡状態から復活して皆の前に現れたのだ、獣人国に暮らす者であれば御祝いしないハズがない。
ノリでやって来た筋骨隆々な獣人達によってワッショイワッショイと胴上げされたノアは、まるで人形の様に宙を舞い、揉みくちゃにされ、今に至るのであった。
「そ、それで、どういったご用件でしょうか?」
サッサッサ…
「えぇっと、″クランの立ち上げ″に来たんですが…」
「「「「「「「ザワ…」」」」」」」
((『ん?』))
ノアが″クランを立ち上げる″と発すると、周囲がざわめき出した。
この時はイマイチ理由が分からなかったが、追々判明する事になる。
~クラン創設用紙~
クランリーダー:ノア
クランメンバー:ヴァンディット、ラインハード、グリード、ブラッツ、ニャーゴ
追加募集:しない。
「え?記入するのはこれだけで良いんですか?」
「えぇ。
『募集』の項目に『する。』と記入していれば、【適正】・種族・入団条件の取り決め等の記入もお願いしたのですが、『しない。』にしていますので、以降は″不要″です。」
「なる程、そ
<<<<<<ぐわぁー、募集しないのかぁ!>>>>>>
「…何だろ、さっきから。」
(『さぁ。』)
追加募集の項目を『しない。』とした事が周囲に知れ渡ると、何故か残念がる冒険者がチラホラ散見された。
気にしてても仕方無いので、次の項目についての説明を聞く事にした。
「そうだノア殿、″クラン″を立ち上げては貰えないだろうか?(ローグ)」
「え?″クラン″?」
(『え?面倒臭そうだな。』)←戻った。
今後の事や報酬、ツェドの話を済ませたので退出しようとするとローグから呼び止められて″クラン″の立ち上げをお願いされた。
クラン…個人やパーティ等が集まった集団。
同じ【適正】同士で組んだり、別パーティで組んでレイド戦に挑んだり、同じ思想、信念、目標等を持つ者等、立ち上げの理由は幾らでもあるが、そういった冒険者同士で構成した集団の事を言う。
堅苦しく書いたが、大半は気の合う者同士でワイワイやる為に立ち上げるのが殆どである。
本来ノアの様な【ソロ】の適正を持つ者には縁の無い話である。
その為
「何でですか?」
「…まぁ普通はそういう反応になってしまうだろうな…
勿論だが理由は2つある。
″追跡のし易さ″と″面倒事の回避″だ。(ローグ)」
「はぁ…」
いまいちピンときていないノアにローグが説明を始める。
まず1つ目の″追跡のし易さ″だが、ノアはこの4ヶ月で数々の戦果を挙げた事で広く名が知られる様になった。
二つ名である【鬼神】も、最初は仰々しいモノであったが、今では何だかんだ定着している。
とは言え現在のノアは″一冒険者″である。
【ソロ】故、パーティも組んでいなければクランなど、ローグから切り出されなければ考える事すら無かったであろう。
名の知れた冒険者は、少なからずパーティ位は組んでおり、更に規模を大きくしたモノが″クラン″である。
今回獣人国で発生した防衛戦の様な大規模戦闘の際に重要なのは″情報″で、モンスターの内容、内訳、その数、範囲等の情報も重要だが、″自国が保有する戦力″がどの程度のモノか。
これによって戦力を分散させるか、攻めに徹するか、守りに徹するか、罠を張り巡らせるか等の戦略が立てられる。
故に冒険者ギルドの方では早々に戦力の確認をしたいので、クラン→パーティ→個人の順に捜索される。
例え街の中に冒険者が数万人居ようが、クランは10~20程しか居ないので捜索は容易だ。
だが現状″一冒険者″のノアを捜索しようものならかなりの時間を要してしまう。
今回は自国で発生し、ノア自ら名乗り出て防衛戦に参加してくれたから良かったが、これが他国で起こった場合、近隣の国から要請されて派遣されるという形になるので、更に時間が掛かってしまうだろう。
「まぁノア殿の事だから、今後も騒ぎの直ぐ近くに居るとは思うが、万が一があるやもしれん。
その時にクランに在籍してくれていると非常に助かるのだ。(ローグ)」
「…なる程…そう言う事でしたら…
…それで、″面倒事の回避″と言うのは…?」
「これはノア殿自身と言うよりは、君の従者、ヴァンディット嬢やラインハード嬢の方に恩恵があると言えるな。(ローグ)」
「ほぉ?」
そして2つ目の″面倒事の回避″だが、これはローグが言った様に、ヴァンディットやラインハードの方に利点がある。
今回描写がされていなかったが、国交式典中にヴァンディットとラインハードが外に出る度、最低でも2回は貴族・冒険者問わず声を掛けられていた。
それこそ「お美しい」「可愛らしいですね」等の優しいモノもあれば、「俺の女・側女になれ」「カワイイネェ、オジサントオアソビシヨウヨ、ハァハァ…」等のキツいモノもあった。
その都度眷属のブラッツが出て来て威嚇したり、顔の知れてるノアが出て来て穏便(物理)に事を済ませたりしていた。
獣人国の者達はヴァンディットやラインハードの事は″ノアの従者″という事で周知されているが、外から来た者にはそれが見える形で表されていないので、今後もそう言った問題が付きまとってくるだろう。
「クランを立ち上げればそれぞれに″団章″が与えられる。
それを身に付けていれば、例えノア殿のクランに所属していると分からなくとも、クランという大きな集団に属しているという事が分かるので、面倒事は起きにくくなるだろう。(ローグ)」
「よし、立ち上げよう。」
(『よし、立ち上げよう。』)
日頃ノアの影の中で過ごしているのは、なにも錬金術の作業や機兵製作や機械修理依頼に励んでいるだけで無く、こう言った事情もあったのだ。
これを聞いたノアは、クラン立ち上げを即決したのだった。
「クラン立ち上げに関する細かい事は冒険者ギルドで色々説明されるだろう。
気になる事があればそちらで聞いてみると良い。(ローグ)」
「ありがとうございます。」
クラン立ち上げについて打診されたノアは、ローグの私室を出た後、その足で冒険者ギルドへと向かうのだった。
~30分後・冒険者ギルド~
「ご、ごほん…先程は失礼致しました…(受付嬢)」
「いえ…お気に為さらず…」ヨレ…
冒険者ギルドに訪れた現在のノアは、装備が少し着崩れし、髪はボサボサの状態であった。
何故なら、冒険者ギルドに訪れたノアを、受付嬢やギルドで働く職員、ノリで参加してきた獣人達に胴上げされたからである。
理由は勿論防衛戦の御祝いである。
御前試合の最中に防衛戦に突入し、損害軽微で終結させたその立役者が10日振りに昏睡状態から復活して皆の前に現れたのだ、獣人国に暮らす者であれば御祝いしないハズがない。
ノリでやって来た筋骨隆々な獣人達によってワッショイワッショイと胴上げされたノアは、まるで人形の様に宙を舞い、揉みくちゃにされ、今に至るのであった。
「そ、それで、どういったご用件でしょうか?」
サッサッサ…
「えぇっと、″クランの立ち上げ″に来たんですが…」
「「「「「「「ザワ…」」」」」」」
((『ん?』))
ノアが″クランを立ち上げる″と発すると、周囲がざわめき出した。
この時はイマイチ理由が分からなかったが、追々判明する事になる。
~クラン創設用紙~
クランリーダー:ノア
クランメンバー:ヴァンディット、ラインハード、グリード、ブラッツ、ニャーゴ
追加募集:しない。
「え?記入するのはこれだけで良いんですか?」
「えぇ。
『募集』の項目に『する。』と記入していれば、【適正】・種族・入団条件の取り決め等の記入もお願いしたのですが、『しない。』にしていますので、以降は″不要″です。」
「なる程、そ
<<<<<<ぐわぁー、募集しないのかぁ!>>>>>>
「…何だろ、さっきから。」
(『さぁ。』)
追加募集の項目を『しない。』とした事が周囲に知れ渡ると、何故か残念がる冒険者がチラホラ散見された。
気にしてても仕方無いので、次の項目についての説明を聞く事にした。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,766
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる